6後後後-06 行く末6
見やすくなるように、少しだけ語尾と文の並びを修正したのじゃ。
ワルツがエネルギアとの通信を終えた後。
彼女はそこにいた者達に対して、脳内(?)で会話していたために周りには聞こえていなかった話の内容の説明を始めた。
「エネルギアからの吉報よ?ユキA、それにヌル。貴女達の姉妹、なんか市民を襲おうとしてるみたい」
「それ・・・」
「吉報じゃないですよね・・・」
つい先程まで、啀み合っていたはずのユキたちが、息の合った様子で反応を返した。
そんな2人の様子に、『最初から喧嘩なんてしなければいいのに・・・』と思う喧嘩の原因。
それから彼女は、『・・・ん?』と何かを思いついたような表情を見せながら口を開く。
「そういえばエネルギア・・・、なんでユキたちが市民を襲おうとしてるって分かったのかしら・・・」
「えっ?急にどうしたのですか?」
と、地面から引き上げた後、ワルツの真横にいたユキA。
「いや、だってさ?エネルギアって空から攻撃してるわけでしょ?近接で戦闘して、直接会話してるわけではないわよね?もしかしたらユキたちは、単に市民に近付こうとしてるのかも知れないのに、何で遠目に見て『襲おうとしてる』って分かったのかしら・・・って思って」
「あ・・・そう言われれば確かにそうですね」
と相槌を打つヌル。
どうやら、姉妹で交互に、ワルツと会話をすることにしたらしい・・・。
すると今度は、
「ということは、つまり・・・」
と、カタリナが口を開く。
そして彼女は、距離が離れている上、薄暗かったために、直接見ることの叶わなかった市民たちのいるだろう方向へと視線を向けながら言葉を続けた。
「・・・今現在、襲われている、ということではないですか?」
『?!』
「いやいやいや・・・そう言う冗談は、フラグになるから言わないほうがいいと思うわよ?」
と言いながら自身の顔の前で手を振るワルツ。
すると、カタリナとは違って、遠くの方がはっきりと見えていた様子の飛竜がトドメを刺した。
「・・・ふむ。また一人、喰われたようですな」
「・・・はぁ・・・」
・・・そしてワルツは、あえて見ないようにしていた市壁の向こう側に向かって、嫌そうな視線を向けてから、仲間たちをそこに置いて飛び立ったのである。
ビクセンの町中で、ひっそりと巨大な本屋(?)を経営しているリスの獣人リーブルは、身体が急に冷えてきたことを感じて、思わず身震いした。
どうやら、老体にとって、寒さは想像以上に堪えるらしい。
そして、反射的に布団を引っ張るような仕草をしたところで・・・・・・自分が薄暗い空の下で、何故か地面に寝かされていたことに気づいて、驚きの声を上げる。
「・・・?!ど、どうしてこんな所に・・・」
そう口にしながら、最後の記憶に何が残っていたのかを思い出そうとするリーブル。
そして彼女が思い出した記憶は・・・・・・本屋の中で、爆音と共に手に傷んだ・・・そこで途切れていたようだ。
つまり、彼女の記憶の中には、他の市民たちと共に迷宮に取り込まれていた、などという記憶は一切無かったのである。
要約するなら・・・何やら爆発音が聞こえて、腕が傷んだと思ったら急に意識を失って、次の瞬間にはここにいた、ということになるだろうか。
まぁ、それはさておき。
どうやらその曖昧な記憶に、これまた意味の分からない記憶が継ぎ足されようとしているようだ・・・。
サクッサクッサクッ・・・
彼女の耳に、まるで、霜が降りた土の上を歩くような音が聞こえてくる。
いや、実際に、地面は凍っているようで、ひんやりを通り越して、痛いほどの冷気がリーブルの背中から伝わってきていた。
それでも直接地面が彼女の背中を冷やさなかったのは・・・彼女の背中に、リスの獣人特有の立派な尻尾あったためだろうか。
「・・・・・・っ」
身体を抑えながら起き上がるリーブル。
彼女が押さえた自身の身体は、普段着を着た状態だったが、それほど厚くはない室内着だったために、身体を襲う寒さをどうにかできるものではなかったようだ。
故に、近くから人が近づいてきているような気配を感じつつも、とにかく何か身体を包み込めるものがないかを探そうとしたところで・・・彼女は周囲の様子に気づいた。
「?!」
何故か雲よりも下にある太陽と、それに薄っすらと照らしだされた無数の人々・・・。
その瞬間彼女は、自分が想像以上に異常な状況下にあると察する。
そこでようやく、自分の背中から近づいてくる人の気配に恐怖を抱き始めるリーブル。
そして彼女が振り向こうとした瞬間・・・
「・・・おばあさん、大丈夫ですか?」
・・・後ろから近づいてきた若い兵士に話しかけられたのである。
「・・・・・・ふぅ。・・・だ、大丈夫だよ。ところであんた、これが一体どんな状況なのか教えてくれないかい?」
「それが、我々にもさっぱり・・・。今、意識を取り戻した者たちだけで、手分けして状況を整理しているところです。よろしければ、周囲の人々に声を掛けるのを手伝ってはいただけませんか?」
「こんなに寒いというのに、老体に鞭を打って働けと?・・・仕方ないねぇ・・・」
「申し訳ございません。代わりに、薄手ではありますが、このコートをお貸しいたします」
そう言って魔法のポーチの中から、レインコートを取り出す兵士。
そんな彼に、リーブルは内心で感謝しながら言葉を返した。
「・・・ふん、分かったよ。起きた市民たちには何と伝えればいいんだい?」
「このままここにいると魔物に襲われる可能性があるので、街の中に戻るようにと伝えて下さい。その際、もしも家が無いようなら、王城へやってくるように伝えていただけると助かります」
「・・・」
兵士の言葉を聞いた後、ろくに返事も返さずに、徐ろに立ち上がるリーブル。
そして彼女が渡されたコートを着ようとした際、彼女の服の肩に描かれていた家紋を見たためか、兵士はその意味に気づいて固まってしまった。
「ま、まさか貴女様は・・・」
「なんだい。ようやく気づいたのかい・・・。・・・全く、これだから近頃の若い者は・・・」
そう言って、大きくため息を吐きながら、肩を落とすリーブル。
・・・・・・しかし、どういうわけか、その後で兵士からは言葉が返ってこなかった。
「・・・まぁ、いいさね」
自分の正体に気づいて言葉を失ったこれまでの人々のことを思い出しながら、リーブルは肩を落としたまま、兵士の方を振り返らずに、彼女の近くで寝そべっていた市民の元へと歩みを進める。
そして、容体を確認するために、『よっこいせ・・・』と言いながら腰に手を当ててしゃがみこんだ・・・・・・その瞬間である。
チュン・・・
そんな音が、直前まで彼女の頭があった場所を通過していったのだ。
「っ?!」
それ同時に、腰を抑えながらしゃがみ込んだ高齢者とは思えない動きをしながら、身を翻すリーブル。
どうやら、侯爵として前線に立って戦っていた頃の彼女の記憶が、身体を勝手に動かしたようである。
そのためか・・・
バキンッ!!
