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7.1-11 町の観光5

「で、次ですが〜・・・彼の武器を見繕って欲しいのですよ〜」


と言いながら、コルテックスが、今度視線を向けたのは、先ほど自身が吹き飛ばしたアトラスだった。


「あのな?コルテックス。別にここで買わなくても・・・」


・・・もっと物流の良い王都で買えばいいだろうに・・・。

そんな言葉を口にしようとしたアトラスに、コルテックスは首を横に振って言った。


「・・・思い出ですよ〜?」


「・・・・・・そうか。なら仕方ないな」


と自身でも気づかない内に口癖になっている言葉を言いながら、苦笑を浮かべるアトラス。


すると、武具屋の店主が少々不機嫌な様子で、自身の腰に手を当てて言った。


「坊主。ちょっとばっかし、ウチの店を舐めてないか?」


そう言いながら、彼がカウンターの下から『よっこらしょ・・・』と取り出したのは・・・


「・・・・・・え?」


アトラスですら驚くような、巨大な剣であった・・・。


「ほら勇者。注文通りできてるぞ?」


「おぉ、すまん!流石はこの国(いち)の武具屋だぜ!」


そしてカウンターに置かれた剣を軽々と手にして、バランスを確認しつつ、剣の出来栄えを確認する勇者。


「・・・上出来だ」


彼は、注文通りに造られた剣に対して、心底、満足そうな表情を見せた。


そんな勇者の様子を見たコルテックスが、『ふむふむ〜・・・』と、誰かの真似をしながら、そこで勇者に対して少年のような視線を向けていた・・・・・・少年に問いかけた。


「アトラス〜?アトラスも、あんな感じの剣が欲しいですか〜?」


「んー、欲しいというか・・・正直言うと、憧れるよな。こう、なんか・・・勇者っぽくって・・・」


「それは・・・まぁ・・・勇者ですからね〜」


と、コルテックスが、アトラスの言葉にどう返していいものかと悩んでいると・・・


「でも・・・俺には必要ないかもな・・・」


彼は残念そうに首を振りながら、そんなことを口にした。


「・・・ダメですよ〜?アトラス〜。(ひが)んだりしたら〜・・・」


「違げぇよ!近接戦闘をするのに、余計な装備はいらないだろ、って話だよ!」


そう言いながら、胸の前で拳を握りしめるアトラス。


「そうでしたか〜。厨二病でしたか〜」


「・・・・・・」


「・・・冗談ですよ〜」


無言でムスッとし始めたアトラスの姿に、少々やりすぎたと思ったのか、コルテックスはそこでいじるのを止めた。


「つまり・・・長距離用の武器が欲しいんですね〜?」


「・・・まぁ、そういうことだな」


「そうですか〜。じゃあ、もう、ミニガンしか無いじゃないですか〜?・・・仕方ないので、王都の市壁から生えている奴を、一つ持って行ってもいいですよ〜?」


「いや、あんなデカイもんミニガンってサイズじゃねぇだろ・・・。っていうか、例え持てたとしても、電力とかFCSとか弾とか、どうすんだよ?」


「・・・気合ですよ〜?」


「なんでそこで眼を(そむ)けんだよ・・・」


と、2人がそんなやり取りをしていると・・・


「・・・なぁ、勇者。こいつらもしかして・・・見た目は違うが兄弟か?」


近くにいた店主が、勇者に対して問いかけた。


「・・・よく分かったな?」


「・・・俺にも横暴な妹がいるからな・・・」


「・・・なるほどな・・・」


そう言って、生暖かい視線を2人に向ける勇者と店主。


そんな彼らの視線が気になったのか、アトラスはコルテックスとの言い合いを中断すると、改めて店主に問いかけた。


「・・・というわけだから、長距離用の武器とか置いてないか?」


「どういうわけか、よく分からんが・・・飛び道具ならそこの棚だ」


店主はそう言うと、すぐ近くにあった飛び道具コーナーを指さした。

そこには、大量の弓やクロスボウ、あるいは吹き矢といった類の武器が売っていたのだが・・・


アトラスはそのコーナーを一瞥すると・・・しかし、すぐに首を振って、申し訳無さそうに口を開いた。


「すまないが・・・あまり、飛び道具には向いてないんだ・・・(使うとすぐに壊れるだろうからな・・・)」


