表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
358/3387

6後後-09 帝都防衛5

視点は再び変わって・・・。


(ミッドエデン風)王城の会議室で、ユキB〜Fたち姉妹は、関係各所から回ってくる情報を元に、対策を協議していた。


「市民の避難が思うように進んでおりません。転移した先の避難所の通路が狭く、足の遅い者たちに後の者達の移動が妨げられているようです・・・」


と、ビクセン市長のユキBが口にする。


今の彼女たちは、姿も魔力も元に戻っていなかったが、ユリアの変身魔法で、とりあえずの見た目の体裁だけは整えていた。

尤も、この部屋の中には、彼女たちとユリア、それにシルビア以外誰もいなかったので、わざわざ変身させる必要は無かったのだが・・・たまにやってくる官僚たちや兵士たちのことを考えるなら、その度に変身させることは面倒なので、最初から変身魔法を掛け続けることにしていたようである。


故に、今、彼女は、恰幅の良い()()の市長に化けているのだが・・・そんな彼(?)の表情は、変身する前に町中を彷徨っていたユキBの疲れきった表情とそう大差はなかった。

例えるなら、変身した後が父親とするなら、変身する前はその父親によく似通った娘、といった様子だろうか。


「・・・避難の進捗の割合は?」


頭以外、全身を黒っぽい鎧で包んだ身長180cmの女性の魔王(ユキF)が、重々しい様子で問いかけた。


彼女は全てのユキのオリジナルということもあって、変身していたユキたちの中でも、一際(ひときわ)異なった風格を放っていた。

その品格はユキAを上回るもので、彼女こそがこの国の真の皇帝、といった雰囲気である。


・・・ただ、その内心では、他のユキたちと同じく、『どうしてこのタイミングで・・・』といったような戸惑いが彼女を支配していた。

それでも、表にその感情を出すことがなかったのは・・・やはり、他のユキたちの倍以上の時間を生きてきたからなのだろう。


とはいえ、ただ戸惑っていただけでは何も問題が解決しないので、ユキFだけでなくユキたち全員が、自分にできることをするために、席に着いて会議をしていたのである。

・・・そう。

残念なことに、魔力が底を突いている上、本当の身体が子どもの姿になってしまった彼女たちには、それ以外に出来ることが何も無かったのだから・・・。


「良くて3割・・・」


避難の状況を、残念そうに口にするユキB。


「困りましたね・・・。避難先を分散させるなりして、速度を上げられないのですか?」


「既にやっています。スカーもデフテリーも無くなった今では、第3王城と第5王城しか転移先がありませんので、これ以上はどうにも・・・」


そう言いながら彼(?)は、胸ポケットから取り出したハンカチで、額の汗を拭う素振りをした。

実際には汗は流れていないが、役作りをする上でいつしか染み付いてしまった癖らしい・・・。


「・・・では、魔物たちの状況は?」


ユキBから、今度は軍務相のユキCに視線を移すユキF。

その先では、白っぽい軍服に身を包んだ()()の軍人(ユキC)が、悔しそうに眼を閉じながら口を開いた。


「誠に申し訳ございませんが、我々の戦力だけでは手も足も出ない状況です」


彼(?)の場合は、ユキたちの中でも特に大変であった。

ワルツたちがやってくる1ヶ月の間、スカービクセンとの戦闘の指揮を執っていたのは彼(?)なのである。

部下を大勢失い、守るべき街を蹂躙され、そして手柄をワルツたちに持っていかれた・・・。

まぁ、市民や町を救うことと、名誉や面子を比べてもしかたがないので、最初からワルツたちのことは恨んでも妬んでもいなかったが、これまでの身体的、精神的な苦労を考えると、何も得ることのなかった彼(?)の疲労感は計り知れないだろう・・・。


「(空気が重いですね・・・)」


ミッドエデンの議会や、ワルツたちの話し合いの場とは違うその雰囲気に、会議室の中の柱の陰に隠れていたユリアは、眼を閉じながら、そんなことを考えていた。


そもそも、ワルツたちの会議の場合は、まともに話し合いもせずに、彼女やコルテックスの一存で勝手に話が進んでいくので、こうした苦悩の色を含んだ空気が場を支配するなどということは、まずありえなかったのである。

恐らくミッドエデンが崩壊寸前になったとしても、彼女たちは同じく適当な会議を続けるのではないだろうか。


まぁ、それはさておいて。

国の滅亡の危機・・・とまでは言わないが、首都が陥落寸前(?)の状態になっていても、町から逃げ出さず市民たちのことを考え続けるユキたちは・・・国の支配者としてのあり方を問われれば、意見に良し悪しに別れるところだとは思うが、少なくともその責任感だけは、どの国の王や皇帝と比較しても、遜色の無いものであった。

