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7.0-12 王都の長い一日12

ずーーーん・・・


灯り(モニター)が消えて真っ暗になっていた艦橋の中で・・・まるで昔話に出てくる化け物のように、身動ぎせずに縮こまっている黒い影・・・。

・・・その正体はもちろん、似たような姿をしているシュバル、ではない。


「エネルギア・・・貴女、大丈夫?」


というワルツの言葉の通り、船体補修用ミリマシンで身体を形作った、エネルギアである・・・。

何か気落ちすることがあったようで、一人、消沈していたらしい。

まぁ、消沈する理由は一つしか無いのだが・・・。


彼女は艦橋の中へとやってきたワルツに気づくと、幽霊のように現実味のない雰囲気を纏いながら、ゆっくりと顔を上げつつ振り向いて、悲しそうに口を開いた。


『ねぇ、お姉ちゃん。涙って、何?』


「・・・ごめんね。エネルギア。別にふざけてるつもりはないけど、私、血も涙も通ってないから、それには答えられないかも・・・」


『はぁ・・・・・・』ずーーーん


そんなワルツの言葉を聞いたエネルギアは、大きく溜息を吐くと、再び両膝に頭を載せて、俯いてしまった。

それは、励ましの言葉を掛けてくれなかったワルツに対して失望した結果なのか、それとも彼女に対して呆れたためなのか・・・。

・・・何れにしてもエネルギアは、ワルツの返答を残念に思ったのだろう。


それはそうと。

どうしてエネルギアは、艦橋の中を青いオーラで包み込んでいたのか・・・。

以前、彼女が落ち込んでいた原因は、勇者パーティーの一人である剣士(ビクトール)の不在だったのだが・・・


「・・・そんなに剣士さんに会いたいの?」


『うん・・・』


と、膝を抱えながら、小さくワルツの問いかけに返答するエネルギア。

どうやら今回も同じ理由から、ということらしい・・・。


彼女が剣士に対して、どれほどの思いを抱いているのかは、ワルツには全く理解できなかったが、そろそろエネルギアの精神が限界に近づいてきていることについては、彼女の眼から見ても明らかだったようだ。


(・・・あれ?もしもこれで、エネルギアが剣士に捨てられるような状況になったら、一体、どうなるのかしら・・・)


と考えつつ、エネルギアに搭載された各種武装について思いを馳せるワルツ。

もしもエネルギアが、振られた(?)腹いせに破綻的な行動に出れば・・・この世界は終焉を迎えてしまうかもしれない・・・。


(まぁ、捨てられるかどうかは別として、とにかくどうにかしないとね・・・)


それからワルツは、どうなるか分からない未来を憂慮するのではなく、これからどうすべきかを考え始めた。

まぁ、選択肢は2つくらいしか無いので、それほど難しい問題ではないだろう。


一つ目は、エネルギアと共に、サウスフォートレスへ行っている剣士の所に直接会いに行く、という選択である。

・・・会えないのなら、会いに行けば良いのだ。


そして二つ目は、逆に剣士たちを呼び戻す、という選択肢。

・・・会えないのなら、会えるようすれば良いのである。

ただこの場合、サウスフォートレスへの支援という形で勇者達を派遣(?)しているので、いきなり彼らを呼び戻すとなると、サウスフォートレスの関係者の間で、何か不都合が出る可能性は否定できないだろう。

彼らが街の復興にどれほどの貢献をしているかについては、ワルツが狩人から報告を受けたわけではないので詳しくは分からなかったが、彼らの勇者パーティーとしての性質を考えるなら・・・恐らく、重要な役割を任せられているか、あるいは多大な貢献をしているのではないだろうか。


・・・という、2つ選択肢の内、一体どっちを採るのか・・・。

まさに、言わずもがな、と言えるだろう。


「・・・仕方ないわね・・・。剣士さんたちに会いに行きましょうか?」


『えっ?!』


ワルツが声を掛けるのとほぼ同時に、ぱぁっ!、と明るい表情を浮かべるエネルギア。

彼女はそれから慌てた様子で・・・


『い、今行くの?!どうしよう、何も準備できてないけど・・・』


と言ってから、なぜか自身の真っ黒な身体をペタペタと触り始めた。

一体、何を準備するというのだろうか・・・。


「いやいや・・・流石に、今じゃないわよ・・・」


と、エネルギアに対して釘を刺すワルツ。

すると・・・


『えっ・・・』


そんな絶望したような声を口から漏らして、エネルギアは再び、黒よりも深い色をした青色を身体にまとい始めた・・・。


「・・・ま、今日は無理だけど、明日ならなんとかなるんじゃない?」


『明日・・・』


一旦は俯きつつあったエネルギアだったが、ワルツの言葉をオウム返しのように口にすると、


『うん。それくらいなら我慢する!』


と、今度こそ、完全に復活したようだ。


今はもう夜なのである。

もう眼と鼻の先に迫って来ていた明日のことを考えて、あと数時間くらいなら・・・と我慢することにしたのだろう。

恐らく彼女は今夜辺り、明日に遠足を控えた小学生のような気分を体験して、寝られなくなってしまうに違いない・・・。

・・・ただし、彼女が寝るかどうかについては、また別の話だが。


「じゃ、私の方も準備しなきゃね・・・」


と言ってその場を立ち去ろうとするワルツ。


するとそんな彼女に対して、エネルギアが言い難そうに問いかけてきた。


『ねぇ、おねえちゃん。お婿さんになるためにはどうすればいいの?』


・・・そんな混沌とした問いかけに、ワルツは少々ぎこちない動きを見せて、頭を抱えて考えてから・・・どうにか無理矢理に答えを口にした。


「・・・ごめん。エネルギア。私、お婿さんになれないし、ならないから、その質問には答えられないわ・・・・・・。でも、ユリアあたりに聞けば分かるかもよ?(サキュバスだけど・・・)」


