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6後後-05 帝都防衛1

「それじゃ、行ってくるわ」


ビクセン上空で、街を旋回する軌道に入ったエネルギアの昇降口から身を乗り出して、残った者達に言葉を投げかけるワルツ。

気流が吹き荒れるハッチの向こう側で、まるでそよ風か何かを感じるようにしながら、涼し気な表情を見せるそんな彼女に対して、イブは思わず問いかけた。


「え・・・ワルツ様、まだ空の上だよ?落ちたら大変だよ?!」


「いや、飛べるから全然問題無いわよ?っていうか、施設から逃げるとき、一緒に飛んだじゃない・・・」


「でもあれは、ゆっくりだったし、飛んでたというより浮かんでたって感じだったし・・・」


ワルツの言葉の聞いても、彼女の事情の分からないイブにとっては心配なようであった。

そんなイブに、飛竜が声を掛ける。


(ぬし)よ。心配せずともよいのではないだろうか。ワルツ様は魔神。例え、頭から地面に落ちたとて、ゲガ一つ負わぬはずだ」


「いや、だから魔神じゃないって・・・」


と言いながら、この世界に来た際に直径数百メートルのクレーターを作ったことを思い出すワルツ。


一方、飛竜に(さと)されたイブは、


「まぁ、ドラゴンさんが言うなら・・・」


・・・どういうわけか、素直に頷いた。


「私の言葉は信じられないって、どういうこと・・・?」


「ワルツ様の話、適当なことが多いしね」


(・・・うん・・・自業自得だったのね・・・)


ワルツはこれまでの行動を思い返しながら、自分を取り巻く逆風の中で項垂れた・・・。


「ま、いいけどさ。それで・・・・・・じゃぁ、ユキ。あとは頼むわよ?」


「いや・・・あの・・・どうやって使えば・・・」


舌の根も乾かぬうちに、ユキに対して至極適当な言葉を投げたワルツに、戸惑うユキ。

尤も、今になって戸惑い始めたわけではなく、艦橋でエネルギアのことを任された時から、ここまでずっと困っていたのだが・・・。


「別に難しいことではないわよ?・・・エネルギア?いるんでしょ?」


ワルツがどこに向けるでもなくそう口にすると、


『いるよ?そこの白いお姉ちゃんと一緒に、敵を攻撃すればいいんだよね?』


タラップ操作用のパネルについていたスピーカーから、エネルギアの声が返ってきた。


「えぇ、そんな感じ。でも、ただ攻撃するだけじゃダメよ?ちゃんとユキの話を聞いて攻撃してね?なんか、戦略とかあるかもしれないから」


『うん、わかった』


「えっ・・・」


そんな2人(?)の話しについていけず、ユキは唖然とした表情を浮かべた。

ワルツは、一応、ユキが直接前線に立って戦ってこなかった魔王であること考えて、むしろストラテジーを考える方が適任ではないかと思い、エネルギアを使っての俯瞰視点(ふかんしてん)からの攻撃を任せたのだが・・・


「あの・・・初めてですけど・・・頑張ります!」


ユキはそんな不安の色を含む言葉を残すのであった・・・。


「・・・うん。ま、なんとかなるわよ。じゃぁ、後は頼むわね」


そう言ってワルツが昇降口にあったバーから手を離そうとした・・・そんな時である。


『ねぇ、お姉ちゃん』


まさに別れ際、と言ったタイミングで、エネルギアが話しかけてきた。


「ん?」


『・・・そこにいる大っきなトカゲも一緒に倒しちゃっていいんだよね?』


どうやらエネルギアは、()内で暴れた飛竜のことが嫌いになったようである・・・。

まぁ、彼女(?)の話を無視して暴れた飛竜が一方的に悪いのだが・・・。




・・・一方その頃。


ルシアは、身長50メートルにも及ぶ、だるまに足が生えたような、ずんぐりむっくりな二足歩行の魔物たち5体と、街の中で対峙していた。


「っ!」


ギュンッ!!


