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7.1-01 初めての長旅1

次の日の朝。

視点はミッドエデン・・・の空へと戻って。


「初めての長旅ですよ〜?」


・・・どういうわけか胸に『こるてっくす』と書かれた紺色のスク水を着込んだコルテックスが、エネルギアの艦橋で、普段は見上げることしか無かったその空から、王都を見下ろしながら嬉しそうに言った。


「今頃、(テレサ)たちは、あの城の中で、ヒィヒィ言いながら業務に勤しんでいるんでしょうね〜」


「いや、多分、まだ寝てると思うけどな・・・(昨日も深夜遅くまで、なにか作ってたみたいだしな)」


晴れ渡った空のような表情を浮かべつつ、王城を眺めながら尻尾をブンブンと振っているコルテックスに対して、同じく艦橋の中にいた狩人は、思わずそんなツッコミを口にする。


しかし、コルテックスにとっては、テレサが起きていようが、起きていまいが、大した問題ではなかったのか、尻尾の振る周期を変えること無く、その視線を別の方向へと向けてから再び口を開いた。


「これからあの草原を超えて、川を超えて・・・そして森を超えた先にある、サウスフォートレスへと行くんですね〜(そして海へと〜・・・ふっふっふ〜)」


すると、そんな浮かれた様子のコルテックスに呆れたのか、艦長席に座っていたワルツが、腕を組みながら話しかける。


「・・・貴女、昨日寝てないでしょ?」


スク水を着ていたためか、普段よりも幼く見えたコルテックスの姿が、ワルツにとっては遠足前の子どものようにしか見えなかったらしい・・・。


「流石はお姉さま〜。よく分かりましたね〜?昨日ずっ〜と、この水着を作っていたんですよ〜」


「・・・それもしかして自作なの?」


「もちろんそうですよ〜?以前、お渡ししたことのあるスク水だって、私が作ったものなんですからね〜?」


(あぁ・・・あの、いつ採寸したのか分からないのに、妙にピッタリとフィットしてた水着のことね・・・。私は着なかったけど・・・)


と、以前サウスフォートレス南部の海で、1日だけ休暇を取った際のことを思い出す、水着の着れないワルツ。


それから、彼女が、自身のホログラムのリストの中に、スク水があったかどうかを調べていると、


ガションッ!


「ふわぁー。いい景色かもだし?」

「やはり速いですな・・・」

「陽の光を見るのは、久しぶりな気がします」


艦橋の扉を開けて、2人のメイドと、1人の鍛冶屋がやってきた。

・・・イブ、飛竜、それにシラヌイである。

それぞれ年齢がバラバラのはずだが、身長が似通っているためか、いつの間にか意気投合したらしい。


そんな彼女たちは艦橋の中へ入ってくると、この船に乗り込む際にワルツから受けた説明の通り、浮遊式の座席に座ってシートベルトを装着した。

・・・そして、まるでお決まりのパターンのように、グルグルと回り始める・・・。


「これが物理的に滑らかな回転なのかも?」

「不思議ですよね」

「ふむ・・・これが古代の魔法・・・」


問いながら、何度も何度もグルグルと回り続ける3人・・・。


・・・そして1分ほど経った頃・・・


『・・・うっぷ・・・』


3人揃って、青い顔をし始めた・・・。

・・・ちなみに、ここまでがパターンである。


予想通りぐったりして動かなくなった3人から視線を外して・・・ワルツが艦橋の縁の方へと眼を向けると、そこでは・・・


「ぐもぉぉぉぉ?!」


・・・と、口に猿轡(さるぐつわ)を付けられたアトラスが簀巻にされて、直径80mmほどの鉄の棒に(くく)りつけられていた・・・。

雰囲気としては、今晩のキャンプファイヤの上で焼かれる予定の(いけにえ)・・・といった装いである。


(・・・ご愁傷さま)


恐らく、コルテックスと一緒にいたくなくて、『王城に残る』と言っただろうアトラスのその身に何が起ったのかを想像して、ワルツは心の中で静かに手を合わせるのであった・・・。


するともう一人、艦橋へとやってくる者の姿があった。


ガションッ!


