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6後-22 どこかの施設で1

もしも自分を取り囲むように無数のスピーカーが設置された部屋があったとして、そのスピーカーから一斉に音を出したとしたら・・・一体、どのように聞こえるのだろう。

そして、それがもしも、銃声だったなら・・・。

・・・恐らく、部屋の中心部では爆音が重畳(ちょうじょう)して、鼓膜が破れるような文字通り暴力的な音が聞こえるに違いない。


・・・イブ達は、それを実体験することになった・・・。


ドッ!


壁一面が一斉に光って放たれたのは音・・・だけではなかった。

当然のごとく、同時に鉄の弾も発射されたのである。

銃身が長いためか弾は音よりも早く、空気を割って移動するらしい。

そして最初の銃弾が・・・銃身内部のライフリングによって回転しながら、その銃身を離れた・・・。


直後、先行していた音を追い越した弾丸は、音速以上の速度で移動することの出来ない進路上の空気を圧縮して、まるで空間自体を歪ませるようなエフェクトを伴いながら、部屋の中にいた者たちへと一直線に飛行した。

その中で、一番最初に到達しようとしていたのは、壁から15m程の距離にいた飛竜・・・その尻尾である。


発射されてから0.016秒後。

弾丸が()()に触れると、最初に起った現象は、弾頭の変形であった。

硬いはずの金属製の弾頭は、まるで地面に落ちたソフトクリームのように変形しつつ、自身の持っていた運動エネルギーを衝突した対象物へと伝えたのである。


威力を例えるなら、時速20kmで移動している普通乗用車が、硬い建物の壁にぶつかって停止するエネルギーと同じくらいである。

つまり飛竜の尻尾は、今、大量の自動車に轢かれ・・・いや、身動ぎせずに受け止めているのことと同義になるだろう。


その次に銃弾が衝突したのは、飛竜の次に壁の近くにいたユキだった。

彼女の新しい身体、その肩に弾丸が触れると・・・弾頭は同じように変形して、彼女におよそ15000[J](ジュール)にも及ぶエネルギーを与えた。

それが1発ではなく、同時に20発前後当たったのだから、時速60kmで走っているRV車が硬い壁に衝突した際、その隙間に挟まれてしまったことと同じくらいのエネルギーを受けたことになるだろうか。


そして最後に弾丸の餌食になったのは、ユキの隣りにいたカタリナである。

彼女にはユキよりも遥かに多い、50発近い銃弾が浴びせかけられつつあった。

弾丸1発のエネルギーが、飛竜とユキに向けられたものと等しいとするなら・・・時速80kmで走っている配送用トラックに潰されることに等しいと言えるだろう。


もう少し直接的な例えで言うなら・・・人体が時速170kmで地面に落下するのと同じくらいである。

神経の伝達速度を考えるなら・・・痛みを感じる前に、花畑へと逝けるレベルと言えよう。


・・・ただし。


どの例も、ここにカタリナがいなければ、の話だが。


「・・・耳障りですね」


それを呟いた時点で、既に200発近い銃弾に身体を()()()()()()()()()カタリナが、周囲から伝わってきた音にゆっくりと両耳を押さえながら小さく呟いた。

・・・次の瞬間。


ドゴォォォォン!!


