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6後後後-09 行く末9

ルシアが作り出した、雲の下に浮かぶ真っ白に輝く太陽が、燃え尽きるようにしてその輝きを徐々に失わせていく景色の中で・・・。


人間の形から饅頭形のスライムのような装いに戻ったプロティービクセンに対して、先程まで噛み付き続けていたデフテリービクセンは、されるがままだったプロティービクセンから一旦離れた。

それから彼は、町や市民たちには一切眼(?)をくれずに、そのままプロティービクセンの上へと無理矢理によじ登ると・・・


ガブッ・・・


っと、今では突起も何も付いていないプロティービクセンのなだらかな天頂部(頭?)に、再び噛み付いたのである。

プロティービクセンの饅頭のような形状を考えるなら、どこに噛み付いても同じような気がするのだが・・・もしかすると彼には特別な意味があって、噛み付く場所を変えたのかもしれない。


「・・・何やってるのかしら?」


『さぁ・・・』


問いかけたワルツだけでなく、ユキAにもヌルにも何が起こっているのか分かっていない様子で、二人同時に頭をかしげながら、同じ言葉を返してきた。

まぁ、それが分かっていないからこそ、迷宮自身にその最後の選択を任せたのだが・・・。


「・・・とにかく、市民たちを一旦、街の中に避難させましょうか?」


「・・・そうですね。このままだと、魔物たちに襲われないとも限りませんし・・・」


そんな言葉を口にしてから、辺りにいた兵士たちに指示を出すヌル。

同時にユキAも、同じようにして指示を出そうとするが・・・自分の今の姿が、以前とは大きく変わってしまったことを思い出したのか、兵士に対して不自然な体勢のまま固まって、余計な声が出ないようにと口に手を当てているようであった。


「で、問題は・・・貴女方の姉妹たちよね・・・」


と、地面に並べられて寝そべっているユキの姉妹たちに眼を向けながら呟くワルツ。


彼女たちは、今のヌルのように身長が元に戻っていたわけではなかった。

故に、市民たちを襲っていた彼女たちは、それを目撃していた者たちから、自分たちに敵対的な意思を持った雪女か、少女の形をした殺人鬼として捉えられているはずである。


尤も、意識を取り戻した市民はそれほどおらず、殆どが常日頃から鍛錬を重ねていた兵士の、さらにその内の一部に限られていたようなので、それほど大きな影響があるわけでは無いはずだが・・・・・・少なくとも、そんな兵士たちにとっては、襲撃者として認識されていたことについては間違いないだろう。

飛竜を取り囲む者たちとほぼ同数の兵士たちが、ユキたち姉妹の周りに集まって、警戒した様子で武器を構えているのがその証拠だ。


「・・・もう隠し通せるものでは無いんでしょうか・・・?」


自分たちの置かれた現状を考えて、小さくそんな言葉を漏らすユキA。


以前とは異なる姿で身体の形状が固定されてしまったユキAならともかく、他のユキBからFの、残存魔力(体力?)の量によって見た目と身長が変わってしまうという体質は、雪女としての性質上、どうにか出来るものではなかった。

これまでは魔道具などを使って変身することで、周囲の者達の眼をなんとか誤魔化してきたが・・・今回の一件で、不特定多数の者たちに本当の見られてしまった以上、今後は変身する前の姿を、不用意に誰かに見せるわけにはいかなくなってしまったのである。


もしも彼女たちが、ふとした拍子に城の中で消耗してしまい、その姿を覚えている者たちに見られることになってしまえば・・・・・・恐らくその瞬間に、八つ裂きにされるか、あるいは牢獄へと連行されてしまうことだろう。

しかも、愛すべき市民たちや兵士たちの手によって、である。


そうならないようにするためには、彼女たちの正体を皆に明かす必要があるのだが・・・その選択肢が無いことについては説明せずとも明らかではないだろうか。


(まさに、社会的抹殺ってやつね・・・。アルタイル、これが目的で、ユキたちにこんなことをさせたのかしら・・・)


