6後後-02 ボレアスへの帰還2
後で微修正するかも、なのじゃ。
『お、お姉ちゃん?この先はどう進めばいいの?』
・・・ワルツがリサを吹き飛ばして血まみれにさせた様子を見ていたエネルギアが、どこか彼女との接し方に戸惑う様子を見せながら、恐る恐る問いかけた。
「うん・・・方位60度でお願い・・・」
言い逃れできないことを理解しているワルツは、心底、自分の行動を後悔している様子で返答した。
すると、そんなワルツの側に、ユキはどこか申し訳なさそうに近づくと、彼女は胸の前で指を組みながら口を開く。
「あの・・・ワルツ様。お気になさらないで下さい」
「・・・ううん・・・いいの。私が悪かったってことはよく分かってるから・・・」
そんなワルツの言葉に、ユキはゆっくりと首を横に振りながら言った。
「あの・・・実は彼女、つい先日まで諜報部隊ではなくアサシンに属する者だったのですが、その訓練の過程で心を病んでしまいまして転属させたのですよ」
「え・・・いや、いきなり刺された時から、なんとなく病んでる人だな・・・って分かってたけど、いいの?そんな人を諜報部に入れといて・・・」
するとユキは、ワルツに背を向けて、今にも沈みそうな夕日に目を向けながら、感慨深そうに言った。
「・・・今思えば・・・やっぱり、ダメだったんですね・・・」
「ちょっ・・・」
・・・どうやらボレアスは、慢性的な人手不足に陥っているらしい・・・。
「そんなんだから・・・・・・いえ、なんでもないわ・・・」
昔の話を掘り返そうとして、流石にそれは拙い、ということに気付いたワルツは、口を閉じた。
「・・・?」
ワルツの『そんなんだから・・・』の言葉の続きが一瞬気になったユキ。
「あ!あの山、ユキの先祖の故郷じゃない?」
自分が途中で言葉を止めたことに、怪訝な表情を浮かべる彼女をどうにか誤魔化そうと、ワルツが外の景色に見えた適当な山に指をさして、意識を別のものに向けさせようとした・・・そんな時だった。
ゴォォォォン・・・
どこからとも無く、そんな響くような音が聞こえてくる。
すると・・・
『・・・っ!お腹痛いっ!』
突然、エネルギアがそんなことを言い始めた。
「ん?故障?」
以前、エネルギアが腹痛を訴えた時は、重要なセンサーを止めるボルトが抜けかかっていたのだが・・・今度も何か同じようなことが起ったのだろうか。
ワルツがそんなことを考えていると・・・
『えっ?!』
・・・何故かエネルギアは驚いたような声を上げた
『入り口のところで、なんか暴れてる?!』
「なんかって・・・あ・・・」
彼女(?)の言葉で、入口付近に飛竜を置いてきたことを思い出すワルツ。
どうやらエネルギアは、ドラゴンや竜という言葉を知らなかったためか、彼のことを何と表現して良いのか解らなかったようだ。
「・・・イボンヌ?飛竜、起きたみたいよ?」
「イブです!って、ホント?!」
「なんだったら、見てくればいいんじゃない?でも、危ないから、注意してね?暴れてるらしいから。廊下でブレスとか吐いてるかもしれないわよ?」
「えっ」
ワルツの言葉で、つい今しがたまで明るい笑みを浮かべていたイブの顔が、引きつった笑みへと変わる。
「・・・まぁ、良いわ。一緒に行きましょうか」
「えっと・・・うん。お願い・・・します・・・」
ワルツに対して敬語を使うことを悩んだのか、イブは言い淀んだ。
「ユキ?貴女はどうする?一緒に行く?」
「・・・ドラゴン様が起きておられるなら、言わなくてはならないことがあるので、一緒に行きます」
というわけで。
ワルツとイブとユキは、暴れているだろう飛竜のところへと向かったのである。
彼女たちが廊下に出ると突然、
ドゴォォォォ!!
