6後後-29 贄8
ぐろちゅーこーしょんなのじゃ!
パンパンパンパンパンッ!!
起き上がりつつあったカタリナに、容赦なく銃弾を浴びせかけるロリコン。
同時に彼女の身体を、
ドゴォォォォォ!!
先程と同様に、重力制御魔法(?)が襲いかかった。
それも、魔法が使えないはずの空間で、である。
「・・・解せません。結界を張っているというのに、どうして魔法が使えるのでしょうか・・・」
そう言いながら眼を瞑って、銃弾を見えない壁で受け止めながら、自身に掛かる重力制御魔法の分析を進めるカタリナ。
一体どれほどの大きさの重力なのかは分からないが・・・小さくはない重力が彼女の身体を襲っているのは間違いないだろう。
それでも、まるで、単にそこに立っているだけ、といった様子で佇んでいる彼女の姿は・・・ロリコンたちから見ると、まさに『化け物』そのものに見えるのではないだろうか。
『勇者様!私が敵の身体を抑えている間に、武器という武器を浴びせかけてやりなさい!』
「もうやってますよ!」
と、まるで多重人格者のような振る舞いを見せながら、銃弾だけでなく、手榴弾などを何もない空間から取り出して、投げつけるロリコン。
ドゴゴゴゴゴッ!!!
・・・そして超重力の壁の中に囚われていたカタリナは、数十個の手榴弾が爆発したことで作り出された凶風に、一切の身動きがとれないまま巻き込まれてしまった。
さらに、である。
『・・・容赦はしません』
と女神(?)が口にした途端、カタリナが包まれているだろう爆炎の中に向かって、虚空から2本ほど生じた黒い杭が猛烈な勢いで吸い込まれていった。
銃弾をものともしないカタリナだったが、黒い杭の方は受け止められないようなので、爆風と合わせて浴びせかければ有効なダメージが与えられるのではないか、と女神は思ったらしい。
「・・・やったか?!」
例えそれが死亡フラグを誘発する言葉だったとしても、そう口にせざるを得ない状況が、ロリコンの口を無理矢理に開かせる。
しかし、言うまでもなく・・・
「・・・なん・・・だと?!」
爆炎が引いた後の超重力フィールドの中から、いまだ健在な状態のカタリナが現れたのだ。
尤も、無傷だったわけではなく、杭が刺さった場所から爆風が身体の中に侵入したのか、身体の損傷は激しかったが・・・
ジワッ・・・
「・・・痛いですが、この程度なら大した問題ではないですね」
・・・しかし、彼女の身体についた傷や服の汚れは、まるで身体についたホコリを落とすかのようにして、一瞬にして消え去ってしまった。
「・・・ようやく分かりました。なぜここでも魔法が使えるのかを」
そう言うとカタリナは・・・身体の傷が治ったとはいえ、刺さったままだった杭を新しく生えてきた腕で抜き取ると、そのまま地面に放り捨てた。
その瞬間、
ドゴォォォォォン!!
彼女を取り巻く超重力が健在だったためか、凄まじい勢いで、地面に落下する黒い杭。
『なぜ・・・その場所で動ける?!しかもそれには毒が付いているはず・・・』
「・・・そうですね。あなた方の言葉で言うなら、私が化け物だからではないでしょうか?」
そう言ってカタリナは口に小さく笑みを浮かべると、一歩、また一歩と、超重力の中で歩みを確かめるように、ゆっくりと足を進め始めた。
「・・・この魔法は、遠隔地で行使されているものなのですね。この部屋の中では魔法が使えないけれど、外からなら行使することが出来る・・・そいうことなのでしょう」
『・・・』
「・・・」
そんなカタリナの指摘に、言葉を失う女神。
そして、同じく、歯を食いしばりなが、苦々しい表情を浮かべるロリコン。
「・・・それとあと一つ。分かったことがあります」
そして彼女は、杭に触れたことで分かったことを口にした。
「・・・女神、と言われているようですが・・・貴女がアルタイルですね?」
『・・・』
「え?誰だそれ?」
「杭に残っていた魔力の痕跡に、アルタイルのものと同じ『音』が残っていました。・・・あ、そういえば、ここは都市結界の外なので、アル○○ルと呼ばなくてはならないでしょうか」
と、今回は恥ずかしげもなく、堂々とそう口にするカタリナ。
「さて、彼の者の口にしたわけですが・・・どうやら杭は飛んでこないようですね・・・。私の質問の答えは、『肯定』ということなのでしょう。それでも自分の名を名乗れないというのは・・・彼に余計なことを聞かれてしまうかもしれない、と思っているからでしょうか」
カタリナはそう言ってから・・・
ダンッ!
地面が大きく抉れてしまうほど力で飛び跳ねて、一気にロリコンの懐へと飛び込み・・・
「・・・っ!」
ドゴォッ!!
バキバキッ!!
