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15.02-39 魔神39

「……色々と聞きたいことはありますが、グレン様の病は、実は病ではなく、呪いだったとは……驚きです」


「いや、気にするところ、そこ?」


 さすがは薬師……。グレンに呪いを掛けていた者が王妃だったことに驚かず、"呪い"そのものに反応したグランディエに対し、ワルツはある意味、感心した。


 そんなワルツの考えを、グランディエも察する。


「あぁ、王妃様が犯人だったことに驚かないのか、と仰りたいのですよね?実は、良くあることだったのです。奥さんに毒を盛られた方が、その解毒のために、私の薬屋に来ること」


「いやな問題を抱えたお客ばかりね……。貴女のお店」


 歴代のラルバ国王は当然の事だが、薬屋がグランディエの代に変わってからも、似たような客が多かったらしい。


「どうも皆さん、特殊な薬を使われることが多いらしく、普通の薬では治せない病に罹ってしまうようなのです」


「それは病ではなく、実は"呪い"だった、と」


「そのようですね……。まさか、自分や、先代たちが、病を治す薬ではなくて、呪いを解く薬を作っていたとは……」


 しみじみと考えているところ見るに、やはりグランディエは、効果をよく知らないで薬を作っていたらしい。いや、効果は知っていたが、まさか呪いを解いてしまう効果があることまでは知らなかった、と言うべきか。


 と、そんな時。


   ガチャッ……


 食堂の扉が開かれて、アステリアがやって来る。狐の姿ではない。人の姿だ。


 そんな彼女はすぐには部屋に入らない。何故か挙動不審で、扉の隙間から食堂の中を覗き込むように見渡して……。そして"何か"がいない事に安堵した後、食堂の中へと入ってくる。


「お、おはようございます。テレサ様はいらっしゃらない……ですよね?」


「えぇ、いないわね。何かあったの?」


「……いえ、何でもありません」


「何も無かった、って顔はしていないけれどね……。まぁ、良いわ?」


 さしずめ、アステリアのモフモフな体毛が狙われて、追いかけ回されたりしたのだろう……。そんな予想が付いていたワルツは、敢えてアステリアに詳細を聞かなかった。詳細を話せるのなら、苦情の1つでも口にしているはずなので、何か話せない事情があるのだろうと察したらしい。


 対するアステリアも、ワルツが追求してこないことに安堵していたようだ。アステリアは、自身が狐である事を未だ殆どの者たちに隠している()()()なので、追いかけ回された理由を追求されると困るのだ。とはいえ、テレサがやってくれば、追求されるのは必至。どう誤魔化したものかと、アステリアは悩んでいたようだ。


 そんなアステリアは、グランディエの姿に気付き、そして周囲を見渡して、ワルツたちに問いかけた。


「ところで、ハイスピア先生は?グランディエ様のところ行くと言って、部屋を出て行ったのですが……」


「ん?来ていないわね」

「来ていないですね」


「あれ?どこに行ったんだろ……」


「私に用事があったのですか?」


「あ、はい。ハイスピア先生は薬学の専門家ですから、グランディエ様に色々と聞きたいことがあったみたいです」


「薬学の専門家……!」ぱぁ


 グランディエの表情に花が咲く。どうやら彼女も、ハイスピアと話をしてみたくなったらしい。


 しかし、その当のハイスピアがいない。


「どこに行っちゃったんでしょう?」


「この"城"は周囲を扉の無い壁で囲われているから、歩いて行けるような場所なんて、城内しか無いと思うのだけれど……」


「お城の中で迷っている……とか?」


「まっさかー。こんなちっちゃいお城の中で迷子になるとか、あり得ないでしょ」


「たしかに」


 アステリアは迷わず首肯した。彼女の感覚でも、城が大きいとは感じなかったらしい。ある意味、感覚が麻痺していたと言えなく無いが、まぁ、そのことは置いておこう。


 そうこうしているうちに、ルシアとイブ、そして話題に上がっていたテレサが食堂へとやってきた。


ハイスピア「ふぇぇぇ……。どこを歩いても、まったく同じ構造だし、調度品だし、太陽見えないし……。下手な扉を開けば、魔物がいるかも知れないし……。魔王城みたいで怖い……」

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