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6後後-12 2つの迷宮1

『わ、ワルツ様ー!!』


「あー、ごめん・・・今、取り込み中・・・」


『ええっ・・・』


プロティービクセンとデフテリービクセンが街へと集中してやってきた光景を前に、頭に手を当てて何かを考え込んでいる様子のワルツ。

そんな彼女にユリアとシルビアは話しかけたわけだが・・・深く考え込んでいるためか、ワルツから『話しかけないで』オーラ(と言葉)が漂ってきていた。


故に、話しかける先を失った彼女たちは、ワルツの隣でフラフラと宙に漂いながら、周辺の景色に眼を向けているルシアに状況を問いかけてみた。


「ルシアちゃん?何かあったんですか?」


と、口にしたのは、シルビアである。

ちなみに、ユリアの方は、つっけんどんな様子で会話を遮ったワルツの次の言葉(指令)を待っている様子で、静かに眼を瞑りながら、ワルツの側で(たたず)んでいる。


「なんかお姉ちゃん、わざわざ街を守んなくても良いんじゃない?って悩んでるみたい」


「・・・街を放棄するっていうことですか?」


「うん。だって、あの大っきな魔物(プロティービクセン)が地面から出てこようとしている時点で、街の半分・・・とまではいかないけど、かなり広い範囲で建物が壊れちゃったでしょ?それに、別の迷宮も来てるし・・・」


と言いながら、街に入った所で、どういうわけか立ち止まっているプロティービクセンに眼を向けるルシア。


「確かにそうですね。こんな状況ですし、人々を移動させたほうが良いかもしれないですね。外にいた魔物も片付いたみたいですからね・・・」


天使化したシルビアの眼からは、真っ黒な視界であってもその向こう側が見えているようで、町の外で山のように積み上がっている真っ黒に焦げた魔物の死体に対して眼を細めた。

どうやらエネルギアが大方燃やし尽くしたらしい。


「だから、逃げようと思えば、多分逃げられるよね・・・って話をしてたの。そうしたら、お姉ちゃん、考えこんじゃって・・・」


「・・・何かお考えでもあるんじゃないでしょうか?」


「んー、何を悩んでるのかなぁ・・・。一気に倒しちゃえばいいのに・・・」


「・・・そ、そうですね」


そんなやり取りをしながら、ワルツに向かって視線を送る2人。


「そういえば・・・シルビアお姉ちゃんたちはここにいていいの?」


ルシアが何かを思い出したかのように、再び口を開く。


「え?何の話ですか?」


「だって、ユキちゃんたちと一緒に情報を集めるのが、2人の仕事じゃなかったっけ・・・?」


「・・・」


そんなルシアの指摘に、自分の任務をすっかり忘れていたシルビアは思わず言葉を失った。


・・・しかしすぐに、常日頃から例えピンチであってもチャンスに変えてしまうユリアのことを思い出し、必死に言い訳を考え、口に出してみた。

そう、彼女は、ユリアの後輩なのだから・・・。


「えっと、戦術的に撤退してきました!」


「そ、そうなんだ(逃げてきただけじゃ・・・)」


・・・しかし、どうやら、ユリアのようには喋れないようだ・・・。


「ほ、本当ですよ?おにぎり食べようとしたら、地割れに遭って谷底に落としちゃって、ワルツ様に慰めてもらおうと思って戻ってきた・・・なんて、そんなことないですからね?」


