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6後後-01 ボレアスへの帰還1

そういえば、閲注と書くのを忘れておった・・・

明日修正しよう・・・なのじゃ。

光学迷彩をいつもより大き目に展開して皆を不可視の領域の中に包み込んだ後、外にいる人間たちには見られないようにエネルギアへ乗り込むワルツ、そして仲間たち。

それから、エネルギアの出入り口付近に意識のないままの飛竜を置くと、残りの一同は、ワルツを先頭にして、真っ直ぐに艦橋へと足を進めた。


ガションッ・・・


そんな音を立てながら、勢いよくスライドして、自動的に開く艦橋の扉。

ここに来てようやく、ずっと口を開けたままで唖然としていたイブの口から、音が漏れ出してきた。


「・・・んあ?!」


・・・むしろ、喋ったというよりは、呼吸をすること自体を忘れていたというべきか・・・。


「な、なにここ?!」


そう言いながら彼女は、宙に浮かぶ座席やステータスモニター、そして、まるで()()の中とは思えないほどに高精細に表示された壁の景色に、皿のような眼を向けた。

彼女にとっては、先ほどの施設の設備も十分に非現実的だったが、この艦橋の中はそれとは比較にならない異次元の景色だったようである。


「ここが何かって?艦橋よ?」


リサに刺されているために、艦長席に座れなかったワルツは、席の横に立つと『何か変なことでもあった?』といった様子で、イブに言葉を返す。


「かんきょう?」


「そ。船を操作するための操縦室ってことね」


「船・・・?えぇ?!」


「何?船も知らないの?」


「いや、船は知ってるけど・・・この建物が船なの?」


そう言いながら、頭の中で、川に流されていく家を思い浮かべるイブ。


「んー、まぁ、そんなところよ?水の上に浮いたり、水中にもぐったりすることは出来ないけどね」


「それ、船って言わないんじゃ・・・」


「あれよ、あれ。トレンド(流行)ってやつ」


「・・・?」


ワルツの言葉がよく聞こえなかったのか、それとも理解できなかったのか・・・イブは眉を顰めながら首を傾けた。


そんな彼女に向かって苦笑を浮かべると、直後にワルツは、独り言にしては少し大きな声を、どこに向けるでもなく言い放つ。


「エネルギア?いるわよね?」


するとすぐに・・・


『いるよ?』


ルシアに似た声が、艦橋のスピーカーから聞こえてきた。


「・・・ビクセンに向かって出発したいんだけど、準備は良いかしら?」


『えっ・・・?』


ワルツの言葉が理解できなかったのか、どこかイブと同じような雰囲気を出しながら、そんな疑問の声を上げるエネルギア。


『外のヤツは放っとくの?』


「えぇ。別に砲撃されたくらいで、やり返さなくてもいいかなって。こちらに何か損害があったわけじゃないしね。確か、前にも同じようなことを言った気がするけど・・・あ、貴女、いなかったわね」


と、船体の重粒子シールドと修復用ミリマシンが正常に動作していることを確認しながら、ワルツは口にした。

もしも重粒子シールドや修復用ミリマシンが展開されていなかったなら、戦車からの砲撃で少なからず船体が傷ついてしまうので・・・その場合は、反撃するつもりだったようだ。


