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1.2-07 町への旅7 ↓ 以降乱調注意

2017/11/4 微修正

 ワルツが荷電粒子のビームを放って、森を蒸発させた後。彼女たちは誰にも会うこと無く、およそ2時間ほど街道を歩いて、暗い森を抜けた。


「いやー、久しぶりの()()()ね!」


「うん?しゃば?」


「……まぁ、簡単に言うと太陽の下に出てきた、ってことよ?多分」


 業界用語(?)がルシアに通じなかったためか、適当に誤魔化すワルツ。

 それから彼女は、街道を逸れて、背の低い草むらで立ち止まると、その上に意識のない狩人を寝かせて、ルシアと2人で彼女が目覚めるのを待つことにしたようである。


「ここで狩人さんが目を覚ますのを待ちましょうか?」


「うん……」


 そんなワルツの言葉を聞いて、そこにあった切り株へと腰を下ろすルシア。その際、彼女は、なんとも言いたげな複雑な表情を、ワルツへと向けていたようだ。

 その意味に気づいたのか、ワルツは、おもむろに、こんなことを口にし始めた。


「実はね?ルシア」


「……うん?」


「私ね……ここに来て、すっごく気になってることがあるのよ」


「……何?」


「いやさ?今、歩いてきた道……本当に合ってたのかなって……」


「えっ……」


 思い返しても1本道だった記憶しか無かったためか、眉を顰めるルシア。一体どこをどう迷ったら、道の間違えようがあるのか、彼女には理解できなかったようである。

 そんなルシアに対し、ワルツは言葉を続けた。


「……良い?ルシア。ここまでの道案内は、狩人さんだったのよ?彼女が普通の道を歩いて森を抜ける確率と、獣道みたいなところを歩いて近道して森を抜ける確率。貴女はどっちが高いと思う?」


「えっ……な、なんか……それを聞いたら、私も道を間違えてる気がしてきたかもしれない……」


「でしょ?私もちょっと自信が無いのよね……」


「「……んー」」


 そして、2人で頭を抱えながら、考え込む様子のワルツとルシア。

 そんな空気がおかしかったのか、ワルツはクスッと小さく笑みを零してから、その口を開いてこう言った。


「……ま、それは冗談だけどね」


「……えっ?」


「ルシア、さっき……私が何者なのか、って考えてなかった?」


「えっと……うん。だって……さっきの人、”勇者”って人なんでしょ?おとぎ話で、勇者さんが、悪い人をやっつけるって話を見たことがあったから……。もしかしたら、あの人、偽物の勇者だったかもしれないけど……」


「なるほどね……」


「でも、お姉ちゃん、その強いはずの勇者さんを、簡単に倒しちゃったから、元はどんなことをしてた人なのかな、って……」


 そう口にして、俯くルシア。もしかすると彼女は、ワルツのことを、勇者の”敵”と考えてしまったのかもしれない。すなわち、この世界にとっての正義の敵――”悪”かもしれない、と。まぁ、ワルツからすれば、正義も悪も関係なく、ただ呑気に歩いていたらいきなり襲われたので、それに対し反撃したに過ぎないのだが。

 それからワルツは、ルシアに対して苦笑を向けつつ、こんな言葉を口にする。


「私は、ただの流れ者よ?間違っても、どこかのお姫様だったり、有名な魔法使いだったり、魔王だったりする、なんてことは無いからね?むしろ私としては……ルシアがなんであんなに強い魔法が使えるのか、そっちの方が知りたいかしら?」


 その言葉を向けられたルシアは、少々面食らったような表情を見せた後、言い難そうな様子で返答を始めた。


「私も……よく分かんない。ただ、お父さんやお母さんに……お前は魔法が下手だから、人前では絶対に使っちゃいけない、って言われてた……」


「……なのに私の前で使ったの?」


「うん……。だって……お姉ちゃんの魔法って、何となく私と同じような気がしたから……」


「……そういうことね。なら、おあいこじゃない?だって、私も、何で自分があんな機能――魔法が使えるのか、分かってないんだから、さ?」


「……お姉ちゃんも?」


「えぇ。ルシアと同じよ?」


「……そっかぁ」


 そう言って、どこか安心したような表情を浮かべるルシア。そんな彼女はもしかすると、ワルツが何者なのか、という疑問よりも、もっと別のことに対する答えを探していたのかもしれない。



 それから15分ほどが経過して――


「…………はっ?!肉?!」


――と、意味不明な発言を口にしながら、草むらで横たわっていた狩人が眼を覚ました。おそらく彼女は、狩りが関係する夢でも見ていたのだろう。


「……どうしたんですか?狩人さん……」


「わ、ワルツか……。実は……悪い夢を見たんだ……。盗賊が魔物を討伐して、そのまま道端に捨てる夢を、な……」ぷるぷる


 そう言って、身を震わせながら、頭を抱える狩人。その夢(?)は彼女にとって、耐え難い苦痛(?)を伴っていたようである。

 それから彼女は何かを思い出したのか、再び、バッ、と顔を上げて、ワルツに対し詰め寄った。


「そ、そうだ!ワルツ!あの、勇者を名乗っていた連中はどうなった?!」


「あー、あの人たちですか?あれ、勇者なんかじゃなくて、やっぱりただの盗賊だったみたいでしたよ?むしろ、盗賊ですら無くて、ただの通り魔と言うか……」


「勇者じゃ……ない?」


「えぇ。まさか、道を歩いてる”か弱い”女子3人に斬りかかってくる勇者なんて、いるわけないじゃないですか?なので、ルシアと一緒に懲らしめておきました。ねー?ルシア?」


「う、うん……(かよわい?)」


「そ、そうか……」


 ワルツとルシアの反応を見て、大きな溜息を吐き、がっくりと俯く狩人。その溜息の内訳が、安堵よりも、疲れの色が濃いものだったところを見ると、一撃で意識を刈り取られてしまった彼女は、腕にそれなりの自信があったようである。

 その様子を見たワルツは――


「(この人も色々と何か隠してそうよね……)」


――と、狩人が本当に”狩人”なのか、疑っていたようである。

 その身のこなし、所持するダガーの数、そして彼女の村での役割などなど……。考えれば考えるほど、ワルツにとっては、狩人が単なる”狩人”には見えなかったようだ。



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