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6後後後-07 行く末7

言い回しと、文がおかしかった点を少しだけ修正したのじゃ。

「あー、ごめんね?お婆ちゃん。今ちょっと、取り込み中だから、晩ごはんはもう少し待っててね?」


「・・・魔神様。あたしゃまだ耄碌しておりません」


「じゃぁ・・・お腹は減ってないのね?」


「・・・」


ワルツに対して、ジト目を向けるリーブル。

恐らくその眼は、『そういうことを言ってるんじゃない・・・』と語っていることだろう・・・。


それからリーブルは、諦めたように溜息を吐いてから、言葉を続けた。


「・・・何故、止めたのですか?」


彼女を助けた側の者にとって、その問に対する答えは、当たり前のように『死にそうだったから助けた』の一択しか無いだろう。


答えが明らかなのに問いかける・・・・・・要するに、リーブルはその理由が聞きたくて問いかけたわけではなかったのである。

もしもこれが、気の知れた(?)ボレアス政府の重鎮同士の会話なら、すぐにその言葉の真意に気づいて、彼女が求める答えを口にしていたことだろう。


だが、人付き合いが苦手で、その上、現在絶賛作業中のワルツがそれに気づくことはなく・・・しかし、彼女が口にした答えは、ありきたりなもの、というわけでもなかった。


「いや、今日は貴女の命日じゃないし・・・」


それだけを短く答えるワルツ。

特に深く考えること無く口にした言葉だったが、リーブルにとっては何やら必要十分な意味を含んでいたらしく、


「・・・そうですか・・・」


と彼女は小さく呟いてから、再び肩を落とした。


ところで・・・


「・・・あの、魔神様?一体何をされておるのですか?」


先程からワルツは、何故か腕を上げたまま凍ってしまったかのように動かなくなったユキC(ドライ)の、その首についている見慣れないアクセサリーに対して、何やらベタベタと触れるように作業をしている様子だった。

