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6後後-27 贄6

ぐろちゅーこーしょん

光の速度は真空中でおよそ30万キロメートル毎秒ほど、と言われている。

一方で、眼の瞬きの時間が平均して120ミリ秒と言われているので、瞬きをしている内に、光はおよそ3.6万キロを進むことになるだろうか。

あるいは、地球の1周の距離に換算するなら・・・四捨五入と誤差を含めておよそ1回転ほど回っている、と言い換えることも出来るだろう。


ちなみに、光速で進むものは、何も可視光だけではない。

例えばX線やガンマ線も電磁波の一種なので、言うまでもなく光の速度で空間中を進むのである。

ワルツが立っていた場所は大気中なので、空気の分子などに影響を受けて0.03%ほど遅くなってしまうかもしれないが、それでもわざわざ取り立てて言うほどに減速するわけではないので、まぁ大体光速、と言っても問題はないだろう。


さて。

何故その話を冒頭でしたのか。

・・・要するに、核分裂を伴う連鎖的な反応、所謂核爆発が透明な状態のワルツの目前で起ったために、様々な波長かつ高エネルギーの電磁波が、あたり一面に向かって放たれた・・・そのことを説明するためである。


ワルツに直撃する分には、電磁パルスシールドや超重力フィールドによるシールドがあるので、機動装甲の表面が焦げる程度の多少のダメージを負う可能性も否定は出来なかったが、それでも大した問題にはなりえなかった。

問題は・・・近くにいたルシアたち4人である。


当然のことだが、彼女たちは生身の人間である。

そんな彼女たちに、一瞬でも近距離からの放射線が当たったなら被爆は免れない・・・・・・いや、それ以前に、爆心地までの距離を考えるなら、強すぎる放射線のエネルギーを全身で浴びて、一瞬で蒸発してしまうレベルだろうか。

それも、瞬きをするよりも短い時間で、である。

・・・まぁそれを言うなら、この迷宮のどこかにいるだろうロリコンやカペラたちも例外ではなかったのだが・・・彼らについて後ほど説明することにしよう。


というわけで。

そんな高エネルギーの電磁波がルシアたちに当たる前にワルツが取った行動は・・・


「んがっ!!」


・・・光とは違って、媒質中でも光速で進む重力制御の力場で、無理矢理に核爆発を封じ込める、というものだった。


「エネルギーが足りない!!」


そう言いながら、機動装甲で重力制御を行使し続け、ホログラムの身体で非常食(ビーフジャーキー)に猛烈な勢いで齧りつくワルツ。


「・・・何やってるの?お姉ちゃん・・・」


・・・一瞬にして目の前に現れたかと思うと、突如として奇行に走ったワルツに対して、ルシアは怪訝な表情を浮かべながら問いかけた。


「ちょっ、たんま!今、忙しいから後で!ふぬっ!」


「(えっと・・・一人相撲・・・じゃないよね?)」


しかしルシアからは、どう見てもワルツが一人相撲をしながらビーフジャーキーに齧り付いているようにしか見えなかったようである。

ただ、それにしては随分と必死な様子だったので、ルシアはとりあえず、姉が何をしているのかについては、棚上げにすることにしたようだ。


とはいえ、ルシアから見ても、単にワルツが狂ったようにしか見えなかった、というわけではなかった。

光を一切通さない真っ黒な半球が地面から突如として発生し、その上、男たちの姿がその中へと消え去っていた様子を見ていたからである。

もちろん前記の通り、男たちの姿は幻影だったので、彼らがワルツの作り出したブラックホールの中に取り込まれているわけではなかったのだが・・・傍から見ると、業を煮やしたワルツが、男たちごとこの世界から消し去ったようにも見えなくもなかったことについては、想像に難くないだろう。


