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6後後-08 帝都防衛4

ドドドドド・・・!!


「あ、これ面白いですね」


「え・・・でもこれ、地形変わらないやつじゃん・・・」


・・・攻撃を始めてから3分後。

そこには、つい先程まで戦略を考えていた者達の姿は無かった・・・。


「確かに地形は変わらないですが、魔物たちが・・・それはもう、ものすごい勢いで吹き飛んでいってますよ?」


ホログラムのジオラマ上では再現されていない魔物たちの姿を艦橋のモニター越しに観察しながら、そう口にするユキ。


「よく見えないから、分かんないもん・・・」


一方、イブは、少々つまらなそうに、ほぼ真っ暗な外の景色に眼を向けた。

普通の人間であるイブには、所々に見える赤い点以外、何も見えなかったようだ。

そんな彼女に、


『なら、明るくするよ?』


そうエネルギアが答えた・・・その直後である。


ブゥン・・・


「えっ・・・・・・凄っ・・・」

「こんなことも出来るんですね」

「信じられん・・・」

『えへへ』


真っ暗な空の中に無数の星々が眩しく輝く一方、まるで昼間のようにして周囲の景色が見える、という何とも不思議な光景が艦橋の壁に浮かび上がってきたのだ。

要するに、ナイトビジョンモード、である。


結果、イブの眼に入ってきたのは・・・


「うわっ・・・酷い・・・」


・・・空から改めて見る、ビクセンの街の惨状であった。

とはいえ、その光景は、ワルツたちがイブたちを助けに行っている間に状況が悪化した訳でも、エネルギアの攻撃によって追加で破壊されたわけでもない。

単にイブが空からビクセンの町並みを見るのが初めてだった、というだけのことである。

尤も、一部は、巨大な魔物によって追加で破壊された部分があるかもしれないが、ワルツやルシアによって足止めされているので、それほど大きな損害にはなっていないようであった。


しかし、それを知らなかったイブの眼には、その光景が魔物たちによって引き起こされたように映ったようで、


「・・・これ、どんな武器を選んでいるかとか、そんな余裕、無いかもだね」


心配そうに、そんなことを口にした。


「そうですね・・・」


そんなイブの言葉に、事情を知っているとはいえ、異論を唱えるつもりのなかったユキが同意の声を口にすると、


『それじゃぁね、この武器がオススメかな』


と言いながら、エネルギアが勝手に武器を選択する。


『これなら、複数の場所に向かって同時に広範囲に攻撃できるから、たくさん敵をやっつけられると思うよ?』


「何ですか?これ・・・」


『試してみれば分かるよ?だけど、範囲には気をつけてね?』


「あ、はい・・・」


「じゃぁ、さっそく・・・」


戸惑う様子を見せるユキを差し置いて、イブがジオラマ上のビクセン郊外の地形に触れた・・・その瞬間、


ドゴォォォォン!!


