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6後後-23 贄2

こーしょん・・・?

ドゴォォォォ!!


ユキF(大)の放った、強大な氷魔法。

それはルシアの放つ魔法とはまるで異なっていた。


一体どう違うのかを具体的に言葉で説明することは難しいのだが・・・例えて言うなら、同じ属性の上位魔法と下位魔法の違い、と言えば分かるだろうか。

ルシアの放つ氷魔法を、液体ヘリウムを作り出して投げつけるようなものだとすると、ユキFの魔法は、凍ったという結果だけを残す(ことわり)の魔()

単純な出力だけで見るならルシアの魔法の方が強い、と言えるのだが、ユキFの魔法の完成度の高さは、同じ魔法として比較できないほどに、異次元のレベルにまで昇華されたものだったのである。

まさに魔王の放つ一撃に相応(ふさわ)しい魔法であったと言えるだろう。


そんな凶悪な魔法が、まるで星屑を散りばめたようにキラキラと輝く迷宮の核の床スレスレを、まるで獲物を求めるかのようにして蛇行しながら進んでいくのだが・・・・・・しかしそこにいたのは、歩く理不尽のワルツとルシア。

逃げも隠れもせず、面前に手を(かざ)すと、応酬のための魔法(?)を詠唱することなく放ったのである。


ルシアが放ったのは火魔法・・・ではなく、何度も使う内に得意になっていた光魔法だった。

それも、可視光ではなく、もっと波長の長い、中赤外線から遠赤外線に属する類の熱線のレーザーである。

物体を温めるという意味では、炎で(あぶ)ることとほぼ同義ではあるのだが、レーザーであるが故にロス無く加熱できるという特徴があった。

あるいは、拡散する形で反射した際、目に入っても失明する危険が少ないという特徴もあるだろうか(ただし、熱いが)。


そんなレーザーの問題点を上げると、浸透するわけではなく、レーザーが当たっている表面だけが加熱されるので、熱の伝わりにくい物体を加熱する用途には適さない、という点だろうか。

もちろんそれは、氷も例外では無かった。

ただ、出力を上げれば上げるだけ、物体に対してエネルギーを効率よく与えることができるので、大出力の魔法を行使するルシアにとっては、非常に使い勝手の良い魔法だったのである。


・・・そしてそんなお互いの魔法が衝突した結果、


ジュッ・・・


まるでフライパンの上で水が沸騰して弾けるような音を上げた後・・・・・・2つの魔法は爆発することも無く、一瞬だけ生じた闇の彼方へと消え去ってしまった・・・。

このまま放置しておくと、水蒸気爆発か何かが起こると思い、ワルツが重力制御で2人の魔法ごと圧縮したのだ。


・・・なお、もしかしてルシアの魔法はいらなかったんじゃ・・・という疑問については、どうか心の中のブラックホールに投げ込んではもらえないだろうか・・・。


まぁ、それは軽い冗談だが、エントロピーの均一化という側面では十分な効果を持っていたらしく、ワルツが魔法に対する重力制御を開放した後には、何も残ることはなかった。

これがもしも、均一化されずに大きなエントロピーの差として残っていたなら、分厚い迷宮の迷宮の壁に穴を開けて、その外側へともう出しなくてはならなかったはずである。

ルシアの魔法は、その手間を省くために、十分な効果を持っていたようだ。


・・・まぁそんな小難しい面倒な話はそれはさておいて。


「・・・っ!」


当然のことながら、魔法が消えただけでは、戦闘が終わったわけではなかった。


ユキFが、ワルツ達から一定の距離を保ったままで、横に駆けながら、大量の氷魔法を行使し始めたのだ。

しかも、その一つ一つが、先ほどの魔法と同等の効果を持つだろう超高度な代物だったのである。


「うひゃっ?!」


自分たちを襲ってくる、とんでもない氷魔法の嵐に、ワルツの後ろに立っていたシルビアが、そんな声を上げながら頭を抱えた。

・・・その際、無意識の内に、真っ白な天使の姿になっていたのだが・・・おそらく、今の彼女なら、ユキFの全ての魔法を受けたとしても、死ぬようなことは無いのではないだろうか・・・。