ただ実のところ、ルシアにとっては、そんな男たちのことなど、どうでもよいことだった。

彼らの姿たと共に、何よりも重要な事を目撃していたのである。


「お姉ちゃん・・・さっき、カタリナお姉ちゃんも一緒に吸い込んでたよ?手しか見えなかったけど・・・」


「ごめん、ルシア!今、大変n・・・・・・え?」


・・・ワルツが核爆発を抑えるその直前、空間制御魔法の内側にいた彼女の視点ではなく、外にいたルシアの視点からは、転移魔法で逃げ出そうとしている男たちの所にカタリナが不意に現れて・・・そして、共に黒い球体の中へ吸い込まれていく様子が見えていたのだ。




時は、核爆発が起こる前の、ルシアが男たちを見た最後の瞬間まで遡る・・・。


「来たのか?」


「・・・・・・あぁ」


空間制御魔法で遠隔地に自分たちの姿を投影しながら、同時にその場所の景色を半球のドームの壁に浮かび上がらせてルシアたちの戦闘を観察していたロリコンとカペラは、目の前の空間が歪んだことで魔神(ワルツ)の核兵器地雷への接近を感じていた。


ちなみに彼らがどこに居たのかというと・・・本来ワルツたちが目的地としていた迷宮の頭部。

人なら脳がある部分である。

実は彼らのいるこの部屋こそが、本物の迷宮の核で、ワルツたちのいる部屋は、罠を仕掛けるために用意したフェイクの部屋だったのである。


どうやら彼らは、ワルツたちが心臓の位置にある部屋に立ち寄ることを予想出来ていたようで、はじめから魔神退治をするつもりだったらしい。

これまでにあった迷宮の騒ぎの際に、彼女たちが市民を助けようとして行動していたことを知っていて、その行動パターンを逆に利用したようだ。


「んじゃぁ、逃げるか」


「・・・・・・」ブツブツ


ロリコンの言葉に、長距離移動用の空間制御魔法を唱え始めるカペラ。

どうやらロリコンの魔法とは違って、元々河渡しを営んでいたカペラの空間制御魔法なら、核爆発の影響範囲よりも外へと移動することが出来るらしい。


・・・と、そんな時。


ズボッ・・・


「?!」


・・・不意にカペラの姿が、下半身が埋まっていた地面の穴の中へと完全に消える。


「・・・ほう、斬新な移動の仕方だな・・・」


突然消えたカペラの姿にそんなことを思いながらも、彼の吸い込まれていった暗い穴の中に、一瞬に飛び込もうかどうかを悩むロリコン。

どうやら、彼は閉所恐怖症らしい・・・。

しかし、この迷宮に核兵器を仕掛けた本人である彼には、このまま悩んでいたのでは間違いなく核爆発に巻き込まれる確信があったので、意を決してその穴へと飛び込むことにした。

・・・すると、


ガシッ・・・


カペラの消えた穴から、彼のものではない白い腕が現れて、穴の縁を掴んだかと思うと・・・


ズザザザザザ・・・


・・・まるで柔らかい砂が崩れるような様子で穴の周囲が崩れ始めたのだ。

あるいは、その白い手に触れると、周囲の全てのものが形を失って崩れ落ちていく・・・そんな表現をすることも出来るだろうか。


「う、うおあっ?!」


そんなホラーな光景に、思わず場所から身を引いて、銃を構え・・・


パンパンパン!!