何か船体から発射されたわけではないにもかかわらず、およそ50mに渡って、魔物たちごと地面を陥没させたのである。


「何これ・・・」


今まで使ってきた武器とは違って、途中経過が無く、突然結果だけが生じた攻撃に、イブは思わずそう呟いた。


『えっとねぇ、僕も原理はよく知らないんだけど、お姉ちゃんが重力波を使ったショックカノンって言ってたよ?』


「・・・うん、全然分かんない」


にこやかな表情を見せたまま、首を振るイブ。

言うまでもないことが、彼女の隣りにいたユキの方も全く分かっていなかったようであった。


そんな彼女たちに、エネルギアは改めて説明し直す。


『つまり、たくさん撃てる強い武器ってことだよ?多分』


「・・・それなら分かります。それ以外は何も分からないですが・・・」


エネルギアの説明があまりに簡素すぎるものだったためか、概略は理解できたものの、それ以外に何も伝わってこなかったために、ユキとイブは苦笑を浮かべた。


ともあれ、連射できる強そうな武器、ということなので、ユキとイブは魔物たちを殲滅すべく、特に魔物の密度が高そうな場所を探すために、周囲の景色に眼をやり始めた。

するとイブの眼に・・・


「あ、ワルツ様!それと・・・確かルシアちゃんだったっけ?なんか、街の中で大っきな魔物と戦ってる・・・」


巨大な魔物たちに対して、臆すること無く戦っている2人の姿が見えてきた。

するとユキは、これまでに自分たちが作ってきたクレーターに眼を向けながら、口を開く。


「そうですね。でもボク達がこの船で攻撃すると、町並みごと吹き飛ばしそうなので、残念ながら援護は出来なさそうですね」


「うーん・・・頑張れば出来そうだけど・・・」


と、どういうわけか、諦めきれない様子のイブ。

どうやら、彼女は、ワルツ達に対して何かしらの援護がしたかったようである。


しかしユキは、そんなイブに対して、ゆっくりと首を振りながら言った。


「いいえ。ボクたちには、ボクたちのやるべきことがあるんですよ。外にいる魔物たちだって、十分に驚異なのですから。まさか、街の内側にいる魔物だけでなく、外側にいる魔物たちもワルツ様たちに任せるわけにはいかないでしょう?」


「んー・・・そうかもだね・・・」


諭すような言葉を口にするユキに対して、イブは渋々といった様子で頷いた。

本当は援護したいが、しかしこのままだと、単なる我儘になってしまうかもしれない・・・そう思ったようである。


と、そんな時。


「・・・ん?」


ユキとイブのやり取りの様子を近くで見ていた飛竜が、何かに気づいた様子で街の方向とは逆の方向に頭と身体を向けた。

どうやら、野生の本能(?)で何かを感じ取ったらしい。


・・・だが、その直後の飛竜の行動が問題だった・・・。


フワリ・・・


飛竜の身体の動きに追従する形で、彼の尻尾も動いたのである。

まぁ、当たり前のことなのだが。


問題は・・・その尻尾の行き先だった。


ドカッ!!


「へぶっ?!」


艦長席で、イブを膝に抱えながら、前のめりに座っていたユキの後頭部にヒットしたのである。

すると、どうなるか。


ビーーッ!!


その反動で、艦長席の前に浮かぶホログラムモニターに、彼女は頭から突っ込んだのだ。


「ん?おっと、シリウス殿。これは申し訳ない。つい不注意で、我の尻尾がぶつかってしまt」


「おわぁぁぁっ?!」

「ちょっ・・・?!」


自分がどこに頭をぶつけたのか・・・その結果、何が起ころうとしているのかを考えて、ユキは痛む頭を押さえるどころではなく、急激に顔を青ざめさせていった。

イブの方も、ジオラマ上のビクセンの町並みが、ユキの血液によるものでは無いにせよ、攻撃の対象であることを示す真っ赤な色に染まってしまった光景に、思わず言葉を失ってしまう。


ドゴゴゴゴゴ!!


そして地面に向かって降り注いだ大量の重力の波は・・・・・・しかし、ビクセンの街には落ちなかった。


『もう、気をつけてよ!お姉ちゃんとか、ルシアちゃんとか、町の人とかに当たったら大変だからね!』


(すんで)のところで、エネルギアが攻撃の方向を変えたために、ショックカノンはどこか()()()()()()に飛んでいったようだ。


「は、はぁ・・・よかったぁ・・・。街には落ちてないんですね・・・。っていうか、飛竜様!本当に気をつけて下さい!街を守ろうとしてたら逆に滅ぼしてしまったなんてことになったら、もう・・・ワルツ様にも姉妹たちにも町の人々にも顔向けできなくなりますから!」


