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7.0-19 別の王都の長い夜7

え?新しい話を書かないのか?

・・・あれは嘘じゃ。

その後で、ストレラとカノープスが王城の執務室へと戻ってくると、そこには彼女たちの帰りを待っていたらしいエルメスの姿があった。


そして開口一番・・・


「・・・・・・え?」


2人が、まるで、そこで拾ってきました、と言わんばかりに担いで連れてきた3人の犬の獣人を見て、エルメスはそんな音を漏らしてから絶句した。


高飛車な(?)お姫様を送り出して、その後で国王()を迎えに出して・・・。

そして2人が戻ってきたら、見知らぬ裸の少女たちを連れてきた挙句、お嬢様のほうは服がボロボロになり、国王の方はここを出発時と服装が違うのである・・・。

途中で一体どんな展開があったらこんなことになるのか、と彼女は頭を悩ませているようだ。


そんなエルメスに対して、今回の一件で、より一層分厚くなった猫の皮をかぶりつつ、背負っていたポチ1を部屋のソファーに下ろしながら、当然のごとくストレラは挨拶を口にする。


「・・・これは議長。こんな夜遅くまでお疲れ様です」


・・・対してエルメスの方には、そんな冗談(?)に対応している余裕は無かったようで、少々慌てた様子で口を開いた。


「こ、この子たち、どうしたんですか?!」


「え?(中庭の)小屋から連れてきただけですよ?」


「・・・・・・」


そんなストレラの返答に、エルメスは顔を青くした。

彼女は、もしかしなくても、ストレラがどこかの家から少女たちを(さら)ってきた、と思っているのだろう・・・。


「・・・ストレラ。この展開で、勘違いしそうな発言をするというのは、どうかと思うが・・・」


と、別のソファーに残りのポチ2とポチ3を下ろして・・・クローゼットから取り出した毛布を3人に掛けながら、そう口にしたのはカノープスである。

そんな彼の指摘にストレラは・・・


「ですが、お父様。それ以外に何と答えればよいのか、私には見当が付きません・・・」


わざとらしく頬に手をおきながら、頭を傾げつつ・・・余裕の無さそうなエルメスに見えない角度で、笑みを浮かべるのであった・・・。




その後、カノープスは、差し障りの無い範囲でエルメスに対して説明を行った。

3人の少女たちは、元はポチであったこと・・・。

そして、ストレラの服がボロボロになってしまった理由と、自身が着替えていた理由も説明する。

・・・ただ、ストレラがカッとなって森と村と人々を消し飛ばした(?)ことと、自身が実はドラゴンだった(?)ことは伏せておくことにしたようだ・・・。


すると、エルメスは、ただでさえ青かった顔色を、更に暗い色へと変えて・・・最終的には土気色にしながら、口を開いた。


「も、申し訳ございません!」


そんな謝罪と共に、彼女は腰を90度に曲げて、頭を下げる。

どうやら、最初に話を持ち込んだ、自身に責任があると思い込んだらしい。


「(・・・もう少し横柄(おうへい)な態度を取ると思ってたんだけど・・・正直、意外ね・・・)」


彼女の姿を見て、ストレラは自身の中にあったエルメスに対する評価を少しだけ修正したようだ。


それから、このまま放っておくと、彼女の口から『辞任』という言葉が出そうな気がしたストレラは、そこまで気負う必要は無いと思ったのか、被っていた猫を一旦どこか心の隅の方へと下ろすと、地の態度を表に出した。


「・・・別に謝らなくてもいいわ。私が好きでやったことだから、あなたが謝るような話じゃないわ?むしろ、お父様に謝らなければならないのは私の方だしね」


そう言って、少しだけ苦笑を浮かべるストレラ。


すると、エルメスは・・・


「あ、そうですか」


顔色を元に戻して、ケロッ、とした表情で顔を上げた・・・。


「ぐっ・・・・・・」


「ん?どうしたんだ、ストレラ」


「・・・何でもないわ・・・」


カノープスの問いかけに、拳を握りしめながら、何かを我慢した様子で首を横に振るストレラ。

一方で、エルメスの方は、カノープスの方を向くと、再び申し訳無さそうに頭を下げて言った。


「申し訳ございません。カノープス様。今後はこのようなことが無いように、虚偽の申請には十分調査を進める所存です・・・」


「ふむ・・・。だが、今回のような出来事は、むしろ、俺が・・・いや俺たちが対処して正解だったように思う。もしも、俺たちの代わりに兵士たちが出向いていたなら、恐らく少なくない犠牲者が出ていたはずだ。・・・だから、エルメスが気にする必要はない。今度、同じような事があった時も、俺かストレラに遠慮無く言うといいさ」


