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6後後後-08 行く末8

「あ、ワルツ様!それに・・・リーブル卿?」


3人+1人で市民たちの様子を見ながら歩いてきたカタリナたち。

その中で逸早(いちはや)くワルツとリーブルの姿に気づいて声を上げたのは、高感度カメラが眼に搭載されたユキAだった。

そんな妹の行動に、


「えっ・・・」


と声にならない音を口から漏らしながら、立ち止まるヌル。

どうやら彼女は、ワルツのことを妹よりも先に見つけようとしていたらしい・・・。


それからヌルは悔しそうに下唇を噛みながら妹の後を追いかけてから・・・ワルツの足元に寝かされた他の妹達と、そして顔の上からコートが掛けられた兵士に気づいた後、それまでとは異なる苦い表情を浮かべた。


「・・・姉妹たちは・・・生きているのですか?」


(おびただ)しい血液が地面に広がっていて、その上、ユキCの半身は血まみれだったのである。

事情を知らなければ、ワルツとの戦闘の結果、大きな傷を負ってしまったようにも見えなくはないだろう。


そのことに気づいたのか、ワルツは小さく笑みを浮かべながら、問いかけてきたヌルに対して答えた。


「えぇ。多分無事よ?詳しいことは、カタリナにちゃんと診てもらわないと分かんないけどね」


『・・・よかったぁ・・・』


そんなワルツの言葉に、同時に同じ表情で、同じ言葉を呟くユキAとヌル。


一方。

一同の最後尾から飛竜と共に歩いてきていたカタリナは、地面に寝そべるユキBからEをそのまま無視すると・・・・・・その横を通過して、レインコートが掛けられていた兵士の隣にしゃがみ込み、躊躇すること無くそのコートを引き剥がした。


それから、彼の傷を確認し、穴の空いた胸に手を当てて・・・


「・・・ワルツさん・・・・・・いえ。なんでもありません・・・」


そう言って一瞬だけ悲しげな表情を浮かべると、ワルツが見殺しにするつもりだった兵士の治療を始めたのである。


「・・・カタリナ?私のスタンスは・・・」


「はい、分かっています。ワルツさんが動けないから、私が動く。ただ、それだけのことです。そのことで私がワルツさんを恨むようなことはありませんよ。それに・・・後で後悔しないようにするために、私はここに来たのですから」


そう言いながら、完全に失われたはずの兵士の心臓を見る見るうちに元通りに修復して、何事もなかったかのような状態まで治してしまうカタリナ。

どうやら彼女は、ワルツがどのような行動をするのか知っていて、ここまで付いて来たようである。


「かはっ・・・!」


・・・そして、兵士が息を吹き返した。

もちろん意識が戻った様子は無いが、心臓が止まっていた時間はそれほど長いものではないので、恐らく死ぬようなことはないだろう。


「ごめんね・・・。カタリナ」


自分の厄介な悩みとは裏腹に、いとも簡単に兵士の命を救ってしまったカタリナに対して、小さく呟くワルツ。

そんな言葉を向けられたカタリナは、兵士の容体が安定していることを確認してから立ち上がった後、


「私はどんなことがあっても、救える可能性のある人を見捨てるようなことはしない・・・そう心に決めて、ワルツさんに付いて来たのです。でもそのことをワルツさんや他の人たちに強制するようなことはしません。・・・別に良いじゃないですか?ワルツさんたちが消しゴムで、私が鉛筆だったとしても」


ワルツに対して笑みを浮かべながら、そう口にした。


「・・・そう・・・(なんでだろう・・・最近、カタリナの言葉が妙に重い気がする・・・)」


これが罪の重さかしら・・・などと思いながら、申し訳無さそうな表情を浮かべてそんな言葉を返すワルツ。

その後カタリナは、今度こそ近くの地面に寝かされていたユキたち姉妹のところへ足を進めると、何事もなかったかのように、彼女たちの身体に異常が無いかどうかを診察し始めたのであった。


・・・ちなみに。

そんな彼女のことを傍から見ていたユキAとヌルは・・・


『(か、勝てない・・・)』


・・・と思っていたかどうかは定かでないが、小さく震える手を誤魔化すようにして、硬く拳を握っているようであった。

もしかすると彼女たちは、カタリナの鉛筆が描く白い線を、自分たちの赤い消しゴムで消せるかどうか、必死になって考えているのかもしれない。

恐らくその白い線は、彼女たちにとって、超えなくてはならないハードルと同じ意味を持っているはずなのだから。


一方、彼女たちの近くにいて、一部始終を見ていたはずのリーブルは・・・


「・・・」


・・・いつから固まっているのか、石化の魔法を受けたようにして、ずっと唖然とした表情を浮かべたまま、放心していたようである。

どうやら彼女にとっては、ワルツの行動も、カタリナの行動も、理解の範疇を超えたものだったらしい・・・。


そして、そんなリーブルにとって、何故ここにいるのか理解できない存在の一人(?)だった飛竜にとっては・・・


「ふむ・・・。中々に興味深い話だが・・・・・・えんぴつ、とは何なのだ?」


・・・ワルツとカタリナの会話をほとんど理解できていない様子だった。

まぁ、ワルツの仲間になってまだ1日も経っていない者にとっては、理解できなくても仕方の無いことだろうか。

・・・いやそれ以前の問題か・・・。




そして、カタリナがユキたちの診察を終えて・・・更に、治療の手遅れに()()()()()市民たちがこれ以上いないことを確認した後。


「さてと。とりあえずは、大体、一段落ってところかしらね?」


ワルツは意識を取り戻した兵士たちに囲まれている飛竜を一瞥しながら、ユキAとヌルに問いかけた。

するとヌルが・・・


「・・・はい。民をお救い頂き、ありがとうございました・・・」


そんな言葉を共に、ワルツとカタリナに頭を下げる。

それに追従するようにして、彼女の隣りにいたユキAも、深々と頭を下げるが・・・しかし、彼女はヌルよりも早く頭を上げると・・・


「・・・後は、アレをどうするか、ですね」


今なお、プロティービクセンに噛み付きながら微動しているデフテリービクセンの姿に視線を向けて、眼を細めたのである。

その様子から察するに・・・どうやら彼女は、ヌルとは違って、この地に迷宮は無くてもいい、と考えているようだ。


(ふーん。元は同じ雪女(ヌル)のはずだけど、別れてから250年も経てば、考え方も変わってしまうのかしらね?)


