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6後-20 3度目の脱出5

ドゴォォォォン!!


「ふわっ?!ちょっ・・・ドラゴンさん!扉が開かないからって、吹き飛ばすこと無いかもだし!」


「では、どうやって開けばよかったのだ?」


「・・・・・・吹き飛ばす?」


「・・・そういうことだ」


檻の隙間から外に出たイブと飛竜を出迎えたのは、イブがこの部屋に入る際、自動的に開いた大きな扉だった。

その扉が、押しても引いても横にスライドさせても開かなかったので・・・飛竜が魔法とブレスで吹き飛ばしたのである。


これが、金属製の扉なら、彼の攻撃ではビクともしなかったかもしれないが・・・幸い、扉は木製だった。

故に、飛竜のブレスの威力でも、容易に吹き飛ばすことができたのである。

尤も、木製であることを考えるなら、彼の体当たりでも十分に破壊することが出来たのだが・・・背中にイブが乗っていることを考えるなら、その選択が取れなかったことは想像に難くないだろう。


もちろん、イブをこの場に下ろせば、それも出来たはずである。

しかし、彼女を地面に下ろすことは出来なかった・・・。

何故なら・・・


『区画B1からドラゴンが一匹逃げ出した!背中には女の子が乗っている模様!』

『クソッ!カペラたちはどこに行った!』

『重火器班はまだか!』


頭から真っ黒な鎧を身に纏った兵士たちが、扉を吹き飛ばした瞬間、ゾロゾロと部屋の中へと入ってきて、飛竜を取り囲み始めたからである。

・・・正確には、扉を吹き飛ばす前から、飛竜が多くの人の気配を感じていたために、イブを背中から降ろそうとしなかった、と言うべきか・・・。


「・・・灰になるが良い」


そんな兵士たちに、短く告げる飛竜。

それから彼は、


ゴォォォォォ!!


・・・遠慮無く、高温のブレスを吹き付けた。

だが、ブレスが通り過ぎたその場所からは・・・


『うわぁぁぁ!!』

『落ち着け!この程度でアーマーがどうにかなるもんじゃないだろ!』

『は、初めてなんだよ!ドラゴン相手に戦闘するの!』


どういうわけか、無傷の兵士たちが現れる。

どうやら彼らが纏っている見慣れない形状の鎧には、大火力の飛竜のブレスすらも、容易に弾いてしまうような性能が備わっているらしい。


「・・・何なの?あの人達?」


飛竜の背中から様子を見ていたイブが、思わずその異様さに口を開いた。


「分からぬ・・・。我も長いこと生きておるが・・・このような者達は見たことが無い」


「・・・」


そんな飛竜の言葉に、怪訝な表情を浮かべるイブ。


そんな時、


『重火器小隊が来たぞ!』

『よし、警備小隊は後退して、奴らに任せるんだ!』

『後退!こうたーーーい!!』


飛竜から最も近い場所で、巨大な盾を構えていた兵士たちが、そんな声と共に廊下へと下がっていった。


「うわー・・・なんか、ヤバイ感じ・・・?」


「そうだな・・・逃げるか」


「うん。それがいいと思う」


そんな相談をしてから、飛竜は、廊下へと向かって、助走を始める。

そして、廊下の向こう側の壁に向かってジャンプした・・・そんな時であった。


ドドドドド!!


何かを連続して叩くような・・・あるいは破裂するような音が2人の耳に届いたのだ。

そして同時にイブが感じたのは、


ズズズズズ・・・


そんな、飛竜の身体から伝わってくる、細かな振動であった。


「がはっ?!」


「ど、ドラゴンさん?!」


突然、翼に穴が空いたり、苦しげな声を上げる飛竜に、驚くイブ。

だが、その音や振動自体は、彼らにとってはそれほど大きな問題ではないと言えるだろう。

問題は別にあったのだから・・・。


「・・・?!ちょっ、前!前ぇっ!!」


何よりも2人にとって一番の問題は・・・眼前に迫ってきていた廊下の壁だった。

そう、飛竜が攻撃を受けた痛みで、身体のバランスを崩してしまったがために、イブの乗っている背中から壁へと突っ込みつつあったのである。


このままでは、一瞬の後、飛竜の身体と壁にイブが挟まれてしまい、取り返しのつかないことなるのだが・・・・


「・・・グアッ!!」


・・・しかし、飛竜はそれを許さなかった。

身体を無理矢理に捻って、足を壁の方に向けると・・・


ドゴォォォォン!!