仲間が消えた穴だというのに、躊躇することなく発砲するロリコン。

その際、白い腕は被弾したためか、赤い肉塊へと変わり果てていたが・・・しかし、今の彼には、そんなことに気を取られている暇は無かった。

・・・間もなく核兵器が爆発するはずなのだから。


だが・・・


「・・・んな!?」


核爆発間際になって、苦し紛れに中距離転移の準備をしていたロリコンは・・・眼に入ってくる光景に眉を顰めて、魔法の詠唱も忘れてしまうほどに固まってしまった。

なぜなら・・・


「・・・くそっ!これでもダメか!」


周囲の壁に浮かび上がっていた偽りの迷宮の核に、真っ黒な何か生じて、核兵器ごと飲み込んでしまっていたからである。

その光景に彼は、核兵器の爆発が不発で終わってしまうことを直感的に感じたのだ。


「・・・地雷とか回りくどいものではなくて、俺が直接スイッチを押せばよかったか・・・どうせ、死んでも教会で蘇るんだしな・・・」


思い通りにならないことが多すぎて、思わず舌打ちをしながらそんな言葉を呟くロリコン。

・・・とはいえ、彼にとっての問題は、今のところ何も終わっていなかった。


ズザザザザザ・・・


カペラが消えて、代わりに白い手が現れた穴の周囲が、今もなお大きく陥没を続けていたのだ。


「・・・この迷宮も終わりか・・・」


ロリコンは、迷宮の核が大きく傷つくと、迷宮自体の活動が停止することを思い出しながらそんなことを呟いた。


「まぁ、いいや。今回の件で色々データは取れたしな」


そして彼は、空間制御魔法を唱えて、穴の向こう側から現れるだろう面倒事に巻き込まれる前にこの場所から逃げようとした。


・・・しかし・・・


「・・・ん?」


そんなことを言って、再び空間制御魔法の詠唱を繰り返すロリコン。

どうやら、滑舌が悪かったために魔法の行使に失敗した、と思ったらしい。


だが、何度繰り返しても・・・


「・・・できない?何故だ?」


これまでは普通に出来ていたはずの空間制御魔法が使えなかった。


それからロリコンは、目の前に透明なコンソールのようなものを作り出して何かを確認したり、何やら栄養ドリンクのようなものを飲んでから、再び魔法の詠唱を行うが・・・


「何故だっ?!魔法が全く使えん・・・」


そんなことを口にして、頭を掻きむしった。


するとそのタイミングで・・・


「・・・魔力の流れを止めて、全ての魔法を封じさせてもらいました。・・・しかし、どうしてでしょうか・・・。あなたはこうして、ここにいるはずなんですけどね・・・」


そんな声が今もなお崩れ落ち続けている穴の中心から聞こえてきたかと思うと、白かったはずの白衣を、所々真っ赤に染めた長身の狐娘・・・カタリナが、その姿を徐々に現し始めたのである。


そんな彼女に対して、ロリコンは


「・・・くそっ!」


そんな悪態を吐きながら、今まで見せたことのないような真っ青な顔をして、たじろぐように後退った。


・・・なぜなら、銃で吹き飛ばしたはずの彼女の腕が元に戻っている上、その腕に抱かれたシリンダーの中に、


「ほら。あなたと、そのお友達です。もちろん、今も生きてますよ?」


・・・先程姿を消したカペラの首と、そしてロリコン自身の首が浮かんでいたからである。

ぐぬぬぬ、なのじゃ・・・。

最後の一文で、カタリナの表情を書きたかったのじゃ・・・。

あと、黄緑色の液体に首が浮いておることも・・・。

・・・じゃがのう。

15分悩んだ挙句、書けなかったのじゃ。

・・・まぁ、これまでいいだけ書いてきておるから、わざわざ書かんでも分かるじゃろ。


というわけでじゃ。

補足なのじゃ・・・。

んー、何を補足するかのう・・・。

カペラが吸い込まれていった穴の中で、どんなスプラッタな光景が広がっておったのかについては・・・まぁ、言わなくともよいじゃろう。

・・・いや、言いたくないのじゃ・・・。


あとは・・・・・・いや、ちょっと今日は、あとがきをこの辺で切り上げるのじゃ。

明日は忙しい上、まだサイドストーリーの方も書き終わっておらぬしのう。

というわけでさらば、なのじゃ!


・・・あ、そうじゃった。

カタリナが空間制御魔法の行使を止められた理由。

あれは・・・忘れなければ、明日書くのじゃ!

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