「がっ?!」
・・・彼の鳩尾に、強烈な拳の一撃を叩き込んだ。
その一撃は、ロリコンの鳩尾を容赦なく砕き・・・そして同時に、カタリナ自身の拳や手首の骨、更には腕の筋肉や骨が繋がっていた肩甲骨や鎖骨を粉々に砕いてしまう。
しかしそれでも、数秒後には元通りの形へと戻るカタリナの身体。
ところで、何故彼女の身体がそんな無敵な状態になっているのか。
実は彼女の身体の中では・・・人の身でありながら血液の中を流れるホムンクルスたちと同じナノマシンと、彼女自身が日夜調整を続けている自動回復魔法、そして最早結界魔法と言って良いのかも分からないほどに進化を遂げていた上級結界魔法が、まるで彼女とは独立した生物のように、複雑なシステムを作り出していたのだ。
故に、身体が完全に破壊されたとしても、そこに残存したカタリナの魔力と身体の欠片の中にナノマシンの一部さえあれば、元の姿に戻ることも不可能ではなかった。
ただし、脳が破壊されると、たとえ復活したとしても、記憶が残る保証は無いが・・・。
そんな彼女は、ルシアと方向性は異なるが、紛れも無く『化け物』の一人である、と言えるだろう。
身体が元に戻った後でカタリナは、呼吸困難と痛みによって完全に意識を失ったはずのロリコンに対して話しかける。
「さて。アルタイルさん。貴女には言っておかなくてはならないことあります」
その問いかけに、ロリコンから応じるような言葉は返ってこなかったが、それでもカタリナは、自身の声がアルタイルに届いているものと確信して、言葉を続けた。
「・・・その人、性犯罪者なので、勇者と呼ぶにはどうかと思いますよ?」
すると・・・
『ぷふっ・・・ぷははははっ!!』
突然ロリコンの口が、そんな少女のような笑い声を形作ったかと思うと、
『そんな下らないことを言うために、わざわざこいつの意識を刈ったわけ?』
そう言って、砕けているはずの肋骨に気を配ることもなく、起き上がってきたのだ。
「いえ。もちろん違いますよ?貴女には一度、ちゃんと言っておきたかったことがあったので、こうした場を作らせていただいたんです」
『・・・ふーん。そう。なら聞いてあげるから口にしてみなさいよ?さっきにみたいに下らないことだったら殺すわよ?』
そんな攻撃的な言葉とは裏腹に、まるで友人に向けるような口調で話すアルタイル。
するとカタリナは、いつも通りにすました様子で口を開いた。
「・・・・・・魔神様・・・いえ、ワルツ様のことは諦めなさい」
『・・・は?何を言って・・・』
「昔も言いましたよね?魔神様は『私だけのもの』だ、と・・・」
『・・・・・・ま、まさかお前!』
その瞬間、
ドシャァッ!!
グシャッ!!
カタリナの腹部を虚空から現れた黒い杭が貫き、同時に彼女の手がロリコンを頭の天辺から又先まで真っ二つに分けてしまった。
どうやら、お互いに会話は終わった、と感じたらしい。
「・・・まぁ、今は『私たち』のもの、でしたね」
光になって消えない肉塊を前に、そんなことを呟くカタリナ。
と、そのタイミングで、
ドゴォォォォォン!!
「か、カタリナ?!だ、大丈・・・ぶ・・・?!」
「カタリナお姉ちゃ・・・?!」
迷宮の核の壁を突き破って、ワルツたちが現れた。
「はい。大丈夫ですよ?」
「・・・全然大丈夫に見えないけど?」
「え?あぁ、これですか」
グチャッ・・・
『ひぃっ?!』
「あの・・・2人とも顔が青いようですが大丈夫ですか?」
事も無げに、自身の血液が大量に滴っている巨大な杭を抜き取るカタリナ。
そんな彼女を見たワルツとルシアがどんな表情を浮かべていたのかについては・・・言うまでもないことだろう。
しかしすぐに、塞がったカタリナの腹部の傷に、安堵の表情を浮かべる2人。
どうやら2人とも、勝手に傷が塞がったことについては驚いていないようだ・・・。
「・・・で、殺したわけね?」
真っ二つになってしまったロリコンを前にして、そう口にするワルツ。
「いえ。生きてますよ?前に刈り取った首なら、ですけどね」
「・・・あぁ、そんなものもあったわね」
どうやらワルツは、数時間前のことを忘れていたらしい。
「これは・・・クローンなのでしょうか?」
ロリコンの正真正銘の死体を前に、そんなことを口にするカタリナ。
「昔、クローンを作って不死の身体を手に入れる、っていう物語を見たことはあるけど・・・それを実践してる可能性は否定出来ないかしらね。どうやって記憶を引き継いでるのかは知らないけどさ?」
「・・・・・・生命って何なんでしょうね」
「さぁね。それだけは、私の口から教えることは出来ないわね」
「・・・・・・」
・・・それからカタリナは、ロリコンの死体に向かって、まるで死を弔う僧侶のように、静かに手を合わせたのである・・・。
ぬわっ?!
29話で終わらせようと思ったら、時間が無くて書ききれなかったのじゃ!
何たる不覚!!
・・・やはり、夕食がホットケーキミックスだったのがダメじゃったようなのじゃ・・・。
最初の内は血糖値が高くて頭も回っておったのじゃが、しばらく経つ(5時間?)と急激に血糖値が下がってしまってのう・・・。
頭がボーっとしてきてどうしようもなくなったから、仕方なく夜食を作って食べたら・・・すると今度は腸に血液をとられてしまって、頭がやはり回らなくなってしまったのじゃ。
・・・もうダメなのじゃ・・・。
まぁ、それは良いのじゃ。
次回、6後後章の最終話を書けば良いだけだからのう。
・・・まだ大きな話が一つ終わっておらぬが・・・6後後後章でどうにかするのじゃ。
いや、6終章にしようかのう。
名前長いしの。
さて。
補足なのじゃ。
ん?カタリナ殿の様子が・・・?
おっと。
本人に止められておるので、彼女に対する補足はしないのじゃ。
あとは・・・あれじゃのう。
冒頭の魔法が使えないはずなのに・・・という部分。
実はのう・・・いや、何でもないのじゃ。
いやまさか、本当に忘れておったとか、そんなことは・・・無いはず・・・かゆい、うま、なのじゃ。
まぁ、大体書けることは書けたはずじゃから、そんなところじゃろうかのう。
・・・書き方に満足がいかぬところじゃが、とりあえず実験的に書くという意味ではなんとかなったじゃろう・・・多分。




