表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
422/3387

7.0-13 別の王都の長い夜1

時間は少しだけ遡る。


カチャ・・・


ルシアによって作られたボレアスの新しい王城よりも、そしてテレサによって魔改造されつつあるミッドエデンの王城よりも、ずっと王城らしい王城の書斎に響き渡る小さなカップの音。

そんなカップの取っ手から、白く細い指を上品に手放して・・・そして、大きな月が照らしだす夜の景色に、長いまつげを揺らしながら眼を向ける・・・。

たったそれだけで絵になるのは、彼女が必死になって死守した『立場』が作り出す空気のためか、あるいは『立場』を死守しようとした彼女そのものから溢れ出る気品のためか・・・。


メルクリオ(暫定)王国の王城の窓から望むことの出来る、斜面に出来た町並みと、その向こう側に広がる大きな湖に向かって、ホムンクルスの一人であるストレラは、『お(ひめ)様』が見せるような優しげな視線を向けていた。


「(あー、姉さんから連絡来ない・・・。イライラするから、このままミッドエデンに宣戦布告しようかしら・・・)」


・・・しかし、内心は(すさ)んでいたようだ。


そんなストレラと比較的長い間一緒に行動を共にしていたためか、ある程度彼女の思考が読めるようになっていたメルクリオ(暫定)国王のカノープスは、書類に通していた眼を上げずに、そのまま声を投げかける。


「・・・変な気は起こさんでくれよ?」


「流石はお父様。私が戦争を起こそうとしてるって、よく分かったわね・・・」


「いや、知らん。不穏な気配を感じただけだ・・・」


「・・・あ、そう」


そして部屋の中に再び訪れる静寂。


ストレラは、そんな静けさが嫌いではないようで、声をかけてきたカノープスには見えない位置で、小さく口元を釣り上げた。

一方でカノープスがこの空気をどのように思っているのか、彼女には分からなかったが、静寂が訪れた後で彼の様子が特に変わっていないところを見ると・・・・・・つまり、そういうことなのだろう。


それから再び、カップを口に運ぶストレラ。

すると、そんな時、


コンコンコン・・・


と、部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。

そんな場の空気を乱す余計な者の登場に、ストレラは少しだけ眉を顰めた。


「・・・入るが良い」


来客に対して、普段よりも少し固い返事を返すカノープス。

そんな彼の態度に、ストレラは何かを思うことがあったようで、今度は目尻に小さくシワを寄せた。


「失礼します」


しかし、来客が女性・・・それも、気に食わない人物だったためか、再び、ストレラの表情は、目に見えて曇天へと突入していく・・・。


「カノープス様、報告書をお持ちいたしました」


そんなストレラの表情に気づくこと無く、書斎へとやってきてそう口にしたのは、スズメのような茶色い羽を持った、この国の国民議会の議長を務めるエルメス・・・つまり、シルビアの母であった。


「あぁ、すまない」


エルメスが持ってきた書類を受け取るカノープス。

それに一通り眼を通した後、彼はそれまでの固い表情を崩して、柔らかい表情を見せた。


「そうか・・・。魔物騒ぎはようやく沈静化したか・・・」


「はい。それもこれも、全てはカノープス様のお陰です」


そう口にして、お互いに安堵したような表情を見せ会う2人。


なお、この『魔物騒ぎ』というのは、ワルツたちがボレアスに赴いていた際、彼女たちがいたビクセン周辺と、ミッドエデンの王都周辺、それにメルクリオの王都であるカロリスを同時に取り囲むような形で、どこからともなく湧いてきた魔物たちによって引き起こされた一連の騒ぎのことである。

ビクセン周辺は、本話で語った通り、ユリアとシルビア、それにエネルギアが片を付け・・・・・・ミッドエデンの王都では、コルテックスによって馬車馬(ばしゃうま)以上に酷使させられたアトラスがどうにか対処した。


