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6後後-11 帝都防衛7

「っ!」


兵士(?)に刺されていたはずのユキFは・・・しかしどういうわけか、鎧の隙間から刺さっている剣に構うこと無く、横へと飛び跳ねてから、踵を返して、兵士に振り返った。


『え?・・・あぁ、幻影だったんだ。まだボケては無いみたいね』


「何者?!」


頬スレスレを兵士の剣が通過していったために、少しだけ切れてしまった顔に手を当てながら、兵士のことを睨むユキF。

どうやら彼女は、幻影と比べて大幅に身長が低くなっていたおかげで命拾いしたようだ。


『何者か・・・ほんと何者なんだろうね?』


「言葉遊びをするつもりはありません。答えなさい!」


そう言いながらユキFが手のひらを兵士に向かって掲げると、それに応じたようにして、他のユキたちも腕を上げた。

そんな彼女たちに対して気を向けた様子を見せず、


『そんなこと言われても、私だって自分が何者か知らないから答えられないよ?あ、そういえば、こんな名前を付けられていたかなぁ』


兵士がそう口にすると、彼はまるで顔が溶けてしまったのではないかと思うほどに、口元を吊り上げてその名を口にした。


『・・・アルタイル』


その名前に、驚愕の表情を浮かべるユキF。

その直後、


ドゴォォォォン!!


会議室の中に、真っ黒な杭が空気を割って現れたのである。

・・・但し、その行き先は・・・


『・・・あれ?あっ、そういえば結界無くなってたんだっけ?』


兵士自身の身体だった。

自分の身体を貫く杭に意外そうな表情を向けているところを見ると、全く予期していなかったようである。


『・・・?』


まるで自害するように、杭に貫かれてしまった自称アルタイルの兵士に対して、怪訝な表情を浮かべるユキたち。


『別に、自分の身体が傷つくことはないからいいんだけどねー』


そして彼は・・・


バタッ・・・


そのまま地面に崩れてしまった。


「・・・」


そんな彼に対して、一定の距離を取りつつも、様子を見るようにして近寄っていくユキたち。

すると、


『あ、そうそう。いい忘れてた。私の目的。あんたたちのことを殺すことだから』


死に際といった様子なのに、何の苦にもならない様子で、そんなことを口にする自称アルタイル。

そして彼(彼女?)は、最期の言葉を口にする。


『どーん!』


「えっ」


ドゴォォォォン!!


そして、倒れた兵士を中心にして、会議室全体を完全に吹き飛ばしてしまうような大きな爆発が、ユキたちに襲いかかったのである。




ちょうどのその頃。


ゴゴゴゴゴ・・・!!