ワルツがどこか納得したような視線をユキAに向けていると・・・


アインス(ユキA)・・・」


ワルツと同じことを思ったのか、ヌルが口を開いた。


「あなたは・・・この街に迷宮が無くてもいいと思いますか?」


「・・・」


そんなヌルの言葉が、何を言わんとしているのかを察して、考えこむユキA。

恐らく今の彼女が、率直に自分の考えを口にしたとすれば、その答えは言うまでもなくYESだろう。

一方で、ヌルが迷宮を消し去ろうとしていたワルツたちに対して『待った』を掛けたように、ユキAはこの街、そしてこの国における迷宮の存在の重要性についてもまた、理解していたのである。


そんなユキAとヌルの思考は、その大半が同じで・・・しかし、少しだけバランスが違っているだけなのだろう。

だが、その結果、彼女が口にした答えは・・・


「・・・無くていいと思います」


・・・ヌルとは逆のものだった。

ヌルやユキAの今の心境を例えて言うなら、ほぼ重さが釣り合っている天秤、といったところだろうか。

恐らくその天秤には、250年の間で、いつの間にかホコリが積み上がってしまったに違いない。


・・・しかし、その後。

ユキAは、ヌルが期待していたものとは異なる言葉を続ける。


「・・・姉さまが、いなくなってしまうのは寂しいのです」


「・・・え?」


「・・・要するに、ヌルお姉さまがこれ以降も良からぬことを考えないように、この際、迷宮を消してしまおうということです!」


そう言って、ヌルに対して、怒ったような視線を向けるユキA。

そんな彼女の視線に対してヌルは、


「・・・・・・」


・・・残念そうに眼を細めると、何も言わずに俯いてしまった。

どうやら、彼女にとっては、自分の事を抜きにして、この国ことだけを考えて欲しかったようだ。


(・・・姉妹も大変ね・・・。でも何となく分かんないでもないわね・・・)


そんな2人の姿を見て、思わず自分の姿と姉の姿を重ねてしまうワルツ。


と、そんな二人の様子を見ていると、


ゴゴゴゴゴ・・・


迷宮の方に動きがあった。


「・・・さて。迷宮を処理するかどうか・・・それをどうするか決められないというなら、この際、彼ら自身に未来を任せるっていうのはどうかしら?


『・・・・・・え?』


ワルツのそんな言葉を受けて、意外そうな表情を浮かべる2人。


「再びこの街を襲おうとするなら、そのまま消し去ってしまえばいいし、もしもそうでないなら・・・今まで通りに付き合っていけるなら、そのまま放っとけばいいと思うんだけど?だって、彼らも生きてるんだから、最後の選択くらい任せてもいいと思うのよね・・・」


「・・・・・・そうですね」


そんなワルツの言葉に、満足気な表情を見せながら小さく頷くカタリナ。


「はい・・・・・・分かりました」

「はい・・・。私もそれなら異論はありません」


ユキたちもワルツの提案に納得したようである。


・・・こうして今まさに動きを見せようとしている迷宮たちは、彼ら自身に最後の選択を託されることになったのである・・・。

色がぁ!!!なのじゃ!!!

共感覚がぁ!!!なのじゃ!!!

・・・まぁ、それはそうと・・・。

ほんと、人の心の中をどこまで書けばよいのか、悩む今日このごろなのじゃ。

・・・というか、いのべーしょんしすぎで、分かり難い文になっておるんではなかろうか・・・。

それが心配なのじゃ。


さて。

どうしようかのう・・・。

最近の数話は、いのべーしょんのテストを兼ねて、人の心の表現をこれまでとは異なる感じで書いておるのじゃが・・・それについての補足は、やはり無粋だと思うのじゃ。

・・・面倒だから、ではないぞ?

まぁ・・・本文でも補足は書いておるからわざわざ説明せんでもよいか。


あとは・・・そうじゃのう。

これまでと比べて、比喩が多くなっておるかもしれぬのう。

えんぴつ、消しゴム、天秤・・・。

直感的に書いておるものじゃから、異論は認めるのじゃ!


問題は色、かのう。

ユキたちの消しゴムの色。

最初は氷を考えて、青にしようかと思っておったのじゃが、彼女たちの頭の中に咲いているお花畑の花の色を考えると、どう考えても赤だと思うのじゃ。


一方で、カタリナ殿のえんぴつの色。

この際、えんぴつの色は黒しか無い云々がどうこう、という言う話は置いておいて・・・。

カタリナ殿のやっておることは、純粋な白だと思うのじゃ。

白衣の白・・・というよりは・・・まぁよいか。


色についての補足はそんな感じなのじゃ。


さて・・・迷宮攻略・・・。

どのルートで進むべきかのう・・・。

まさか、迷宮の外で、迷宮を攻略することになるとは思わなんだ、なのじゃ。

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