炎・・・所謂ドラゴンブレスが襲ってきた。
その瞬間、
「うひゃっ?!」
一瞬にして灼熱のガスの中に包まれてしまうイブ。
・・・恐らくワルツが重力制御でシールドを作っていなければ、彼女はその時点で炭化していたのではないだろうか・・・。
一方、である。
「・・・ふむふむ。炎にも色々な味があるんですね・・・」
・・・ユキは、ワルツの重力制御の内側からわざわざ顔を出して、炎を食べていた・・・。
「いやいや、炎を食べても味なんて分かんないからね?っていうか、火傷するからやめなさいよ・・・」
「え?いや、そんなことは・・・えっと、分かりました」
そう言うと、残念そうに重力制御の内側に戻ってくるユキ。
その際・・・
「う、うわぁっ?!」
まるで、どこかの超兵器が無防備なサキュバスを吹き飛ばした際に上げたような声を上げて、イブが全力でワルツにしがみついた。
・・・何故なら、
「ホラーよねぇ・・・」
・・・詳しくは言わないが、先程までドラゴンブレスの中にいたユキの姿が、すごいことになっていたためである。
・・・まぁ、それも、5秒ほどの事なのだが・・・。
「どうしたんですか・・・?」
自分の顔に対して、何かバケモノを見るかのような視線を向けるイブに、納得のいかない表情で頭を傾げるユキ。
そう喋っているうちに・・・
シュワァ・・・
と、彼女の姿が完全に復元されていった。
・・・体内のナノマシンによる超回復である。
「えっ・・・・・・ど、どうなってるの?」
まるで、顔に貼り付けていた汚れ(特殊メイク?)が流れ落ちるかのように、元の姿に戻ったユキに、驚いた視線を向けるイブ。
「まぁ、魔王だし、こんくらいは出来てもらわないとね」
そう呟くワルツだったが・・・その一方で、『倒せる勇者・・・いないんじゃないかしら・・・』と思っていたりいなかったり・・・。
「?」
しかし、当のユキは、自分の身に何が起ったのか、最後まで分からずじまいだったようである。
さて。
今もなお、断続的に吹き荒れるブレスの中を、出入り口に向かって歩いて行く一同。
しばらくその中を移動して見えてきたものは・・・
グォォォォォ!!
と、我を忘れた状態で雄叫びを上げる飛竜の姿だった。
「荒れてるわね・・・」
「荒ぶってますね・・・」
「怒ってるの・・・?」
その姿を見てそれぞれ感想を口にする3人。
すると、
『痛いから暴れるのをやめて下さい!』
そんなエネルギアの声が、近くのスピーカーから聞こえてきた。
だが・・・
ウォォォォォ!!
・・・一向に、聞く耳を持たない様子の飛竜。
今の彼の視点からエネルギアの船内を見るなら・・・黒い格好をした兵士たちに再び捕まって、イブと離れ離れにされた挙句、一人だけ狭い空間へと放り込まれた・・・そんな状況だろうか。
このまま彼を放っておいても、一応は火災になる心配は無かったが、とはいえ、そのまま放置しておくわけにも行かないので、ワルツは彼を黙らせることにした。
「飛竜!おすわり!」
ドゴォォォォン!!