「うっぷ・・・。ここなら少しは景色が見えるでしょうか・・・」


ミッドエデンに来てから、ホムンクルス製造の技術を学ぶために、カタリナとテンポのところへと研修(?)にやって来ていたユキである。


彼女はどういうわけか真っ青な顔をしながら、座席に腰を下ろすと、オフィスチェアよろしく、座ったまま椅子を引きずって、景色が高詳細に映っていた艦橋の壁まで移動してから・・・・・・そこで動かなくなった・・・。

いや、正確には・・・


「うー・・・」


座席に腰掛けたまま、壁に頭を付け、そして苦しそうに(うめ)いているというべきか・・・。

なお、彼女が苦しんでいる原因は・・・船酔いではない。


(・・・ユキ、すっかり、まともな肉付きに戻れたようね・・・)


つい昨日まで、諸事情により、ガリガリな雪女(?)になっていたユキだったが・・・今ではすっかりと元の姿に戻っていたのである。


(流石はコルテックスの『内臓脂肪を増すボタン』ね。抜群の効き目だわ・・・)


燃え盛る炎の中で遊んだせいで、コルテックスから借りていた無線機(王城の備品)を壊してしまい、彼女の逆鱗に触れてしまったユキ。

その結果、ワルツの説得虚しく、女性にとって精神に破滅的なショックを受けるだろうそのボタンを、コルテックスは容赦なく連打し・・・そして、ユキの体重が無事に(?)戻った、というわけである。

そのせいで彼女は、少々ポッコリ(メタボリックな)お腹になってしまい、脂肪によって内臓が圧迫され、常に気分の悪い状況に落ちってしまったようだが・・・まぁ、誰に非があるのかを考えれば、自業自得というやつだろうか・・・。