「それに、変に攻撃を仕掛けて、あとで難癖つけられても嫌じゃない?(ま、なんとなく手遅れな気がするけど・・・)」


『分かったよ。だけど、ビクセンの位置が分かんないから、行く途中で教えてね?』


「えぇ。もちろんよ?」


すると間も無く、


フィィィィィィン・・・


そんな高音が、艦橋の中に(かす)かに聞こえてきた。

そして・・・


『離陸するよ』


と、エネルギアが告げた瞬間、艦橋から見えていた景色が大きく傾き、


ゴォォォォォォ・・・


・・・エネルギアは、空気を猛烈な勢いで切り裂きながら、取り囲む戦車を完全に置き去りにして、空へと浮かび上がったのである。




飛び立ってから間も無くのこと。

ワルツ達と共に一旦艦橋へと来ていたカタリナが口を開いた。


「そういえば、ルシアちゃんやユリアさん方の姿が見えないのですが・・・一緒ではなかったのですか?」


「えぇ。ルシアに、ミッドエデンまで送ってもらったからね」


と、航路をコンソールに打ち込みながら、カタリナに言葉を返すワルツ。


「ルシアちゃんの転移魔法ですね」


「そうそう。長距離も一瞬だから楽でいいんだけど、あの娘本人は移動できないから、意外と使い勝手が悪い魔法なのよね・・・」


「ルシアちゃんの転移魔法、普通の転移魔法ではないですからね・・・」


空間制御魔法でも転移魔法でもない、よく分からないルシアの魔法を思い出しながら、カタリナは苦笑を浮かべた。


「では、ビクセンでお留守番ということですね?」


「こういうこと。ま、今頃みんなで、屋台で買い食いでもしてるんじゃない?時間的に」


「そうですね。ちなみに、どのくらいの時間で着きそうですか?」


「そうね・・・たぶん、40分くらい?」


「分かりました・・・。では、リアのところに、顔を出してこようと思います。私の代わりに、テンポやコルテックスたちが診てくれているはずなので・・・」


そんなカタリナの言葉に、ワルツは『ん?』と何か思い出したような表情を浮かべた後、言うか言うまいか少々迷ってから・・・結局口を開いた。

ここで言わずとも、医務室に行けば分かる・・・そんな様子である。


「あー、テンポは医務室にいると思うけど、コルテックスには王城に残ってもらったわ。何かあった時に、議長がテレサ一人だけだと心許(こころもと)ないし、防衛システムも動かせないからね・・・」


「・・・分かりました」


少しはテレサの事を信用しても・・・と思ったカタリナだったが、後に続いた防衛システムの話を聞いて、納得した表情を浮かべた。


それから彼女は、ワルツやユキに対して軽く会釈すると、リアとテンポが待っているだろう、医務室へと去っていったのである。




さて。

ワルツとカタリナがそんなやり取りをしている間、


「・・・」

「・・・」


艦橋の壁に張り付く影が2人分あった。

・・・言うまでもなく、イブとユキである。

彼女たちは、外の景色を流れていく雲や、夕暮れの空の色、それに遠くの方に見える飛行性の魔物や大きな月に、眼を奪われていたようだ。


「これが・・・海?」


人生でまだ一度も海を見たこと無いのか、イブが一面に広がる雲に対して、そんなことを口にした。


「いいえ。これは雲海・・・とも違いますけど、雲で出来た絨毯のようなものですね」


と、どこかのお伽話で語られていそうな表現を口にするユキ。


「・・・あれ、触れられるの?水の粒だってことは分かってるけど・・・」


触れないことが分かっていて、『それでも、もしも触ることができたら素敵なのに・・・』といった様子で呟くイブ。

その疑問は誰か特定の人に投げかけられたものでは無かったが、彼女の近くにいたユキが、まるで子どもからの質問に答えるようにして、微笑みながら口を開いた。


「そうですね・・・。確かにこの雲は触れられないでしょうね。でも、『触れない』と言い切ってしまうと夢が無いので、ちょっと違った言い方をしましょう。世の中には『触ることの出来る雲もある』って・・・」


「ふーん・・・」


そんなユキの言葉がちゃんと頭に届いているかどうか分からない様子で、イブは外の景色に眼をやったまま、身の入っていない返事をした。

まぁ、もとより、返事を期待した質問ではなかったようなので、そういった反応を返すのは当然といえば当然なのだが・・・。


しかしユキは、そんなイブの反応に納得がいかなかったのか・・・


「・・・さては、信じてないですね?」


・・・頬を膨らませながら抗議する。

そんな彼女に、


「・・・あれでしょ?砂糖を加熱しながら風魔法で飛ばして作るおやつ。・・・綿アメって言ったっけ?」


・・・そんな擦れた子どものような言葉を返すイブ。


「えっ・・・」


決して可愛いとは言えなかった彼女の反応に、ユキは対抗するようにして思わず・・・


「ち、違いますよ!」


・・・そう答えてしまった。


実のところ、彼女はイブに綿アメを渡して、甘い雲だと言い張ることを考えていたのだが・・・。

どうやらイブは、それでは満足しない子どものようである。


「じゃぁ、今度見せて?」


(したた)かにユキ(250歳)を追い込んでいくイブ(8歳)・・・。


「ぐっ・・・い、いいですよ?」


「約束だかんねー?忘れないからねー?」


「ぐ、ぐぬぬぬ・・・!」


・・・こうしてユキは、イブに対して触れることのできる雲を見せるという少々面倒なタスクを負うことになるのである・・・。




それはそうと。

エネルギアに乗って空を飛んだことが()()無い者が、この部屋にはもう一人いた。

・・・ワルツの背中で今もなお、彼女自身の重力制御で拘束され、ナイフを突き立て続けているリサである。


一応、彼女は、ミッドエデンからここまでの距離をエネルギアに乗って移動してきたこともあって、今では特に驚いたような様子を見せていはいなかった。

・・・いや、実のところ、初めてエネルギアに乗った時も、特に大きな反応を見せていなかったのだが・・・。


(もしかして・・・罰が辛すぎて、塞ぎこんじゃったのかしら・・・?)


元より、何処か暗い気質を持ち合わせていたリサに、そんなことを思うワルツ。


それから『もうそろそろ彼女を開放してもいいか』と思い、ワルツはリサの手と、自身に刺さっていたナイフにかけていた重力制御をカットするが・・・


(・・・あれ?取れない?)


