6後後-26 贄5
修正 ガイガーカウンター→放射線検出器
名前はかっこいいのじゃがのう・・・。
ルシアとユキFとの戦闘が終わった頃・・・。
「・・・どうしてこうなった・・・」
「・・・・・・知らん」
2人の戦闘の一部始終を見ていた男たちが、あっけにとられた様子で、そんな言葉を口にしていた。
「・・・・・・くっ!」
そんなタイミングで、不意に苦しそうな表情を浮かべる、下半身が地面に埋まった裸の男。
その見た目だけなら、随分とシュールな様子に見えなくもないが・・・しかしどうやら、単に地面に埋まっていわけではないようだ。
「・・・・・・さっきから、外が騒がしい・・・」
「ん?例の飛行艇か?」
「・・・・・・あぁ。体当たりを仕掛けてきている・・・」
「飛行艇で体当たり・・・一体どこの国のものだ?戦闘艦と言えばエンデルシアだが・・・」
「・・・・・・すまないが、判断できるほどの知識は持ち合わせていない・・・」
そう言ってから、眼を瞑って、何かに集中するような素振りを見せる裸の男。
その様子からすると、眼を瞑ることで、迷宮の外の景色が見えるようだ。
「思い通りにならないことばかりだなぁ・・・。例の施設での出来事もそうだが・・・」
すると、そんなどこかで見たことのある男(以下、男A)は、じっと黙っていられない性分なのか、腕を構えてから言葉を続けた。
「・・・けちがつき始めたのは、あの研究者がスカービクセンで反乱を起こしてからだったな。まさかあんな方法でデータを消し去るとは思っても見なかったぜ。お前はどう思う?」
「・・・・・・」
裸の男に対して問いかける男A。
しかし、裸の男の方は目を瞑ったままで、その言葉に反応する素振りは見せていないようだが・・・・・・いや、しばらく沈黙が続いた後で、徐ろに口を開いた。
「・・・・・・なぜ昔のことを今更になって持ちだして来てるのかは分からんが・・・・・・確かに、あの時の研究結果さえあれば、今、俺がこんなことをしなくても済んだんだがな・・・」
と言いながら、薄っすらと眼を開けて、自分の手のひらに視線を向ける裸の男。
恐らく彼の眼には、迷宮の外で動く、プロティービクセンの巨大な腕が見えていることだろう。
「ほんとな。俺もここに居なくて済んだしな。それに、これまで迷宮の分析のために犠牲になってきた奴隷のロリっ子NPCたちも、無駄にならずに済んだんだよな・・・。一人くらい俺にくれても・・・・・・」
そう言ってから男Aは急に何かを思い出したようにして一瞬だけ固まると、ふとある者の名を口にした。
「そういえば、あいつ・・・無事なんだろうか。魔神に誘拐された幼女・・・なんて名前だったか・・・あ、イヌか」
「・・・・・・イブだ」
「何でお前が覚えてるんだよ。まさか、お前、ロリコンか?」
「・・・・・・お前が人の名前を覚えられないだけだ」
男たちが、そんな不毛なやり取りをしていると・・・もう一人分の声がどこからともなく聞こてくる。
『喋りすぎですよー。魔神に聞かれてるかもしれないのに、そういう情報を口にするのはどうかと思いますよ?』
「いや、悪りっ。でも、分かってんだろ?俺が黙ってると息できなくなって死ぬ病にかかってること」
『そうだったんですね。単に口数の減らない性犯罪者かと思ってました』
そう言いながら、その声の主は、小さくため息を吐いた。
そんな声の主に、
「あれ?そういえば、めが・・・いや、貴女様って、誰かに似てるような・・・」
男Aがそんな言葉を口にした時だった。
ザンッ!!
「っ?!」
彼の足元に、突如として背丈ほどのロングソードが現れたのである。
『・・・余計なことを喋ると、今度は頭のてっぺんにソレを刺しますからね?あ、それが刺さって命を落とすと、復活できないので注意してくださいね?』
「・・・」
そんな女性の言葉に、喋っていないと死ぬはずの男Aは、口を閉ざした。
するとそんなタイミングで・・・
ユラリ・・・
男たちの前にある、何も無いはずの空間が一瞬だけ揺らいだのである。
それに最初に気づいたのは・・・辺り一帯に空間制御魔法を行使していた、裸の男だった。
「・・・・・・魔神か」
「来たのか?」
「・・・・・・あぁ」
・・・どうやら、ワルツが、男たちへと接近することに成功したようだ。
数十秒だけ時間は遡って・・・
今度はワルツの視点から、である。
(随分とよく喋る男ね・・・っていうか、何でロリコンが生きてるのよ・・・)
首を跳ねられて今はカタリナのバッグの中にいるはずのロリコンが、何事もなかったかのように話している姿に、そんなことを思うワルツ。
同時に、地面に埋まっている男についても思い出すことがあった。
(こいつが・・・カペラね。前に一度だけ顔を見たことがあるから間違い無いでしょ。というか、姿を見せないと思ったら、こんなところで埋まって・・・・・・迷宮を操作してたのね)
どうやらワルツは、プロティービクセンが人の形になってしまったのは、カペラが操作していたから、ということに思い至ったようだ。
ところで一体どうやって、特別に警備の厳しかったはずのプロティービクセンの核に、彼らは侵入できたのか・・・。
ワルツは、同時に、ふとそんなことも考えたが・・・大小様々な魔物たちが押し寄せていたビクセン市内の様子と、市民の避難に当たらなければならなかった兵士たちのことを思い出して、その理由に一人納得した。
(というか、もう一人いんの?声だけしか聞こえないけど・・・)
彼女は周りの景色に目をやりながら、2人以外に誰も居ないことを確認するが・・・
(・・・うん、居ない。魔力を使った無線通信的なものかしらね?)