そしてここ、メルクリオでは、国王であるカノープスを先頭に、メルクリオ魔導騎士団が()()()対処していたのだが・・・彼らだけでその対処に当たるのは困難を極めたようで、市民を襲おうとしていた魔物たちとの戦いが、今日この日まで続いていたのだ。

・・・なお、カロリスに押し寄せた魔物の内、全体の7割をストレラ一人で片付けた件については、彼女とワルツたちだけの秘密である・・・。


それはさておいて。

そんな事件がようやく収束したとの報告を受けて、カノープスとエルメスは表情を崩したわけだが・・・しかし、ストレラの表情は未だに曇ったままだった。

とはいえ、彼女はエルメスがこの部屋に来ると、何故か大抵の場合において不機嫌になるので、特に何かあったわけではなく、いつも通りの反応なのだが・・・。


そんな彼女の様子に気づいたのか、ストレラに対して、ふと視線を向けるカノープス。

するとストレラは・・・


プイッ


と、腕を組んであさっての方向へと視線を向けた。


「あの・・・どうかしたのですか?」


「いや、何でもない。気にするな」


急に逸れたカノープスの視線を追うようにして、エルメスもそこへ視線を向けると、ストレラは何やら怒ったような表情なのである。

彼女の内心が分からないエルメスの眼には、カノープスとストレラが喧嘩しているように映ったのかもしれない。


一方、カノープスの方は、ストレラの反応がいつも通りのものだったので、特に気にした様子もなく、エルメスに貰った報告書に、『確認した』という国王のサインを書き込み、それを彼女へと返した。


そんな一連のやり取りを横目に見て・・・


「(邪魔ね・・・。早く帰らないかしら・・・)」


と考えながら、不機嫌そうに、空になったカップを唇に当てるストレラ・・・。


しかし、そんな彼女が発する無言の圧力がエルメスに通じるわけもなく・・・そして、無情(?)にも、エルメスがそのまま帰ろうとする気配も見られなかった・・・。


「あ、そういえば、カノープス様?」


彼女は、どこかで聞いたことのある、そんな軽い感じの話しかけ方で、カノープスへと問いかけ始めたのだ。


「少しくらいは休暇を取られた方がよろしいのではないでしょうか?つい先程まで、魔物退治のために働き詰めだったのですから、明日くらいはゆっくりされても、誰も文句は言わないと思いますよ?」


「ふむ・・・。しかし、後処理があるからな・・・。そう簡単には休めんよ」


そう言うとカノープスは、持っていたペンを机において、凝った肩を解すように首を回し始めた。

その様子見て・・・


「・・・あ、そうだ!」


と、エルメスは両手を合わせながら、何かを思い付いた表情を浮かべた。

・・・そして彼女はこう言ったのである。


「では、僭越ながら、私が肩を揉ませていただきます!主人からも受けが良いんですよ?」


「?!」


ガタン!