大地を揺るがすような振動から避けるようにして、ワルツたちは空へと飛び上がっていた。


「ようやく、魔物を倒せたと思ったのに・・・」


町を割りながら、何か巨大なモノが出てこようとしている光景に、思わずぼやいてしまうルシア。


「・・・ホント、面倒よね・・・」


ワルツの方も、口にビーフジャーキーを含みながら、その言葉通り、ダルそうな表情を見せていた。


・・・そんな時、


ドゴォォォォン・・・


王城の一角で、大きな爆発が起こった様子が、2人の眼に入ってくる。


その部屋が会議室として使われていることを知っていた2人だったが、


「・・・何だろ?」


「あれじゃない?ユリアたちがまたヘマをしたとか」


「ユリアお姉ちゃんたち・・・いつも爆発するものを持ち歩いてるからね・・・」


ユリアたちがユキたちと共に行動していることを思い出して、冷静(?)に判断することにしたようだ。


「ま、何があったのかは知らないけど、あっちはあっちでやってもらうしか無いわね。私たちはこっちのデカブツを片付けましょう?」


「うん!」


どうやら、ワルツ達の戦闘は、途中で休憩すること無く、継続することになるようだ。




一方・・・


「んあ?!」

「ちょっ?!」

「ふむ・・・」

『おっきな魔物が、こっちからも出てきたね』


空を旋回していたエネルギアの中でも、町の真下から現れた巨大な影に、ちょっとしたパニックが生じていた。


「せっかく、『めーざー』とかいう武器で魔物を大量に片付けて、ドラゴンさんの名誉返上?したのに、今度は・・・これ?!」


「うむ・・・面目ない。いや、名誉を返上してどうするのだ・・・。・・・だが、それにしてもアレは何なのだ?」


2人(?)揃って、地面の裂け目に対して視線を向けるイブと飛竜。

すると、


「あれ、プロティービクセンではないですか!?」


その影の正体を、この国の皇帝であるユキが口にした。

この場において、その正体を知っているのは彼女だけだったのである。


立て続けに2つの迷宮が暴れていたので、3つ目が出てくれば、それがプロティービクセンであることは、何も知らない市民たちにとっても明白なことなのだが・・・


「えっ・・・なにそれ?」


・・・イブには、予想が付かなかったようだ。

まぁ、デフテリービクセンが暴れた際、彼女はロリコンたちに囚われていたので、仕方のないことだろう。


なお、言うまでもないことだが、飛竜やエネルギアにとっては初めての『動く迷宮』であった。

もちろん彼らも、そんな巨大な迷宮の姿に対してに驚いていたようだが・・・これまでにワルツたちが驚愕してきたことについて何度も書いてきているので、説明を割愛しようと思う。

それでも簡単に述べるなら・・・『ふむ』や『ふーん』という言葉を延々と繰り返していた、とだけ記述しておこう。

・・・果たして、本当に驚いていたかどうかについては・・・不明である。


それは置いておいて。

ユキは、自分の膝から離れ、壁に近づくと、食い入るように外の景色に目をやるイブに対して、少し人肌恋しそうな残念な表情を見せてから、彼女の質問に対して口を開いた。


「・・・あれは、この街の地下で眠っていた3つの迷宮の内の一つです。そのうちスカービクセンについては・・・イブちゃんがよく知っていますよね?そして2つ目が、街に近付こうとしているあの黒い塊、デフテリービクセン。イブちゃんが捕まっていた際に暴れていた迷宮です。それで、最後の1つが・・・あのプロティービクセン。この世界にある最古の迷宮といわれているモノです」


「・・・いつの間に、2つ目も暴れたたの?」


「以前、第5王城・・・えっと、石でできたお城の中をイブちゃんと一緒に逃げた日、その前の日のことですね(気絶してたので定かではないですが・・・)」


そんなユキの言葉に、難しい表情を浮かべるイブ。


「・・・やっぱり、あれ、シリウス様だったの?いや、匂いが同じだったから、間違い無いんだろうけど・・・」


そんな、戸惑っている様子の彼女に対し、ユキは少しだけ優しげな笑みを浮かべた後で、しかし現状を鑑みて、すぐに険しい表情を取り戻しながら口を開く。


「そうです。その話については、後日しましょう。とにかく今は・・・」


それからユキは、地面に鋭い視線を向けながら、言葉を続けた。


「あれをどうするか、ですね」


「そうだね・・・・・・っていうか」


そう言ってから・・・どういうわけか、急にイブの落ち着きが無くなってしまう。


「あの・・・」


何か言いにくそうに口をモゴモゴと動かすイブ。

どうやら、言葉遣いが今まで通りでいいのか・・・そもそも、これまで失礼な口の聞き方だったことを咎められないか・・・そんなことを悩んで、どうすればいいのか分からなくなってしまったらしい。


その様子に気付いたユキは、一旦は引き締めた表情を緩ませると、


「・・・ワルツ様のところにいる時は、ボクのことを、他の人達のようにユキちゃんって呼んで下さい。もちろん、話し方は今まで通りで構いませんよ?イブちゃん」


そう言って、優しげな笑みをイブに向けた。


「えっと、うん。ユキちゃん!一緒にアレをやっつけよう!」


「やっつけ・・・えっと、はい。頑張りましょう」


果たして、内部に市民がいるかもしれないというのに、やっつけてしまってもいいものか・・・。

ユキはそんな疑問を抱きながら、イブと今度こそ、戦略会議を始めたのである。




・・・さらに視点は変わって。

いや、戻ってきて・・・


ドゴォォォォン!!


