7.1-07 伯爵からの報告1
町中で、嬉々とした兵士たちとエンカウント(?)し続けているアトラスたちとは対照的に・・・。
同じ街の一角にある、とある古い建物の中では・・・
カチャン・・・
と、紅茶の入ったカップを、静かに陶器製のソーサーにおいて・・・味と香りと、そして雰囲気を楽しむ女性たち2人(+1人)の姿があった。
どうやら彼女たちは、出された紅茶とお菓子を口にしながら、その部屋で誰かを待っているらしい。
「はぁ・・・・・・。やっぱり、我が家・・・ではないが、知れた場所で寛げるというのは、いいものだな・・・」
と口にしたのは、本来ならこの町の一番高い場所に実家があるはずの狩人だった。
本来の彼女の実家・・・つまり伯爵家は、正体不明のリングとの戦闘に巻き込まれて倒壊した後、未だ再建中だったために、住むことが出来るような状態にはなかったのである。
さらには、伯爵自身が、資金や人の供給を町の修復へと最優先に回していたために、自宅の再建は遅れに遅れていたらしい。
なので、伯爵たちは今、このシティーホール・・・要するに、町役場や市役所のような場所の一角に、仮住まいしていたのだ。
とはいえ、この建物は、単に役場というわけではなく、晩餐会などの様々な催し物の会場として、普段から伯爵家の面々によって利用されている場所でもあった。
なので、子どもの頃からこの場所へと出入りしていた狩人にとっては、ある意味、別荘や、親しい近所のお宅、といった位置づけと言えるのかもしれない。
・・・そんな建物の中の空気を、狩人と一緒になって味わうように、彼女の隣りに座っていた女性が口を開く。
「確かに、心が休まりますね・・・」
狩人の言葉に同意するように呟いてから、優美な様子で紅茶を口に運んだのは・・・元魔王のユキであった。
つい先日まで巨大な城に住んでいた彼女にとっては、アンティークな品々で上品に飾り付けられた部屋の中であっても、特に気を張るようなことは無かったようだ。
「そうか。そう言ってもらえて助かるよ。変に気を使ったらどうしようかと思っていたんだ」
「いえいえ。お気づかない無く。今度、機会がありましたら、ぜひ饗しますので、魔王城にいらっしゃってください」
「それは楽しみに・・・・・・ん?ユキ宅・・・?」
と、そこまで口にしてから、何故か眉を顰める狩人。
彼女は恐らく、ユキが住んでいただろう城のことを想像したのだろう・・・。
まぁ、そこまでは置いておいて・・・。
似たような世界で生きてきた2人が、場の雰囲気を楽しんでいるその直ぐ隣では・・・・・・何やら、彼女たちとは違う空気を纏った少女が、肩身狭そうにしながら席に腰掛けていた・・・。
「・・・・・・」ゴクリ
紅茶を飲むための作法が分からず、カップの中身だけホログラムで隠蔽しながら飲んでいたワルツである・・・。
その場にいた狩人やユキは身内だったので、特に気を使う必要はなかったのだが、狩人の親である伯爵たちは別だったためか、ワルツは無駄に緊張していたようだ。
とはいえ、伯爵たちは、未だこの部屋にはやってきていないのだが・・・。
そんな彼女の様子に気づいたのか、おもむろに狩人が話しかける。
「ワルツ?顔色が悪いようだが・・・大丈夫か?」
するとワルツは、いつもの態度とは大きく異なる様子で、手に掻いた汗を太ももで拭うような素振りを見せながら、口を開いた。
「・・・正直、緊張してますね・・・」
『えっ・・・?』
一体、どこに緊張する要素があるのか、全く分からなかったためか、同時に疑問の声を漏らす2人。
そんな彼女たちに対して、ワルツは小さく溜息を吐いてから・・・逆に問いかけた。
「・・・例えばですよ?もしも狩人さんたちが私の創造主と会う・・・なんてことになったら、どうしますか?緊張しません?(・・・もうこの世にはいないですけどね?)」
「あぁ・・・。そう言われれば・・・緊張するかもしれないな(つまり、婚約相手の親に挨拶しに行くようなものか・・・)」
「そうですね・・・(そしてワルツ様を巡る戦いが始まるのですね・・・!)」
それから・・・どういうわけか、覚悟を決めたような表情を浮かべて、少し震えながら、同時にカップを手に取る2人。
その様子はどう見ても、武者震いである・・・。
(絶対、なんか、勘違いしてるでしょ・・・2人とも・・・)
場を包み込む空気の色が、空気の読めないワルツでも分かるほどに変化したことに、彼女が眉を顰めていると・・・
ガチャッ・・・
「おまたせしまして申し訳ありません!ワルツ様」
狩人の父である、妙に腰の低いベルツ伯爵が、木製のドアを開けて、部屋へとやってきた。
「そんなことはないですよ?ねぇ、狩人さん?」
「え?あ、あぁ。ワルツやユキと色々話をしてたから・・・待ってはいませんよ?父様(おい、ワルツ・・・。本当に緊張してるのか?)」
「それは・・・良かった」
ベルツ伯爵は、そう口にすると、安心したような表情を浮かべながら、ワルツたちと長机を挟んで、反対側の椅子へと腰を降ろした。