周囲の壁から一斉に爆音と共に煙が上がって・・・・・・間も無く、辺りを静寂が包み込んだ・・・。


『・・・』


そんな光景を前に、口を開いたまま唖然とする一同。

もちろん、その原因となったカタリナを除いて、である。


「ほらシリウス様。早く追わなくては、逃げられますよ?」


何事もなかったかのように、ユキに話しかけるカタリナ。


「あの、ビクセ・・・カタリナ様?・・・何をなされたのですか?」


「一応、対音響用の結界も張っていたのですが、それでも煩かったので、物理特化の結界で銃口を塞いで暴発させました」


「えっと・・・よくわからないです・・・。・・・ちなみに、鉄の玉の方は?」


「結界魔法です」


「あの・・・はい・・・(結界魔法って、そこまで万能でしたっけ?)」


どうやら世の中には、魔王(ユキ)の理解の範疇を超えるような超結界魔法が存在するらしい・・・。


すると、


『バ・・・BBAめ・・・』


どこからとも無く、そんな苦しそうなロリコンの声が聞こえてきた。

予想外すぎる能力を持った人間が現れたことに、彼も対処に困っているようだ。


一方、対処に困っていたのは、ロリコンだけではなかった。


「・・・お、お姉ちゃんたち・・・何なの?」


「・・・敵・・・では無さそうだが・・・」


イブと飛竜である。


イブにとっては、カタリナの姿を見るのはもちろんのこと、身体を換えた後のユキを見るのも初めてのことであった。

飛竜の方については、言わずもがなである。


もちろんそれは、常日頃からエネルギアの医務室に引きこもっているカタリナにとっても同じことで、イブとも飛龍とも、この時点で初めて顔を合わせたのである。

それでも、そんな見知らぬ2人のことを結界魔法で守ったのは・・・やはり、イブの救いを求める声に、カタリナが思わず反応してしまったから、なのだろう。


尤も、お互い完全に見知らぬ者同士・・・というわけでは無かった。

ユキは、イブのことを知っていたのである。

そう、ここへは本来、黒いローブの男を捕まえに来たのではなく、イブを探して助けるために来たのだから・・・。


「イブ・・・ちゃん・・・!イブちゃん!無事に生きていてくれたのですね!」


そう言って、イブに駆け寄ると・・・迷わず彼女を抱きしめるユキ。


「んがっ?!だ、誰っ?!」


姿を知らぬが故に、どう反応していいのか分からないイブだったが・・・


「・・・・・・?!こ、この、スパイシーな香りは・・・あの子と同じ匂い!それに・・・あ、そっか・・・。この匂い、シリウス様とも同じだったんだ・・・」


・・・ユキの身体から漂う、辛いモノ特有の香りで、4日前に通気口の中で一緒に行動を共にした少女のことを思い出したようだ。


以前の身体ならいざしらず、新しくなった身体に匂いが染み付いていることを考えると・・・恐らくユキは、朝食か昼食で、熱くて辛いものを食べたのだろう。

それでも、身長に縮んだ様子が見られないのだから・・・どうやら彼女は、250年近くに渡って切望していた理想の身体を手に入れることに成功したようだ・・・。

まぁ、どうでもいいことだが・・・。


「あ・・・すみません」


自分がいつの間にかイブに抱きついてしまっていたことに気付いたユキは、一旦、彼女から離れると、水平に視線が合わせられる高さまで膝を曲げてから再び話し始めた。


「イブちゃん、ボクです。ユキです・・・じゃなくて、シリウスです」


「えっ・・・そんなはず・・・無いよ・・・」


ユキはどうにか自分の正体を説明しようとするが・・・やはり、姿形の変わってしまった今では、例え匂いが同じであっても、イブに理解してもらうことは難しいようだ。


「・・・やっぱり・・・姿が変わってしまったので、分かってもらえないですよね・・・。一緒に通気口を逃げ回ったのですが・・・」


ユキは、突然のことで戸惑っている様子のイブに、苦笑を浮かべた。

そんな彼女の言葉に、イブは悲しそうな表情を浮かべると、眼を伏せながら口を開く。


「・・・だって、ありえないよ。シリウス様は、私の前で死んじゃったし・・・」


「えぇ・・・そうですね。確かに死んだように見えたし、実際、死んでしまったのかもしれません・・・。ですが、本当の意味では死んでなかったのですよ・・・・・・何と言えば信じてもらえるでしょうかね・・・」


イブに理解してもらう以前に、ユキ自身が今生きている事を夢のように感じているのである。

そんな彼女にとって、他者に自分の生存を伝えることは、非常に難しいことであった。


するとそのタイミングで、カタリナが口を挟む。


「シリウス様?申し訳ございませんが、ここから出ることを優先しましょう」


「そう・・・ですね。無事にここから出られたら、これまでのことをゆっくりとお話しましょう」


「あの・・・はい・・・」


まだ、ユキの言葉に納得出来ない様子のイブだったが、カタリナの言葉には同意見だったようで、とりあえずユキが本物のシリウスかどうかという疑問については、棚上げにすることにしたようだ。