「う、うむ。すまない」


ユキに対して、平謝りする飛竜。


・・・そんな時、イブが怪訝な視線を浮かべながら、とあることを口にした。


「・・・あれ?なんか、魔物が、街の中に入ってきてない?」


「・・・え?いやそんなはずは・・・」


と言いながらイブの指さした方向にユキが視線を向けると・・・


「・・・本当ですね」


確かに、一部分から、魔物たちが町の中へと殺到している様子が見えてきたのである。


「あれ?結界で守られているは・・・・・・ず?」


そしてユキは、何か嫌な予感があったのか、ゆっくりと視線を上げ、とある方向を見た・・・。

それから何故か急にプルプルと震えだして・・・そのままおよそ5秒ほど経った頃、


「・・・ああっ?!」


突然、彼女はそんな奇声を上げたのである。


「えっ?!な、何?!」


頭の上から聞こえてきたユキのそんな叫びにも近い声に、戸惑いの表情を見せるイブ。


そしてユキは・・・ようやくその理由を口にし始めた。


「きょ、きょ、きょ・・・教会の屋根が無くなってるっ?!」


「え?・・・あ、ホントだ」


「ふむ。確かに尖っていた部分が消えておるが・・・あれが何だというのだ?そんなことよr」


そんな、何かを言いかけていた飛竜の言葉を差し置いて、


「け、結界・・・都市結界が消えてますよ!」


ユキは、魔物たちが入り込んできた原因を叫んだ。


「教会の屋根にあった都市結界のコアが、さ、さっきの攻撃で吹き飛んでしまったみたいです!」


「え?じゃぁ、魔物たちは・・・・・・ええっ?!」


イブも、今まさに、この町に何が起ころうとしているのかを理解して、ユキと同様に声を上げた。


・・・要するに、町を取り囲んでいた無数の小さな魔物たちの行く手を阻んでいた壁が無くなってしまったのである。

つまり、この後に起こるのは・・・魔物たちによるビクセンの町並みの蹂躙、ということになるだろうか・・・。




・・・それはそうと。

飛竜は、尻尾をユキにぶつけて、ビクセンの町を危機に陥れた代わりに、一体何に気付いたというのか。


「・・・本当にすまぬ・・・。だが、アレは・・・放っておいてもよいのか?」


「ちょっ、それどころじゃ・・・・・・?!」

「ど、どうするんですか!この状況・・・・・・?!」


そう言ってから、同時に固まるイブとユキ。

何故なら彼女たちの視線の先では・・・


グォォォォォッ!!


『へー、あんな大っきな魔物もいるんだ・・・』


「な、何あれ・・・山?」

「で、デフテリー・・・ビクセン・・・?!」


ワルツが謎の剣を抜いて黙らせたために、一度は大人しくなったはずの迷宮デフテリー・ビクセンが、ゆっくりとだが、街の方へと進んできていたのだ・・・。

うーん・・・会話の間に入れる地の文が難しいのじゃ・・・。

どうしても繋がりのない文になってしまうからのう・・・。

以前、完全前に無くそうかとも思ったのじゃが、もう150話を超えておったから、今更かと思ってそのままで書いてきたのじゃ。


じゃがのう・・・。

書けば書くほど、他にどうにか出来るのではなかろうか、と思うようになってきたのじゃ。

・・・これが俗にいう、『おや?妾の様子が・・・』というやつじゃろうか・・・。

・・・無いの。


で、補足なのじゃ。

飛竜の尻尾に強打されたユキ。

その膝に座っていたはずのイブが何故無事じゃったのか・・・。

・・・まぁ、ユキがサイボーグで、不測の事態からどうにかイブだけは庇うことに成功した・・・と考えてもらいたいのじゃ。

いや、『スコーーンッ!!』と頭に当たっただけで、身体は全く動いておらぬだけじゃがのう?

今度、どうなるか試しにやってみると良いのじゃ。

・・・飛竜が近くにおれば、じゃがのう?


あとは・・・よいじゃろう。

ショックカノンとか、妾も原理がよく分かっておらぬしのう。

ワルツ自身も、『え?ショックカノンって響き、良くない?』とか、適当な理由で名前を点けただけじゃし・・・。


というわけでじゃ。

今日はこんなところなのじゃ。

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