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6後後後-24 ついの迷宮8

ワルツたちが、どういうわけか自分のことを指して、女の子だの何だのと、訳の分からない言ってくることに対して、飛竜は怪訝な()()()()()()()()()口を開いた。


「む?一体、何の話を・・・・・・?!」


・・・そう言ってから彼女(?)は驚いた。

視界の縁にチラッと見えた自身の腕が、いつも見慣れたウロコだらけの腕ではなく、目の前の少女たちと同じような色と、形と、大きさをした、柔らかそうな腕だったからである。


「わ、ワルツ様!大変でございます!我から人の手が生えて・・・・・・?!」


・・・そして飛竜は再び驚いた。

立ち上がろうとした際に、太ももに置いた手から戻ってきた感触が、どう考えても、今までの硬い自分の足の感覚とはまるで異なっていたからである。

そんな違和感を感じて、彼女が自身の足へと視線を向けると・・・・・・そこには、寒かったためか、少々白くなっていた人の足が生えていた・・・。


「ぬあ?!わ、ワルツ様!あ、足も大変なことに・・・・・・?!」


・・・そして飛竜は・・・


「もう、いいでしょ?3回も繰り返さなくても・・・」


このままだと無限ループに陥りそうだったので、飛竜に対して割り込みをかけるワルツ。


「要するに、今のあなたは、()()人間ってことよ?」


「んな?!ほ、本当ですか?!」


そして飛竜は、『ふぉぉぉぉ・・・』と言いながら、手の届く範囲で、全身を弄り始めたのである・・・。


「・・・水竜の時も、こんな感じだったのかしら・・・」

「さぁ・・・どうでしょうか?」

「・・・ドラゴンさんではなくて、ドラゴンちゃんって呼ばなくてはダメですかね?」


飛竜の狂喜乱舞(?)する姿を見て、それぞれに感想を口にするワルツ、カタリナ、それにユキ。


・・・そんな折、混迷の度を深めるようにして、空から聞き慣れた声が降ってきた。


「おねぇぢゃぁぁぁん!!」

「うぎゃぁぁーーーー!!」


・・・どういうわけか半べそをかいていたルシアと、彼女に引っ張られて共に落下してきたイブである・・・。

恐らく、イブがルシアの無線機を壊してしまったことと何か関係があるのだろう。


そして彼女たちは、ワルツたち目掛けて真っ直ぐに飛行(落下?)を続け・・・そして地面の近くまで来たところで十分に減速すると・・・


シュタッ

シュタッ


と、(こな)れた様子で地面へと降り立った。


まぁ、ルシアが慣れているのは当たり前のこととして、その隣りにいたイブにとっては、初飛行(きょうせいれんこう)のはずなのだが・・・


「・・・にんぽう、へいろー降下!」


・・・どうやら持ち前の『にんぽう(?)』でどうにかしたようだ・・・。


「うん、多分それ、忍法じゃないと思う。というか、なんでヘイロー降下のこと知ってるのよ・・・。それに貴女、実は今、足挫いたでしょ?」


ワルツはそう言いながら、『おねぇぢゃぁん!』という呪文か呪詛のようなものを口にしながら抱きついてきたルシアに対応しつつ、イブが立っていた場所の地面の凹凸に目を向けた。


「えっ?」


イブ自身には気づいている様子はないようだが・・・ワルツは彼女の側にしゃがみ込むと、半ば確信を持って、彼女の足首の関節を軽く突っついてみる。


「ほらっ?」


つん・・・

ズキッ・・・


「っ〜〜〜〜!!」


その瞬間、突如として足から伝わってきた痛みに、顔をしかめて泣きそうになるイブ。

・・・とは言え、すんでのところで我慢出来たためか、彼女の涙は水尻の辺りで留まっただけで済んだようだ。


しかし、彼女の精神ステータスは、無線機を壊してしまったことに対する申し訳無さからか、既に0を割り込んでマイナスに突入していたようで・・・


「ワルツ様・・・・・・私、もう駄目かもだね・・・」


プルプルと震えながら、足の痛みだけで死にそう、といった様子で、そんなことを口にしたのである。


「・・・カタリナ?ここに重症者がいるから、治療してもらえる?主に足首じゃなくて、頭の方だけど・・・。多分、地面に降り立った時に、衝撃を吸収しきれなかったのね・・・。あ、ごめん、元からだわ」