ルシアの前方1メートル程度の場所から放たれた瞬間、まるで鞭のように(しな)やかに曲がって、魔物に襲いかかる魔力粒子ビーム(細)。

それが5体全ての魔物の足に同時に当たって、難なく切断しようとする。

実際、ビームは足を端から端まで貫通し、一見すると切断したかのように見えたのだが・・・


「何ですぐ治っちゃうの?!」


切った側から、瞬時に傷口が塞がっていくために、切断するには至っていなかった。

例えるなら、まるで霧かホログラムで作り出された実体のない影に攻撃を仕掛けている・・・そんな様子である。

魔物の身体が周りの建物に触れた瞬間、それを衝撃で破壊していくので、実体があるのは間違い無いはずなのだが・・・自動的な回復魔法のようなものが掛かっているためか、有効なダメージが与えられていなかったのだ。

そう、まるで『天使』たちに攻撃を加えた時のように・・・。


それでも、攻撃している間は、魔物が前に進むことはなかった。

回復と移動を同時には出来ないらしく、足止めをするという意味では、ルシアの攻撃も(あなが)ち無意味なものではなかったのである。


一方、そんな妨害行為をしていれば、ルシアに対して何らかのアクションがあっても良いはずなのだが・・・しかし、彼女が攻撃を加え始めてからこれまでの間、魔物たちは、何故か彼女のことを完全に無視するかのようにして、一向に反撃してこなかった。

その間、彼らは何をしていたのかというと・・・とある方向へ黙々と進もうとしていたのである。


その方向にあるのは・・・王城、あるいは教会であった。

他にも小さな建物が建っていたが・・・巨大な魔物が、商店やギルドに用事が無いことを考えるなら、その2つしか目的地は考えられないだろう。


では、王城に何があるのかというと・・・まぁ、これについては言わずもがなである。

街中の市民たちが集結しつつあり、なおかつ、ユキの姉妹たちが陣頭指揮にあたっている場所だ。


一方、教会には何があるのか・・・。

・・・実は、都市結界のコアが教会の屋根の頂点部に設置されていた。

その理由については、ビクセンの歴史が深く関わってくるのでここでは割愛するが、もしも魔物が都市結界を破壊してしまったとしたら・・・外に溢れている数えきれないほどの魔物たちが、度重なる迷宮の暴走に寄って壊れてしまった市壁の隙間から、一気に町の中へと押し寄せてくることについては想像に(かた)くないだろう。


目の前の魔物たちが、一体、このどちらを狙っているのか・・・ルシアには分からなかったが、何れにしても、そこへと魔物が到達してしまった時点で、人々を守ろうとしていた彼女たちの敗北が決定することに違いは無かった。


「(強い魔法を使いたいけど、地面でそんなことしたら街を壊しちゃうかもしれないし、どうすればいいんだろう・・・)」


彼女が持つ魔力爆弾などの強大な魔法を使えば、恐らく、魔物に回復の余地を与えずに蒸発させることが可能である。

しかし、そのようなことをしたら、同時に街も含めて蒸発させてしまうことも、また必然であった。


それからルシアは、それほど長くない時間、どんな攻撃を加えるかを悩んでから・・・


「・・・うん、これしかないよね?」


何か思いついた様子でそう呟いて、5体の魔物全てに対して・・・・・・転移魔法を行使した。

遠くに移してしまえば、街を破壊すること無く敵を排除できる・・・そう考えたようだ。


ブゥン・・・


その瞬間、姿を消す魔物たち。

その行き先は・・・


「流石に『大河』の中なら、魔法が使えないから死んじゃうよね・・・?」


・・・ということらしい。


「(最初からこうしとけばよかった・・・)」


魔物たちがいなくなった後で、ほっと安堵の息を吐くルシア。

それから彼女は、町の外にある結界の表面で、積み重なるようにして蠢いている魔物たちに眼を向けると、そちらを片付けるために、そこから移動しようとした・・・。


・・・その瞬間である。


ブゥン・・・


そんな聞き覚えのある重低音が周りから聞こえてきたかと思うと、


ゴォォッ!!