「何だ?飛び道具を使うのが苦手なのに、飛び道具を探してるのか?・・・ウチでは、頭につける薬はちょっと扱ってねぇな・・・」


「違っ・・・」


と、武器屋が残念そうな視線を向けてくることに対して、思わず眉を顰めるアトラス。

どうやら彼は、その存在そのものが、イジられる運命にあるらしい・・・。


「こう・・・あるだろ?魔法の杖とか・・・」


「ほう?杖を持てば、誰でも魔法を使えると思ってるのか?」


「・・・暗に俺のこと馬鹿にしてるだろ?」


「ふん・・・」


アトラスのことを鼻で笑う店主だったが、一応、商売なので、適当な杖を見せることにしたらしく、カウンターの後ろにあった棚から細長い箱を取り出して、アトラスの前へと置いた。

そう、ルシアの杖を見繕った時のように・・・。


「こちとら武具の商売人だ。客が必要とあらば、どんなもんでも見せてやる。だがな・・・魔法が使えなくて、恥を掻くのはお(めぇ)さんの方だぜ?」


そう言いながら、箱の中から杖を取り出す店主。


「・・・なんか、そう言われると、心配になってきたな・・・」


先程までの威勢はどこ吹く風・・・。

店主から杖を受け取ったアトラスは、急に自信無さげな表情を浮かべた・・・。


「・・・まぁいい。で、試しに魔力を・・・」


・・・と店主が言った瞬間である。


ドゴォォォォン!!


武具屋全体を大きな振動が襲った。


「おまっ、何をした!」


「いや、まだ何もしてないって・・・」


ただ勧められたままに杖を持っただけなのに、濡れ衣を着せられて怒られて・・・。

アトラスは泣きそうな表情を浮かべると、これ以上、難癖を付けられないように、杖をそっと箱の中に戻すのであった・・・。


「なら、今の揺れは一体・・・」


申し訳なさそうにしているアトラスに対して、言い過ぎたか、と後悔しながらそう口にする店主。

すると勇者が、舌打ちしてから、表の方を向いて呟いた。


「・・・またあいつか・・・」


「ん?あいつ?」


「あぁ。地下の通路に住み着いた化け物だ・・・」


「はあ・・・」


それからアトラスが、追加で詳細を問いかけようとすると・・・


「おやおや〜。もう一箇所、観光地を忘れていたみたいですね〜」


ここまで成り行きを静観していたコルテックスが、おもむろに口を開いて話し始めた。


「さっそく行ってみましょうか〜」


「ちょっ、待て!コルテックス・・・様。今行くのは危険だ!」


「どうしてです〜?」


「いや、どうしてって・・・地下道には魔物が住み着いて・・・」


と、先程も同じことを言ったはず、と思いながら、再度、説明を繰り返す勇者。


そんな彼の言葉が、コルテックスにはやはり理解できなかったのか・・・彼女は首をかしげながら、再び同じように問いかけた。


「えっと〜・・・それがどうして、危険、ということになるんですか〜?」


「えっ・・・?いや、それは・・・俺でも倒すのが困難な敵だから、と言えばいいか?」


・・・勇者でも倒せない。

ならば、一体誰が倒せるというのか・・・。

そんな副音声を含ませながら、勇者はそう口にした。


すると・・・


「なら、ちょうど良かったではないですか〜?アトラスに処理してもらえば良いんですよ〜」


コルテックスはニッコリと笑みを浮かべながら、近くにいたアトラスの首根っこを捕まえて、勇者の前に突き出した。


「はぁ?どうして俺が・・・」


「公務員のお仕事ですから〜」


「オフじゃねぇのかよ・・・今・・・」


「人権〜?なんですかそれ〜?」


「そんなこと聞いてねぇし・・・っていうか、俺の人権、無ぇのかよ・・・」


そう言いながらも・・・しかし、魔物退治自体には否やはない様子のアトラス。


そんなやり取りをする2人に、勇者は眼を細めながら、口を開いた。


「・・・本当にやるつもりか?いや、そもそも出来るのか?」


「それは、当たり前ではないですか〜。昔の()()()()()頃とは違うのですからね〜。勇者様も、面子(めんつ)を保ちたかったら、アトラスが動く前に、その化け物とやらを倒したほうがよろしいのではないでしょうか〜?」


