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6後後後-21 ついの迷宮5

もしかしたら、後で修正するかも、なのじゃ。

「非常食が底を突いたわ・・・」


よほど今の曇天の方が明るいのではないか、というような青い顔をしながら、そんな言葉を呟くワルツ。

すると、彼女の様子を見たカタリナは・・・しかし、ワルツと違って、顔色を変えるでも驚くでもなく、


「そうですか」


といつも通りの素っ気ない言葉を返しながら、魔法のバッグの中からどこかで見たことのある黄緑色の液体が封入されたシリンダーを取り出した。


「ワルツさん、たしか口にするモノは食べ物だけでなくて、液体でも良かったのですよね?なら、これをどうぞ」


するとワルツは、ジト目をカタリナに向けながら口を開く。


「・・・百歩譲って、それが飲める液体だったとしましょう?・・・でも、つい昨日まで、液体と一緒に、何か他にも入っていたような気がするんだけど・・・気のせいかしら?」


と言いながら、カタリナの餌食(?)になった2人の男性を思い出すワルツ。


「いえいえ。ちゃんと蒸留水で洗浄した上、滅菌処理したので問題は無いはずです。もしも問題があるとすれば・・・生きている人間が飲んでも大丈夫か分からない点でしょうか・・・。ですが、ワルツさんなら大丈夫だと思いますよ?」


「そもそもソッチが問題だったのね・・・」


その後で、『では気が進まないのでしたら、私が試しに飲んでみますね』と口にしながら、シリンダーの封を開けようとするカタリナ。


「いや、開けなくてもいいわよ・・・。ちょっと王城の中で、何か食べるものを探してくればいいだけの話だから・・・」


しかしどうやらワルツにとっては、飲めるか飲めないか以前の問題だったようだ。


それから、部屋の方を振り返って・・・そして何故か飛竜の尻尾を一瞥するワルツ。


「?!」


すると頂点捕食者であるはずの飛竜は、怯えるような視線を彼女に向けながら、自分の尻尾を大事そうに抱え始めた。


「・・・いや、食べないわよ」


「えっ、この前、狩人さんが・・・・・・いえ、なんでもありません」


『・・・・・・』


飛竜が何とも言いがたい視線を2人に向けている姿に気づいて、カタリナは言葉の途中で口を(つぐ)んだ。

パーティーの料理人を兼任している狩人は、ワルツの気づかないうちに、ドラゴン料理(飛竜)を振舞っていたらしい。


「・・・って、そんなこと言ってる場合じゃないわ!とにかく、なんでも良いから食べ物か飲み物を探してくるから、後は頼むわね!」


「えっ・・・・・・もしも先ほどのように、危ない液体が飛んできたらどうすれば良いのですか?私自身や、飛ぶことの出来る飛竜さんはともかくとして、私たちには街の人々を守ることは出来ませんよ?」


するとワルツは、部屋の中へと向かおうとしていた足をそのまま止めず、そして振り向くことも無く言った。


「ルシアに頼んで!状況的に今すぐに液体を飛ばしてくるようなことは無いと思うから、連絡してる時間くらいはあるはずよ!(・・・多分ね)」


そして彼女の姿は、部屋の暗闇の中に完全に消えたのである。


「・・・・・・仕方ありませんね」


眉を顰めながら、不満気に呟くカタリナ。

ワルツの後ろ姿を恨めしそうな視線を向けながら見送った彼女は、雲の向こう側に浮かんでいるだろうエネルギアに乗っているルシアに対し、自身の無線機を使って話しかけた。


『ルシアちゃん?今いいですか?』


すると、彼女からの返事はなかったが、代わりに・・・


『ほぉ・・・この小さな箱、喋るんだ・・・・・・』


・・・何故か、興味深げなイブの声が飛んでくる。


『・・・あの、イブちゃん?聞こえてたらルシアちゃんにこの機械を渡してくれませんか?』


しかし、そんなカタリナの声は届かなかったようだ。

イブが無線機の送話ボタン(PTTスイッチ)ごと無線機を握りしめているためか、こちら側の声が聞こえていないらしい・・・。


『あれ?急に静かになっちゃった・・・。中に小人が入ってるかも・・・?』


と言いながら、ブンブンと無線機を振って、中に何か入っていないかを確認する様子のイブ。


そしてその内・・・


ガシャッ・・・ザザザザザ・・・・・・


・・・という音を最後に、カタリナの無線機からはノイズしか聞こえなくなってしまった。

最後に聞こえてきた音から推測すると・・・おそらく、床に落としてしまったのではないだろうか・・・。


「・・・・・・」


急に無言になって、持っていた無線機に細めた視線を向けているカタリナに・・・何かあったのかを察したのか、あるいは身の危険を感じ取ったのか、飛竜は恐る恐る問いかけた。


