7.0-10 王都の長い一日10
まだ文の間が痩せておる故、後で言い回しを修正するかも知れぬ・・・。
その日の昼過ぎ。
突然だが・・・今日は国教会のミサの日らしい・・・。
まぁ、今日の朝方、ワルツたちが『裁判ごっこ』をしていた際に、国教会の教皇が喜々として(?)ミサの準備をしようとしていたことを間接的に紹介していたので、完全に唐突な話とは言えないだろうか。
・・・それはさておいて。
この国の教会で行われるミサとは、現代世界の某一神教で行われているようなミサとは大きく異なっている。
一体どの辺が違うかについて話し始めると、キリが無くなるので省略するが・・・神として崇めている対象が、一人の神ではなく、百科事典のような聖書の1ページ目から数十ページに渡って続く『神さまリスト』に名を連ねる数十人もの『神たち』である、ということを言えば、全く違うということが分かってもらえるだろうか。
恐らく、現代世界で行われるミサのようなことをすれば、きっとお腹の中が『体と血』で、すぐにタプタプになってしまうことだろう。
では、どのようなことをしていたのか。
それは、この世界の『人間対魔族』という関係、それと『複数の神たち』の存在、この2つを考えれば、自ずと見えてくるのではないだろうか。
・・・要するに、『魔族、滅びろっ!』と、神たちに対して願う集会である
まぁ、それは極論なので、身も蓋も無い言い方ではあるのだが、回りくどくオブラートに包んだ言葉で説明するくらいなら、ストレートに表現してしまったほうが分かりやすいのではないだろうか。
・・・というわけで、
「ママぁ〜?ミサが始まっちゃうよ〜?」
「あらあら、そんなに急がなくても時間は十分あるわよ?」
「ふぉっふぉっふぉ・・・。ワシが若かった頃は(以下略)」
と、毎週の習慣のように、いつも通りに教会へと集まる敬虔な王都民たち。
そんなこんなでミサが始める時間がやって来た頃。
大聖堂に集まった人々の前で、一人の老人が壇上へと上がった。
・・・ミッドエデン国教会教皇である。
顎には立派な白いヒゲを蓄え、なめらかな曲面を描く頭には、その服装と同じような真っ白いシルクに金色の刺繍が施された巨大なミトラを載せ、そして手には古めかしい複雑な形状をした大きな杖が握られていた。
その姿は、まるでどこか映画に出てきそうな伝説の魔法使い、といった装いである。
「ふむ・・・・・・」
年齢そぐわず、腰を曲げた様子のない獣人の教皇は、壇上から見える教徒たちに、どこか満足したような声を口から漏らすと、ゆっくりと話し始めた。
「皆には、残念な知らせをせねばならぬ・・・・」
いつも柔和な笑みを浮かべ、国民からも人気のあった教皇は・・・しかしこの日は普段とは違い、どこか哀愁のような雰囲気を漂わせていた。
その空気に王都民たちも気づいたのか、皆一斉に静まり返って、教皇の言葉に耳を傾け始める。
「このミサが何のために行われておるのか・・・賢明な皆は承知しておるはずじゃから、全てを言う必要は無いじゃろう。しかしそれでも、掻い摘んで言うなら・・・この国を守るために犠牲になった者たちが、神々の御許にその魂が無事に召されるようにとに祈りを捧げ、そして我らと魔族との争いが早々に終結せんことを同時に願う・・・。そのための儀式を行うのがこのミサの目的で、そして我ら国教会はその場と機会を皆に提供するために存在しておるのじゃ」
普段の決まり文句のような講説の詞とは違ったためか、あるいはこの後に教皇から発せられる言葉が予想できたのか・・・市民たちの間に動揺が走った。
急に騒がしくなった彼らに対して、教皇は右手を掲げると・・・皆、その様子に気づいたのか、再び場は静かになる。
