6後後-06 帝都防衛2
ドゴォォォォンッ!!
・・・魔物のだるまのような身体、その下半身に何か爆発物が埋め込まれていたらしく、魔物の身体の下半分が地面に向かって爆発を引き起こす。
その爆発力は・・・ルシアの魔力爆弾から比べれば大したことは無かったが、それでも、町の中で爆発したなら、小さくはない被害を与えるほどの威力を持っていた。
中でも大きな破壊力を持っているのは、爆発によって加速した臓物や骨、そして体液であった。
それらは、音の速度を上回る速さで、周囲に飛散して、その運動エネルギーで周囲のあらゆるものを破壊しようとしていたのである。
・・・尤も、言うまでもないことだが、ここにワルツがいる以上、その爆風が地面に到達することは無かった。
彼女の反応速度を考えるなら、音速の2倍や10倍程度の速度で押し寄せる衝撃波や飛散物など、殆ど止まっているようなものなのだから。
・・・ただ、それとは異なる問題が、ワルツとルシアの2人を襲おうとしていた・・・。
「無駄よ」
空から迫り来る爆風、他諸々を、いつも通り重力制御の壁によって押しのけるワルツ。
そんな中で、爆煙の向こう側に見えてきたのは・・・
『え・・・』
・・・破裂した腹部が高速で修復されていく魔物の姿であった。
「自爆じゃないの?!」
「戻っていく・・・」
体内からの爆発で負ったはずの致死的なダメージですら無かったことにしてしまう回復力を前に、唖然とする2人。
彼女たちがそうしているうちにも、魔物たちは次の行動に出た。
まず、2人を取り囲んでいる内、王城や教会に近い側に立っていた魔物2体が、彼女たちに背を向けたのである。
どうやら、ワルツたちを無視して、この町の破壊を優先するつもりらしい。
そして残り3体が、移動していった2体の穴をふさぐ形で、ワルツたちを取り囲みながら近づいてきたのである。
直後・・・
ウィィィィン・・・ガシャンッ・・・
ドゴォォォォン!!
2人の近くにいた1体が再び爆発した。
「っ!」
それを再び重力制御で押し返すワルツ。
すると・・・
ウィィィィン・・・ガシャンッ・・・
ドゴォォォォン!!
続いて別の1体も連続して爆発したのである。
その後も・・・
ドゴォォォォン!!
ドゴォォォォン!!
ドゴォォォォン!!
・・・
まるで、ローテーションを組むようにして、爆発と修復を繰り返しながら、暴風をワルツたちに浴びせかける3体の魔物たち。
そんな彼らに・・・
「・・・これ、私たちを潰しに来てるわね・・・」
ワルツは、何者かによる意図的な策略を感じ取っていた。
似たような形状をした魔物たちがビクセンに突然現れ、連携を取りながら、自爆で自分たちの行動を阻害する・・・。
果たして、これほどの攻撃力と回復力が、この町を攻め落とすために必要なのだろうか。
専ら、自分たちと戦うために用意された魔物たちなのではないか。
・・・ワルツには、そう思えてならなかったのである。
(あー・・・これ、尻尾と耳をつけてくるべきだったかしら・・・)
ここまでの流れを考えると、魔物の背後にいるだろう者が、ロリコンや、彼の潜伏していた施設に関係する者であることは疑う余地もなかった。
もしもその者(たち?)が、ワルツと同じ現代世界の出身者なら・・・元の世界では人々から姿を隠して生きていた彼女にとっては、何が何でも相手に自分の正体を知られたくはなかったのである。
もしも、彼らが現代世界の出身ではなかったとすれば、他のガーディアンたちが居ないこの世界で自分の姿を知られることは、それほど大きな問題ではなかった。
たとえ知られたとしても、この世界の者たちが、ワルツのいた世界に行って、彼女の存在を公言するわけではないからである。
・・・だが、相手が転移者や転生者だとすれば・・・ワルツと同じく元の世界へと戻ろうとするか、あるいは既に戻る手段を持っているかもしれないので、最悪、元の世界の兄姉たちにも迷惑がかかってしまう恐れが否定出来なかったのだ。
今、ここには、魔物を操っていそうな人物の影は見えなかったが、もしも戦闘を監視されているとすれば・・・後々、ミッドエデンまで彼女のことを調べに来るかもしれない・・・。
故にワルツとしては、単に黒い髪、黒い服装の姿だけでは少々心許なすぎたのである。
・・・尤も、単に調べに来るだけなら、(片っ端から排除すればいいだけなので?)何の問題もないのだが・・・。
・・・というわけで、
ニュッ・・・
今の黒い髪と同じ色の狐耳と尻尾を生やすワルツ。
どうやら彼女は、辺りが暗いので、今ここで突然、黒い耳と尻尾を生えてきても不審には思われない、と考えたようだ。
一方、そんな彼女の真隣にいたルシアはその変化に気付いたようで・・・
「・・・お姉ちゃん・・・遊んでるの?」
こんな危機的な状況だというのに、随分余裕があるんだね・・・、と言った様子で怪訝な視線を向けた。
「いや、違うのよ。これには歴とした理由があるんだけど・・・その話は今度ね」
「・・・」
『その話は今度』と聞かされた話を、事後で聞いたことが無かったため、やりきれなさそうな表情を浮かべるルシア。
そんな彼女の表情に気付いたのか気づいていないのか・・・
「・・・ルシア、さっさと片付けるわよ?」
いつも通り、ワルツは誤魔化すようにして、話題を変えた。
「・・・うん!」
そんな彼女に、ルシアはすぐに表情を戻すして明るく返事を返すと、敵を真っ直ぐに見据える。
それから彼女たちが選択した行動は2つである。
まず一つ目は・・・
「浮かべるから、好きなように料理して頂戴?」
「分かったよ!」
以前、最初にこの町に来た時、暴れていたスカービクセンを吹き飛ばした際のように、ワルツが目の前に居た魔物を宙に浮かべると・・・
「行くよー?」
ドゴォォォォォン!!