「・・・な、何か問題が起ったのですかな?」


するとカタリナは小さく首を振ってから、ハマった穴からどうにか抜け出そうと藻掻いている様子の迷宮に視線を向けてから言った。


「・・・世の中には、思い通りにならないことが溢れている・・・。ただ、それだけですよ・・・」


「・・・・・・申し訳ございませぬが、我には何とも難しすぎて、理解に苦しむところでございます・・・」


飛竜のその言葉が、カタリナの様子について向けられたものなのか、あるいはイブのように声のする箱(無線機)に向けられたものなのかは定かではないが・・・何れにしても、飛竜には、カタリナが何をして、そして何が起こったのかさっぱり分からないようであった。

尤も、カタリナ自身も何が起ったのか分からないからこそ、不機嫌な様子で頭を抱えていたのだが・・・。




さて・・・。

どうやら不可解な出来事は、無線機の向こう側だけで終わるものでは無いらしい。


カタリナが持っていた無線機をバッグの中へと仕舞いこんだ直後、


ゴゴゴゴゴ・・・


と、ハマった穴の中で蠢いていた迷宮が、再び変形を始めたのである。

より具体的に言うなら・・・まるで空へと登るようにして、頭頂部から1本だけ細い何かが伸び始めた、といった具合だ。


「カタリナ様・・・。あれは何でしょうか・・・」


「寄生虫では?」


飛竜の問いかけに対して、冬虫夏草を思い出しながら、即答するカタリナ。


「きせいちゅう?」


「寄生虫というのは・・・」


そう言ってから、危機的状況かもしれないというのに、寄生虫の話を始めるカタリナ。

その際、内心で、『寄生虫の話が、人生で最後の話というのも悪く無いですね・・・』などと思っていたり思っていなかったり・・・。


そしてしばらく経ち、迷宮が空へと伸ばしていた触手を10本に増やした辺りで、飛竜に限界が訪れた。


「う、うぅ・・・もう、寄生虫の話は結構でございます・・・」


「そうですか・・・まだ話は全体の1/10も言っていないのですが・・・」


「・・・・・・」


あからさまに嫌厭するようにしてカタリナに背を向けながら、気持ち悪そうに俯く飛竜。

あまり長い話ではなかったが、耐性のなかった彼にとっては、予想以上にキツイ話だったようである・・・。


「それにしても、あれは・・・」


カタリナは飛竜の背中に残念そうな視線を送った後、再び迷宮の突起物に眼を向けて呟いた。


彼女の視線の先にあった、迷宮の頭頂部から生え始めた10本の突起物は・・・少なくとも、寄生虫によるものでは無さそうであった。

なぜそう言えるのかというと、その形状が・・・


「・・・どう見ても腕にしか見えませんね・・・」


人のソレに近かったからである。


彼女の視線の先では、迷宮に生えた10本の突起物のうち5本ずつが、それぞれ指のように手のひらと思わしき部分とつながって、何かをその手で包み込むようにしながら空に向かって伸びていたのである。

一体、何を包み込んでいるのかはカタリナにも分からなかったが、ここ数日のことを考えるなら、おそらく碌なものでは無いのだろう。


「また誰かが迷宮を乗っ取ったのでしょうか・・・」


カタリナが迷宮の姿を前に、一人、そんな推測と口にしていると、彼女の目の前で急に迷宮の腕が・・・


ドシャッ・・・・・・


と、まるで溶け落ちるかのようにして迷宮の頭頂部へと落下してしまった。

その際、腕だった液体が周囲へと飛び散るが・・・


「・・・大丈夫そうですね」


どうやら、街の方へと流れ落ちてくる気配は無いようだ。


その後も、繰り返すようにして迷宮の上部から生える腕。

その度に腕の本数が増えていくようだが、その全てが伸び切る途中で、腐り落ちるように落下してしまう。


「(前衛的なアートでこのようなものを見たことがありますが、実際に動いているものを目にすると、あまり気持ちのいいものでは無いですね・・・)」


まるで無数の人々が、スライムに飲み込まれて捕食され、助けを求めるようにして外へと手を伸ばしているようにも見えるその光景に、カタリナはそんな感想を抱いた。


「(・・・そういえば、以前、ワルツさんに教えてもらった特別な花火の中に、こんな様子で燃え尽きる花火があった気が・・・・・・)」


沢山の腕を伸ばしては途中で腕を下ろす迷宮の姿に、カタリナがワルツに聞いた線香花火(?)のことを思い出していると・・・


グイッ・・・


っと、不意に長く伸びた腕が、王城のテラス目掛けて飛んできた。


「・・・飛竜さん。気をつけて下さい」


「・・・む?」


カタリナの忠告を受けてから、気持ち悪そうな顔を上げ、後ろを振り向く飛竜。

するとそこには半透明の黒っぽい液体が・・・


「ぬおっ?!」


ドシャッ!!