可視光、赤外線、ミリ波レーダー、音響探査・・・。
その他様々なセンサーで辺りの空間をスキャンしてみたが・・・どうやら2人以外に人影は無さそうであった。
その上、自分が作り出した無線機以外の人為的な電波を検出することが出来なかったので・・・ワルツは声の発生源を、魔力を用いた無線通信、ということで片付けることにしたようである。
(さてと・・・)
一通り、得られた情報を頭の中で整理した後、彼女は次なる行動に出ることにした。
ちなみに、ルシアが戦っている間、ワルツは何をしていたのかと言うと・・・簡単に言うなら、周囲の空間の歪みを計測していたのである。
もしも空間制御魔法が、単に周囲の時空を歪めているだけなら、作り出されている迷路のようなフィールドにも、入り口とゴールがあるはずだった。
少なくとも光という形で、彼らの姿は魔法の外まで届いていたので、その経路さえ見つけることができれば、その場所へとたどり着くことも不可能ではない・・・彼女はそう考えていたのだ。
結果、ワルツは、機動装甲の全身に搭載されていたセンサーを駆使しながら、数分に渡って男たちの周囲をグルグルと周り、どうにか空間制御魔法の抜け穴を見つけることに成功する。
そして彼女は・・・いよいよ、その場所へと足を進めたのである。
(・・・・・・あれ?)
そして、抜け穴を通って、男たちの側へと降り立った・・・はずのワルツ。
しかしそこには・・・
(誰もないない・・・)
・・・そう。
男たちの姿はどこにも無かったのである。
どうやら彼らの姿は、ここではない別の場所から投影されたものだったらしい。
(・・・私にも見える・・・幻影魔法?)
これまでに見たことのなかった新しい魔法に戸惑うワルツ。
しかし、その戸惑いも、すぐに中断せざるを得ない状況に陥ってしまう。
ピッ・・・
そんな電子音がどこからともなく聞こえてきたのだ。
(・・・あ、これ罠ね・・・)
音がセンサーに届いた瞬間から加速を始めた思考空間の中で、そんなことを考えるワルツ。
それから彼女は、自身の火気管制システムがターゲットを認識するまでの数マイクロ秒の間で、辺りの景色を見渡した。
(この感じだと・・・まぁ、爆弾よね。前にも同じことがあったし・・・)
と思いながら周囲の景色に眼を向けていると、床に埋まっている四角い箱のようなものが眼に入ってくる。
(ふーん・・・あれが爆弾の本体ってわけね)
流石に数マイクロ秒の間では、慣性の影響で身体を動かせないので、カメラからの視覚情報だけでその箱の分析をするワルツ。
(あんな小さな爆発物、大した問題じゃ・・・)
そこまで考えてから・・・彼女は固まった。
(・・・あれ?なんか地面を掘り起こした跡があるんだけど・・・)
そんなことに気づきながら、同時に機動装甲に搭載されていたあるセンサーにも意識を向ける。
(・・・・・・ふーん・・・)
・・・そこまでがワルツにとって、正気を保てる限界だった。
なお、彼女が見たセンサーは・・・放射線検出器である。
・・・もうここまで言えば、何が埋まっているのかは・・・まぁ、察しがつくだろう。
「・・・ちょっ!!」
ピカッ・・・
・・・そしてワルツの目前で、ウラン235と中性子、あるいは重水素と重水素化リチウムの連鎖的な反応が始まったのである・・・。
ちゅどーん、なのじゃ。
いやの?
ポリ窒素爆弾とどっちしようか悩んだのじゃのが、実現可能性を考えると、原子爆弾か水素爆弾の方が圧倒的に現実的じゃったから、こっちに決めたのじゃ。
なんて言ったって、某家庭用ゲーム機よりも低レベルなコンピュータを積んだ宇宙船が、月に人を送り届けた・・・それよりも前に作られておった爆弾じゃからのう・・・。
むしろ、計算が大変というよりは、ウラン235に対する爆縮レンズの爆破タイミングのシンクロの方が大変じゃから、どんなに高性能のコンピュータがあっても、あまり意味は無いんじゃがのう?
・・・まぁ、無いわけでもないかのう・・・。
あるいは、ルシア嬢かワルツの重力制御魔法があれば・・・・・・いや、なんでもないのじゃ。
このネタは後で使わせてもらうのじゃ。
さて、補足なのじゃ。
しっかし、どこまで補足するか・・・なのじゃ・・・。
イブ嬢の父親の話。
彼がどのような人間じゃったのか書きたいんじゃが、それほど重要な話ではないから、本編で書こうかどうか悩むところなのじゃ。
・・・多分じゃが、ワルツがそのことを知ったところで、イブ嬢には教えんと思うしのう・・・。
・・・まぁ、もう少し様子を見て、書けるようなら書く。
書けぬようなら・・・あとがきかサイドストーリーで書く。
これじゃのう。
さて、あとは・・・第3者の存在かのう。
・・・まぁ、誰かはだいたい分かるじゃろ?
・・・語尾を伸ばすのを止めたコルではないぞ?