「えっ?!ちょっ・・・私も?!」


「・・・何か問題でもあったか?」


「・・・・・・何でもないわ・・・」


カノープスが使った『俺たち』という言葉に、ウンウンと唸りながら耳を傾けていると、急に話を振られて、頭を抱えるストレラ。

一方、エルメスの方も、『俺かストレラ』と口にしたカノープスの言葉の真意が分からなかったのか、少々眉を顰めた後、適当な理由を付けて、むりやり納得することにしたようだ。




と、話が一段落したところで、話題は再び、3人の少女たちへと戻ってくる。


「・・・それで、この子たち・・・ポチでしたか?彼女たちは、これから、どうなさるおつもりですか?」


完全に気を失った様子で、ソファーに沈む3姉妹(?)に視線を向けながら、そんな疑問の言葉を口にするエルメス。


その問いかけに答えたのは・・・言うまでもなく、彼女たちの飼い主(?)であるストレラだった。


「もちろん、これまで通り、王城の中で飼うつもりだけど・・・・・・あ、でも、人の姿になっちゃったから、『飼う』という言葉を使うのは、良くないかもしれないわね」


彼女はそう言いつつ、3人を養う(?)許可を視線だけでカノープスに求めた。

もちろん、ポチが人間になってしまった原因であるマナを提供した本人が、その問いかけに拒否できるわけもなく・・・


「・・・仕方ない。部屋を用意させよう」


カノープスは渋々といった様子で、許可を出すことを約束した。

・・・とはいえ、変身する前と後での、食事の量や、住む場所の大きさ、それに人からの視線などを考えると、余程、元のケルベロスの姿でいるよりも、人の姿でいるほうがコストが低くなることについて、誰よりも理解しているのは彼自身だったので・・・実のところは否やは全く無かったりする。


すると、彼の言葉を聞いたストレラが、最初の一瞬だけ満面の笑みを浮かべながら口を開いた。


「やったぁ!・・・って言えば良いのかしら・・・。何となくそんな場面じゃないような気がするけど・・・」


「・・・ストレラ様。お言葉かもしれませんが、もう少し素直になったほうがよろしいのでは?このままだと擦れた大人に成長してしまいますよ?」


「うるさいわね・・・」


どう考えても、エルメスが自分のことを子供扱いしているようにしか思えないストレラ。

それから彼女が、エルメスに対してジト目を向けていると、エルメスはそれを無視するかのようにして、カノープスへと言葉を向けた。


「しかし、カノープス様。彼女たちはまだ幼いように見えます(チラッ)。まだ、親が必要な年頃なのではないでしょうか?(チラッ)」


「・・・・・・(うざっ!)」


チラッチラッと、ポチたちではなく、自分に向かって視線を投げてくるエルメスの副音声を読み取って、ストレラは内心で憤慨した。


一方、カノープスは、そのことに気づいていないのか、ポチたちの前で腕を組んで、そして難しそうな表情を浮かべながら、口を開いた。


「・・・そうだな。確かにそうかもしれない・・・」


「・・・・・・(普通、そうよね・・・)」


そんなカノープスの言葉に、ストレラは何も言わなかったが、自身でも気づかいない内に苦い表情を浮かべていたようだ。


すると、彼女の表情に気づいたのか、あるいは元からその後で口にする言葉を決めていたのか、カノープスは少しだけ眼を細めて・・・そして、目尻にシワを作りながら、自身の言葉を続けた。