・・・どういうわけか、リサがナイフを握りしめたまま、ワルツの身体からそれを抜こうとしなかったである。


「・・・リサ?貴女・・・大丈夫?」


そう言いながらワルツが彼女の顔を覗き込むと・・・


「・・・くっ・・・!」


・・・何故か、恥ずかしそうに、リサは顔を伏せてしまった。


「・・・?」


そんな彼女に、怪訝な表情を向けながら、様子を伺うワルツ。


しかし、どんなに見つめていても、彼女にナイフを抜く気配が無かったので、ワルツは直接彼女の手を取って、ナイフを抜こうした。

すると、


「あっ・・・」


何故か残念そうな表情を浮かべて・・・


「い、嫌です!」


リサはそう言いながらワルツの手を振りほどくと、


サクッ・・・


再び彼女のことを刺したのである・・・。


「・・・何が嫌なの?」


何故、自分のことを刺そうとするのか。

最初は嫉妬が原因で刺していたはずなのだが・・・彼女の『嫌』という言葉の意味を考えるなら、今回も同じ理由で刺した、というわけでは無いようである。


そんな時、・・・ワルツは、とあることに気づく。

・・・リサが握ったナイフが、小さく震えていたのだ。


「・・・どうしたの?」


ワルツが心配そうに問いかけると、リサは真っ赤な顔をしながら、目尻に涙を浮かべて・・・震える唇を徐ろに開いた。


「ご、ごめんなさい・・・」


今も刺さっているナイフの感覚を感じながら、そんな彼女の言葉に『え?反省してるんじゃないの?』と頭を傾げるワルツ。

リサの行動と発言が、明らかに全く正反対であることに、彼女はますます頭を悩ませた。


もしも反省しているというなら、一体、何故ナイフを突き立てたままのか・・・。

リサはどこか(すが)るような視線をワルツに向けながら・・・その()()()()()()理由を口にした。


「・・・ワルツさんを刺しているのを誰かに見られるのが・・・・・・すごく気持ちが良いんです」


「う、うわぁっ?!」


・・・どうやら、半日以上、特殊な方法でイジメていたためか、リサは新しい世界に目覚めてしまったらしい。

むしろ、彼女がサキュバスであることを考えるなら・・・元々、そういう性癖を持っていたのかもしれない・・・。


それからのワルツの行動は早かった。

・・・最早、相手が生身の人間かどうかは関係無かったのである。


ドゴォォォォン!!


容赦なくリサを、重力制御を使って吹き飛ばすワルツ。

・・・そして彼女は壁にぶつかると、全身血まみれになって倒れこんでしまった・・・。

その姿を見る限り、気絶したか、あるいは・・・。


『・・・』


・・・そんな2人のやり取りを傍から見ていたイブとユキが、どう反応していいのか分からない表情をワルツに向ける。


「・・・うん。正当防衛だったのよ?」


・・・なお、正当防衛以前に、リサがそんな行動に出るように仕向けたのは、ワルツ自身である・・・。


それから彼女は、無線通信システムを使って、カタリナに急患の発生を連絡すると・・・しばらく後、艦橋にやってきたのは、医務室で待機していたテンポであった。

人を運ぶということを考えるなら、非力なカタリナではなく、アンドロイド兼ホムンクルスであるテンポの方が適任だったようである。


それから彼女は、手際よく担架にリサを乗せると、医務室に向かって戻っていこうとする。

・・・その際、


「・・・お姉さま?後で、この件についてお話を伺おうと思いますので、お時間をいただきますね?なお拒否は認めまられませんよ?決まりですからね」


普段通り無表情のテンポが、いつも以上に冷たい口調でワルツにそんな言葉を口にした。


「う・・・うん・・・分かったわ・・・」


いつもならテンポの言葉に反論するところなのだが・・・反論する材料が見つからなかったのか、大人しく・・・そして申し訳無さそうに、そう口にするワルツ。


こうして彼女は、ホムンクルスたちの事情聴取と、そして裁判(?)を受けることになってしまったのである・・・。

・・・まぁ、その際の言い訳は一つしか無いわけだが・・・。

おかしい・・・。

おかしいのじゃ・・・。

本当はもう少し進めたかったのじゃが、前半の『イブ@初めてのおつ・・・エネルギア!』を書いておるところで、時間を喰ってしまって、大幅にオーバーランしてしまったのじゃ・・・。

それに、主殿が、妾のらっぷとっぷで、『かーねるのこんぱいる』とか言う訳の分からない作業をやっておったのもその原因なのじゃ・・・。


ともかくじゃ。

早く、あとがきを書いて、残りを活動報告の方でゆっくり書くのじゃ。

えーと・・・あぁ、あれじゃ。

イブの年齢のことじゃ。

以前、7歳児位の身長と書いたのじゃが、彼女の年齢は8歳なのじゃ。

身長が低いのは・・・トレンドなのじゃ。

そうに違いないのじゃ。

そうでなくては、妾の身長が・・・・・・いや、ステータスなのじゃ。


・・・うわーーーーん!!


それにしても・・・ナレーターが片言じゃのう・・・。

その内、追記したり、調整したりするのじゃ。


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