「後輩ちゃん!戦闘中に眼を瞑るとか、自殺行為よ!」


と言いつつ、ルシアの後ろのいたユリアが、幻影魔法で作った巨大な腕を使って、飛んできた氷魔法の1/10を握りつぶした。

残り9/10も難なく排除できたようだが・・・このまま自分がでしゃばっていては、前列で戦っているワルツたちに申し訳ないと思ったのか、あえてスルーしたようだ。

・・・例え命の危険を感じていても、上司の面目を保つ部下の心遣い、というやつである。


「・・・なんか、余裕そうだから、防御はユリアたちに任せていい?」


『ちょっ・・・』


・・・しかしどうやら、上司には、バレていたようだ・・・。


「(作戦よ、作戦!このまま攻撃受けてても、私の非常食が底を突くまでは問題ないけど・・・いつまでもそういうわけにもじゃない?いつ、ユキFの魔力が尽きるかも分からないわけだしさ。っていうか、あいつらを逃すわけにもいかないしね?)」


と小声で喋りながら、ルシアの放った魔法とユキFの魔法が衝突した瞬間に生じる爆発を消し飛ばしつつ、横目でチラッと2人の男たちに視線を向けるワルツ。


「(具体的にどうするんですか!?)」


「(そうね・・・。ユリアとシルビアが、ユキFの足止めをしてる間に、ルシアがユキFの首についているあの首輪を破壊する、って感じはどうかしら?どうせ、またアレで操られてるんでしょ?きっと)」


というワルツの言葉に、3人がユキFの首に対して視線を向けると、安物のメッキのように黄金色に輝く首輪が眼に入ってきた。


「(この距離から、あんな小さいものを破壊するのは私じゃ無理・・・じゃないけど、ルシアも出来るわよね?)」


「(うん・・・。でも、動いてると難しいよ?)」


「(・・・ということなのよ。だから、ユリアとシルビアがどうにかユキFの身体を押さえてくれないかしら?ユキFの首が飛ぶところなんて・・・()()みたくないでしょ?)」


なお、実際に首が飛んだのは、顔の見た目は同じだが、もっと身長が低くて胸の小さいユキAである。


「(い、いや、無理ですよ!)」


と、思わず口に出してしまうシルビア。

彼女には、どう考えても、まるで全盛期の力を取り戻したようなユキF(魔王)を抑える手立てが想像できなかったようだ。


・・・が、そんなシルビアの口を横から、そっ、と抑える者がいた。


「(・・・お任せ下さい)」


・・・ユリアである。


「(この命に変えましても・・・)」


「(いやいやいや、死んだら意味ないからね?あとで、カタリナに死ぬほど痛い目に合わされても知らないからね?)」


「(・・・承知しました)」ニヤリ


と、どこかにいそうな魔王の忠臣(ちゅうしん)のように、意味深げな様子で笑みを浮かべるユリア。

・・・なおその笑みは、(かつ)てカタリナに拷問されかかった時のことを思い出した結果、顔が引きつってしまいそうになり、無理矢理に笑みを浮かべてごまかしただけ・・・というのは、彼女だけの秘密である。


「(じゃ、じゃぁ、その間、ワルツ様はどうするんですか?!)」


「(え?私?それはもちろん・・・・・・どうしようかなぁ・・・)」


『えっ・・・』


勢い良く打ち上がっていたロケットが突然失速して落ちてくるかのようにして、急に消沈したワルツに、3人は思わず怪訝な視線を向けてしまう。

そんな一同の注目を浴びたワルツの眼は・・・しかし、仲間の方を向いてはいなかった。


その視線は・・・ユキFが先ほどまで立っていた場所に向けられていたのである。

すなわち、数えきれないほどの(むくろ)たちのところへ・・・。


(魔力を回復するために、市民たちを犠牲にしたのね・・・。あの様子からすると、首輪で操られて無理矢理に、って感じでしょうけど・・・。他のユキたちの姿がないところを見ると、もしかして一緒に喰べちゃったのかしら?)


