表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3377/3387

15.02-42 魔神42

「……まだ顔を出さないなんて、強情なのか、鈍感なのか……。あぁ、魔物を統べる者、魔王ですもの。魔物たちと同じく鈍感なのね」ふぁ〜


   ドゴォォォォン!!


「あぁ、煩い……」


 王妃カレンは、爆発音のために夜に眠ることが出来ず、その顔に疲れの表情を浮かべていた。彼女は断続的に大きな音を立てることで、ワルツたちを疲労させれば、彼女たちを町から追い出せると考えていたのである。爆発音が自分たちのところにも届くことは想定していたが、爆発が起こっているワルツの"城"の側より、遙かに遠い場所にいる自分たちのところへはあまり届かないだろう、と考えていたのだ。


 ところが、実際に疲労が溜まっていたのはカレンたちの方だった。ワルツたちの"城"は、1枚岩をくり抜くように作られているため、作りが頑丈で、音や振動が殆ど響かず、とても静か。対して、ラルバ王国の王城は、一般的な建物に比べれば頑丈とは言え、至る所に窓があったり、壁が薄かったり、地盤が軟らかかったりしたために、振動や爆発音が、城の中までよく響いてきていたのである。


 結果、カレンは自分の策に嵌まりって眠れなかった、というわけだ。自業自得である。


「すこし頭を休めて、対応を考えたいわ……」


 流石にこのままでは眠れず、まともな対策も考えられないと思ったのか、カレンは一旦、"壁"への攻撃指示を止める事にしたようである。


 ところが——、


   ドゴォォォォン!!


——彼女が侍女を呼んで指示を伝えようとしたその直前、不意に大きな爆発音が響き渡る。これまでに無かったような大きな爆発音だ。


「……?誰か大きな魔力持った方が——」


 強い魔法でも使ったのだろうか……。そんな彼女の声が口に出るよりも先に——、


   ズドォォォォン!!

   ガタガタガタ!!


——更に大きな爆発音と振動が響き渡った。


「んなっ……何事?!」


 それは、尋常ではない大きな爆発音だった。窓ガラスもビリビリと振動し、もう少し爆発音が大きければ割れていたかも知れないほどの爆発音だった。


 驚いたカレンは窓を開けて、テラスへと出る。そして、音が響いてきただろう方向——ワルツの"城"がある場所へと視線を向け……。そして目を見開いた。


   ドゴォォォォン!!


 そこでは、眩い光の球が虚空に生じて、それがワルツの"城"の壁に向かってぶつかっていく光景が……。


   ズドォォォォン!!


「な、なに……あれ……」


 太陽のごとく眩い光球が壁に当たった瞬間、火花を散らして一瞬で消える。そして爆発に伴う轟音が、数秒遅れてカレンの耳に届く。


 そんな爆発音が——、


   ズドォォォォン!!

   ドゴォォォォン!!

   チュドォォォン!!


——と頻繁に響いてくるのだ。


 その光景を見たカレンは、崩れ落ちるようにその場にへたり込んだ。彼女は気付いたのだ。誰が光球を放っているのかを。そして、本当の嫌がらせとは、どういうものなのかを……。


  ◇


   ドゴォォォォン!!


「お姉ちゃんから言われたとおり、爆発させてるけど……効果あるのかなぁ?」


「さぁの?ワルツの言葉を信じるしかないじゃろ。でも良いか?ア嬢。近隣の家々が壊れるような大きな爆発を起こしてはならぬのじゃ。それでは、嫌がらせに対する報復ではなくなってしまうからのう」


「わかってるって」


 テレサとそんなやり取りを交わしながら、ルシアは自分で作った壁に向かって、小さな人工太陽をぶつけていった。彼女にとっては、なんということはない作業だ。


 しかも、周囲には空気の壁を作っているので、爆発音は彼女たちの所に届かずとても静か。更に言えば、ルシアの魔法はオートスペル化されているので、彼女が意識せずとも、勝手に魔法が発動するのである。別の場所にいても、食事を摂っていても、談笑していても、寝ていても、爆発は継続するのだ。まったくもって、酷い嫌がらせと言えよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