「だが・・・しばらくストレラに任せてみる、というのも悪くはないのではないかと思う」


「えっ・・・・・・」


正直、カノープスの言葉が意外だったのか、ストレラは『ホント?!』と言いかけて、無理やりに言葉を飲み込んだ。


一方で、


「はっ、(おお)せのままに・・・」


・・・全く異論を唱えること無く、カノープスの言葉に頭を下げて、承服の態度を見せるエルメス。


「・・・・・・(・・・なんだろう・・・この胸の奥から染み出してくる黒いものはっ・・・!)」


そんな彼女の様子に、ストレラは一旦は浮かべつつあった笑みを、急遽、違う表情へと変えて、プルプルと震えながら、心の中の何かと戦い始めたようだ・・・。




と、そんな時・・・


「うっ・・・」


ストレラが最初にソファーに寝かせたポチ1が、意識を取り戻したのか、小さく身体を動かし始める。


「・・・どうやら毒が抜けてきたようだな・・・」


「私が回復魔法を掛けたんだし、当たり前よね・・・」


「あら・・・ストレラ様、魔法が使えたんですね・・・」


「・・・・・・(なんでかしら・・・。魔法が使えることを言ってなかった私が悪いのは分かるんだけど、どうしてこんなにイライラするのかしら・・・)」


と、3人がそんなやり取りをしていると、


パチリ・・・


と、ポチ1が、完全に眼を開いた。


なのでストレラは、さっそくポチ1に対して問いかけてみる。


「・・・ポチ?起きたみたいね?身体の具合はどうかしら?」


するとポチ1は・・・・・・何故かウルウルと涙を貯めると・・・


「う、ウワァンッ!!」


どういうわけか、突然、()き出してしまった・・・。


すると、別のソファーで寝ていたポチ2とポチ3も、その()き声で眼を覚ましたのか、上体を起こすと・・・


「グルルルル!!」


「・・・・・・」ぼーっ


何故か、怒りだしたり・・・気が抜けたような表情を浮かべてみたり・・・。


「あれー・・・なんか、思ってたポチと違う・・・」


そんな、3者3様な彼女たちに、頭を傾げながら怪訝な表情を浮かべるストレラ。

すると・・・


「ウワァンッ!!」


ポチ1が、()きながら急に飛びついてきた。


そんな彼女に続くようにして、


「グルルルル!!」


と、唸りながら、頭から突進してくるポチ2。

むしろ、彼女の場合は、喉を鳴らしていると言うべきか・・・。


ストレラは、そんな2人の様子に、ぼーっとしていたポチ3も突進してくるかと思っていると・・・


「・・・・・・」ぼーっ


・・・ポチ3は我が道を行くポチだったようで、そのままソファーの上で、ぼーっとしているようであった・・・。


というわけで・・・


「ウワァンッ!!」

「グルルルル!!」


120度ほど感情が異なる2人に囲まれたストレラ。


「うーん・・・何でかしら・・・コレジャナイ感がするんだけど」

「まぁ、人生はそんなものだろう」

「がんばってくださいねストレラ様?」

「・・・・・・」イラッ


・・・こうして彼女は、カノープスとエルメスの生暖かい視線と応援を受けながら、3姉妹の親の代わり(?)と同時に・・・そして再び、お嬢様の役割を演じていくことになったのである・・・。

いやのー?

昨日、切れの悪い終わり方をしたから、結局、続きを書くことにしたのじゃ。

おかげで、少々蛇足感が出てしまったのじゃが、妾の駄文の9割は蛇足じゃから、今更問題は無いじゃろう・・・多分の。


で、なのじゃ。

補足なのじゃ。


ポチ、喋れるの?

・・・さぁの。

そのうち、明らかになると思うのじゃ。


なぜポチ1〜3はユキたちのようにA〜Cではないの?

・・・さぁの?

気分なのじゃ。


まぁ、それはどうでもいいとして・・・ちゃんと述べるべきは、ポチの性格についてかのう。

これから徐々に本文の中で取り上げていこうとは思うのじゃが、基本的には、ポチ1が涙もろく、ポチ2が怒りっぽくて(?)、ポチ3が・・・お察しなのじゃ。

今回はユキA〜Fみたいに、みんな似たような性格・・・ではないのじゃ。

とは言っても、ホムンクルス3兄妹ほどは大きく異ならぬがのう。

乞うご期待、というやつなのじゃ。


あとは・・・ストレラとエルメスの仲についてかのう。

これについては、あえてここでは詳しくは言わないでおくのじゃ。

本文でどうにか表現していこうと思っておるからのう。

ただ、これだけは言えるのじゃ。

・・・仲が悪いわけではない・・・と、のう。

さぁ、どんな関係を書いていけるかのう・・・。


ってなところで、今日はお開きにするのじゃ。

これから、コルの話を書いていかねばならぬのじゃが・・・正直、難しいのう・・・。

何が難しいって・・・ある意味、正攻法の話を・・・いや、何でもないのじゃ!

というわけで、さらばなのじゃ!

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