それから教皇は、いつも通りの笑みを絶やさずも、しかし残念そうに、言葉を口にした。
「・・・今日で、ミサは終えることにする」
ざわざわざわ・・・
まるで堰を切ったように、教会の中を喧騒が埋め尽くす。
「どうして急に・・・」
「これからどうすれば・・・」
「ワシの若かりし頃は一体どうなってしまうのじゃ・・・」
と口々に、戸惑いの言葉を口にする市民たち。
・・・そんなざわめきの中、一人の少女の声が、教会内に響き渡った。
「ねぇ、教皇様?どうしてミサを止めちゃうの?」
その声は不思議と喧騒の中でも市民たちの耳に届き・・・そして皆も、同じ疑問を持っていたためか、教会の中には再び静けさが戻ってきた。
「・・・全ては、皆のためを思ってのことじゃ。市中で噂になっておる通り、この国は今や魔神が支配しつつあるのじゃ。ゆえに、このままミサを続けておったのでは、いつ皆に魔神から眼を付けられるか分からぬという懸念があってのう・・・。じゃから、皆の安全を第一に考えた結果、苦渋の選択じゃったが、魔神に眼をつけられる前に、今日をもってミサは止めることにしたのじゃ」
そう言ってから、教皇は悲しそうに眼を瞑って俯いた。
すると、再び、少女の声が聞こえてくる。
「でも、魔神様、そんなに細かいこと気にしなさそうだよ?この前だって、大通りの屋台で、嬉しそうに焼き鳥買って・・・それから地面に落としちゃったやつを、3秒ルールとか言って食べて、お腹壊してたみたいだし・・・」
「・・・・・・」
そんな少女の声に・・・どういうわけか怪訝な表情を浮かべる教皇。
それから慌てたような素振りを見せた後、言葉を返し始めた。
「う、うむ・・・。・・・じゃが、それだけでは、市民たちの安全を確保できておるとは言えぬのじゃ。何よりも我らは市民の安心と安全、それに幸せを一番に考えることを仕事にしておるからのう。じゃから、『かもしれない』では行動できぬのじゃ。どうか分かってはくれぬか?」
「そっかぁ・・・。そうだよね・・・」
と、納得したような色を見せる少女の声。
・・・しかし、どうやら、本当に納得したわけではなかったようだ。
「・・・仕方ないね。じゃぁ、私が勇者になるって言ったら、お姉ちゃんのこと、神さまの一覧に加えてくれる?」
そう言って・・・
バタン!
教会の扉を開けて入ってきたのは・・・軽甲冑を着込んで、腰に大きな杖を帯刀(?)した真っ白なオーラを纏う、狐の獣人の少女、ルシアだった。
その瞬間、教会の中にいた者たちの視線が、一斉に彼女の方を向く。
・・・が、ルシアには、以前見せていたような、迷いや戸惑いの様子は全く見て取ることができず、その表情には不敵な笑みだけが浮かんでいた。
どうやら彼女は、相当な覚悟を持って、ここへとやってきたらしい。
すると教皇はその姿を見ると、どこか呆れたような表情を見せながらも、返事を口にし始めた。
「・・・勇者候補ルシアよ。主が勇者になっても、魔神が聖書に名を連ねることはできないのじゃ。新しい神を指定できるのは、既存の神々だけ・・・。ゆえに、主がこの国の勇者になることを承諾したとしても、魔神は魔神にしかなれぬのじゃ・・・」
「むー・・・」
教皇の言葉に、腰に手を当てながら頬を膨らませるルシア。
おそらく今、彼女の心の中では、『この、分からず屋!』と叫んでいるに違いない・・・。
そんな2人のやり取りに市民たちがどんな反応をしていたのかというと・・・突然のルシアの登場にあっけにとられていた・・・と思いきや、どうやら、教皇と勇者候補のやり取りに興味津々といった者が大半のようであった。
と、そんな時。
バタン!