「グハッ?!」
ワルツの重力制御で、エネルギアの床に沈み込む飛竜。
それと当時に・・・
「・・・昔はこんな感じで、よくやってたんだけどね・・・」
と言いながら、昔飼っていた犬を思い出しながら、イブの方に視線を向けるワルツ。
「・・・ん?」
「いいえ。なんでもないわ」
するとそんなタイミングで、
「わ、ワルツさ・・・主よ!無事だったか!」
飛竜は廊下からやってきた彼女たちの存在に気付いたようだ。
「随分、イボ・・・イブが大事そうね?」
そう言いながら、飛竜にかけていた超重力を開放するワルツ。
「それは・・・はい。彼女は我の命を救ってくれた恩人。それ故、何があっても、必ず救ってみせると心に決めておりましたので」
それから飛竜は一旦立ち上がると、姿勢を正して、ワルツ達の前に跪いた。
その行為自体に特に大きな意味があったわけではないが、彼は、ワルツの前で無様に地面に伏せているのは如何なものか、と思ったらしい。
そんな飛竜に・・・
「・・・ドラゴンさん、身体の調子は大丈夫なの?」
心配そうにイブは問いかけた。
「うむ。よく分からぬが、気づくと身体から傷が消え、その上、いつもより軽くなっておったのだ。今は全く、痛むところは無いぞ?」
(え?じゃぁ、普段からダルかったってこと?)
飛竜の言葉にそんな些細な疑問を浮かべるワルツ。
一方、イブにはとっては大きな問題ではなかったのか、彼女は飛竜に近づくと・・・
「えっと・・・助けてくれて、ありがとう!」
そう言って、飛竜に抱きついた。
そんなイブを、
「・・・我もだ。助かった」
飛竜も少々固い腕で、抱き返したのである。
それからしばらく経って。
何故壁に埋まって死にかけていたはずの自分が生きていて、どうしてここにいるのか、その理由を聞いた飛竜は、助けた本人であるユキに問いかけた。
「・・・シリウス殿。相棒は・・・地竜はどうなったのだ?」
彼の問いかけに対してユキは・・・
「・・・申し訳ございません」
そう言って頭を下げた。
つまり、助けられなかった、ということなのだろう。
「いや、頭を下げなくとも良い。・・・分かっていたのだ。奴は、とうの昔に逝ってしまったのだと・・・」
するとユキは、
「・・・いいえ、違うのです」
どういうわけか、首を横に振った。
「地竜様は・・・自らあの場所に残られました」
「・・・?」
「実は、誰もいなくなった後、地竜様の首輪を破壊したのです。その際、地竜様は意識を取り戻されたのですが・・・」
「い・・・生きていたのか?!」
「えぇ。地竜様は既に相当弱っておられましたが、まだご存命でした。なのでドラゴン様と一緒に助けようと思ったのですが・・・ボクの身体で、ドラゴン様も地竜様も同時に運ぶというのは難しかったのです。その上・・・地竜様がドラゴン様の方を優先的に助けてほしい、と仰られて・・・」
そのユキの言葉を聞いて、一度は明るい視線を向けていた飛竜だったが・・・
「そうか・・・。・・・だが、シリウス殿のせいではない。我が弱かったせいだ」
そう言って俯き、床に手を付いた。
そんな彼に、
「あの、ドラゴン様?」
ユキは・・・どういうわけか、苦笑を浮かべながら口を開く。
「まだ死んでない上、それに手遅れというわけでもないと思うのですが・・・」
「・・・なん、だと?」
「地竜様は地竜なのです。確かに、大怪我は負いましたが、あの施設の炎に包まれたくらいではびくともしないはずです。地竜は火山の中などでも生きていけますしね。それに、もしも施設が崩落してしまったとしても、彼の方は地中でも穴を掘って生きていけるはずなので、そう簡単には命を落とされるようなことはないかと・・・」
そんなユキの言葉に、文字通り眼が点になる飛竜。
すると今度はワルツが口を開く。
「じゃぁ、謝らなきゃならないのは私の方ね」
『え?』
「いや、穴を掘って彼を救出すればいいだけじゃない?私ならそれができるけど・・・でも、今はそれが出来ないのよ・・・あの変な人間たちに見つかると、厄介すぎることになるし・・・」
