6後後後-12 爬虫類(?)の視線から1
明日細かいところを見直すかもなのじゃ!?
・・・また、ユキ殿の一人称を間違えておったのじゃ・・・。
同時刻。
ビクセンの王城内の謁見の間にて・・・。
「・・・・・・報告ありがとう。もう下がりなさい」
「はっ!」
報告にやってきた兵士に対して、そんな事務的に言葉を放つヌル。
本来皇帝であるはずのユキAに代わりに、ヌルが玉座(仮)に着いていたのは、ユキAの姿が以前と大きく変わってしまったからなのか、それとも本来のオリジナルとしての役割を全うしようと考えたからなのか・・・。
何れにしても、姿の変わってしまったユキAが、これまで通りに皇帝の座につくことは困難だったので、ヌルが彼女の代わりを務めるというのは必然的なことであったと言えるだろう。
さて。
報告を終えた兵士は、皇帝の代わりに化けていたヌルに気づかないまま、恭しく頭を下げながら、後ろ向きで身を引こうとしていた。
その行為自体は、皇帝に対して尻を向けないように部屋を出るためのいつも礼法だったので、特に変わった点は無かったのだが・・・・・・彼の眼から見える景色には大きな変化があったらしく、彼は後退しながら頭を悩ませていたようだ。
その中でも、主の隣に立っていた普段見かけない白い髪の女性の姿が、彼にとっては特に気になっていたらしい。
知り合いの誰かに似ていたのか、彼は後退しつつも、チラッ、と視線を上げて、その女性の姿を再び確認しようとしたのである。
まぁ、知り合いに似ていたからという理由ではなく、今もなおビクセンを取り巻いていた混乱に乗じて、皇帝に取り入ろうとする間者か何かかと疑った可能性も否定はできないが・・・。
・・・その結果、彼は、謁見の間(仮)の中に普通はいないはずの『別のモノ』の存在について、完全に失念してしまったようである。
故に、
グイッ・・・
「っ?!」
ドテンッ!
・・・彼は皇帝の面前だと言うのに、足を何かに取られて転倒してしまうという、大失態を犯してしまったのだ。
「ひ、ひぃ!?も、申し訳ございません!?」
と必死になって謝る兵士。
・・・ただし、その謝罪のベクトルは、ユキたちの方に向けられてはいなかった・・・。
「む?いや、なに。気にすることはない。我が尻尾の管理を怠っただけの話だ。こちらにも責任がある・・・」
そう。
兵士は、玉座の間の中央に広げられていた長いレッドカーペットの、その上に飛び出していた飛竜の尻尾を踏んで、転んでしまったのである。
兵士がこの部屋にやってきた際、まず最初に驚いたのは、レッドカーペットの縁で、とぐろを巻くようにして座り込んでいた飛竜の姿のはずだった。
飛竜に近寄ったら噛みつかれるんじゃないか・・・と兵士は恐る恐るカーペットの上を歩いて、ユキたちの足元まで移動した・・・・・・そのはずだったのだが、どうやらユキAの姿に気を取られすぎたせいか、兵士は飛竜の存在をすっかり忘れてしまっていたようである。
ところで・・・。
飛竜は何故こんな所にいるのか。
彼の師匠たるイブは、雲の向こうに浮かぶエネルギアの中にいるというのに、である。
・・・その理由は、それほど複雑なものではなく、飛竜がワルツたちと別れた際には、まだイブが眼を覚ましていなかったので、ちょっとした自由行動の時間をもらって・・・そして、ユキたちに付いて来ていたためであった。
彼女たちの前では、実に様々な種類の人間たちが、普段とは異なる振る舞いを見せるのである。
どうやら彼には、それが非常に興味深かったらしく、もうしばらく観察していたいと思ったらしい。
「い、い、命だけはお助けを!!」
「いや・・・よいと言っておる。ほれ、主らの王の前なのだろう?我などに感けておってよいのか?」
「?!」
そして、自分の置かれた状況を再認識する兵士。
それから彼は・・・頭と身体を左右にぷるぷる小さく振るという怪しげな動きのままで、ゆっくりと後退していったのであった・・・。
「・・・人間とは実に興味深い・・・」
「すみません、ドラゴンさん。一体どの辺が、興味深いのか分からないのですが・・・」
「む?ユキ殿?何か申したか?」
「・・・いえ、なんでもありません・・・」
そう言って首を振りながら、苦笑を浮かべる白い髪のユキA。
一方、その隣りにいたヌルは、自身の水色のロングヘアを指先で弄びながら、難しい表情を浮かべていた。
「・・・結局犠牲者は、全人口の1割にもなっていたのですね・・・」
ワルツから聞かされた救出者の数は7割のはずだった。
ということは、本来であれば3割の犠牲者が出ているはずなのだが・・・どうやら、事前に周辺の村々へと避難していた者たちや、ワルツたちの数え間違いなどがあって、集計を取ると、予想よりも少なかったようだ。
