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6後後後-10 迷子の子犬1

時間は数時間進んで・・・。


「・・・・・・んあ?」


窓(?)から差し込む日差しと、雲の隙間から見え隠れする青い空が眩しくて・・・イブはそれほど大きいとはいえないベッドの上で眼を覚ました。

それから上半身を徐ろに起こすと、


「・・・・・・うーん!」


よく寝たー、といった様子で背伸びしてから、大きなあくびをして・・・


「むにゃ・・・・・・」


と、布団へ再突入を開始した。


・・・しかしどうやら、突入の軌道があまり鈍角過ぎたためか、あるいは管制塔からのエマージェンシーコールが掛かったためか・・・


「・・・っ?!」


布団に背を付けた途端、反復するように飛び起きたのである。


「こ、ここどこ!?っていうか今何時?!」


・・・誘拐されていた間ですら、一度も見せたことのないほどの驚き具合で、必死に部屋の中へと視線を向けるイブ。

すると、彼女が寝ていた場所の隣から・・・


「うーん・・・・・・」


と、そんな(うめ)きのような声が聞こえてきた。


「・・・あれ?ルシア・・・ちゃん?」


眩しそうに、そして寒そうに布団を引っ張っているルシアが、自分の隣で眠っていたことに気づくイブ。

そして彼女は、この部屋がどこ(エネルギアの中)にある部屋で、(ルシア)の部屋なのかを思い出すが・・・


「(あ、そうだった。ルシアちゃんの部屋にクッキーを食べに来てから・・・・・・あれ?)」


・・・しかし、自分の身に起きたことを理解することは出来なかったようだ。


「(・・・まいっか)」


考えても分かりそうにないことは考えない。

そんなイブの基本的なスタンスが、次なる行動へと、彼女の身体を動かした。


先ず最初にイブが取った行動は・・・壁とルシアに挟まれたベッドの上から、彼女を起こさずにぬけ出す、という難易度の高いミッションだった。


「(・・・ふっふっふ・・・。とーちゃんに習った『にんじゃー』とか言う人たちの秘伝の技をお披露目する時が来たかもだね!)」


そう頭の中で呟いた後、まさに大胆不敵、という言葉が似合いそうな動きで起き上がり、自身の真横にあった壁へとピッタリくっつくイブ。

その際・・・


ギュッ・・・


「(あああ・・・?!)」


・・・ユキに借りて着たままだった真っ白なコートのボタンが布団に引っかかって、ルシアから布団を引き剥がしそうになるが・・・


「ううん・・・・・・zzz」


・・・どうにか、彼女を起こさずに済んだようだ。


「(ふぅ・・・。せっしゃ、まだまだみじゅくものにござるな・・・だったっけ?)」


昔、父親に聞かされたことのある『お伽話』のことを思い出しながら、イブは今度こそ下手を踏まないように、ゆっくりと壁際を進んでいく。

そして・・・


「(・・・よっし、脱出成功!・・・もしかして牢獄からぬけ出すよりも大変だったかも?)」


どうにかベッドから抜け出すことに成功したのだった。


その後、自身の華麗なる脱出劇の犠牲になって乱れてしまった布団の隙間から、ルシアの大切な尻尾がはみ出てしまっていることに気付いたイブは、脱出した時以上に気を使いながら、布団を彼女にかけ直す。


その際、


「(あ、本当に大切そうにしてる・・・)」


ルシアが大事そうにしながら、よく分からないデザインをした灰色の人形を抱きしめながら眠っている様子がイブの眼に入ってきた。


「(一体、何の人形なんだろ・・・)」


一応、人の形はしているようだが、いたるところから薄い板のような突起が飛び出している人形。

それに対して全く見覚えのないイブは、ただただ頭を(かし)げるしか無かったのであった・・・。




そして、イブの行動はフェーズ2に移行する。

・・・が、


ガション!


「ひうっ?!」


・・・ルシアの部屋を抜けだそうとして、扉が勝手に動いて・・・さらに大きな音を立てたことに、イブは自身の尻尾を目一杯膨らませた。


「(お、起きてないよね?)」ちらっ


思わず後ろを振り向いて、ルシアを起こしてしまったのではないかと確認するイブ。


「・・・・・・・zzz」


「(・・・うん、大丈夫だね)」


どうやらルシアは深い睡眠状態にあるようだ。


「さてと・・・」


廊下に出た後、自動ドアが再び大きな音を立てながら閉じてから、再度同じことを繰り返したイブ。

そして彼女は、薄暗い通路の続くエネルギアの艦内を左右どちらに向かって歩くかについて悩み始めた。


「んー・・・どっちから来たっけ?」


艦橋から来た時は、エネルギアのナビゲーションがあったので、適当に歩いていただけだが、今ここにエネルギアの気配は無かった。

ということは、自力で艦橋か外へ向かう通路を探さなくてはならないのだが・・・。


・・・歩き始めてから3分・・・


「・・・迷路みたいで分かんない・・・。さっきもここ通った気がするし、通ってない気もするし・・・」


どうやらイブの足では、徒歩3分で艦橋にたどり着くことはでき無さそうであった・・・。


「人がいないから道も聞けないし・・・どうしよう・・・」


そう呟きながら、まさに迷子そのものといった様子で、通路隅で体育座りを始めるイブ。


すると、そんな彼女の目の前にあった扉が、


ガション!


