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7.1-13 どーくつ探検2

目隠しされてここへと連れてこられたなら、相当な高確率で迷宮の中と勘違いしてしまいそうな薄暗い地下道。

その中の所々に設置されていた魔道具の明かりに、体長3mはありそうな大きなミノタウロスが、まるで化け物のごとくユラリと浮かび上がってくる・・・。


そんな彼(彼女?)には、出血などの目立った傷は無かった。

しかし、代わりにその手に握られていた巨大な斧に深い傷ができていたのは・・・先ほどシラヌイが投げた大剣や、勇者との戦闘によって出来たものだろうか。


「・・・思ったこと言っていいですか〜?」


まだ距離は開いていたが、しかしゆっくりと着実に近づいてくるミノタウロスを前に、そんなことを口にするコルテックス。

すると彼女に対して、アトラスは呆れたような表情を浮かべながら言った。


「・・・ダメって言っても、結局、言うんだろ?」


「よく分かってますね〜。流石は私の忠実なお兄様〜」


「ちょっと待て。兄貴が忠実ってどういうことだよ?!っていうか、俺のこと兄貴だと思ってたのかよ!それならもっt」


「うるさいですよ〜?今からレディーが大切なことを言おうとしているんですから、シャラップです!」


『・・・・・・』


そんなコルテックスの横暴な言葉に、言い知れぬ理不尽さを感じて、閉口するアトラス。

周りの者達も、彼と同じような表情を浮かべているところを見ると、皆、同じようなことを感じているのだろう・・・。


一方。

そんな仲間たちの視線をよそに、コルテックスは今もなお近づきつつあったミノタウロスに対して・・・何故か嬉しそうな視線を向けると、頬に手を当てながら、再びその口を開いて言った。


「・・・あのミノタウロス〜。見た感じホルスタイン種に見えるんですけど、あれを乳牛として家畜化することって出来ないんでしょうかね〜?」


『・・・え?』


コルテックスの言葉の意味が半分以上解らなかったためか、眼を点にしながら、固まる仲間たち。


その中で彼女の言葉の意味を、120%以上理解していたアトラスは、コルテックスに対してジト目を向けながら言った。


「・・・牛乳使って、まともなケーキとかチーズとかを作りたい、と思ってんだろ?今度のスイーツコンテストに出すやつか?・・・確かに、この世界には、よく分からん家畜(テンタクルゴート)はいても、乳牛はいないからな」


「よく分かりましたね〜?流石は、忠実な私の(しもべ)ですね〜」


「・・・さっきと比べて、レベルが一気に下がったぞ?っていうか、あんなやつから搾乳できたとして、食べる気になれるか?」


そんなアトラスの言葉に、コルテックスは、『う〜ん・・・』と唸って何かを考え始めると・・・ややあってから、その結論を話し始めた。


「フグ、なまこ、こんにゃくなどなど・・・。色々、クセのある食べ物が世界中に存在すると思いますが、先人たちはみんな、これらを食べてきたんですよ〜?ミノタウロスの牛乳くらい、今更、ど〜ってことないと思いませんか〜?」


「・・・それ、大半が日本でしか食べられてない食べ物だと思うんだが・・・」


「細かい話はどうでも良いんです。食べれるか、食べられないか。あるいは、飲めるか、飲めないか・・・。人が生きている以上、全てはそこに集約されるんですから〜。・・・あ、少し違いましたね〜。正確には、食べれないなら、食べられるようにすればいい・・・でしたね〜」


「・・・それ言ったら、ここまでの前置きが全部意味無くなるだろ・・・」


そう言って、痛そうに頭を抱えるアトラス。

しかし、コルテックスの中では、ミノタウロスは家畜することがすでに決まっていたらしく・・・


「では、捕まえましょうか〜。がんばってくださいね〜?アトラス〜」


ニッコリ、と笑みを浮かべながら、アトラスの首根っこを捕まえて、仲間たちの先頭へと押し出した。


「・・・作ったケーキを最初に食べさせる時は、俺じゃなくて、そこで寝てる勇者とか、剣士に毒味させてからにしろよ?」


「その前に、私自身で味見するつもりなので、問題は無いと思いますけどね〜」


「・・・・・・はぁ、仕方ないな」


そんなコルテックスの横暴にも動じず(?)、アトラスは小さくため息を吐くと、自ら一歩あゆみ出て、あと10mほどの距離にまで接近していたミノタウロスと対峙した。

・・・いや、対峙しようとした。


・・・その直前である。


ドゴォォォォ!!