「・・・・・・」


すると勇者は眉を顰めると・・・無言のまま、武具屋のカウンターに金貨の山を置いて、代わりに大剣を持つと、足早に店を去っていった・・・。


「・・・一体、なんなんだ?」


その場のやり取りが理解できていなかったのか、そんな言葉を呟いて、頭を傾げる店主。

するとコルテックスは、小さく笑みを浮かべながら、彼に対して言った。


「そうですね〜・・・。それについては、わざわざ説明するよりも、店主さんの方がよく知っておられるのではないでしょうか〜?アトラスだって、こう見えても、お姉さまの弟なのですから〜。でも、もう少しだけ詳しく言うなら〜・・・」


そしてコルテックスは、指輪のような魔道具を使い、虚空から透明なカードを取り出してカウンターに置くと・・・


「アトラスは〜・・・この国、最強の騎士ですよ〜?」


・・・そんなことを口にしたのである。


「最強の騎士って・・・・・・は?」


カウンターに置かれたカードを手に取って・・・そして眼を向けた途端、固まる店主。


「・・・あ、メイド服のお代は、そこに請求してくださいね〜?さてと〜。では、皆さん?さっそく地下探検に行きましょうか〜!」


コルテックスはそう言うと、店主に対してウィンクを見せながら、その場を後にしたのである・・・。




・・・しかし、仲間たち全員が店を後にしたその直後・・・


カランコロン


「あ、すみません。最後の要件を忘れていました〜」


コルテックスは何かを忘れたらしく、一人、武具屋へと戻った。

その際、何故か床に平伏する武具屋の店主・・・。


そんな彼に耳打ちして、コルテックスは何か小さな木箱のようなものを受け取ったようだが・・・その中身が何あるかは、彼女()()の秘密のようだ・・・。

・・・こ、コルの口調を書いておると、頭がおかしくなりそうなのじゃ・・・。

こう、なんというか・・・中毒性があるというか・・・。

しかもこれが数ヶ月続くのじゃろ?

・・・もう無理かもしれぬ・・・。


まぁ、それはいいのじゃ。

今日はいくつか補足すべき点がある故、さっさと補足に入ってしまうのじゃ。


まずは・・・そうじゃのう。

武具屋の店主が、コルのことを見ても、何も反応しなかった点。

つまり、彼はコルの姿・・・言い換えれば、妾の姿を見たことがなかったのじゃ。

以前、妾がこの街にやってきた際、妾は魔力を消費しすぎて宿屋で寝込んでいた故、武具店には立ち寄ってなかったのじゃ。

じゃから、店主は、そもそも妾の姿を知らなかった故、コルのことを見ても何も思わなかったのじゃ。


で、次。

前話でコルが言った6つの要件。

内訳はこんな感じなのじゃ。

1、スク水型アーマー

2、メイド服(イブ嬢)

3、メイド服(飛竜)

4、シラヌイの禁断症状(?)

5、アトラスの武器

6、???


で、問題は6番かのう?

これについては、『彼女()()の秘密』とあるように、コルだけの秘密なのじゃ。

それは・・・ある意味、武具屋の店主も知らぬ、ともいえるかも知れぬのう?

まぁ、詳細については、そのうち触れると思うのじゃ。

・・・次章(半年先)辺りで、の・・・。

というか、既出の話なのじゃがの・・・半年以上前に・・・。


で・・・次が最後の補足なのじゃ。

虚空から出て来た透明なカードと、それを出した魔道具について。

魔道具の方は、かつてワルツも持っていた『アイテムボックス』なのじゃ。

1つ数億ゴールドはするトンデモない魔道具なのじゃが・・・国を裏で牛耳る(?)コルにとっては、調達など、造作も無いことだったようじゃの。


ちなみに、コルがアイテムボックスを持っていることについては、ワルツは知らないのじゃ。

特に隠すつもりは無かったようじゃが・・・別に言うほどのことでもない、と思っているのかも知れぬのう・・・。

流石は姉妹、といったところじゃろうか。


で、透明なカードの話なのじゃ。

・・・端的に言えば、名刺なのじゃ。

ただ、そこに何が書いてあるのかは・・・お察しがじゃがの。

まぁ、強面の武具屋の店主が平伏しておるところを見ると、凄いことが書いてあったのかも知れぬのう・・・。

例えば、武具屋の弱み・・・いや、何でもないのじゃ。


まぁ、今日はこんなところかのう。

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