とはいえ、その失われた人口の殆どが、首輪で操られた自分や姉妹たちの餌食になった上、そもそも今回の事態を引き起こした原因が全て自分の失態から始まったことを考えて、ヌルは浮かない様子で眼を伏せたのである・・・。
そんなヌルの思考と気持ちが分からなかったのか、
「・・・どうしたのだ、ヌル殿?我には、むしろ、犠牲者が少なかったことは喜ぶべきことだと思うのだが?」
飛竜は少々ストレート過ぎる問いかけをヌルへと投げかけた。
そんなデリカシーが無いとも取れる彼の言葉に対して・・・しかしヌルは、特に表情を変えることもなく、そのまま口を開いた。
「そうですね・・・。確かにあなたの言う通りでしょう。ですが、この件の始まりの原因が全て私の行いにあったことを考えると、自分のせいで命を落としてしまった市民たちに対して、申し訳がたたないのです・・・」
すると今度はユキAが、ヌルの座っていた玉座の横に立つと、椅子の肘掛けに手を置きながら口を開いた。
「ヌル姉様。確かに、失ってしまった者たちを後で取り戻すことは出来ないかもしれません。ですが、同時に希望も見えたではないですか?今回の一件は、一つの教訓として記憶に留めて・・・・・・そしてこれから先の未来で、再び市民たちが犠牲になることのないように努めていきましょう?ヌル姉様は一人ではないのですから」
「・・・・・・そうですね。ワルツ様方に作っていただいた、あなたの新しい身体のこともありますからね」
「はい。その通りです。姉様方の身体を作るためには、色々覚えなくてはならないことが山程あるらしいですが、どうにか頑張って覚えてこようと思います。だからそれまでは、ヌル姉様も、他の妹たちと協力しながらこの国のことを支えて下さい」
そう言ってからユキAは、ヌルに対して頭を下げた。
恐らくそのお辞儀には、自分がワルツの所に赴いている間、代わりに王座に着くことになるヌルに対する謝罪の意味も込められているのだろう。
そんな礼を向けられたヌルは・・・ユキAの手を取って、感慨深げに眼を向けてから言った。
「・・・期待していますよ?」
「はい。お任せ下さい!」
そして掴まれた手を握り返すユキA。
すると・・・そんな和やかな雰囲気を作り出す彼女たちに対して、何か思うところがあったのか、飛竜が徐ろに口を開く。
「ふむ・・・。人は感情が高ぶると、親しい者と触れ合いたくなると聞いたのだが・・・いったい今は、どのような気持ちなのだ?」
どうやら人の気持がよく理解できていなかった飛竜にとっては、空気を読むことも難しいことだったようである。
しかし、ユキたちは、そんな彼の言葉に悪気が含まれていないと感じたためか、煩わしそうな表情を見せること無く答えた。
「そうですね・・・」
「これは気持ちとは違うかもしれません・・・」
「恐らくこれは・・・」
『姉妹だからでしょうか?』
最後の言葉が完全に一致するユキAとヌル。
「・・・ふむ。姉妹、か・・・。感情ともまた異なるのだな・・・」
「そうですね。普通の感情とは異なる、特別な感情、とも言えるかもしれませんね」
「あ、でも、そんなに深い意味は無いですよ?」
「えっ・・・」
「えっ・・・?!」
「ふむ。何とも難しいものだな・・・」
それから飛竜は納得したような雰囲気を纏いながら、徐ろに立ち上がって、彼女たちに告げた。
「少し、城の中にいる者たちのことを見て回りたいのだが・・・よいだろうか?」
「え?・・・あ、はい。それは構いませんが・・・そうですね。ドラゴンさん一人で歩き回ると皆に驚かれると思うので、ボクも同行しましょう。では行ってきますヌル姉様」
と、ヌルの承諾返事も聞かずに、飛竜に対して答えるユキA。
「・・・寂しいですね・・・」
・・・そしてユキAと飛竜は、小さくため息を吐きながらそんな言葉を口にするヌルを一人その場において、城の中の様子を見て回ることにしたのである・・・。
あー。
鼻水が止まらぬ・・・。
風邪じゃろうか・・・。
・・・・・・風邪・・・?
おっと、これはルシア嬢に言わなくてはのう?
妾も風邪をひくのじゃ、と。
・・・まぁ、それはよい。
で、早く寝るためにも、さっさと補足してしまうのじゃ。
ユキたちの前で、人々が普段とは異なる振る舞いをするという点については、補足しなくともよいじゃろ?
妾も、そのくらいの威厳とかオーラとか言うものを纏ってみたいのじゃ。
・・・まぁ、1度で良いがのう。
他には・・・飛竜の空気の読めなさかのう?
飛竜のあいでんてぃてぃーなのじゃ。
これで、悪気があるあいでんてぃてぃーなら・・・いや、それは書いておる妾の胃がすり減ってしまうから、あり得ないのじゃ。
そんなキャラがいても良いかも知れぬとは思うがのう?
・・・うむ。
今日はこんなところで寝るのじゃ。
前書きに書いた通り、明日体調が良ければ、少しだけ修正をするかも知れぬのじゃ。




