7.0-04 王都の長い一日4
それからワルツが、シラヌイの部屋の中にあった巨大な折り鶴(?)を、一時的に地下大工房の居住区入り口の横に移動させてから、彼女と別れた後。
ワルツはエレベータから下りてきた人物と、不意に鉢合わせする。
「・・・ん?おお、ワルツじゃないか!」
「あ、狩人さん。久しぶりですね。・・・なんか昨日も会ったような気もしますけど・・・」
と言いながら、昨日の昼食と夕食の際、妙に贅沢な肉料理を振舞ってきた狩人のことを思い出すワルツ。
「そりゃ、3日も会ってないと、禁断sy・・・久しぶりに感じても仕方ないだろ?私もそうだったからな」
失われてしまったユキの身体を直すために、一度帰って来たワルツたちが、ミッドエデンを離れてから再び返ってくるまで3日間弱。
ワルツとしては、2ヶ月ほど外出していたような気がしていたようだが・・・決してそんなことはないのである。
それだけ、忙しい3日間を送っていた、ということなのだろう・・・。
「ところで・・・狩人さんが、こんな時間にココに来るって、ずいぶんと珍しいことなんじゃないですか?」
「いや、そうでもないけどな。朝食を届けに来たり、仲間たちを起こしたりしに来るのは、いつも大体このくらいの時間だからな。・・・たしかに、いつもに比べれば、すこし早いかもしれないけどな」
そう言いながら、苦笑を浮かべる狩人。
その様子は・・・まるで、どこか浮き足立っている、といった様子だろうか。
「・・・何か嬉しい事でもあったんですか?」
ワルツがそう問いかけると、狩人は『よくぞ聞いてくれた!』といった様子で、仁王立ちしながら、腕を組んで、尻尾をくねらせた。
「うん。最近、サウスフォートレスの再建が進んでいるんだが、ようやく国からの補助金がマトモに回るようになってきたみたいでな。やっぱり、家族や知り合いの生活に余裕が出て来たっていう言う話を聞くと、こちらとしても随分心が楽になるんだよ。私が、直接、街の様子を見れるわけでもないしな」
「・・・なら、今度サウスフォートレスまで、旅行に行きます?」
「えっ・・・」
ワルツのそんな言葉が意外だったのか、眼を点にして固まる狩人。
「・・・いや、それはもちろん・・・ワルツと一緒に行く旅行だよな?!私一人で歩いて行け、とか言わないよな?」
「いや、そんな鬼みたいなこと・・・言いませんよ」
「・・・よしっ!」
ワルツからの返答が、狩人にとって望ましいものだったためか、彼女のテンションはこれまで見せたことのないほどに、遙かなる高みへと昇華していった。
イブやルシアでもないのに、千切れんばかりに尻尾を振っているのが、その証拠と言えるだろう。
「それで・・・狩人さんは、ここにみんなを起こしに来た、っていうことで良いんですか?」
「おっと。そうそう、嬉しすぎて忘れるところだった」
狩人はそう言うと、一枚の紙をワルツに差し出した。
「これ、今度、王都の中で行われるイベントらしいんだが・・・」
「・・・スイーツフェス?」
「・・・随分、今風にショートカットして言うんだな・・・(私も見習おうか・・・)」
なお、正確には、『王都ギルド連合主催 第1回スイーツフェスティバル』である。
「よさげなイベントですね。参加者が作ったスイーツ食べ放題とか・・・」
そのイベント自体には否やはない様子のワルツ。
むしろ、彼女自身としては、年齢に相応しく、スイーツに目が無かったので、大賛成だったりする。
「それで、このすいーつふぇす?なんだが、王都市民なら誰が参加してもいいみたいなんだ」
「えーと・・・つまり、狩人さんが参加する、ということですか?」
「んー、そうだな。それはそれで間違いではないんが・・・」
そう言ってから狩人は・・・何故か顔を赤らめて、モジモジと指を組み合わせ始めた。
そんな彼女の様子に、何か嫌な予感を感じ始めるワルツだったが・・・今の状況から逃げられるはずもなく、
「・・・わ、ワルツ。私と一緒にこの祭りに参加してみないか?!」
・・・狩人に、そんな言葉を掛けられてしまった。
「・・・もちろん、チーム戦ですよね?」
「え?いや、違うぞ?」
「・・・・・・」
狩人が容赦なく、自分の黒歴史を穿り返してくるような気がして、難しい表情を浮かべるワルツ。
そんなワルツに、狩人は思いがけない言葉を口にした。
「・・・ルシアも出るって言ってたな・・・」
「え?!ちょっ?!」
「ん?何かあったか?」
「うっ・・・いや、別に何でもないです・・・」
・・・どうやら、このスイーツフェスでは、ロシアンルーレットならぬ、ルシアンルーレットなるものが展開されるようだ。