「えっ・・・うん。それは・・・・・・うん・・・」


突っ込むべきか、突っ込まないべきか・・・悩んだ挙句、ルシアはそもそも聞かなかったことにしたようである。


すると、そのタイミングで、ワルツのシンキングタイムが終了した。


「んー、面倒くさい。やっぱり、迷宮を片付けちゃいましょう」


そんなことを口にするワルツは・・・2つの選択肢を考えていた。


一つは、彼女の言った通り、このまま、2体の迷宮を片付けてしまうこと。

これについては、補足する必要は無いだろう。


そしてもう一つが、ルシアが言っていたように、町の人々を連れて逃げること、である。


この場合、いくつか人々を運ぶための移動手段が考えられるのだが、何れにしても、ワルツやルシアの姿を町の人々に見られてしまう可能性が少なくはなかった。

今は、空の闇に溶けるようにして浮いているので、遠くからはワルツたちの姿は見えなかったが、もしも町の人々を運ぶことになった場合、状況や運び方によっては、顔を見られる可能性が否定出来なかったのである。


ちなみに、彼女は何故今更になって、人に顔を見られたくないと思ったのか。

まぁ、言うまでもなく、その原因は、現代世界から来たと思わしき者達の影にあった。

市民の中に、彼らが紛れているかもしれないことを考えて、情報を漏らしたくないワルツは、(だい)それた行動には出たくなかったのである。


とはいえ、何かしらの行動に出ないと、目の前で町や人々が迷宮たちに飲み込まれてしまう。

そんなジレンマの中で、ワルツは苦肉の策として、迷宮を破壊するという手段を選んだのだ。


とはいえ、何れにしても、プロティービクセンの内部に避難した結果、取り込まれてしまった人々については助けなくてはならないことに変わりは無かった。

だが、逃げることを考えずに、迷宮を倒すことだけを考えるなら、市民たちが()()()生気を吸い取られた後であれば、意識が無くなっているはずなので、助けに行ったとしてもワルツたちの顔が見られる心配は無いのである。

あるいは、まだ、避難していなかったために助かった者達が王城に残っているかもしれないが、王城に近寄らないかぎり、特に問題は無いだろう。


というわけで・・・


「さてと。デフテリービクセンの中に人はいないはずだから、とりあえずそっちの方からさっさと片付けちゃいましょうか。ちょっと時間を置かないと市民たちが眠ってくれないだろうし・・・」


ワルツは、町の入口付近で留まっていたデフテリービクセンに眼を向けた。


「でもさぁ・・・なんか、あの迷宮、動いてないよ?」


と、ワルツの隣にいたルシア。


「でも、そのまま放置しておくわけにもいかないでしょ?」


「うん・・・」


彼女は、ワルツの言葉に対して・・・どういうわけか、あまり乗り気ではない表情を浮かべていた。

動かない相手を攻撃することに、忌避感のようなものを感じているのだろうか。


「それに、もう片方も、あれから動いてないみたいだし・・・。それ以外にも、すっごく気になることがあるんだよね・・・」


「・・・?何かに気付いたの?」


「えっとねぇ・・・私が魔力を使ったせいで、辺りが魔力だらけになっててよく分かんないんだけど、あの2つの迷宮の間で、魔力が行ったり来たりしてるような気がする・・・?」