イブとユキの再会がこうして一段落ついたところで・・・タイミングを見計らったかのように、今度は飛竜が口を開く。


「・・・すまぬが、主たちよ。先程、ワルツ様の名前が聞こえた気がするのだが・・・主たちは()のお方に連なる方々か?」


「ワルツさんは・・・私の先生です」


「ワルツ様は・・・ボクの未来の夫です」


・・・と、答えるカタリナとユキ。


「・・・そ、そうだったか・・・弟子殿と婚約者殿だったか・・・」


飛竜は2人の言葉を聞いて・・・何故か、悲しそうに眼を伏せた・・・。


「・・・うむ」


それから彼は何かを納得するかのように頷いてから視線を上げると、大きな口を開いて、再び話し始めた。


「主たちに頼み申したいことがある。どうかこの者を、無事に外へと送り届けては貰えぬだろうか・・・?」


そう言ってイブに視線を向ける飛竜。


「・・・あなたはどうするのですか?ドラゴンさん?」


まるで、自分は行かない、といった口調の飛竜に、カタリナは問いかけた。


「・・・我は・・・ここで彼奴(きゃつ)らの足を食い止める・・・。だからその隙にn」


「却下します」


飛竜の言葉を途中で遮ったカタリナは、右手を飛竜に(かざ)してから言葉を続けた。


「・・・あなたがここで足止めをしてもしなくても、特に私たちの行動にプラスにはならないでしょう。もしもあなたが、そこの少女の仲間だというのなら・・・大人しく私たちの後ろから付いて来て下さい。それが、彼女にとっての一番のプラスになるはずですから」


そしてカタリナは手を下ろすと、そのまま、飛竜の横を通過して、部屋の出入り口近くまで歩いて行った。


「・・・?」


一瞬、彼女が自分に向かって何をしようとしたのか分からない様子の飛竜だったが・・・


「・・・?!痛みが・・・無くなっておる・・・だと?!」


それだけでなく、いつの間にか、出血も打撲も裂傷も全てが無かったように消えていることに気付いて、唖然とした。


「それでは、行きましょうか」


「ねぇ、狐のお姉ちゃん?」


入口の扉の前まで歩いて行って、そこで振り返ったカタリナに、徐ろに問いかけるイブ。


「この転移魔法陣を使って、外に逃げないの?その扉から外に出ると、真っ黒な人たちがやって来るかもだし・・・」


「はい、残念ながら。実は、その魔法陣は、私たちでは使えないんですよ」


カタリナはそう言いながら、右手の人差指を立てて、再び扉の方を振り向いた。


「その魔法陣は、確かに転移魔法陣なのですが、ブースト式のモノのようです。術者が持っている転移魔法の効果を補強して、長距離を移動するためのものですね」


そして彼女は、話しながら、その指で、巨大な扉を軽く撫でた。


「なので、転移魔法が使えない私たちには、使うことが出来ないんですよ。ここにリアがいれば良かったんですけど・・・ね」


それから彼女は眼を伏せて小さく息を吐いてから、扉に手を掛けて、軽く押した。


「・・・ですから、どこかにこの建物の出口を探すか・・・」


キィー・・・・・・ドゴォォォォン!!


「あるいは、出口が見つからないようなら、()()()()()()()というのも手かもしれませんね」


『!?』


「さて。扉が開いたので、行きましょうか」


そしてカタリナは、柔らかいバターのように切断されて、地面に倒れてしまった扉に足を掛けると、驚愕した表情を浮かべる者達を尻目に、廊下への一歩を踏み出したのである。

今日はテレサちゃんが、椅子に座りすぎたせいで尻尾痛で寝込んでいるので、私があとがきを書きますね。


・・・・・・。

・・・・・・。

うん。

全く、私には分からない世界の話で、補足しようが無いです。

カタリナお姉ちゃんの魔法のことなら補足できるけど・・・多分、明日当たり、テレサちゃんが何か書くと思うので、下手なことは書かないほうがいいみたいですね。


あと書くことが出来るとすれば・・・カr・・・ううん、なんでもないです。

気にしないでください。


特に書くこともないので、主さんの家の向かいに住んでいる狩人さんのことについて話そうと思います。

え?狩人さんが何でそんな所に住んでるのか?

さぁ・・・どうしてでしょうか?

ちなみに、右向いがユリアお姉ちゃんとシルビアお姉ちゃん()で、左向いが・・・やっぱり、詳しい話は後日にします。


それで、最近の狩人さんの様子ですね。

・・・昼間はこたつから出てきません。

猫の獣人だからなのか、寒いのが苦手らしいです。

もちろん、『狩人』や『ハンター』って名前の猫の話じゃないですよ?

あの、リーゼお姉ちゃんのことです。


それでも、朝は毎日、近くの山に入って、狩りをしているみたいです。

でもなんか、たまに、白と黒の色をした車に乗ってる人たちに、無理やり連れて行かれそうになることがあるみたいです。

治安が悪いんでしょうか・・・。

頑張って逃げてるらしいですけど、この前は、7台くらいに増えていたので、捕まるのも時間の問題じゃないかなぁ、って心配してるんですけど、『日課だから』っていって話を聞いてくれないんですよ・・・。

・・・もう、どうなっても知らないです。


・・・あ、もうこんな時間。

今度、時間のある時に、ちゃんと狩人さんの日常についてお話しますね。


それではまた。

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