と、戦車に乗っているだろう人間たちのことを思い出してそんなことを口にするワルツ。
「え・・・いや、ワルツ様の手を煩わせるようなことは・・・」
飛竜はそう言いながら・・・一方で自分が頑張ってどうにか出来る問題なのかを考えて、思わず口を噤んでしまった。
・・・それでも彼は、しばらく悩んだ後、
「・・・必ずや、奴を救ってみせます」
そう決意を口にした。
今の自分には出来ないかもしれないが、これからの自分になら出来るかもしれない。
そう思ったようだ。
「いや・・・その内、勝手に出てくるんじゃ・・・。あー、でも、面倒な場所だし、助けに行ったほうがいいかもね」
「えっ・・・」
「・・・うん。なんでもないわ。頑張って」
「・・・」
何処か意味深げな発言を繰り返すワルツに・・・・・・しかし、彼は、ただ怪訝な視線を向けるだけではなかった。
「・・・ワルツ、お願いがございます」
そう言って改めて姿勢を正す飛竜。
(・・・この前、人間になるまでダメだって断ったのに、また『弟子にしてほしい』って言うつもりね?・・・ま、ちゃんとした理由があるんだし、良いけどさ・・・別に・・・)
彼の様子を見て、そう思うワルツだったが・・・話は斜め上の方に進み始める。
「・・・イブ殿はワルツ様の大切な弟子のようにお見受けします。そして我はイブ殿に命を救われた身・・・。故に、我はイブ殿の弟子として仕えるべきではないかと考えたのです。ですから、我がイブ殿に弟子入りすることを認めて欲しいと、お願い申し上げます」
そんな彼の言葉に、
「えっ・・・どうしてそうなるのよ・・・」
「ワルツ様は私の先生なんかじゃないし!」
師弟関係を否定するワルツとイブ。
すると飛竜は、
「えっ・・・」
彼女たちに輝きの無い目を向けた・・・。
地竜を救う術を失ってしまった・・・そんな、絶望に近い視線である。
「ちょっ・・・そんな視線で見られても・・・」
「そ、そうだよ。ワルツ様は、私の何でもない・・・・・・」
そう言うと、今度はイブの方も何故か俯いてしまう
「・・・そういえば、私の家・・・」
どうやら、ビクセンの家が無くなってしまったことを思い出したらしい。
「・・・」
毛色は違えど、似たような雰囲気を纏う2人に・・・
「・・・はぁ」
ワルツは深くため息を付いて、口を開いた。
「・・・分かったわよ。イブは一緒について来ても良いわ。だけど、飛竜の方は良いの?イブなんかの弟子で?」
「イブじゃないし!あれ?って、ホント?!」
と、少々混乱しながら、素直に明るい表情を見せるイブ。
地竜の方も、
「うむ。一向に構わぬ。イブ殿から学ぶことは多いですからな」
納得したように頷いた。
「・・・そう。なら良いけどね・・・。ドラゴンがもう一匹、増えるだけだし・・・」
・・・こうして。
ワルツ達の仲間(?)が2人増えたのである。
なお、
「・・・ボクは・・・弟子・・・じゃなくて、正室で良いんですよね?」
そんなことを呟いている者が近くにいたのだが・・・それには誰も気づかないようであった・・・。
時間がなーい、なのじゃ。
故に、とりあえず上げるのじゃ。
あとがきは後で、なのじゃ!
・・・
・・・というわけでじゃ。
あとがきなのじゃ
ふぅ・・・今日も大変だったのじゃ。
昨日に引き続き、朝から晩まで主殿が食事もせずにらっぷとっぷを専有していたせいで、作業が進まなかったのじゃ。
おかげで、細かな言い回しに不安が残るのじゃ。
さて。
補足すべきことは・・・特に無いかのう?
あ、そうじゃ。
エネルギアの中の防火設備についてなのじゃが・・・そういうのは無いのじゃ。
燃えるものが無いということもあるのじゃが、修復用のナノマシンがおるから、もしも燃えてしまっても、焼失する前に修復されてしまうのじゃ。
・・・たぶん。
とりあえずは、そんなところじゃ。
・・・先日の文も直さねばならぬのじゃが・・・そこまで手が回らぬ・・・う・・・わぁーーーーん!!なのじゃ!!