そんな彼が、切れた息を整えるように深呼吸しているところを見ると・・・もしかすると、ここまで急いで走ってきたのかもしれない。
「えーと・・・もしかして、ものすごく忙しい時に、やって来ちゃいましたか?」
アポ無しで押しかけて・・・そして町のトップである伯爵を呼び出したことに、今更になって、『拙かったかしら・・・』などと思うワルツ。
すると伯爵は、少々疲れたような表情を浮かべながら、彼女の質問に答えた。
「・・・否定はしません。町の再建も然ることながら、色々とありましてね・・・」
と言いながら、窓の景色から見える巨大なエネルギアに視線を向ける伯爵。
「あの・・・なんか、すみません・・・」
「いえ。ワルツ様が気負うことはありませんよ。短時間で、復興のための大金や人員が集められたのは、ワルツ様方の協力があったからこそ、と言う話をリーゼにも聞いていますので・・・」
「いやー、そう言っていただけると助かります・・・」
「・・・おっほん!」
2人がそんなやり取りをしている側で、どこか恥ずかしそうに、わざとらしい咳をする狩人。
それから彼女は、まるで誤魔化すように話題を変えて、自身の隣にいたユキのことを、伯爵に紹介し始めた。
「あの、父様。紹介したい人が・・・」
「・・・えっ?!」
急に神妙な表情で話し始めた娘の様子と、彼女の口から出て来た、ある種の決まり文句のような発言に、思わずたじろいでしまう伯爵。
そんな父親が、何を考えたのか何となく理解できた狩人は、苦笑を浮かべながら、言葉を続けた。
「いえ、友人です。彼女のことなのですが・・・」
「・・・おぉ、そうか。そうだよな・・・」
いきなりフィアンセを紹介されるのか、と思っていたのか、伯爵は『友人』という言葉を聞いて、胸を撫で下ろしたようだ。
・・・しかし、その後で、娘の口から出て来た一言に、彼は混乱の渦中に叩きこまれてしまう。
「彼女、魔王です」
「・・・・・・は?」
そしてユキを見たまま固まってしまう伯爵・・・。
そんな彼に対して、ユキは補足を含めて自己紹介を口にし始めた。
「いえ、違いますよ?狩人様。正確には、元魔王です。えっと・・・お初にお目にかかります、狩人様のお父様。ボクは、ボレアス帝国の元皇帝をしておりました、雪女のユークリッド=E=シリウスと申します。皆からはユキと呼ばれておりますので、是非今後は、同じようにユキと呼んでください」
「・・・・・・」
しかし、固まったまま、返事を返さない伯爵・・・。
そんな彼の脳裏では、『魔王』という言葉が、頭の中で減衰しない木霊のように、ループ再生されているに違いない・・・。
「あれ?おかしいですね・・・」
自分が話し終わったというのに、全く反応しない伯爵に対して、手を振って彼の反応を確かめるユキ。
しかし、それから暫くの間、伯爵の頭の中で整理が付くまでは、まともな反応が返って来ることは無かったのであった・・・。
うむ・・・。
センテンスの順番のせいじゃろうか・・・。
ひどく、文章が読みにくいのじゃ・・・。
というか最近、語彙が少なくなってきておるような気がするのじゃ。
もっと、様々な言葉を使って装飾したいと思っておるのじゃが・・・それをドライブするには、経験値かAPが足りてない気しかしないのじゃ・・・。
とは言っても、語彙が少なくなってきておることについては、それなりに理由があるということも理解しておるつもりなのじゃが・・・難しいのう、その辺のバランスと取るというのは・・・。
それはそうと、最近、文を書くペースが落ちてきておるのじゃ。
理由を一言で言うなら・・・文をたくさん書けばいい、と言う話ではない・・・ということに集約できると思うのじゃが・・・まぁ、それについてはどうでもよいか。
さ、補足してしまうのじゃ。
これは・・・補足とは違うのじゃが、文を書いておって初めて知ったことを記しておくのじゃ。
『仮住まい』
この言葉の用法についてなのじゃ。
これ自体は名詞なのじゃが、動詞として使おうとすると、『〜の仮住まいに住む』、ではなく、『〜に仮住まいする』になるらしいのじゃ。
あれかのう?頭痛が痛い、的なやつ・・・。
・・・おっと、『仮住まい』を見すぎてゲシュタルト崩壊が・・・。
というわけで、次の補足なのじゃ。
この部屋には・・・狩人の母親の伯爵夫人は来ておらぬのじゃ。
彼女がどこにいるかについては、次回、書くのじゃ。
まぁ、わざわざ次回に回すような話でも無いのじゃがの?
次回は、話が大きく動く予定なのじゃ。
例えば、どうして伯爵が忙しそうにしているとか、勇者はどこに行ったのか、とか・・・。
というわけで、その辺の補足に関しては、ここで詳しく書かぬのじゃ。
今日はこんなところかのう?
さーて・・・・・・ここで一つ、大きな問題があるのじゃ・・・。
・・・無性にカップヌードルが食べたいのじゃ・・・。
・・・しかし、夜に食べると体重が・・・。
・・・もう駄目かも知れぬ・・・。
・・・zzz・・・。