ミノタウロスが、その下半身に付いた、筋肉の塊のような足で、地面を大きく蹴り飛ばしたのである。

その結果の行き先は・・・もちろん、目の前の少年少女たちであった・・・。


「・・・ふっ・・・馬鹿め・・・!」


まっすぐ自分たちに飛び込んでくる肉塊に、先ほどとは全く異なる獰猛な笑みを浮かべるアトラス。


・・・しかし、仲間の中には、そんな彼よりも、更に獰猛な者がいたのである・・・。


ドゴォォォォ!!


ガブッ!

ガブッ!

ガブッ!

ゴクンッ・・・


急に辺りが真っ暗になり、そしてそんな音だけがトンネルの中に響き渡って・・・。

それから聞こえてきた声は・・・


「うむ・・・。実に、美味であった・・・」


・・・飛竜のものであった。


「えっ・・・ド、ドラゴンちゃん、元の姿に戻っちゃったの?!」


トンネルの中に突如として現れた、巨大なメイド服の後ろ姿に向かって、話しかけるイブ。

飛竜のメイド服にサイズ調整のエンチャントがかかっていたおかげか、彼女が元の大きな姿に戻っても、服が破れるようなことはなかったようだ・・・。


「む?おや・・・。そうみたいだ・・・」


今になって自分の姿に気づいたのか、飛竜は背を向けたままそう答えた。

・・・それから彼女は、その長い首を振り回して、イブの方を向こうとするが・・・


「・・・む・・・むむ!?う、動けぬ?!」


・・・トンネルのサイズとほぼ同じ大きさに戻った飛竜にとっては、前後に進むことは出来ても、振り返ることが出来なくなっていたようだ・・・。


そんな彼女に対して、頬を膨らませて、腰に手を当てたコルテックスが、眉を逆への字にしながら問いかけた。


「飛竜ちゃん?牛はどうなったのですか?とても聞きたくない音が聞こえていたような気がするのですけど〜・・・」


「む?牛・・・?あぁ、ミノタウロスでございますか?奴め、我らに歯向かってきたので、食べてしまいました」


と、ケロッとした様子で、そう口にする飛竜。

どうやら彼女は、先程までアトラスとコルテックスがしていた話を全く聞いていなかったらしい・・・。


そもそも、ミノタウロスを眼にしてからというもの、飛竜はずっと、口から溢れ出てくるよだれを飲み込んでいたのである。

おそらく彼女にとってミノタウロスとは、仲間たちの話が耳に入らないほどに、極上のごちそうだった・・・ということなのだろう・・・。


しかしそれは、少々見方は異なるが、コルテックスも同じだったのである。

その結果・・・


「もう、困りますよ〜?飛竜ちゃん。これはお城に帰ったら、粛清か折檻ですね〜」


獲物を横取りされる形になったコルテックスの逆鱗(?)に触れてしまったようだ。


そんな彼女の発言に・・・


「そ、そうですか・・・。『しゅくせい』や『せっかん』と言う言葉が、我には難しすぎて理解できませぬが、よろしくお願いします」


と、トンネルに詰まったまま、深々と頭を下げる飛竜。


その際、2人(?)のやり取りを後ろから見ていたイブが、顔を真っ青にしたり、その後で真っ赤にしたりしていたのは・・・一体どんな理由があったからなのだろうか・・・。

いやの?

実のところ、コルが部下に対して、粛清したとか、折檻したことは無いのじゃぞ?

・・・これから先でどうなるかは知らぬがの。


でじゃ。

補足・・・は特に無いと思うのじゃ。

・・・あ、そうじゃの。

勇者の扱いについて。

恐らく次話で書くはずじゃが・・・ここに僧侶もヒーラーもいないのじゃ。

その結果・・・おっと。

どうなるかは・・・・・・明日考えるのじゃ!


・・・まぁ、それはよいのじゃ。

今日はちょっとわけあって、早めにあとがきを終わらせてもらうのじゃ。

どうしても、やらねばならぬことがあるからの・・・!

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