問題は・・・前記の通り、情報収集と交通整理(?)以外に出来ることが何もなかったことである。

故に、これまで、他に何か出来ることが無いかをこの会議で延々話し合ってきたのだが・・・結局、堂々巡りをするだけで、未だに良い案は何も出てきていなかったのだ・・・。


「(先輩・・・もう、逃げたほうが良さげじゃないですか?)」


重い空気に耐え切れなくなくなったのか、柱の陰に溶けるようにして姿を隠していたシルビアが、隣の柱の影に佇んでいたユリアに話しかけた。


「(後輩ちゃん。トップが諦めずに戦っているというのに、下の者たちが諦めるようなことを口にしちゃダメよ?)」


と、そのままの姿勢で、静かに首を振りながら後輩を叱責するユリア。


「(でも先輩。私達の上司って、ワルツ様やコルテックス様ですよね?シリウス様方は別に関係ないんじゃないんですか?)」


そんなシルビアの主張に、ユリアは小さく微笑みながら口を開いた。


「(確かにそうかもしれないわね。でも、外でワルツ様やルシアちゃんが戦ってるというのに・・・逃げられるわけが無いじゃない?)」


そんなユリアの言葉に、ハッ、とした表情を見せるシルビア。


「(今、外に出たら巻き込まれる、ということですね)」


「(うん、そうね。それもあるわね・・・)」


・・・どうやら彼女たちにとっては、ユキたちがどうこう、という問題では無いようだ。


と、そんな時、


バタンッ!!


ノックもされず、急に会議室の扉が開かれた。

・・・もちろん、魔王討伐に来た勇者ではない。

どうやら、緊急の情報を持って、兵士が飛び込んできたらしい。


「(ほーら、こういうことがあるから、変身魔法は掛けておいたほうが良いのよ。分かる?後輩ちゃん)」


「(なるほど・・・(てい)のいい点数稼ぎですね?)」


「(そういうこと。確かにシリウス様方は直属の上司ではないけど、ここで恩を売っておけば、後々、ワルツ様にも届くかもしれないじゃない?懇意にしてるみたいだし)」


「(確かに・・・勉強になります!)」


と、2人が、そんな下衆(げす)な話していると・・・


「なっ・・・、なんでしゅって?!」


ここまで赤ちゃん言葉を封印していたはずのユキFが、そんな突然驚きの声を上げた。


「(あれ?なんかあったんですかね?)」


「(話し込んでて、聞いてなかったわ・・・)」


というわけで、柱の陰から様子を伺い始める2人。

すると、


「こ、このままだと、市民に多大な影響が避けれれないものと・・・!」


『っ・・・!』


兵士のそんな言葉に、ユキたちは一斉に顔を青くした。


そんな折、


ドゴォォォォォン!!


何やら城の近くで生じたらしい大きな音が、振動と共に会議室まで響き渡ってくる。


「(・・・?)」


「(何の音ですか?)」


普通ならそんな音が聞こえれば慌てふためくところなのだが・・・まるでいつも通り、といった様子で頭を傾げるユリアとシルビア。

常日頃から、ワルツやルシアと共に行動しているために、感覚が麻痺しているのか・・・それとも、彼女たちが特別、爆発物に接する機会が多いからなのか・・・。


「・・・とにかく、可能な限り、市民たちを城の中に避難させて下さい!」


「承知しました!」


そして兵士は去っていった。

直後、


「・・・ユリア、それにシルビアさん、こちらに出てきてくれませんか?」


ユキFが柱の陰に隠れていた2人に声を掛けた。


『あ、はい』


彼女たちが同時に答えて柱の陰から出て行くと・・・


「・・・」


どういうわけか、ユキFが2人に向かって頭を下げてくる。


「聞いての通り、もうこの城は保ちそうにありません・・・」


「(えっ・・・何の話?!)」


「(ちょっ・・・先輩!拙いですよこの展開!話聞いてなくて痛い目に遭うパターンですよこれ?!)」


頭を下げながら口にしたユキFの言葉に、彼女に聞こえないように情報部専用のハンドサインで会話するユリアとシルビア。


「二人だけでもお逃げ下さい」


『えっ・・・』


ユキFから追加で飛んできた言葉に、和気藹々(わきあいあい)(?)と会話をしていた2人が固まった。


その瞬間である。


バシャンッ!!