と再び教会のドアが開き・・・
「こ、この大事な日に遅刻してもうた!」
と、高齢の老人(アザラシの獣人)が現れた・・・。
『・・・あ』
そんな老人の姿を見て、固まる教皇とルシア。
「・・・ん?」
やってきた老人の方も、事情が飲み込めないのか、固まっているようだ。
その中で、最初に言葉を口にしたのは、教皇の姿をした・・・何者かだった。
「なんじゃ、ワルツのやつ、教皇を逃がしておるではないか・・・」
「(・・・テレサちゃん・・・地が出てるよ!)」
そんな教皇・・・の姿に化けたテレサに対して、小声で注意するルシア。
・・・そして事態は、当然のごとく、更に混沌とした方向へと進み始める。
「あー、教皇!逃げ出したわね!」
黒髪の狐の獣人バージョンに化けたワルツ本人が開け放たれていた扉の向こう側から現れたのだ。
「ひ、ひぃ?!わ、ワルツ様!?ど、どうかお見逃し下さいませ!儂はここで皆に、ワルツ様を一神教の主神として・・・いや、神を超えた存在として崇めるということを伝道せねばならないのです!」
「だれか、この教皇を止めて・・・」
・・・どうやら朝の段階でワルツが教皇を脅した(?)際、彼はワルツ自身にも手が付けられない状態の狂信者に変わってしまったらしい・・・。
と、ワルツが、暴走する教皇にあたふたしていると、ようやく彼女は、教会の中にいた2人の姿に気づいたようだ。
「・・・あれ?ルシアとテレサ、ここで何やってんの?」
『・・・・・・』
そんなワルツの問いかけに、眼を伏せたり、あさっての方向を向いたりする2人。
しかし、2人の服装を見て、ワルツは事態を把握した。
「・・・まーた、余計なことしようとしてたでしょ?」
「お、お姉ちゃんの名誉を守ろうとしてただけだもん!」
「そ、そうなのじゃ。別に、ワルツの真似をしてみたかったとか・・・では無いんじゃぞ?」
「・・・テレサちゃん、それ言っちゃダメじゃん・・・」
「あ・・・」
そして心を乱してしまったためか、遂には変身魔法も解けて、元の姿に戻るテレサ。
そんな2人の姿を見て・・・
ざわざわざわ・・・
再び教会の中が喧騒に包まれた。
すると・・・
「うはっ?!(こ、こんなに人いたんだ・・・)」
ワルツは、ここに来てようやく、周りにいた多くの人々が、皆、自分を見ていることに気づいたようだ。
「・・・おっと、こうしてはいられないわね。二人とも帰るわよ!用事があるんだから。ほらルシア、稲荷寿司買いに行くわよ!」
「?!」
「ワルツよ・・・それ、用事ではないのじゃ・・・」
と、目を輝かせるルシアと、呆れた様子を見せるテレサ。
それからワルツは2人の手を掴むと・・・
「あー、皆さん、すみません!ご迷惑をお掛けしまた。ミサはこのまま続けてください。あ、でも、そこの教皇の話はあまり聞かないでいただけると助かります。・・・それでは!」
という言葉を残して、
ギュン!
その場を去っていくワルツ、他2名。
結果として、教皇役を失ってしまったその日のミサは、当然のように打ち切りになってしまったのだった。
・・・この数日後、国教会の組織内部での話し合いによって、ミサは存続することに決まったようだ。
確かに、ワルツという魔神の存在が、魔族たちと敵対する教会にとって脅威となるのは、論理的に考えて無視できない事実だったようだが・・・しかし、彼女のことは、これまでの実績等を考慮して、例外的に脅威ではないと認められることになったのだという。
それは、教皇が誘拐された挙句、短い時間だったが軟禁されたことにも関係があって、他の枢機卿や司祭たちが『いつ自分の身が同じ目に遭うか・・・』と危惧したことが本当の原因であるとか無いとか・・・。
なお、本来なら辞任か死去でしか交代できないはずの教皇が、会議の後で、強制的に引退させられたようだが・・・それがこの件と何か関係があるのかは不明である・・・。
・・・それと。
この日を境に、ミサの日に教会を訪れる者たちが急激に増えた、ということだけは言っておかなくてはならないだろう。
果たしてどういった市民感情が働いたのかは詳しく分からないが、ワルツ(?)たちが荒らしたミサがその原因であることは間違いないようである・・・。
修正の過程で燃え尽きた・・・わけではないのじゃ。
妾には やらねばならぬ ことがある
なのじゃ。
あれ?575にスペースは数えたかのう・・・。
まぁよいか。
でじゃ。
まずは言い訳を言っておこうかのう・・・。
・・・駄文では無いのじゃぞ?
一応これもフラグ回収の一端なのじゃ。
じゃが、ここまで書くつもりは無かったんじゃがのう。
正直、文量が多すぎて、辛いのじゃ・・・。
さて。
補足を・・・と思ったんじゃが、これから、ちと用事があるゆえ、今日はあとがきをここまでにしておくのじゃ。
ご了承くださいなのじゃ!
・・・質問に関しては承りますなのじゃ!




