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7.1-15 伯爵からの報告3

コルテックスたち(主にアトラス)の戦闘が、過激さを増していた・・・・・・その頃。


未だ、シティーホールの一室で、優雅に(?)紅茶を口にしながら、伯爵と対面していたワルツと狩人と、そしてユキ。

伯爵から、伯爵本人と勇者、それにこの町の兵士たちが協力して戦っているというのに、地下に住み着いたというミノタウロスを片付けられないという話を聞いて、ワルツはおもむろに呟いた。


「ミノタウロスに勝てない勇者って・・・どうなの?ミノタウロスって、そんなに強いようには思えないんだけど・・・」


すると、彼女の言葉を聞いた狩人が、関心したような表情を見せながら口を開く。


「ほう?ワルツはミノタウロスのことを知ってるのか?」


「えぇ。あの、人間みたいな筋骨隆々な上半身をもった・・・馬ですよね?」


「・・・それ、ケンタウロスだ・・・」


「あれ?そうでしたっけ?」


と口にしながら、頭の中で、色々な動物と人の身体をすげ替えていくワルツ。


それから暫く考えて、頭に牛のマスクを被った勇者の姿が出て来たところで、ようやくミノタウロスの姿を思い出したようだ。


「あ、牛でしたね」


「牛かぁ・・・。言われてみれば・・・まぁ、牛かなぁ・・・」


そう言いながら、自身の頭の中にあった牛のイメージとミノタウロスを重ねようとした狩人。

その結果、彼女が持っていた牛のイメージが、ミノタウロスと微妙に一致しなかったためか、彼女は頭の中に謎生物を思い浮かべて、思わず苦笑してしまったようだ。

どうやら彼女の頭の中の『牛』は、ホルスタイン種の乳牛ではないらしい・・・。


そんな、得体のしれない何かを鼻で笑っていた狩人に対して、ワルツは彼女の先程の反応について問いかけてみた。


「でも・・・ミノタウロスって有名なんじゃないですか?」


ミノタウロスを知っている、という言葉に対して、狩人は妙な反応をしていたのである。

知っていることで何か拙いことでもあるのか、とワルツは思ったのだが・・・


「いやいや。普通に暮らしてたんじゃ、まずお目にかかることはないからな。迷宮の中でも、滅多なことがない限り出遭わない相手だし」


・・・要するにミノタウロスは、この世界で、マイナーな魔物、ということなのだろう。


すると、その隣りに座っていたユキが、少々考えこむような表情を浮かべながら、疑問を口にする。


「ミノタウロスといえば、迷宮特有の魔物のように思うのですが・・・つまり、この町には迷宮があるということですか?」


「そういえば、ユキ。この町の構造を知らなかったわね・・・」


「あの・・・はい。来るのも見るもの初めてだったもので・・・」


「いや、そんな(かしこ)まらなくても・・・。教えてなかったのは、私の方だしね」


サウスフォートレスの構造を知らなかったことで、申し訳無さそうな表情を浮かべるユキに、すかさずフォローの言葉を口にするワルツ。


それから彼女は、かつて大量の兵士たちが、サウスフォートレスに押し寄せてきた際、街を守るために、街の周辺と、その地下に巨大な迷路と罠を築いたことを説明した。

その後で、地下に巨大な地底湖がある・・・という話をしたところで、ユキはハッとした表情を浮かべながら再び口を開く。


「もしかして・・・ビクセンで暴れていた迷宮が消えて、代わりに出来た湖のように、この街の地下でも、同じようなことが起こった、ということでしょうか?」


「どうかしらね・・・。そこまでは分からないけど、もしかしたら、昔、同じようなことがあったのかもね・・・」


そう言いつつ・・・もしかして、地下道を掘削した際に、ルシアの魔力粒子ビームや土魔法に巻き込まれて、知らず知らずのうちに退治されたんじゃ・・・などと思うワルツ。


それから彼女が、どこか遠い場所へとその視線を向けつつ、トンネルの中に正体不明の肉塊が転がっていなかったかを思い出していると・・・・・・ユキはミノタウロスに話を戻して話し始めた。


「・・・もしも、その地底湖に迷宮があったとすれば、元々そこに生息していたミノタウロスが、ワルツ様方の作った地下道に住み着いた、とも考えられますね」


「なるほどね・・・(何れにしても、私たちが穴を掘ったのが原因、ってわけね・・・)」


ワルツはそう口にすると、小さく溜息を吐いてから、席を立ち上がった。

どうやら彼女は、自分たちではどうにもならない問題に遭遇したためか、どうすべきかと深く考え込んでいた伯爵のその姿に、いたたまれなさを感じたようだ・・・。


彼女が席を立った直後、


「お?早速、ミノ退治に行くのか?付き合うぞ?」


自身も追いかけるように立って、彼女にそんな声をかける狩人。

しかしどういうわけか、伯爵とは違い、彼女の表情は至って明るいものだった・・・。


「・・・何か、狩人さん、嬉しそうですね?」


そんな彼女の様子が気になって問いかけるワルツ。

すると狩人は、持っていたバッグの中から、愛用のダガーを取り出して、整備に不備がないかを確認しながら、その質問に答え始めた。


「・・・いやな?不謹慎かもしれないが、最近、狩りをする時間が無くて・・・。それで、ワルツと久しぶりに狩りに出かけられると思ったら、つい嬉しくなってな。・・・今まで時間を見つけて、訓練を重ねてきたんだ。昔みたいに後塵を拝するだけ、なんてことにはならないからな?見てろよ?」