・・・周囲で暴風が吹き荒れた。

空間に大きな体積を持った何かが転移してきた際などに生じる衝撃波が、大量の大気を押し流したのだ。

それがルシアに向かって襲いかかってきたのである。


・・・要するに、5体の魔物たちが、身体の表面に大河のものであろう真っ赤なマグマを付着させたまま、彼女を取り囲むようにして再び現れたのである。


「っ?!」


転移して戻ってくるかも知れないと薄々予想はしていたルシアだったが、まさか囲まれることになるとは思わず、彼女は周囲を見渡しながら驚きの表情を浮かべた。


そんな彼女に対して魔物たちは、鳴き声も上げずに静かにその巨大な拳を振りかざすと・・・・・・そのままそれを今度は真っ直ぐに振り下ろした。


「・・・」


自分に向かってくる5つの拳。

それを()()()()ルシアは・・・しかし、特に避ける様子もなく、むしろ嬉しそうに笑みを浮かべた。


何故なら・・・


ドゴォォォォン!!


・・・拳よりも速く移動してきた黒い影が、自分の隣に降り立つと、


ゴォォォォン・・・


「ごめんごめん、遅くなったわ」


そう言いながら、見えない力(重力制御)で拳を受け止めたからである。


「ううん。あんまり待ってないよ?」


そんな姉に対して笑みを向けるルシア。


・・・だが、ここで、ワルツにもルシアにも予期しないことが起こる。


『・・・』


急に魔物たちが固まったかと思うと・・・


ウィィィィン・・・ガシャンッ!


・・・そんな機械的な音が彼らの内の1体から聞こえてきて・・・


ドゴォォォォンッ!!


・・・彼女たちの目の間で、大爆発を起こしたのだ。

妾の国の王都も、『帝都』とか言われたいものじゃのう・・・。

いや、共和制じゃから、厳密には王都ですら無いんじゃがのう?


それで、じゃ。

今日は少し早めに書き終わったのじゃ。

まぁ、やらねばならぬことがあるから、早めに書き終えたとも言えるんじゃがのう?

というわけじゃから、あとがきをさっさと書き終わってしまうのじゃ。


まず、なのじゃ。

ビクセンを襲っている魔物には2種類いることについては良いじゃろうか?

一つは、ルシアが戦っている、市内に入り込んだ巨大な魔物5体。

そして、都市結界の表面で蠢く、大量の小さな魔物たち。

この2種類じゃ。

一緒くたにしてはならぬぞ?

・・・え?妾の執筆能力が低すぎるから混乱する?

・・・諦めるのじゃ!


あとは・・・王城と教会がビクセンのどの辺りにあるか、その位置関係かのう?

簡単に言うなら・・・丸い町があったとして、その北西部の外縁に王城が建ち、そこから町の中央よりに入った場所に教会がある、と言った感じじゃ。

これには2つ理由があって・・・まぁ、一応、ネタの一つじゃし、気が向いたら説明するのじゃ。


他は・・・転移魔法についてかのう。

まぁ、わざわざ説明しなくとも良いと思うのじゃが、ルシア嬢の魔法は基本的には大河で打ち消されてしまうのじゃ。

じゃが、ワルツやユキ殿をミッドエデンまで転移させたことや、魔物を大河の中に放り込んだことからも推測できる通り、奴の転移魔法は大河の有無に関係なく使えるのじゃ。

雰囲気としては、カペラたち河渡しと同じような能力と言うべきじゃろうかのう・・・。

まぁ、同じかどうかは・・・空間制御魔法がどのようなものなのか、詳しく述べておらぬから、まだ分からぬがのう?


とりあえず、今日はこんなところかのう?

あとは・・・別の方で書くのじゃ。


さてと・・・ほっとけーきみっくすを買ってくるかのう・・・。

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