ワルツはそう考えた後で・・・・・・とある行動に出ることにした。


ジジッ・・・


というノイズと共に展開したホログラムを使って、彼女たちの姿を背格好の異なる別人へと変化させたのである。


『?!』


その瞬間、思わず驚愕の表情を浮かべる兵士たち。

どうやら、ワルツの目論見(もくろみ)の最初のステップはクリア出来たようだ。


「あー。今になって変身魔法が解けたのね・・・。きっと・・・」


そんな言葉を呟くワルツと仲間たち、それにホログラムを見ていた兵士たちの目の前では・・・・・・今では4人の見知らぬ男たちが地面に寝そべっているように見えていた。

・・・まぁ、ワルツたちにとっては見知らぬ男たちではなかったが・・・後で姿を見られても特に問題無さそうな人物選んで、ユキたち姉妹の上から、ホログラムを投影したのである。


それからワルツは・・・


「んー、まだ、何か隠してそうだから、ここで消しちゃいましょうか」


何処か棒読み気味なセリフを呟いてから、わざとらしく彼ら(?)に手を向けると・・・


ピカッ!!


っと、ホログラムの出力を上げ、まるで火魔法か光魔法で焼き払ったかのようなエフェクトを見せてから、ユキたちの姿を消し去ってしまった。

もちろんそれは、本当に消し去ったわけではなく、エフェクトと共に彼女たちの姿を透明にしただけなのだが・・・何も知らない周りの者達にとっては、本当に消し飛ばしてしまったように見えていたことだろう。


要するにワルツは、社会的な抹殺を受けたユキたちを、物理的に抹殺したように見せかけて、一旦リセットを図ろうとしたのである。


実際・・・


「わ、わ、ワルツ様?!」


・・・と、ヌル自身も騙されているようなので、周りの人々も同じく騙されているに違いない・・・。


「(いやいやいや・・・貴女にホログラムは効かないはずでしょ?ちゃんと眼を見開いて見てみなさいよ・・・)」


そんなワルツからの指摘を受けて、ヌルは一見すると何もない地面に視線を向けると・・・


「えっ・・・あ・・・・・・」


直後に何かに気づいたように、小さく声を上げた。

どうやら、落ち着いて視線を向けた結果、そこに今でも健在だった妹たちの姿が見えてきたようだ。

それからヌルは、


「・・・・・・お気遣い感謝いたします」


まるで自分の直前の態度を誤魔化すようにして、そんな感謝の言葉を口にしたのだった・・・。


・・・ただ、そんな彼女の言葉は、誤魔化す相手であるはずの周りの兵士たちに届いていないようであった。

なぜなら彼らは、まるで顎が外れたようにして立ちすくむリーブルのように、口を開けて固まったまま動かなくなっていたのだから・・・。

彼らが見たホログラムのエフェクトは、ワルツたちにとって、普段から見慣れているなんてことは無い小さな魔法の再現だったのだが・・・・・・一方、彼らにとって、人が一瞬にして蒸発するほどの強力な魔法(?)は、初めて見るものだったらしい。


まぁ、何れにしても、彼らの視界からも記憶からも、ユキたち姉妹の存在が蒸発してしまったことに間違いは無いだろう。




「ところでワルツさん・・・」


自分たちの近くにいた兵士たちが、ようやく1/3ほどに減って、市民たちの避難作業が本格化してきた頃。

ワルツに対してカタリナが徐ろに問いかけてきた。


「・・・先程の男性たち・・・何故、エンデルシア国王と勇者様が含まれていたのでしょうか?」


「いやー、姿を勝手に使って申し訳ないと思ってるけど、まさか身内の知り合いに化けさせるわけにはいかなかったしね」


例えば、アトラスやカノープス、それに酒場の店主などがその例として挙げられるだろうか。


「ですが勇者様は・・・」


「あー、別に良いんじゃない?魔王退治に来るんなら、今のうちから警戒されてたほうがこの国にとってはプラスじゃないかしら?・・・そう考えるなら、剣士や賢者の姿も使っておくべきだったかしらね・・・」


と言いながら、他にも、ホログラムとして表示していたカペラやロリコンの姿を思い出すワルツ。


「・・・程々にしてくださいね?」


「・・・えぇ。冗談よ」


カタリナの視線が批難の色を含んでいた事に気づいて、ワルツは仕方なく応じることにしたようだ。


ちなみに。

彼女たちがやり取りしているのは・・・先程までいた平原の中ではない。

ビクセンの街を囲むようにして建設されていた見晴らしの良い市壁の上まで戻ってきていたのである。


単に周囲が一望できる見晴らしのいい場所に移動したかったから、という理由だけでなく、他にも幾つかの事情があって移動したのだが・・・


(・・・思ったよりも、兵士が減らないわね・・・)