「そ、そうですか・・・(毎朝狩りに出かけていると思っていたんですけど・・・違ったんですね・・・)」


ワルツはそんな適当な相槌を打って、表では少しだけ呆れたような苦笑を浮かべた。

しかし、その内心では、狩人が忙しさに巻き込まれてしまった原因を作り出してしまったことに、小さくはない申し訳なさを感じていたようである・・・。


その後、ユキも席を立って、伯爵に対して一礼してから急いで2人を追いかけて・・・。

そしてドアの所までやってきたところで、3人は伯爵に対して振り向くと・・・ワルツは自分たちに対して、静かな視線を向けていた伯爵に対して言った。


「すみません。伯爵。ちょっと片付けをしてきますので、30分ほどお待ちいただけますか?」


「・・・え?」


「・・・やっぱり、長かったですか?なら20分・・・いや、5分で片付けて来ますので、ちょっとだけ待っててください」


『・・・・・・』


急に時間が1/6まで縮まったことに、怪訝な表情をワルツに向けるその場の者たち。

そんな中で、伯爵はすぐに表情を戻して、小さく笑みを浮かべると、口を開いた。


「本来なら、ワルツ様の手を煩わせるなど()ての(ほか)だと心得ております。ですが、お恥ずかしいことに、私たちには・・・どうにもならない相手なのです。なのでどうか、時間のある時で構いませんから、私たちにお力添えをお願い致します・・・」


座っていた椅子から立って、そう言いながら、頭を下げる伯爵。

するとワルツは、謝罪の堂々巡りになるような気がして、そこまで言わないようにしていた言葉を口にし始めた。


「いえ、悪いのは私の方なので、頭を上げてください。ちゃんとした調査もせずに、トラップなんて作るからこんなことになってしまった、というのは分かっているつもりです。責任をもって、全頭(?)殺処分してきますので、ご安心してください」


「えっ・・・あ、はい。お願い致します・・・」


軽々とそう言いのけたワルツに対して、驚きや嬉しさ・・・その他、様々な色の感情が含まれた複雑な表情を見せる伯爵。


そんな彼に対して、ワルツは一礼すると・・・


「さてと。行きましょうか」


その場から一刻も早く立ち去ろうとするかのように、そそくさと扉の方を振り向いて開けると、最初に部屋の外へと歩み出たのであった。


そしてその後を、ワルツと同じように、伯爵と二言三言話してから、狩人とユキが付いて来る。


「で、どうするんだ?」


追いついたタイミングで、ワルツに問いかける狩人。


「そうですね・・・。とりあえず、近くの入口から入ってみましょうか」


「となると・・・あれか。ウチの実家の・・・跡地にあったトンネルの入口」


「・・・えーと・・・なんか、すみません・・・」


「いや、気にするなって。壊したのワルツじゃないんだからな。その代わり、今度建てる家は、もっと豪華な家にするから、予算を回してくれるように、コルテックスに口添えしてくれよ?」


「えぇ・・・。是非そうしてください(血税だけど・・・)」


そう言いながら笑みを浮かべて、頬を掻くワルツ。

こうして3人は、コルテックスたちの後を追う形で、街が立っている丘の頂上付近にある入口から、地下道に入ることになったのである・・・。




なお。

そんな二人の後ろで・・・


「(ミノタウロス、ミノタウロス・・・。何か忘れているような気がするのですが、思い出せません・・・。お肉が美味しい・・・・・・あ、それですかね?)」


ユキが何か大事なことを思い出そうとして、そして別のことを思い出したせいで忘れてしまったのは・・・やはり、お約束、というべきだろうか・・・。

・・・ワルツたちの話が、異様に書きやすいのじゃ・・・。

あれかのう?

やはり、長い間、ワルツの話ばかりを書いておったせいで、頭の中にワルツサーキット(回路)が作られておるとか・・・。

・・・否定は出来ないの。


まぁ、それはいいのじゃ。

明日は・・・まーた、忙しくなる故、今日もさっさとあとがきを書いてしまうのじゃ。


まずは・・・狩人殿の頭の中で思い浮かべた『牛』について。

この異世界における牛というのは・・・現代世界で言うバイソンのような姿をしておるのじゃ。

しかも、現代世界のバイソンよりも2周りほど大きいというおまけ付き(?)で・・・。

狩人殿本人から聞いた話じゃと・・・・・・大きなバイソンの上半身と、ちょこん、と人の下半身が付いておる妙にバランスが不釣り合いな魔物が、彼女の頭の中に浮かんでおったらしいのじゃ。

絵に書くと・・・いや、すごく嫌な図になると思う故、やめておくのじゃ・・・。

・・・え?パンツ?

もちろん、(ふんどし)を付けておるぞ?


で、次なのじゃ。

なぜ、とs・・・・・・いや、やめておくのじゃ。

要するに、どうしてミノタウロスが街にとって危険なのか、という話なのじゃが・・・これは本編で語ろうと思うのじゃ。


というわけで、今日はこのくらいにしておくのじゃ。

・・・・・・しみゅれーたが動かぬ・・・。

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