傍から見ると、マネキンか蝋人形に飾り付けをしているように見えなくもないのだが・・・


「いやね?多分ユキC、この首輪で操られてると思うのよ。ヌルもそうだったし・・・。だから外そうと思って調べてるのよ」


という言葉の通り、彼女のしていたことは、むしろ、飾り付けとは全く逆のことだったのである。


「・・・・・・?!」


そんな彼女の言葉に、先ほど氷が当たった胸を押さえながら、思わず後退るリーブル。

同時に顔が青くなっていくところを見ると・・・相当に苦しそうであった。


リーブルがもっと若ければ、その振る舞いの理由を聞くことは無かったかも知れないが、ワルツは念の為に問いかけた。


「ん?何?もしかして、胸が苦しい?心室細動とかやめてよね・・・」


「しんし・・・?い、いえ。確かに胸が苦しいのは否定しませんが、病気ではありません。むしろ安堵しとるくらいです・・・」


「ならいいんだけど・・・」


リーブルの顔色がこれ以上悪くならないことを確認した後で、重力制御で固めたユキCの首輪の調査を、再び再開するワルツ。

しばらくして・・・


「あー、なるほど。まさに魔法と科学のハイブリッドね・・・。仕組みが全然分かんないわ」


などと少々不安なことを彼女は口にするが・・・そんな言葉とは裏腹に、


パチン・・・


そんな小さなピンが外れるような音が聞こえて、


「よしっ。サンプル確保成功っと!」


ユキCの首についていた首飾り、もとい首輪が、本来あるべき正規の形で外れたのであった。

どうやら、分割式の首輪を固定しているロックの部分については、ワルツがどうにか出来るレベルのシロモノだったようである。


その瞬間、


ガクッ・・・


と、まるで糸が切れたマリオネットのように、地面に崩れ落ちるユキC。

リーブルは、そんな彼女の姿に目を見開いて驚いた後、胸に手を置いたまま、心配そうな表情を浮かべながらワルツに問いかけた。


「・・・大丈夫なのですか?」


「まぁ、ヌルは大丈夫だったから、ユキCも大丈夫なんじゃない?詳しいことはちゃんと診察してもらわないと分かんないけどね」


「・・・そうですか」


そう言って、地面に崩れ落ちたユキCに近づくリーブル。

その際、ユキCの腕が刺さったままだった兵士を見て、彼女は残念そうに眼を伏せた。


「この兵士・・・まだ、若かったんだがね・・・」


突慳貪(つっけんどん)な態度を兵士に対して見せていたリーブルだったが、それは彼女の性格がそうさせただけであって、彼のことを恨んでいるようなことは全く無かった。

そのためか、もう少しまともな接し方をしていれば彼が死ぬことは無かったのでは、と彼女は思ったようである。

そしてリーブルは、彼に対して祈りを捧げた後、彼の胸に刺さっていたユキCの腕を抜くと、せっかく借りたばかりのコートを脱いで、彼にそっと掛けたのであった・・・。


その後で祈りを捧げ始めたリーブルと、捧げられている兵士の姿を見ながら、ワルツは思う。


(・・・今なら、もしかするとまだ助けられるかもしれないけど・・・)


・・・しかし彼女には、彼を助けるつもりはなかった。

もちろんそれは、彼が憎かったわけでも、いつも通り面倒だったから、というわけでも無い。


(一人の例外を認めると・・・その後は雪崩みたいに、全員助けないとならなくなるからね・・・)


・・・それは、彼女が以前にも考えたことであった。


例えば、戦場で、誰かが傷ついて死にそうになっていたとする。

そしてワルツやカタリナには、そんなけが人を救う手立てがあるので、全員救ったとしよう。

・・・果たしてそれで、彼女たちが救うべき人々はいなくなるのだろうか。


答えは否である。

人が生きる以上、世の中から怪我人や病人が消えることはないのだ。

それには大小の差はあるが・・・もしも、怪我も病も絶対に治すことのできる医者がこの世界にいると人々の間に知られることになれば、世界中から人が殺到してくることについては言うまでもないことだろう。


まぁ、人が押し寄せてくるだけなら、延々と作業のように、治療すればいいだけの話なのだが・・・しかし問題は、やってくる者が人ではなかった場合である。

国家、企業、ギルド・・・。

そんな組織が、利益を専有しようとして動こうとすることについても、また、必然なことなのである。


その際、2人に救いを求めにやってきた弱き人々はどうなるのか・・・。

組織的な争いが生じ、それが戦争へと発展して、それに巻き込まれて・・・。

もしかすると、救った人々よりも多くの人々が犠牲になるかもしれない。

あるいは、そんな組織に対抗する別組織が出来上がって、ワルツたちを守ろうとするかもしれない。


・・・まぁ、それは推測でしか無いのだが、人々の間で争いが生じ、そこで新しく怪我人や病人が出て・・・結果、無限ループに陥ることについては、ほぼ確実なことと言えるだろう。

実際、現代世界の歴史において、似たような事情で争いが繰り返されてきたのだから・・・。


故にワルツは、兵士の死体に対して、何もせずにただ眼を伏せたのである。

もしもここにカタリナが居れば、人を救うことを至上の目的とする彼女がどんな行動に出るかは分からなかったが、少なくとも今ここでワルツが、一旦、心臓の動きを止めた者を救うようなことは決して無かった。


(自分勝手よねぇ・・・・・・まぁ、なんて言われてもいいけど)


ワルツは数秒の間だけそんなことを考えながら、兵士に対して黙祷を捧げたのである。


その後で彼女は、自分たちに近づいてくる者の影がレーダーに映っていることに気づく。


数は7体。

内、3体はバラバラの方向から真っ直ぐにワルツたちの元へと。

そして4体は固まって行動しながら、先ほど彼女がやってきた方向から、ジグザグに市民たちの様子を診るような形で近づいてきていた。

それぞれの位置関係と移動速度を考えると・・・どうやら、バラバラの方向からに接近してきていた3体との接触の方が早そうである。


「ごめんね、お婆ちゃん。これから見ることについては、ボケたふりをして見なかったことにしてくれないかしら?」


「・・・は?」


自分を半ば馬鹿にするような口調でそんなことを口にするワルツに、少々憤りながら、そんな声を上げるリーブル。

ちなみに、何故ワルツがリーブルの名前を口にしないのかについては・・・・・・まぁ、言わずとも分かるだろう。

・・・単に名前を覚えていなかっただけである。


それからワルツは、怪訝かつ鋭い視線を向けてくるリーブルに対して、誤魔化すように手をヒラヒラと振ると・・・


「よいしょっ、と!」


と言いながら、まるで綱を引っ張るような素振りを見せた。

その瞬間、


ギュン!