彼女の身体を追うようにして現れた2つ目の飛翔体にも当たらずに済む。
「ぐぬぅ・・・!」
・・・ただし、ぎっくり腰には勝てなかったようだが・・・。
「何奴・・・!」
リーブルは腰の痛みに耐えながら、歯を食いしばり、自分に攻撃を加えてきた者を確認するようにして顔を上げた。
するとそこでは・・・
「・・・!?ヌ、ヌルさ・・・いや、ドライ様!?」
いつも軍務相として男性の軍人に変身しているユキCが、元の女性の姿のままで、自分に対して片手を向けながら・・・・・・もう片方の腕を、先程の若い兵士の胸に突き立てていた姿があったのである。
どうやら彼女は、突き立てた腕を介して、兵士から魔力と精気を奪っているようである。
「・・・・・・」
その姿は、明らかにリーブルに対して戦意を向けているものだったが、彼女は逆に戦意の矛を収めた。
それからリーブルは小さく息を吐いて・・・・・・そして何故か嬉しそうな笑みを浮かべながら口を開いたのである。
「・・・ようやっと、夫の元に逝かせてもらえるのですね・・・」
19年前に、今のユキたち姉妹の新しい身体を作るために、犠牲となった彼女の夫。
・・・それも、ユキCのための犠牲となって。
自身もまた、そんな夫と同じ運命を辿りそうであることを感じて・・・リーブルは喜んだのである。
そう。
魔王シリウスの麾下である彼女たちにとって、魔王のために死ぬことは、至高の喜びなのだから・・・。
それから、表情の無いユキCの指先に氷の塊が生じ始め、数秒で拳大の大きさになる。
そして・・・
チュン・・・
時速500kmを上回る速度で、氷塊がユキCの指から放たれたのである。
まるでライフリングが切られた銃から飛び出す弾丸のように、軸線方向を中心に回転しながらリーブルへと飛翔する凶弾。
本来なら一瞬で到達するはずのその氷塊が、真っ直ぐに自分に対して飛んで来る姿をリーブルがゆっくりと眺めていられたのは・・・・・・それが彼女にとっての最期の瞬間だったためか・・・。
そしてリーブルが、自分の胸に突き刺さる氷塊の感触を感じた・・・・・・といったところで、
ぽすっ・・・ことん・・・
・・・胸に当たった氷塊は、予想に反して随分と軽いもので、地面に落ちてしまった。
「・・・・・・?」
まるで、軽石・・・よりもさらに軽い何かを当てられたような感覚に、思わず怪訝な表情を浮かべるリーブル。
氷塊が途中からゆっくりと飛んできているように見えていたのは・・・どうやら本当にゆっくり飛んできていたから、ということらしい。
そして彼女が自身の胸を確かめるようにして手を当ててから、それでもやはり何も起こっていないことを確認した後、何故このような子供だましのようなことをしたのか、と少し憤りながらリーブルはその視線を再びユキCに向けた。
・・・するとそこでは・・・
「あー、ごめんね?お婆ちゃん。今ちょっと、取り込み中だから、晩ごはんはもう少し待っててね?」
・・・いつの間にか姿を現して、ユキCが身に着けていた金色の首飾りに指を当てながら、そんなよく分からないことを口にしている魔神の姿があったのである・・・。
ダメじゃー。
頭が回らぬー!!
明日辺り、もう一度見直して、修正するかも知れぬのじゃ。
うむ。
まぁ、こういう日もあるんじゃろう。
というわけでじゃ。
さっさと補足してしまうのじゃ。
冒頭の始まりの部分。
・・・よく考えたら、実際、そうじゃよな・・・。
まさか、全長300m強のエネルギアが、ユキたちとCQCをする訳にもいかぬからのう・・・。
で、次じゃ。
リーブルの件。
そういえば名前を付けた者がおったような・・・と考えたかどうかは秘密なのじゃ。
ただ、ここいらで出すと、タイミングが良いかと思って再登場させたのじゃ。
それに、調度よく、迷宮の中での記憶が無かったしのう。
余計なことを書かずに済むという意味で、書きやすい人物なのじゃ。
・・・次回どうするかが大変じゃがのう・・・。
・・・んあ!
もう、今日はやる気が底を突いたのじゃ!
寝るのじゃ!