そのまま、壁に()()()


「グォォォォォッ!!!」


『うわぁぁぁぁ!!』


・・・目の前にいた長い筒のような形をした武器を持った兵士や、盾を持った兵士、それに重そうなオブジェなどを、まるごと全て、紙吹雪のように吹き飛ばしながら、廊下を無理矢理に突き進んだのである。


「ど、ドラゴンさん!大丈夫?!」


振り落とされないように、必死に飛竜の背中にしがみつきながらも、穴が空いてしまった翼や、血が滴る首の様子に目を向けながら、イブは心配そうに問いかけるが・・・・・・廊下を走っている飛竜には、彼女の問いかけに答える余裕は無さそうであった。


それからしばらく廊下を走って、兵士たちが居なくなった角まで来ると、飛竜は立ち止まってから、ようやく口を開いた。


「ぐ・・・だ、大丈夫だ・・・猛烈に痛いが、な・・・」


そう言って、壁に身体を預ける飛竜。


振動が無くなったことで余裕が生まれたイブは、改めて、血の出ていた彼の首に注意深く視線を向けた。

すると、彼女の目に見えてきたのは・・・


「・・・な、何これ・・・」


自分の親指大ほどもある金属が飛竜のウロコに刺さっている様子であった。


「わ、分からぬ・・・。何か槍のようなもので何度も刺されたような感覚があったのだが・・・」


それから飛竜は自身の全身のキズを確認し始めた。


小さな金属の粒を高速でぶつけてくる攻撃のようだったが・・・全てウロコに止められていて、表皮を貫通して体内に入り込むようなことは無かったようだ。

唯一、貫通して傷ついてしまっているのは、自慢の翼くらいだろうか。

とはいえ、それほど大きな穴ではないので、飛行に差し支えるほどではなさそうだったが・・・。


ただ、打撲や裂傷まではウロコでどうにか出来るものではなかったらしく、身体中の痛みはどうすることも出来なかった。

これが人なら・・・恐らく、身体中青痣(あおあざ)だらけで、見るも無残な姿になっていることだろう・・・。


「・・・ごめんなさい・・・」


飛竜から流れる血液や、痛みを堪えている様子を見て、イブは自分自身が痛みを受けたわけではないのに、悲痛な面持ちを浮かべながら、謝罪の言葉を口にした。

もしも、自分が逃げ出そうなどと言わなければ、こんなことにはならなかったのではないか、と。


「・・・気にするな。主がいなくとも、逃げ出すチャンスがあったなら、迷わず同じ行動を取っていたはずだからな・・・」


「・・・でも・・・」


と、言葉に詰まるイブ。

背中で小さくなりながら、顔を伏せてしがみついているそんな彼女に、飛竜は自身の鼻を擦り付けてから言った。


「責任を感じているのならば・・・・・・我に教えてくれ。どうすれば無事に(のが)れることができるのかを・・・」


「・・・っ!」


飛竜の言葉に、イブは顔を上げた。


「どうして・・・どうして、ドラゴンさんを傷つけてしまった私なんかに・・・」


「どうしてか?・・・我一人なら・・・ここまで来ることすら叶わなかったからだ」


「・・・」


「我は、期待しておるのだ。主なら我が思いつかないようなことを考えついてくれると・・・」


そんな飛竜の言葉に、イブは再び俯いてから、伺うような視線を彼の眼に向けて口を開いた。


「・・・自信はないけど・・・後悔しない?」


「あぁ。もちろんだ」


「・・・分かった」


それからイブは、息を大きく吸って、吐いて・・・・・・何度かそんな深呼吸をしてから、ニッ、と笑みを浮かべて飛竜に言った。


「じゃぁ・・・・・・人の多い所に向かって、突っ込んでいってくれる?」


「・・・主よ。我に死ねというのか?」


「ううん、違うよ?」


半ば(いきどお)りかけていた飛竜を前に、イブは笑みを崩さずに、発言の理由を口にした。


「だって、あの人達、なんか、統制が取れてる感じじゃん?っていうことは、今こうしている内にも包囲されてると思うんだよね。でも、表立って攻撃をしてこないということは、ここに私達がいても、逃げられたり、反撃されたりしないと思ってるからじゃないかな、って。もしも本当に逃げられそうなら、何処か袋小路のような場所に追い込もうとするはずじゃん?川で小魚を獲る時みたいに」