と見えないロープか何かに引っ張られるような形で周囲の闇の向こう側から現れるユキB、D、E。

その際のワルツの姿に・・・


「んな?!」


リーブルは唖然として、思わず固まってしまった。


「というわけだから、黙っててね?あんまり、気持ち悪いとか言われたくないし・・・」


それぞれのユキの首輪に、()()()()腕を伸ばしながらそんなことを口にするワルツ。

そして彼女に触れられた首輪は・・・


パキパキパキ・・・


という音を立てて外れた後、宙に浮いたのである。


そして、先ほどのユキCのように、地面に崩れ落ちるユキたち。

その様子は、魔王たちを相手に戦っているというものではなく、まさに、単純作業以外の何物でもなかった。


「全く・・・。こんなもので私のことをどうにかしようと思ってたのかしら・・・。時間の無駄ね・・・」


自分の手の中で今もなお小さく光り続けていた首輪に向かってワルツがそう口にすると、首輪からは光が薄れ、まるで電源が切れるかのようにして、単なる首飾りのような見た目へと変わってしまった。

装着していた者から外れたことによって、実際、魔力的なエネルギーの供給が途絶えてしまったためだろう。


「私たちのことは放っといてくれないかしら・・・」


自分の声が、光を失った首輪の向こう側で、ユキたちを操っていただろう者たちに届くようにと願いながら呟くワルツ。


「というわけだから、カタリナたち・・・いえ、ヌルたちが来ても、このことは内緒ね?分かった?」


「・・・」


3本の腕でユキたちを抱えて地面に寝かせながら、ワルツはリーブルに対してそう声を掛けるが、彼女から返事が返ってくることはなかった。


果たしてそれは、彼女の性格がそうさせたのか、あるいは無言の同意なのか・・・。

・・・リーブルが口を開けたままで固まっていたその姿からは、ワルツが彼女の意思を推測することは出来ないのであった・・・。

うーむ・・・。

今日も頭が回らぬのう・・・。

やはり、炭水化物の摂取は頭の回転を鈍らせる気がするのじゃ。


それでじゃ。

今日は補足・・・というか解説することが多いと思うのじゃが・・・あえて何も言わないほうがいいという考え方もあると思うのじゃ。

・・・じゃから、余計なことを見たくない者は、ここから下を見ぬ方が良いかもしれぬ、と言っておくのじゃ。



というわけでじゃ。

まず、冒頭部のリーブルの質問の真意。

これは・・・『なぜ、死なせてくれなかったのか』というつもりで書いたのじゃが・・・それ以外にももう一つ意味が込められておるのじゃ。

そっちについては、あえて説明を省略するのじゃ。


で、その後のワルツが言った『貴女の命日云々』の部分。

ワルツが魔神じゃと思われておることを考えるなら、特別な意味を持つことについては、言わずもがなじゃろ?


で、リーブルが青い顔をしながら胸を押さえる部分。

胸が苦しくなってきたという意味では同じなのじゃが、これは、ユキCを操っておった見ず知らずの者に、もう少しで殺されていたというヒヤリ感が胸を締め付けたのじゃ。

殺されずに済んでよかったと思う安堵もあったはずじゃがのう。


で、兵士を見殺しにしたワルツの話じゃ。

これは・・・前にも軽く触れたと思うのじゃが、今回はそれを実践した、というわけなのじゃ。

力を持った者のジレンマ、というやつなのじゃ。

・・・と思って書こうと思ったのじゃが、ちゃんと書けておるか自信が無いのじゃ・・・。


あと、ワルツがリーブルのことを老婆扱いしておる点。

これは・・・別に、リーブルを馬鹿にするつもりで言ったわけではないのじゃぞ?

・・・素なのじゃ。


後は、リーブルがワルツの何に驚いたのか、かのう?

恐らく、3本目の腕がどこからか生えてきたのじゃろう。

・・・どことは言わぬがのう。

それと、重力制御を初めて見た上、ユキたちを無理矢理に引っ張ってきて、赤子のように扱っていたこともその理由の一つと言えるかのう。


まぁ、補足と解説はこんなところなのじゃ。



あー、プロティーとデフテリー・・・どーすればいいかのう・・・。

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