「魔力が行ったり来たり・・・ね」


その言葉だけではよく分からなかったワルツは、


「ユリアたちは・・・どう?分かる?」


ルシアだけでなく、魔法を使える(?)二人にも水を向けた。

だが・・・


「申し訳ございませんワルツ様。私たちには、()が生えていないので分かりません・・・」


「翼は生えてますけど、羽じゃ魔力は聞こえませんから・・・」


「・・・・・・そう」


・・・獣耳の生えていない2人には分からなかったようだ。


「うぅ・・・ぐすっ・・・」


「せ、先輩!気を落とさないで下さい!」


流石に、獣耳が生えていなかったことまではリカバリー出来なかったのか、目尻に大粒の涙を溜めて項垂れてしまうユリア。

恐らく彼女は今・・・獣耳の生えていないサキュバスに生まれたことを後悔しているに違いない・・・。


そんな彼女に対して、とあることを思い出したワルツは、徐ろに問いかけた。


「そういえばユリア?貴女、家族は大丈夫なの?」


「え?」


「いや、だって、貴女の家族、ビクセンに住んでるんでしょ?スカーやデフテリーが暴れた時は大丈夫みたいだったけど、今回は・・・」


そこまで言ってから『あー、もしかして言わなきゃ良かったかなぁ・・・』と少しだけ後悔するワルツ。

もしもユリアが、任務優先で、自分の家族について考えないようにしていたというのなら、余計なことを思い出させてしまったかもしれない、と思ったらしい。


だが、


「あ、大丈夫ですよ?2日ほど前に、隣街に引っ越して行きましたから」


「あ、そう・・・ならいいんだけど・・・」


先程までグズっていたというのに、ケロッとした表情で返事をする彼女のことを見ると、その言葉通り、どうやら問題は無いようだ。

・・・いや、違うところに問題があるというべきか・・・。


「最近、ビクセンから疎開する人が増えてて・・・その流れに乗って、一緒に出ていった、って感じですね」


「そういうことね。ホント、こんな危険な街に住まないで、他の街に住んでくれていれば、こんなことにはならなかったんだけどね・・・」


そう言いながら、『そういえば、もう一人、ビクセン出身者がいたわね・・・』と、赤髪の狐娘のことを思い出すワルツ。

なお、イブのことは、彼女の頭の中に全く無かったりする。


それから攻撃に移る前に、一旦、エネルギアで待機(?)しているだろうユキやカタリナに連絡を取ろうかと、ワルツが無線通信システムの回路にアクセスしようとしたのだが・・・・・・そんな時、事は動き始めた。


ゴゴゴゴゴ・・・


止まっていたはずのデフテリービクセンが再び動き出したのである。


「おっと・・・悠長に構えている暇は無さそうね」


「そうだね」


「・・・後はよろしくお願いします・・・」


「せ、先輩!そこは助太刀しますって言わないんですか?!」


「死ぬ、絶対に死ぬわよ、後輩ちゃん!引き時は重要よ?!」


「・・・」


・・・そして、ワルツとルシアがデフテリービクセンに向かって、飛びかかろうとした、その瞬間である。


グァァァァッ・・・


デフテリービクセンは突然その大きな口を開けると・・・


ドゴォォォォン!!


背中だけ出かかっていたプロティービクセンの身体に、街を破壊しながら喰らいついたのである。


『えっ・・・』


ウォォォォン・・・!!


その痛みのせいか、一気に地面から這い出ようとするプロティービクセン。

・・・どうやら、このまま放っておくと、全長数百メートルの迷宮同士の闘いが、ビクセンの町中で始まってしまいそうである・・・。

と言う感じで、6章の頭の方にあった『巨獣大決戦!』的な展開を持ってきたのじゃ。

いやの?

他にも絡めて言わねばならぬことが山ほどあるのじゃが・・・ストーリーを煮詰めるのが大変なのじゃ。

そうじゃのう・・・まるで、稲荷寿司の皮のように・・・・・・意味不明かのう・・・。


まぁそれはいいのじゃ。

補足なのじゃ。

キャラの位置づけ的に、ユリアとシルビアは近いところにあったのじゃが、性質は全く逆の方へ持って行こうかと思うのじゃ。

実はの?

ユリアが『後輩ちゃんと私は違うんです!』と言い張っておってのう・・・。

なら自分で書けばよいのに・・・と思うのじゃが、そうもいかぬから、頑張って差別化を図るようにしたのじゃ。

雰囲気としては、2人揃ってちょうど1人前と言った感じじゃろうかの。

・・・書けるかどうかは分からぬがのう。

というか、また文句が来そうじゃが・・・。


でじゃ、あと他は・・・サンドイッチとおにぎりが食べれたか食べれていないかの話・・・はどうでもよいか。

・・・まぁ、食べれておらぬ、と言っておくのじゃ。


他には・・・こんなところかのう。

今日は稲荷寿司を作ったという話については・・・別の方で気が向いたら書くのじゃ。

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