と、ルシアが魔力爆弾をぶつけたのである。
そしてもう一つが・・・
「・・・そっちは行き止まりよ?」
王城や教会の方へと向かっていた魔物を、ワルツは先程の魔物たちのように浮かべると・・・
ギュン!!
町の外へと高速に移動させ・・・
ドゴォォォォォン!!
・・・そのままの勢いで地面に衝突させるというものであった。
ただし、それだけではない。
グシャ・・・
魔物に掛けた大きな重力加速度を、地面にぶつかっても更にかけ続けたのである。
もしも、衝突のダメージだけで完全に絶命させることが出来なければ、再び復活してしまうので、念には念を入れたのだ。
・・・こうして、数秒の間に、この世界から2体の巨大な魔物が消え去った。
「んじゃ、次行くわよ?」
「うん!」
それから彼女たちが、次に処理する魔物を見定めた・・・そんな時である。
フワッ・・・
残った魔物の内2体が光ったかと思うと、
「・・・!?」
不意に、ワルツのレーダーに、何か大きな影が映り込んできたのだ。
「えっ・・・」
その光景に唖然とするルシア。
そんな驚いた様子を見せた彼女たちの眼には・・・
「分裂するの?!」
「うわぁ・・・」
・・・まるで単細胞生物の分裂のように頭から又先までが割れて、2体に増える魔物の姿が眼に入ってきたのである。
どうやら魔物たちを排除するためには、その生命を完全に奪うだけでなく、全ての個体を同時に倒さなくてはならないようだ・・・。
あとがき編集中なのじゃ!
・・・書いたのじゃ!
うむ・・・思ったよりも今日は文量が少なかったのじゃ。
まぁ、ガーディアンの存在が知られたくない云々のところで、時間を喰ってしもうたからのう・・・。
あと、ココアドほっとけーきなるものを作って食べたら、少々眠くなってきた・・・ということもあったしのう。
仕方ないのじゃ。
さて。
補足なのじゃ。
吹き飛ばした2体の魔物が、どれとどれなのか、についてなのじゃ。
まず、ワルツが浮かべて、ルシアが吹き飛ばした1体についてじゃが・・・これは、2人を取り囲んでいた3体の魔物内の、王城・教会側におった魔物じゃ。
それがいなくなった後で、ワルツたちからその向こう側に見えた、王城・教会に向かって移動を続けておった魔物2体の内1体をワルツが町の外へと吹き飛ばした・・・そんな感じじゃ。
それで、増えた魔物じゃが・・・それぞれ吹き飛んだ魔物の一番近くにおった魔物から増えた、と考えて欲しいのじゃ。
つまり、王城・教会に無かっていた者から1体。
そして、ワルツたちを囲んでおった2体のうちどっちかが増えたのじゃ。
・・・適当なのじゃ。
ぬぅ・・・じゃぁ、ワルツたちを中心として、王城を12時の方向と見立てた時、4時方向におった魔物が増えた、と言っておくのじゃ。
・・・補足なのに分かり難いのう・・・。
・・・諦めるのじゃ!
他は・・・まぁ、他には良いかのう?
今日の晩ごはんの献立を聞いても仕方ないじゃろ?
・・・そういえば、昨日、晩ごはんを食べた後に、食べたことを忘れておったのじゃ・・・。
・・・狩人殿が。
大丈夫じゃろうか・・・。