「ふ、ふむ・・・」


川で小魚を取ったことのない飛竜は、洞窟の中に追い詰めた冒険者の姿を想像した・・・。


「つまり、ここは既に袋小路であって、この周囲には逃げる道も、重要な設備も無いってことじゃないかもって思ったんだよね。最悪、とんでもないバケモノが、その辺の扉から出てくるから、みんな近寄ってこないっていうのも考えられるんだけど・・・私だったら、こんな何もないところじゃなくて、魔物が逃げ出してくるかもしれないことを想定して、さっきの檻の部屋の近くに配置するから、たぶんそれも無いと思うし。・・・で、話を戻すんだけど、多分ここにいても逃げ道は無いと思うんだよね。なら、人の多い所、人の多い所って進んでいったほうが、出口に近づける可能性が高くなるんじゃないかな、って考えたの」


「そ、そうだな・・・」


・・・さっきまで落ち込んでいたはずなのに・・・やはり随分と喋る少女だ・・・、と言った様子で、一応頷く飛竜。


要するに、彼女が言っているのは、ここが袋小路で、逃げ出す道がないということである。

兵士たちにとって最も避けたいことが、自分たちの外への逃亡だというのなら、施設の出入り口に向かえば向かうほど、警備が厳重になっていく・・・そう考えたのだ。

その逆に、施設を破壊されないようダメージコントロールを考え、飛竜たちを積極的に外へと誘導する、という手段を取らないとも言い切れないのだが、兵士が保有している武器の火力を考えるなら、その可能性はあまり高くないといえるだろう。


「では・・・ゆくか・・・」


どこか気乗りしない様子で、来た道へと視線を向ける飛竜。

そんな彼の背中に、


「・・・頑張って」


と言って、イブは抱きついた。


「う、うむ・・・。さぁ・・・ゆくぞ!」


・・・そして飛竜は、ここに来たときと同じようにして、廊下を全力で走り始めたのである。

だ、ダメじゃ・・・話を圧縮しようと思ったのじゃが、次の話を連結すると、いまだかつて無い長さになってしまうのじゃ・・・。

というわけで、次話は、忙しい明日のためにストックとしてとっておくのじゃ。


ん?ルシア嬢はどうしたと?

・・・あやつなら、既に寝てしまったのじゃ。

というわけで、今日は妾一人だけのあとがきなのじゃ。


と言っても、大して話は進んでおらぬから、特に書くことが無いんじゃがのう・・・。

兵士たちの武器についても・・・説明しても仕方ないじゃろ?

銃なのは明白じゃからのう・・・。


それ以外には・・・無いの。

強いて言うなら、今日食べた晩ごはんが、試しに作ってみた『生ぱすた風みーとそーすすぱげってぃ』だったくらいじゃろうかのう。

噂は予々(かねがね)聞いておったのじゃが、実際に作ってみたの初めてだったのじゃ。

茹で時間が1分というのは、作り易くて助かるのじゃ。

尤も、その前に2時間ほど、水につけておかなくてはならぬがのう。


そういえば、それに関して、一つあったのじゃ。

妾はスプーンとフォークで食べるから良いのじゃが、ルシア嬢と主殿が箸で食べるタイプなのじゃ。

じゃから、ソースが周囲に飛び散って・・・いや・・・なんでもないのじゃ。

人のことを悪くいうものではないのじゃ。

例え机の上が汚れてしまったとしても、拭けばよいのじゃ。

例え妾のMa○bookに飛び散ったとしても、綺麗に拭き取れば良いのじゃ

例えワルツにもらった服が汚されてしまったとしても・・・・・・ゴゴゴゴゴ・・・・・・



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