エルメスがその言葉を口にした瞬間、座っていた椅子を倒しながら、急に立ち上がるストレラ。

その際、机の上のカップも一緒に倒れてしまうが、中身が入っていなかったので、溢れるような事が無かったのは幸いか。


ただ、残念なことに、彼女が顔に貼り付けていた『お嬢様』の気品は、たやすく壊れて剥がれてしまったようだが・・・。


「あれ?どうしたのですか?ストレラ様?」


「あ、あなた、夫子持ちでしょ?そんな、会ってから間もない男性に容易くボディータッチするなんて、一体何を考えてるの?!」


まだ触れたわけではないが、ニコニコしながら肩を揉む仕草をしているエルメスに対して、ストレラは腰に手を当てて眉を顰めながら、彼女へと迫った。


するとエルメスは、小さく肩を落として、申し訳無さそうに口を開いた。


「そうでしたね・・・。カノープス様があまりにも魅力的だったもので・・・」チラッ


「・・・?」


エルメスとストレラが何を言い争っていて、そして自分に向けられた視線にどんな意味が含まれているのかも理解できなかったためか、一人首を傾げるカノープス。


「魅力的って・・・(・・・お父様・・・もしかして鈍感キャラ・・・?)」


予想外にカノープスの反応が薄かったことに、ストレラもすっかり毒気を抜かれて、エルメスに返す言葉を失ってしまったようだ。


そんなストレラの様子を見て、何故か満足気な表情を浮かべたエルメスは・・・


「では、肩を揉む役はストレラ様に任せるとして、私はここで御暇(おいとま)させていただくこととしましょう」


と言いながら、来た時と同じようにして書類を脇に抱えると、素直に部屋から出ていこうとした。

その際、彼女が、ストレラに対して、意味深げにウィンクを投げてきたのは・・・


「ちょっ・・・(は、図ったわね・・・!)」


・・・いわゆる、老婆心、というやつなのだろう。


ガチャッ・・・


そして再び2人切りになるストレラとカノープス。


「・・・どうしたんだ?ストレラ?」


「いえ、何でもない・・・何でもないわ・・・」


「・・・?」


結局カノープスは、彼女たちがどんなやり取りをしていたのか、その副音声までは理解できなかったようだ・・・。

・・・いい加減、分かっておるのじゃ。

登場人物が多すぎて、誰が誰なのか分からなくなってきておると・・・。

なんせ、固有名詞がある者だけで、40人以上おるしのう・・・。


明日、各章ごとに、メンバーリストの更新ができれば良いのじゃが、このストレラたちの話を書くのに、意外に時間がかかっておるから、難しいかも知れぬのじゃ。

それに・・・あのプロジェクトも、まだ進んでおらぬしのう・・・。

メンバー紹介には必須じゃと思うんじゃが、出来ても1-2章が限度なのじゃ。


1章だけで・・・ワルツ、ルシア、狩人・・・

まぁ、この3人ならどうにかなるかのう。

2章目は・・・ワルツ、ルシア、狩人、カタリナ・・・

ん?1人増えておるだけじゃから問題ないかの・・・。

では、3章は・・・ワルツ、ルシア、狩人、カタリナ、テンポ・・・。

・・・やはり1人しか増えておらぬ・・・。

爆発的に増えるのは、4章目以降じゃな。


ということはじゃ。

近いうちに、3章目(新1章目)当たりまでのメンバー紹介の更新は出来る、ということじゃの。

・・・前にも同じことを言っておった気もするのじゃが・・・まぁよいか。

問題は、狩人殿とテンポ殿・・・主らのデザインが・・・いや、何でもないのじゃ。


まぁ、それはよいのじゃ。

さて、今日の文の補足をしてしまうかのう。

まず、殆ど登場せぬからカノープスについて補足しておくのじゃ。

・カノープス殿は100歳超えのおじいちゃ・・・中年竜人なのじゃ

・カノープス殿は100歳を超えても独身なのじゃ

・カノープス殿は寿命が長いためか鈍感なのじゃ

・・・多分の。

あ、ちなみに、下の2つは、今回の話で出て来た設定なのじゃ。

それ以外の設定については・・・駄文5章を見るのじゃな!

・・・駄文過ぎて、読めぬと思うがの・・・。


まぁ、それもさておき、なのじゃ。

次の補足に移るのじゃ?

ストレラが一人で無双した、と言う話。

カノープスたちは知らぬのじゃ。

なんせ、彼女一人で、粛々と作業のように倒しておったからのう。

なお死体は、湖や近くの森に投げ込んだとか・・・。

むしろ、カノープスだけには知られたくなかった、と言うべきかの?


そして、次なのじゃ。

エルメスの老婆心。

まぁ、言うまでもないとは思うのじゃが、妾の文が駄文過ぎて伝わっておらぬ可能性もあるから説明すると・・・つまり、カノープスとストレラが仲直りするような場の機会を提供しようとしたのじゃな。

その辺は流石、シルビアの母、といったところじゃろうか。


おっと。

時間が来てしまったようなのじゃ。

というわけで、今日はこの辺で、なのじゃ。

・・・明日もこの話は続くのじゃ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