と勝手に開き・・・


「あー、よく寝た」


「先輩・・・そんな毛深かったでしたっけ・・・?」


・・・どこかで見たことのある黒い翼を持った翼人と、紫色をした毛むくじゃらの化け物が出てきたのである。


「ひ、ひぃ?!」


その姿を見て、思わず後退ろうとするイブ。

しかし、背中には壁があって、後ろに下がることは出来なかった。


・・・一方で、


『・・・ひぃっ?!』


・・・何故かイブの姿を見て後退る様子の2人。

彼女たちの視点から見ると・・・扉を開けた瞬間、目の前の薄暗い通路の中に膝を抱えた見知らぬ少女がいたのである。

恐らく、何か得体の知れないものが出た、と思ったに違いない・・・。


その結果、


ガション!


と、自動ドアが勢い良く閉まる。


「ひやぁっ?!」


それと同時に、艦内を走りだすイブ。


どうやら彼女にとっては、突然現れた毛むくじゃらの何かが、まるで自分を襲おうとしている化け物か何かに見えたようだ・・・。




その一件があってから、イブは座り込むことが怖くなったのか、碌にルートを考えるでも、覚えるでもなく、休むこと無く常に歩き続けていた。


「・・・ここ、どこだろう・・・」


移動すれば移動するほど、辺りの廊下がどんどんと辺りが暗くなっていくことを感じていたイブ。

そんな彼女のことを、疲労感と空腹感と、そして孤独感がじわじわと襲い始めていた。


「はぁ、疲れたぁ・・・。お腹減ったかもだし・・・」


一体何故、自分は船の中で迷子になっているのか・・・。

実はここは、まだ迷宮の中なのではないか・・・。

こんなことになるなら、隣で寝ていたルシアを起こして一緒に移動したほうが良かったのではないか・・・。


そんな疑問と後悔を脳裏で浮かべながら、彼女がトボトボと歩いていると、何度か見かけたことがあるような気がするT字路へと差し掛かった。

すると・・・


コツン・・・コツン・・・コツン・・・


曲がり角の向こう側から、誰かが歩いて近づいてくるような足音が彼女の耳に入ってくる。


「はぁ・・・ようやく、人に出会えたかも!」


安堵の笑みを浮かべながら、交差点から顔を出して、どんな人が歩いているのかを確認しようとするイブ。

できれば、知り合いか、あるいは優しそうな人だったら良いな、などと思いながら・・・。


そんな彼女の願いが天に届いたのか、自分の方に向かって歩いてきていたのは、自身に治療を施してくれたカタリナだった。


「あ、カタリナさ・・・」


・・・しかしイブは言葉を口にしている途中で固まってしまう。


確かにカタリナは、遠くから見ると優しげだった。

まぁ、この際、自分の嫌いな医者の一人であったとしても、不必要に『ちゅうしゃ』されることは無いはずなので、そのことに対してイブは目を瞑ってもいいとも考えていたのである。


しかし・・・イブは、どうしても、彼女に近づくことが出来なかった。

なぜなら・・・


「ひ、ひぃっ!?」


カタリナの眼は笑っていないというのに、口だけが裂けんばかりに釣り上がって・・・・・・そして何より、人の生首が浮いた瓶のようなものを2個も持ち上げながら、冷たい視線をその瓶の中へと向けていたからである。


例えここが薄暗い廊下の中でなく、常夏の眩しい太陽の下だったとしても、恐らくイブは、悲鳴を上げながら、そんなカタリナから全力で逃げ出すことだろう。


・・・というわけで、


「ひぃぃぃぃっ?!?!」


イブはそんな言葉にならない叫び声を上げて、抜けそうになる腰を必死で押さえながら、来た道を逆に走り始めたのである。

彼女にとって幸いだったのは・・・カタリナが後ろから追いかけてこなかったことだろうか。

もしも彼女が追いかけてきていたとすれば、恐らくイブは正気を保っていられなかったはずなのだから・・・。

うむ。

書いておって確信したのじゃ。

ナレーターの書き方に2パターンあるのじゃ。

・第三者視点から語るパターン

・登場人物の視点を通して語るパターン

この2点なのじゃ。


具体的な例を挙げると・・・前話は前者、今話は後者なのじゃ。

本当はどちらか一方に統一すべきなのかも知れぬが・・・まぁ、妾の駄文じゃと、まだレベルが低すぎて、その使い分けができぬのじゃ。

いつかできるようになると良いのじゃがのう。


それでじゃ。

今話のことについてなのじゃ。

ちょっと脱線して、忘れぬ内に、イブ嬢の話をインタラプトすることにしたのじゃ。

本当は分けること無く最後まで書くつもりだったのじゃが・・・書いておって6000文字を超えた時点で、タイムアウト感が妾の第8感を刺激して、仕方なく半分に分けることにしたのじゃ。

・・・ちなみに第6感と、第7感については説明せんでも良いじゃろ?

魔力感(?)とワルツ感(確信)なのじゃ。

・・・どうでもいい話じゃがのう。


で、補足なのじゃ。

紫色の毛むくじゃらの化け物・・・。

一体誰なのかは言及せぬが・・・・・・どうやら、ミッドエデンに帰る前に、カタリナが計画を行動に移したらしいのじゃ。

余程、恨めしかったんじゃろうのう・・・。

その気持ち、分からぬでも無いのじゃ!


で、イブの父親の話。

これは・・・ダイレクトに取り上げるのではなく、徐々に語っていくスタイルを採用することにしたのじゃ。

問題は・・・それを物語に絡めるか否か、なのじゃ・・・。

まぁ、なるようになるじゃろう。

多分のう・・・。


まぁ、そんなところかのう。

ちなみに明日のナレーターは後者のままで続けるのじゃ。

というかこの話、前者の形で書いたらどうなるのじゃろうか・・・。

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