・・・そんなことを考えて、ワルツは眼を細めていたのだ。


もちろん、考えていたことはそれだけではない。

ここでユキFをどうにかして、彼女を操っているだろう男たちを片付けて・・・果たしてそれで何もなく終わるのか・・・。

ワルツには、他にもまだ何かあるような気がしてならなかったのである。

それにはいくつかの理由があるのだが・・・まぁ、それについては後ほど話すこととしよう。


それはともかく、現状がいつまでも長く続くわけでは無かったので、事が動く前に、この迷宮の中に取り残された他の市民たちをどうにかして助けなくてはならないことは確かであった。

故に、個々を3人に任せて、超速で来た道へと戻ろうかと、ワルツは本気で考えていたのだが・・・


(死体が何人分あるかは分からないけど、この感じ・・・はっきり言って絶望的よね・・・)


薄々と、そんなことも脳裏を()ぎり始めていたのである。

目の前にある躯の内、部屋の中心に近い部分の骨が液状に溶けて、床に染み入っているところを見ると、恐らく見た名以上の人々が犠牲になっているのは間違いないだろう。

故に、可能性の話で考えるなら、ユキFと迷宮とで、残りの3割の市民たちを全員喰べてしまった後であることも否定が出来なかったのである。

その場合、この場にルシアたちを置いて一人だけ離れるのは、骨折り損、という言葉で説明できないほどの愚策でしか無かったのでる。


そんな懸念が、ワルツのニューロチップの中で渦巻いて・・・2秒ほど経ってから、


「・・・うん。残念だけど、まだ救えていない市民たちのことは、一旦棚上げにさせてもらうわ」


ワルツは、救えていなかった市民たちの救出を、ユキFと男たちの対処が終わるまで、凍結することにしたのである。

すなわち・・・助けることを諦めた、とも言えるだろうか・・・。


「・・・じゃぁ私は、男たちへの対処をするわ。みんなは、さっき言った通りの手筈で行動して頂戴」


「うん!分かった!」

「お任せ下さい」

「えっ、ちょっ・・・」


・・・そしてワルツたちは、目の前の者達に対して、バラバラに行動を始めたのである。

ぬー・・・

今日はのう・・・

あれじゃ・・・

・・・なのじゃスタイルで書いて、修正した・・・的な書き方をしたのじゃ。


具体的にはの?

・じゃ→だ、である

・かのう→だろう、だろうか

・たのじゃ→た

・ルシア嬢→ルシア

と言った感じなのじゃ。


・・・ぬ?

最後の変換がおかしい?

・・・さよか。

ならば、ずっと『ルシア嬢』で書くかのう・・・。

・・・嘘じゃ。

一々、『嬢』を書くのが面倒じゃから、嫌なのじゃ。

一発で変換できないのじゃ。


・・・さて、補足なのじゃ。

魔法についての補足なのじゃ。

ルシア嬢の魔法なのじゃが・・・RPGで言うと、登場人物が最初に覚える魔法をずっと使っておるようなものだったのじゃ。


で、ユキF殿は、嘗ての魔王じゃしのう。

上級魔法(氷)を使いこなしておるのは、アタリマエのことなのじゃ。


ちなみにじゃ。

ルシア嬢の得意な光魔法も、全てが下級魔法なのじゃぞ?

結局、赤外レーザーにしても、可視光レーザーにしても、X線レーザーにしても、光の波長が異なるだけで、本質は皆同じく、ただ光っておるだけじゃからのう。

・・・果たして嬢が、上級魔法を覚える日はやってくるのじゃろうか・・・。


あとは・・・そうじゃの。

ユリアの幻影魔法や、妾の言霊魔法は、変身魔法から派生したものじゃから下級魔法ではないぞ?

・・・まぁ、話す機会があったら、説明するのじゃ。

あまり重要ではないから、本編で語るか、サイドストーリーで語るかは分からぬがのう・・・。

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