・・・というワルツの心の声を聞けば、どんな事情があったのかについて、大方の予想が付けられるのではないだろうか。


とはいえ、そんなワルツの心の嘆きとは裏腹に、それほど広いとはいえない市壁の上には、ヌルの護衛のために付いて来た兵士はほとんどいなかった。

では残りの兵士たちがいたのかというと・・・大体はその真下に固まっており、そこを仮設の陣として、救出作業を進めていたのである。

そう言う意味では、ワルツの策略(ひとばらい)は成功していたと言えるはずのだが・・・彼女にとっては、完全にゼロにならないかぎり納得出来ない、ということなのだろう。


まぁ、それはさておいて・・・。

ワルツは、ルシアの造った太陽が光を失うのと同時に、徐々に白化(しらば)み始めていた空に気づいてから、隣りにいたカタリナに対して問いかけた。


「・・・カタリナ?貴女は休まなくてもいいの?」


「はい。特に問題はありません。昨日は3時間も寝ましたから」


「あ、そう・・・(それいつか病気になりそうね・・・)」


「・・・そう言うワルツさんだって、寝ているところをほとんど・・・いえ、今まで一度も見たことが無いんですけれど・・・(ワルツさんの寝顔、見たこと無いんですよね・・・)」


「だって、寝ないからね」


「・・・え?」


「あ、これ、皆には内緒よ?もちろん、ルシアにもね?」


「・・・・・・そうですか」


そんなワルツのカミングアウトが実は冗談なのではないかと思いつつ、しかし彼女のことをよく知っているカタリナは、それが本当のことだとすぐに理解して、小さく溜息を吐いた。

彼女がそんな師に追いつける日は、どうやら当分の間、やってきそうに無さそうだ。


「ところでなんだけどさー。・・・この感じ、事態が急変するって気がしないのよね。デフテリービクセンだって、噛み付いた場所を変えてから動かなくなったわけだしね。そう考えると、休める内に休んでおいたほうがいいと思うんだけど?ルシアとかユリアとかシルビアとか、みんな寝てるんだから」


「・・・そうですね。・・・では私もお言葉に甘えて」


そう言うとカタリナは立ったまま眼を閉じた・・・。


(・・・まさか、それで寝られるの・・・?)


周りには騒がしい兵士たちや、今もなお必死になって指示を飛ばし続けるヌル、そして彼女の隣で補佐をしているユキAと、その様子を興味深けに観察しながらウンウンと唸っている飛竜がいるというのに、それを意に介すことなく立ったまま眠るカタリナ。


(・・・もしかして、聴神経とか、視神経とか、意識的に切断できるのかしら・・・?もしもそうだとしたら・・・・・・完全に人間じゃないわよね、それ)


・・・ワルツはそうなっていないことを祈りながら、眠っているカタリナを重力制御で作ったベッドに寝かせるのだが・・・。

その際、カタリナが頬を小さく横につり上げた様子に、ワルツが気づいた様子は無かったのだった・・・。

あー、たー、まー、がぁ・・・飽和したのじゃ!


文が長い・・・。

切れてない・・・。

読みにくい・・・。

拙い・・・のじゃ。


どうしたものかのう。

あまり文を長くしたくないのじゃ。

せめて、句読点を使って小さく分けられるような感じで書きたいのじゃ。


じゃがのう・・・。

最近の妾の文は、それが出来ぬような構造に変わってきておる気がするのじゃ。

適当に書いておるわけではないのじゃが、何故かそうなってしまうのじゃ・・・。

今度時間があるときに、ゆっくりと分析してみるかのう・・・。


さて、補足なのじゃ。

・・・本当はこの話で思い切り物語を進めてしまおうかとも思ったのじゃが、そうなるとビクセンのt・・・いや何でもないのじゃ。


で・・・他には何かあったかのう・・・。

特に今回は、めたふぁー的なモノは使っておらぬから、追加で解説することは無さそうじゃな。


あるとすれば・・・ユキBからFの姿の話じゃろうか・・・。

と言っても、書けるだけ書いたつもりなんじゃが・・・いかんせん、頭がおーばーひーとしておって、深く考えることが出来なかったのじゃ・・・。

やはり、夕食に炭水化物を食べるのがダメじゃったかのう・・・。

思考がまるで、食べた餅のように粘ってしまって、頭が回らなくなってしまったのじゃ。


明日は、もう少し違うものを食べようかのう・・・。

・・・あれ?補足じゃない?

・・・まぁよいか。

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