・・・そして、ついコンマ数秒前まで飛竜がいた場所を、迷宮から飛んできた謎の液体が流れていった。


「あ、危うく、こんなところで命を落とすところでした・・・」


間一髪のところで室内へと逃げこみ、液体を避けることに成功した飛竜は安堵の溜息を吐いた。

すると、彼の横から聞き慣れた声が聞こえてくる。


「ホント、危なかったわね・・・私が引っ張らなかったら、貴方、今頃死んでたわよ?きっと」


「わ、ワルツ様!?」


実は避難が間に合っていなかった飛竜のことを、戻ってきたワルツが重力制御か何かで助けた、ということらしい。


それから彼女は、一旦、部屋の中を見渡した後、飛竜に対して問いかけた。


「で、一つ聞きたいんだけどさ・・・。貴方、カタリナのこと知らない?」


「カタリナ、様・・・・・・えっ?」


「・・・・・・え?」


テラスの方を振り向いて、今もなお良い勢いで流れ続ける謎の液体に目を向けて固まる飛竜。

そして、そんな彼の姿を見て、伝搬するように固まってしまうワルツ。


「・・・・・・そ、外に・・・」


「うわぁ・・・・・・」


そしてワルツは、飛竜と同じ方向へと、苦々しい視線を向けるのであった。

・・・どうやらワルツは、視界に入っていた飛竜のことを救うことには成功したようだが・・・・・・彼の影になって見えなかったカタリナを救うことは出来なかったようだ・・・。

いやー、やってしまったのじゃ・・・。

非公開にしてアップするつもりが、誤って公開状態のままアップしてしまったのじゃ。

・・・それも、修正前のものを・・・。

え?いつも未完成?

・・・し、仕様なのじゃ!

追記:非公開フラグを立てるのが早かったためか、結局公開されなかったみたいじゃの。


それはそうと。

今日も会話の部分が多くて、ナレーターの語りを書くのが大変だったのじゃ。

1行だけ書こうとすると、語尾が『た』で終わる文が多くなってしまうのじゃ。

それが嫌で、2行にして書こうとすると『〜カタリナ。』や、『〜飛竜。』という名前の言い切りで終わる文が増えてしまうのじゃ。

・・・この際、何も書かないほうが良いのかも知れぬのう・・・。


まぁ、それはさておきなのじゃ。

補足するのじゃ。


まずは無線機の話なのじゃ。

ルシア嬢とイブ嬢がエネルギアの中で何をしているのかは分からぬが、ルシア嬢が不用意にバッグから取り出していた無線機をイブ嬢が見つけて・・・振り回した結果、無線機が手から滑って離陸したのじゃ。

・・・それも、上方向ではなく、下方向に・・・。

今頃、エネルギアの中では、トンデモナイことが起っておるんじゃろうのう・・・。


で、次なのじゃ。

狩人殿のドラゴン(飛竜)料理・・・。

・・・そこに食べれる肉があれば、とりあえず狩ってワルツに食べさせる、という謎のるーちんが狩人殿の頭の中に出来上がっておるのじゃ。

もしかすると彼女の頭の中では・・・『自分の料理 = ワルツの好物』というトンデモ理論が展開されている可能性も否定はできぬのう。

まぁ、登場人物たちが、大体そんな感じの思考をしておるから、おそらく間違いないじゃろうのう。

・・・え?妾も?

いや、そんなことは無いのじゃ!至っての!

まぁ、美味しければ、どんな料理が出ても、問題は無いのじゃ!


・・・次なのじゃ。

寄生虫の話。

具体的に書いても良かったのじゃが、どうでもいい駄文でグロ注フラグを立てるというのも気が引けてのう。

割愛したのじゃ。

今度、機会があれば、カタリナ殿にその辺の話を延々と書いてもらおうかのう・・・。

妾は、多分、見ないがのう・・・。


あと補足は・・・カタリナ殿に関するものじゃが、それは、次回に回すのじゃ。

はぁ・・・・・・ここまで来るのに、まどろっこしいことをしてきたような気がする今日このごろなのじゃ。

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