それも、全弾ハズレ無しの・・・。
「でも、何でルシア・・・急にそんな人目の多い所に出る、なんて言い出したんでしょうか?」
「あぁ、それなんだが・・・ここを見てくれ」
と言って、ワルツが手に持っていたチラシの左下を指さす狩人。
そこには・・・
「・・・『優勝者には市内共通で使える食品券1年分が授与』・・・」
という文言が書いてあった。
「・・・稲荷寿司ね」
「だろうな。ルシアのことだから、恐らく、1年間ずっと、稲荷ずしを食べ続けるんだろ」
勇者騒ぎがあってから、人の眼につかないように、ボレアスへと使者として赴いていたルシアだったが、目の前に魅力的な餌をちらつかされて、いてもたってもいられなくなってしまったらしい・・・。
(・・・・・・ま、私が反対するっていうのも筋違いよね・・・)
彼女の行動に反対して、自由な選択を阻害するのはいかがななものか、と思ったワルツ。
イベントに出れば目立ってしまうことは避けられないのだが、ルシアがそれでいいというなら、ワルツには反対できる理由はなかったのである。
むしろ、これからの彼女のことを考えるなら、積極的に表に出て行くべきと言えるだろう。
ワルツがそんなことを考えていると、狩人は何かを思い出したかのように口を開いた。
「あぁ・・・そういえば他に、テレサたちも出るって言ってたな。議長・・・というか、元王姫として、参加を要請されたらしいぞ?」
「そうですか。・・・そういえば、テレサって、何かスイーツ作れるんですかね?」
「どうだろうな・・・。少なくとも、私は見たことはないな」
「ですよね・・・」
「あと他にも・・・」
「って、まだいるんですか?!」
結局、その後、仲間の名前の大半が狩人の口から飛び出して来るが・・・その中にカタリナの名前が無かったのは不幸中の幸いだろうか・・・。
「それで・・・もちろんワルツも、参加してくれるよな?」
と、期待するような視線をワルツに向けてくる狩人。
そんな彼女の視線が、正直なところワルツには痛すぎたが・・・無下に拒否することができなかったためか、彼女は渋々といった様子で、口を開いた。
「・・・正直、乗り気はしませんね・・・。最近、私の名前が、魔神としてこの町の隅々まで轟いているようなので・・・」
と、本心を口にするワルツ。
「なに、気にするな。何かあっても私たちがついてるからな?」
「・・・・・・」
優しく諭すようにそう口にする狩人に対して、ワルツは逃げる口実を考えるも・・・しかし、外堀は随分と埋められており、逃げ道は限られているようである。
とはいえ、彼女の心の中には、なにも『逃げたい』『参加したくない』という考えだけが渦巻いているわけではなかった。
(皆が参加するなら・・・意外と悪くないかもね・・・)
神さまに間違えられることが嫌で、そして人前に出ることを潔しとしないワルツではあったが、面白そうなイベントを無視したり、潰してしまうような性格ではないのである。
それも、心許せる仲間たちと参加できるとなれば・・・彼女にとっては、特別な意味を持つのだから・・・。
「・・・狩人さんも、ルシアも・・・他のみんなも参加するんですよね?」
「あぁ。もちろんさ?」
「なら・・・私も一緒に参加してみようかしら?」
「ワルツ・・・」
短く名前を呟いてから、ガシッ!、とワルツの手を取る狩人。
「・・・共に優勝を目指そう!」
「えーと・・・・・・は、はい」
不本意というべきか、本意というべきか・・・。
こうしてワルツは、数日後に開催されることになった、通称スイーツフェスに参加することになったのである・・・。
だぶーん・・・。
・・・駄文じゃよ?
なかなかストーリーが進まないのは、余計な話をメインストーリーで展開しているからじゃということは、重々承知しておるのじゃ。
・・・じゃがの?
そこにテキストボックスがあるというのに、駄文を叩きこまんで、一体何を叩きこめばいいというのじゃ?!
はぁ・・・・・・駄文ではない普通の文を書けるようになりたいのう・・・。
まぁ、いいのじゃ。
でじゃ。
補足するかのう。
・・・おっと、今日も補足リストには何も書かれておらんかったのじゃ。
つまりこれは、あとがきをさっさと終わらせて、次の話を書けという天からのお達し、ということかもしれぬのう。
・・・確かに、ここ最近。
修正ばかりで、新しい話を書いておらんかったから、ストックが無くなっておるのじゃ。
ここいらで再びストックを作っておくべかもしれぬのう。
・・・というわけでー、なのじゃ。
今日はここでお開きにするのじゃ!