会議室の窓を突き破って、飛行性の魔物が飛び込んできたのだ。


「なんでこんなところに魔物が・・・ガラスが見えなかったのかしら・・・」


「っていうか、結界が機能してないんじゃないですか?」


『えっ・・・』


蜻蜒(やんま)のような姿をした魔物に、特に驚いた様子を見せることもなく、そんな会話をする2人に、ユキたちは複雑な表情を見せた。

恐らくそれには、2つ以上の感情が含まれているようだが・・・その後のユリアの行動に、驚愕の表情一色へと変化する。


グシャッ・・・


「全く・・・最近の魔物は、一体ここをどこだと思ってるんでしょうか・・・」


幻影魔法で作り上げた巨大な腕で魔物を掴むと、事も無げに握りつぶすユリア。


「確かこの窓の修理費用は・・・ミッドエデン換算で、54万ゴールドでしたね」


シルビアの方は、その光景よりも、壊れた窓の方を心配しているようであった。


「ユリア・・・今、一体何を?」


何処かプルプルと震えながら、怪訝な表情をユリアに向けるユキF。


「え?単に邪魔だったので、片付けただけですけど・・・」


「・・・どうやって?」


「もちろん、幻影魔法でですよ?それ以外に使える魔法が無いですから・・・知ってますよね?」


「・・・」


その言葉に・・・どういうわけか、より一層、ユキFは険しい表情を浮かべた。


すると、窓の外を覗いていたシルビアが声を上げる。


「あー、やっぱり・・・。結界が無くなってますね」


「えー・・・・・・あっ?!教会の天辺(てっぺん)にあった都市結界のコアが無くなってるじゃない!さては、エネルギアが間違えて吹き飛ばした、って感じじゃない?」


そんな2人のやり取りに・・・


「・・・もしかして2人とも、話を聞いてなかったn」


ユキFが自分に対して不都合なことに気付きかけているようだったので、点数が下がることを危惧したユリアは、ユキFの言葉を遮るように・・・


「あ、ちょっと、魔物退治に行ってきますね?ほらっ、後輩ちゃん!」


と言って、


ドカッ!


「うひゃっ!」


3階の窓からシルビアを外に突き落とすと・・・


「じゃぁ、行ってきます!」


そう言って、自身も、逃げるように外へと飛び立って行ったのである・・・。

・・・妾は思ったのじゃ。

ユリア達の話は、異様に書きやすいと・・・。

基本、彼女たちの話をするときは、爆発に(まみ)れ・・・いや、なんでもないのじゃ。


さて。

補足なのじゃ。

まぁ・・・あれかのう。

ユリアの幻影魔法。

ここに来て・・・うむ。

その話は次回じゃのう。


あとはユキDとユキEの存在についてかのう。

文部相と魔法相をしておるのじゃ。

じゃが・・・まぁ、この話では出てこぬ予定じゃ。

既にB、C、Fでキャラが被っておるのに、これ以上出しても仕方ないしのう。


ぬ・・・?キャラが被って・・・ない?

ちょっと整理するのじゃ。


ユキB

ビクセン市長。

常に疲れておることが特徴で、まるで夢遊病のように街の中を彷徨っておることがあるのじゃ。

仕草がオッサンなのじゃ。


ユキC

ボレアス軍務相。

軍人じゃがそれほど頭は硬いわけではなく・・・じゃが、責任感のある御仁。

ビクセンがこんなことになっているのは、自分のせいじゃと思っておる。


ユキF

ユキAがいない間の皇帝兼メイド。

どのユキよりも冷静で、ユキたち姉妹の看板的存在、というかオリジナル。

縁の下の力持ち?

じゃが、破滅主義者?


あと、せっかくじゃし・・・


ユキA

貧ny魔王。

炎をこよなく愛する雪女。

辛くて熱いものが大好物。

身体からスパイシーな匂いを漂わせておる・・・。


うむ。

キャラが被っておらんかったのう・・・。

ならユキDとユキEも、と言いたいところなのじゃが・・・気が向いたらの?




今日はこんなところなのじゃ。


・・・ところで。

今日は主殿と、遠出して餃子の町に餃子を買いに行ってきたのじゃ。

・・・まぁ、世の中には、2つしか無いと思うがのう?


でじゃ。

その街では、道路沿いにこんな看板が大量に立っておったのじゃ。


『追突に注意するのじゃ』


・・・なんでじゃろうか・・・なにか親近感が湧く文言だったのじゃ。

まぁ、どうでもよいことじゃがのう?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