「んな?!」


「・・・かしこまりました」


そう口にした後で、口元だけニッコリ(にやり)と笑みを浮かべながら、ワルツと同様にイブの側にしゃがみ込むカタリナ。

すると彼女はどういうわけか、イブの頭の上に手を置いた。


「わ、ワルツ様はあんな事言ってたけど、あ、頭はおかしくないかもなんだからね?!」


「いえいえ、分かりませんよ?」


そして・・・


「・・・いたいのいたいのとんでけー・・・」


と、カタリナは呪文を唱えたのである。


「はい、治りました」


「いや、そんな子ども騙しみたいな呪文は、効かないん・・・・・・?!」


そして自分の足に対して、驚きの視線を向けるイブ。

その後で、足の様子を確かめるように、ドンドンと地面を踏みしめたところを見ると・・・どうやら、彼女の足から痛みが無くなったようだ。


「あのね、カタリナ。そういうのを、能力の無駄遣い、って言うのよ?」


「・・・ワルツさんは、こういうの嫌いですか?」


「ううん。もっとやるべきね・・・」


「・・・分かりました」


カタリナはそう言うと、小さく目尻にシワを寄せたのであった。


「さて・・・・・・ま、イブのことはいいとして・・・」


そう言いながら、ワルツはイブから視線をずらすと今度は・・・


「おねぇぢゃぁぁぁん?!むぜんぎ(無線機)がぁぁぁ・・・・・・」


と、自身の脇腹に対してタックルを仕掛け続けていたルシアに対応することにしたのである。


ワルツがルシアに視線を向けると、彼女は名残惜しそうにようやく離れて、床にたたきつけられたためかケースが割れて、内部がむき出しになった無線機をバッグから取り出して見せてきた。

その様子を見る限り・・・全損、と言っても過言ではなさそうだ。


「・・・うん。ここでは修理でき無さそうだから、戻ったら交換ね?」


「うぅ・・・・・・。・・・悪気があったわけじゃないのは分かってるんだけど・・・・・・うぅ・・・」


「・・・ごめんなさい・・・」しゅん


イブはそんな謝罪の言葉を口にしながら、残念そうな視線を無線機に向けるワルツと、泣いているのか唸っているのか分からないルシアに対して、耳と尻尾を小さくしつつ頭を下げた。


すると、その会話の中に、何故か泣きそうな表情を浮かべたユキが参加してくる。


「わ、ワルツ様ぁぁ・・・」


そう言いながら彼女が差し出してきたのは・・・・・・ドロドロに溶けて原型を留めていない()()であった。

まぁ、言うまでもなく、ユキが炎の中で遊び回ったために、ガラスエポキシ製の基板ごと溶けてしまった無線機である。


「こ、このままだとボクは、コルテックス様に・・・」


・・・内臓脂肪を増やすスイッチを押されてしまう・・・。

尤も、ユキにとっては、内臓脂肪がどんなものであるか解らなかったようだが、例えサイボーグになったとしても、『脂肪』というその2文字は、女性として受け入れがたいものに変わりはなかったようだ。


「んー、多分、貴女の場合、少し体重を増やしたほうが良いと思うけどね・・・。ま、コルテックスの所に行くとき、一緒に行って口添えしてあげるわ」


「うぅぅ・・・」


ワルツに対する申し訳無さからなのか、それともコルテックスにスイッチを押されて体重が増えるかもしれないという恐怖からなのか、あるいは炎の中で遊ばなければよかったと今更になって後悔しているためか・・・・・・。