『そっかぁ。じゃぁ聞いてくる!』


そう言うと、身体を構成していたミリマシンを分解して、黒い粒のような姿へと変わるエネルギア。

そして彼女は、艦橋の通気口へと入り込むと、その姿を完全に消してしまった。

恐らく彼女は、今もなお王城で勤務しているはずのユリアの元へと向かったのだろう・・・。


「あの娘、完全に、私の作ったロボットの身体を使ってないわね・・・」


今もなお、艦橋の片隅でに放置されている銀色の外骨格を持ったロボットに向かって、ワルツは細めた視線を向けてから、小さく溜息を吐くのであった。




・・・というわけで。


『・・・そんなわけだから、明日からサウスフォートレス行くわよ?』


誰もいなくなった艦橋で、無線機に話しかけるワルツ。

宛先は・・・休暇を欲していたコルテックスである。


『そうですか〜。そのまま行ったら、もう返ってこなくていいですよ〜?』


『ちょっ・・・これ、貴女を誘ってるつもりなんだけど・・・』


と、もう少しで国から追い出されてしまいそうだったので、ワルツが急いで補足を口にすると・・・


『そうですか〜。では、私が暇人だと思っているのでしょうね〜』


・・・コルテックスは棘だらけの言葉を投げ返してきた。

なお、彼女の言葉の副音声を解説すると・・・『参加不可能なスケジュールを押し付けるというのは、つまり最初から、私のことを誘う気は無かった、ということですね〜?』、となるだろうか。


そんな彼女の言葉責めを受けて、全くに何も考えずに誘いの言葉を口にしたことをワルツが後悔し始めていると、コルテックスは小さく、クスッ、と笑みを漏らしてから、無線機の向こう側で話し始めた。


『冗談ですよ〜?朝の段階で、例の判決(島流し)を出してから準備は進めていたので、明日と明後日くらいなら時間はあります。むしろ、今日、お姉さまが誘ってくれなければ、テンポお姉さまと一緒に魔力蓄音機を開発して、お姉さまの部屋に呪詛トラップを仕掛けようかと思っていたのですけど、その必要は無くなったみたいですね〜』


『・・・なんか、一人で自分の部屋に帰りたくないわ・・・(すでに何かが仕掛けられてる気がして・・・)』


と、もう掃除するために戻ることすら止めようか、と悩むワルツ。

その際、無線から何やら『チッ・・・』というノイズのような音が聞こえてきたり、何やら複数の電波が重畳(ちょうじょう)して、聞こえる信号になっていなかったりしたようだが・・・誰か同時に無線機を操作しようとしたのだろうか・・・。


『じゃぁ、そういうわけだから、明日の朝からサウスフォートレスに飛ぶわよ?』


『分かりました〜』


と、嬉しそうな声を返すコルテックス。


そんなこんなで。

ワルツは、エネルギアとコルテックスの鬱憤(?)を晴らすために、再び王都を離れて、サウスフォートレスへと向かうことにしたのである・・・。

ふぅ。

1日が終わったのじゃ。

・・・ただし、王都の1日が、の。


問題はあれじゃの。

7.1章にどのタイミングで切り替えるか・・・。

このままじゃと、長くとも7.0-15話くらいで、フラグ回収は終わってしまうのじゃ。

まぁ、7.0章くらいは短くとも良いかのう。


さて。

補足するのじゃ。

・・・っていっても、今日は1箇所だけなのじゃ。

どの部分か?

・・・無線機の電波が重畳した部分、なのじゃ。

それを説明する前に、これだけは知っておいて欲しいのじゃ。

・・・妾たちが使う無線機にチャンネルは無いのじゃ!

要するに、誰かが喋ると、全て駄々漏れ、ということじゃの。


で、じゃ。

まず、『チッ・・・』については詳しく言わなくとも良いじゃろ?

別にノイズではないのじゃぞ?

誰かが舌を鳴らしたのじゃ。

そう、誰かが、のう。


まぁ、それは良いのじゃ。

問題は、ワルツが『()()()自分の部屋に帰りたくない』といったことに対する、皆の反応なのじゃ。

少なくともあの瞬間、妾を含めて、5人分の電波が空中でこりじょん(衝突)しておったのじゃ。

一体何を言おうとしておったのか・・・。

コレについても、言わずもがな、なのじゃ。

言わせるな!恥ずかしい・・・なのじゃ!


おや。

もう補足が終わってしまったのじゃ。

・・・今日はこんなところかのう。


次回は・・・

『廃墟の町サウスフォートレス。瓦礫の撤去はメイドの仕事かもだし?!』

・・・という話はせぬのじゃぞ?

その前に、もう一つ、フラグを回収せねばならぬのじゃ!

・・・あ。

それとは別にもう一つ忘れておったのじゃ・・・。

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