「ふべっ?!」


王城の会議室の中で、突然兵士の身体に刺さっていた杭が爆発して、その場にいた魔力切れのユキたちのことを爆風や破片が襲った・・・・・・はずだった。

しかし、音は聞こえども、凶刃と化した飛散物や、凶風がユキたちを襲うことはなかったのである。

その代わり・・・何やら、どこかで聞いたことのある声(?)がユキ達の耳に聞こえてきたのだ。


「し・・・シリウス様・・・ご、ご無事で・・・」


全身血まみれの状態のユリアが、まるでユキたちを庇うかのように立っていたのである。

どうやら、何故か実体のある幻影魔法で彼女たちを守ったらしい。


「ゆ、ユリア?!」


変身を解いて、ユリアに駆け寄るユキF。


「そ、その様子だと・・・だ、大丈夫そうですね・・・」


ユリアはそれだけ口にすると、


バタリ・・・


地面に膝を付いてしまう。


「だ、大丈夫ですか?!」


「は、はい・・・。これしきのことで倒れるなど・・・わ、ワルツ様に顔向け出来ませんから・・・」


そう言ってユリアは立ち上がると、辿々しい足取りで窓際まで歩いて行き・・・


「・・・シリウス様方も・・・どうか安全な場所へお逃げ下さい・・・。私はこれから・・・ワルツ様の元へと・・・参ります・・・」


そんな言葉を残して、フラフラと空へと飛び上がっていったのである。


・・・・・・


「・・・って感じなのよ?」


「いやー、私には無理ですね(そんなことすると、心が痛みますから)」


空に上った後で、シルビアと合流してそんな会話をする、血まみれのユリア。

なお、彼女の血は、魔物たちを倒した際に付いた血だったりする・・・。

要するに、彼女は、アルタイルを自称する兵士が爆発した際、実は無傷だったにも関わらず、まるで重症を負ったかのような素振りをユキたちに見せていたのである・・・。


「確かに、セコいとか、汚いとか言われるかもしれないけど、皆と違って力のない私たちが成り上がっていくためには、これくらいのことをしなきゃダメなのよ?分かる?後輩ちゃん?」


と、自身に力が無いと思い込んでいる様子のユリア。


「そ、そうですね。言われてみれば。小さなことの積み重ねが重要なんですね!」


と、真っ白な翼の(天使)姿のシルビア。

どうやら2人とも、自分が落ちこぼれだと思っているらしい・・・。


「そういうことよ?こういうことで点数を積み重ねて、いつかワルツ様に正面からアタックできるようにならないとね」


「なるほど。私も頑張ります!」


そして彼女たちは、恐らく永久に近づいてこないだろう高みを目指して、日々、努力(?)を積み重ねていくのである・・・。


・・・ところで、情報収集やユキ達の護衛という本来の任務を放り出しても良いのだろうか、と言う疑問については、どうか指摘しないで欲しい。

何故なら、彼女たち自身が、それをすっかり忘れているのだから・・・。


まぁ、それはそうと。

そんな彼女たちが、空に浮かんでいるワルツたちにもう少しで会話できる距離まで近づいた頃。


「あれ?何ですかアレ?」


天使化したシルビアの眼に何かが映った。


「え?何かあった?真っ暗だから、見えないけど・・・」


「それなのに、ワルツ様は見えるんですね・・・」


「ワルツ様は別腹なの!」


「別腹・・・」


2人がそんなやり取りをしていると、


ドゴォォォォン!!


何か黒い影によって、街の一部が大きく削られていく様子が眼に入ってきた。


『えっ?!』


その様子に、驚愕する2人。


何故ならそれは、地面を割って出てこようとしている、大きな影、プロティービクセンによるものではなく、


「で、デフテリービクセン?!」


「え・・・見えない・・・」


町から随分と離れた場所にいたはずのデフテリービクセンによるものだったからである。


そう。

飛竜が見かけたデフテリービクセンが、遂に、街へと到達したのだ。

ユリアたちがフラグを上げ始めたのじゃ。

・・・下衆フラグをのう・・・?


まぁ、それはさておきじゃ。

うむ・・・淡々としておるのう・・・。

切り替わりの部分じゃから、仕方ないかもしれぬがのう。


さて。

補足なのじゃ。

エネルギア内で、会議室の爆発が見えなかった理由。

それは、大爆発とはいえ、王城を吹き飛ばす程のものではなかったから、イブ嬢たちには気付かなかった、と思ってほしいのじゃ。


あとは・・・兵士の身体に憑依(?)して現れたアルタイルについてかのう。

彼女(?)がユキたちを殺そうとしていたというのは、()の者の話の通りなのじゃが・・・いや、詳しい話は()しておくのじゃ。

一応、含みだけは残しておくのじゃ?


他は・・・ワルツたちに関する文が異様に短かったような気がするのじゃが・・・そのうち追記するのじゃ。

それに、ワルツ達の話は、全員の話の中で一番長いからのう。

少しくらい短くとも問題はあるまい?

・・・とも言えぬか・・・。

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