と、そんなこんなで、艦橋へと集まってきた仲間たち。

あと、船内にいて、ここに来ていないのは、医務室でいつも通りリアの治療の研究を進めているだろうカタリナとテンポの2人だけである。


なお、いつもならワルツと行動を共にしているはずのルシアは、王城でやることがあるらしく、今回は珍しく留守番をすることになっていた。

どういうわけか、小麦粉と油揚げと、そして砂糖を大量に買い込み、昨晩から自室へと引きこもって何かを作っているようだが・・・その詳細は不明である。


ほか、テレサと水竜は、休暇に出かけるコルテックスの代わりに、本来の仕事を・・・。

そして情報部の3人は、いつも通り調ky・・・業務に勤しんでいるのではないだろうか。


というわけで・・・


「さぁ、今日から2日間、ゆっくり休むわよ!」


艦橋に集まった仲間たちにそんな声を掛けるワルツ。


・・・それから彼女は、何故か進行方向から眼を背けて、小さく呟くように言葉を続ける。


「・・・ま、その前に、サウスフォートレスに寄ってくけどね・・・」


その言葉に、首を何度も縦に振る狩人。

そして、グッタリしながらも、手を上げたり唸ったりと、小さく反応する様子を見せるイブたち。


だが・・・


「んなっ?!」


一人承服できなさそうな態度を見せる人物がそこにいた・・・。


「それだと、水着を着てきた意味がないじゃないですか〜!」


・・・海で泳ぐ気満々だったコルテックスである。

彼女は、このまま海に直行して、朝から泳ぐつもりだったようで・・・そのために水着を着込んでいたらしい。


「せっかく上空を通過するんだし、ついでに寄って様子を見ていってもいいかなって、思って・・・(っていうか、寄ってかないと拙い理由が別にあるんだけどさ・・・)」


「休暇・・・休暇なのですよ〜?!」


果たして姉は、『休暇』の意味を知っているのか?、と頭を抱えるコルテックス。


すると、そんな彼女に対して、同行者(?)の最後の一人が、口を開いた。


『もしかして、コル(コルテックス)ちゃん。サウスフォートレスに寄りたくないの?』ずーん


飛行中だったために、姿を見せていなかったエネルギアである・・・。

なお、副音声は、『剣士さんに会いたくないの?』だろうか。


そもそも、この休暇は、コルテックスのためのものではなかった。

元はといえば、剣士がいなくなったことで禁断症状を引き起こしたエネルギアのための旅程だったのである。


しかも、サウスフォートレスは、もはや目前。

・・・にも関わらず、町へと寄ることについてネガティブな態度を見せているコルテックスに対し、エネルギアがどう思ったのかについては・・・言わずとも明らかだろう。


ちなみに。

コルテックスがそんな態度を取ったことには、理由があった。

・・・要するにワルツが、エネルギアの禁断症状のことを彼女に報告していなかったのである・・・。

もしも話していたなら、元来、柔和な思考を持つ(はずの)彼女が、エネルギアの不利になるような発言や行動をするわけがないのだから・・・。


とはいえ、コルテックスの方も、そんな普段とは違うエネルギアの様子に気づかない、ということは無かったようだ。

彼女は大きく表情を変えること無く、一瞬だけ目を細めると、普段と同じ柔和な話し方で、エネルギアに対して言葉をかけた。


「・・・エネ(エネルギア)ちゃん?何があったのか、お姉さまから聞いていないので分かりませんが、サウスフォートレスに寄りたいのでしたら、寄っていただいても私は一向に構いませんよ〜?(水着以外に替えの服を持ってきてないですけどね〜)」


するとその言葉に、顔を背けるだけでなく、完全に身体の向きも後ろを向いてしまうワルツ。

『後ろめたいレベル』を数字で表すなら、5段階中3、といったところだろうか・・・。


『コルちゃん、本当に良いの?』


「はい。もちろんです」


『ありがとう』


コルテックスの言葉に、安堵したような色を含ませた、礼の言葉を口にするエネルギア。

こうして、旅を始めてからおよそ10分で、まさかの2人の大ゲンカ、という最悪な状況は回避されたのである・・・。


とはいえ・・・


「お姉さま〜。ちょっとお話があるんですけど〜?」


・・・ワルツが自ら引き起こした災難については、まだ収束する気配は無さそうだった・・・。

さぁ、始まりましたね〜、なのじゃ。

コルのターン・・・。

本当はそういうわけではないのじゃが、まぁ、25%程度はコルの話になる予定なのじゃ。

で、残りの25%と25%・・・そして25%は、アレとコレとソレなのじゃ。

問題は・・・『アレ』に関して、ちゃんと書けるかが心配なのじゃ。

もう、あれついては『アレ』呼ばわりで十分なのじゃ。

え?何の話か?

それは・・・このままのペースで行くと、実時間であと2ヶ月くらいしたら分かるんじゃなかろうかのう?


で、じゃ。

補足するのじゃ。

ルシア嬢が部屋で何を作っておるのか。

・・・これ、分かる者がいるなら、逆に教えてほしいのじゃ。

油揚げに砂糖。

まぁ、稲荷ずしの材料として考えるなら、別におかしいところはないのじゃ。

問題は・・・小麦粉なのじゃ・・・。

全く何を作っておるのか想像できないのじゃ・・・。


まぁ、それはよいのじゃ。

次なのじゃ。

あ、そうじゃのう。

この話で同行しておる人物の一覧を書いておこうかのう。


・ワルツ

・エネルギア

・狩人

・コル

・アトラス

・シラヌイ

・イブ

・飛竜

・ユキ


それと医務室の・・・


・カタリナ

・テンポ

・(リア)


と言った感じなのじゃ。

今回、カタリナ殿方が出るかどうかはまだ考えておらぬがのう。

まぁ、テンポは出てくるのではなかろうか。


で、このリストを書いておって思い出したのじゃが・・・

本来ワルツは、リアの容体を考えて、エネルギアを動かさないスタンスだったのじゃ。

じゃが、今回に関しては、別に国外に行くわけではない上、戦闘に行くわけでもなかったので、エネルギアを出すことにした・・・という感じなのじゃ。

・・・そのはずだったのじゃ・・・。


さぁ、ネタバレをする前に、お(いとま)しようかのう。

・・・さらばなのじゃ!

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