表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3373/3387

15.02-38 魔神38

 同時刻。


「「zzz……」」


 やはり、時差の影響があったのか、夜に目を覚ましたルシアとイブは、客室で未だ眠ったまま。


 対して、テレサもまた、客室へと戻ってきていたようだが——、


「くっ!あの尻尾の1つくらい、引き千切って、持って帰りたかったのじゃ……!」ゴゴゴゴゴ


——アステリア狐を逃してしまった彼女は、一人、行動についての反省をしていたようだ。もちろん、アステリア狐を襲ったことに対して、反省していたわけではない。アステリア狐を追い詰められなかった事に対する反省だ。


「やはり、コーナーで方向転換するたびに減速するのはいただけないのじゃ。これは体重差かのう?それとも出力差か……」


 直線の廊下を走る分には、なんと、アステリアよりもテレサの方が早かったらしい。しかし、"城"の中をグルグルと周回できるように作られた回廊を走ると、廊下の角でテレサは曲がりきれずに壁に衝突。そしてアステリア狐は、華麗に身を翻して、殆ど減速せずに通過していた。その差は大きく……。結果、テレサは、アステリア狐のことを取り逃がしてしまった、というわけだ。


   ドォォォォン!!


「ほう?またやっておるの。健気な者たちなのじゃ」


 "城"の外から微かに聞こえてくる爆発音と振動に、テレサは目を細めた。"城"の壁を攻撃する冒険者たちの事を哀れんだらしい。……やるだけ無駄だというのに、と。


「……いや、そんなことはどうでも良いのじゃ。それよりも——」


 次に、同じ状況に陥った場合、どうやってアステリア狐のことを捕まえれば良いか……。テレサは対策に頭を悩ませるのであった。


  ◇


 一方、アステリア狐の方は、無事に客室へと戻ってきて、人の姿に戻っていた(?)ようである。そして彼女は、そこで待っていたハイスピアに、事情を説明していた。


「そうだったのですか……。アステリアさんは、実は人ではなく魔物……いえ、狐だった、と」


「内緒ですよ?特にテレサ様には。本当に何なのでしょう……あの方は……」


「狐好き……いや、狐狂い?狐を見たら、いても立ってもいられず、追いかけ回す衝動に駆られるのでしょうね……」


 ハイスピアは、宙に向かって遠い視線を向けた。アステリア狐のことを、狐以上に獣らしく追いかけて行ったテレサのことを思い出しているらしい。


「先生はあのような方を見たことがあるんですか?」


「えぇ、ありますね。私だって、似たようなものですから」


   ガタッ!


「い、いや、アステリアさんのことを追いかけたりはしませんよ?」


「そ、そうですか……」すっ


「例えば、私は薬の研究者ですから、未知の薬に興味のあることでしたら、テレサ様みたいに人目を憚らず、色々と調べちゃうかも知れません」


「なるほど……。あぁ、そういえば、ワルツ様と一緒にいたグランディエさんは、魔王様ですけど、薬師でもあるらしいでs——」


   ガタッ!


「ちょっと行ってきます!」


「えっ……ちょっ……」


 ハイスピアは、そのまま姿を消した。どうやら本当に、グランディエの所に行ったらしい。


「……もう、皆さん、何なのでしょう……」


 一人、客室に取り残されたアステリアは、暴走する"城"の住人たちのことが理解出来ず、頭を抱えた。


「テレサ様……押し掛けてこないと良いのですが……」


 世の中には、幽霊といった不確実な存在よりも、遙かに恐ろしいことがある……。しみじみとそんな事を考えていたアステリアは、部屋の隅に移動して、そこで毛布を被ったのであった。


  ◇


 一方。


「……えっ?しばらくこの場所に居座るのですか?」


 規則正しく目が覚めたグランディエは、食堂で朝食を口にしていたわけだが、その際、ワルツから、予想外の発言を耳にして驚いていた。


「ちょっとね……。場合によってはすぐに出発することもありえるのだけれど、約1名、面倒な人がいてね……。その人をどうにかしないと、出発できなさそうなのよ。逆に言えば、その人をどうにかしたら、すぐにでも出発できるわ?」


   ドゴォォォォン!!


「たとえば、この爆発音。冒険者が壁を攻撃している音なのだけれど、ラルバ王国の関係者が、私たちに嫌がらせをするためにやらせているらしいわ?」


「嫌がらせ……。それにしては小さい音な気がしますが……」


「こっちの状況を理解していないんでしょ?向こう側の人間は、誰もこの"城"に入ってきていないわけだし。でも、あっちの状況はこっちに筒抜け。実は、グレン。強制的に眠らされているみたいよ?」


「えっ?誰にですか?」


「王妃に」


「えっ……どういうことです?」


 話に付いていけないグランディエは、ワルツの言葉を聞いて混乱した。王妃が国王を眠らせる理由が分からなかったのだ。


 そんなグランディエに対し、ワルツは、昨晩、王城で見てきたことを説明した。その説明が進むたびに、グランディエの表情が段々と険しくなっていったのは、彼女もまた、グレンたちの事を放置できないと考えたためか。


どこかに、ギュッとやったら中身が飛び出る狐型人形とか無いものかのう……。

本物でやる訳にはいかぬゆえ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