ユキは、勝手に流れてくる涙(冷や汗?)を手で拭いながら、ワルツに受け取られていった無線機()()()()()の姿を複雑な表情で見送るのであった・・・。


と、そんな時、


「・・・ねぇ、ワルツ様?」


自分以上に自業自得な人物を()の当たりにしたためか、すっかり元の表情に戻ったイブが、何かに気づいた様子で、ワルツに対して問いかけた。


「そこで、身体中を痒そうに掻きむしってる女の子、だれ?」


「・・・多分、痒いわけでも、掻きむしってるわけでもないと思うけど・・・」


どうやらイブは、自身の身体の形を確かめている飛竜の存在に気づいたようだ。


「・・・そうね。イボンヌとルシアには改めて紹介するわ。・・・彼女、飛竜よ?」


「だーかーらー、イボンヌじゃ・・・・・・え?」


「あー、そうなんだ」


「・・・ルシア。なんか随分と反応が淡白じゃない?」


「そうかなぁ・・・・・・。もう慣れちゃったのかも」


「・・・もう長いこと、一緒にいるもんね・・・」


とはいえ、イブの方は慣れていなかったようで・・・


「ど、ドラゴンさん?!」


少女の姿をした飛竜に対して、そんな驚きの声を上げたのである。


すると、飛竜の方も、イブがやってきたことにようやく気づいたのか、


「ぬ?・・・おぉ、これはイブ殿。起きたのだな?」


いつも通りの話し方で、イブに対して言葉を返した。


「本当にドラゴンさんなんだ・・・。でも、どうしてそんな姿に・・・」


「いやはや、我にも全くもって分からぬ・・・。この湖に足を滑らせて落ちて・・・気づくと、こんな姿になっておったのだ」


「・・・・・・んー、よく分かんないけど・・・」


そういった後でイブは、顰めていた眉を元に戻すと・・・満面の笑みを浮かべて、飛竜に言った。


「・・・良かったね?ドラゴンさん!」


「っ?!」


そして彼女は、飛竜に抱きついたのである。


「・・・・・・なるほど。こういう気分なのですな。人間になるというのは・・・」


人に抱きつかれるという意味を、初めて理解したのか、飛竜は抱きついたイブのことを、優しく抱き返すのであった・・・。

・・・まぁ、少々、力加減を間違えてしまったようだが・・・。


メキメキメキ・・・


「んぎゃっ?!し、死ぬっ!!」


「おっと。これは失礼」


「ぜぇはぁぜぇはぁ・・・・・・わ、ワルツ様・・・・・・私、もうダメかも・・・」ガクリ


「・・・カタリナ?多分、今度は、正真正銘の重傷者が出たと思うんだけど、回復頼んでいい?」


・・・こうして、ワルツたちのやり取りは、全体を通して2回目のループへと突入したのである・・・。

ボレアス編ふぁいならいずスタートなのじゃ。

・・・と行きたかったのじゃが、まだ湖から動いておらぬから、迷宮編の事後談的な位置づけの話になってしまったのじゃ。

・・・まぁ、そもそも、これから数話は事後の話をまとめていくんじゃがのう。


あー、それにしても、飛竜の話し方の書き分け方が悩ましいのじゃ。

ワルツたちに対して話しかけるときは、敬語(?)。

イブ嬢に話しかけるときは、普通の話し言葉(?)。

読んでおると、急に飛竜の話し方が変わったように見えるかも知れぬが、それにはこういった理由からだったのじゃ。

・・・いやの?

全部、敬語にしたら・・・水竜と一人称しか違わぬという混沌とした状況になるからのう。

書き分けるという意味でも、飛竜には少し特殊な話し方をして貰う必要があったのじゃ。

・・・水竜が出て来ておらぬから、まだ比較のしようがないがのう。


さて、補足なのじゃ。

・・・書くか書かぬべきか悩んでおることがあるのじゃ。

中盤まで泣きじゃくっていた(?)ルシア嬢が、急に元に戻った理由。

・・・蛇足にならぬよう、さわりだけ書いておくと・・・イブが怪我を負った。

これでその理由が分かるじゃろうか。

もうすこし簡単に察せるように分かりやすく書くべきだとは思うのじゃが、妾の文才では、まだレベルが足りなかったのじゃ。

その内、さり気なく、そういった表現ができるようになれると良いのじゃがのう・・・。


他には・・・特に、無いかのう。

強いて言うなら、表情の新しい表現が1種類増えたくらいかのう。

本当は、もう少し表現が豊かになるように書きたいのじゃ。

・・・まぁ、カタリナ殿やテンポのように、表情の起伏があまり多くない人物の場合、表情の表現云々を言うても仕方ないんじゃがのう。


さて。

次の話と・・・新しく決めた日課をやるとするかのう。

その話については・・・また後日なのじゃ!

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