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15.02-34 魔神34

 通用口の先で、アステリアたちを出迎えたのは、無数の目、目、目。暗闇の中でもギラリと輝く大量の目が、通用口の扉を開けたアステリアたちの方へと一斉に向けられた。


 その目は、人のものではない。縦に瞳孔が長かったり、歪な形状をしていたり、眼球の外側に瞬膜のようなものがあって左右に瞬きをしていたり……。紛うことなく、魔物たちの目だった。


 その目に気付いたアステリアは、慌てて扉を閉めようとする。しかし、一度開かれた扉は、そう簡単に閉じることはできない。無駄にドアクローザーが付けられていて、バタンと急に閉じられないようになっていたからだ。


 結果、魔物たちが、一斉に扉へと突進を始めた。


「もどっ……戻って!」

「ひゃっ?!」


 アステリアはハイスピアを建物の中へと突き飛ばした。彼女は、咄嗟に、ハイスピアのことを庇おうとしたのだ。


「何をやって……」


 何をやっているのか……。本来庇うべきは、生徒の方ではなく、教師の方ではないか……。そんな思考が頭の中で渦巻くハイスピアだったが、その言葉が口から出ることはない。


 それは、ハイスピアが恐怖のあまり、現実逃避を始めたから、ではない。


   ボフッ……


 そんな、何か空気の抜けるような音が鳴って、アステリアが黒い霧に包まれたからだ。その様子を見ていたハイスピアは、驚きのあまり、言葉を失ったのだ。


 黒い霧の向こう側を見渡すことは出来ない。当然、アステリアの姿を見つけることもできない。明るい広間を暗闇が浸食するように、霧のようなものが広がり、魔物たちも、その薄気味悪い霧を警戒したのか、後ずさりしていく。


 その内に、霧に変化が生じる。広がる一方だった霧が、一箇所に集まり、とある形を作り上げ始めたのだ。


 それは、大きな獣の姿。4本足と、大きな尻尾、そしてピンと伸びた黒い耳。


 霧が形作ったのは、大きな黒い狐の姿だった。


「ア、アステリア……さん?」


 ハイスピアが問いかけるも、返答は無い。その大きな狐は、どこか悲しげにハイスピアのことをチラリと見ると、すぐに扉の向こう側へと視線を向けた。


 そこには獣たちが大勢いて、中にはニクなどの魔物の姿もあった。凶暴な魔物たちばかりだ。


 だが、どういうわけか、魔物たちは、大きな狐に近付こうとしない。怯えているかのような、威嚇するかのような反応を見せつつ、大きな狐から距離を取る。


 そんな魔物たちを前に、大きな狐は、遠吠えのような声を出した。


   クォォォォォンッ!!

   ゴゴゴゴゴゴ!!


 あまりの音量に、周囲の調度品や扉などがビリビリと震動する。目の前にいた魔物たちに至っては、皆、怯えているのか、尻尾を股の間に挟んだり、全身の毛を逆立ててまん丸くなったり……。もはや、襲い掛かろうとする獣たちはいなかった。


 その様子を見た大きな狐は、まるで溜息を吐くように、フン、と鼻を鳴らす。勝ち誇っている、というよりは、何も無くて良かったと安堵するかのようだ。


 獣たちが襲ってこないことを確認した狐は、一歩二歩と後ろに下がり……。そして通用口の扉を閉じた。


「ア、アステリアさん?!」


 ハイスピアが、混乱から我に返る。しかし、混乱はまだ解消されていない。状況的に、目の前の大きな狐が、アステリアだとしか考えられず、理解の整理が追いつかなかったからだ。


 そんなハイスピアの問いかけに、大きな狐が口を開けて、まるで喋るかのような動きを見せた——そんな時のことである。


   ヒタッ……ヒタッ……


 "城"の中の方から、何かが歩くような音が聞こえてくる。小さな音のはずなのに、妙に響く音だ。


 狐の姿に変わっていたアステリアも、事情を問いかけようとしていたハイスピアも、その音に気付いて、思わず振り向いた。まさか、魔物が入り込んだのではないか……。2人ともそんな事を考えてしまったらしい。


 しかし、彼女たちが振り向いた先にいた"もの"は、幸いなことに、と言うべきか、それとも、最悪なことに、と言うべきか……。魔物ではなかった。むしろ、場合によっては、魔物よりも遙かに厄介な存在が、その場いたのである。……まるで獲物を見つけたと言わんばかりに、四つん這いで。


「キツネェェェェ……」きゅぴーん


「?!」びくぅぅぅ

「テ、テレサ様?!」


 そう、長い廊下の向こう側に現れたのはテレサだった。それも、明らかに、目が発光した状態で。


ルシア「※普段のテレサちゃんです」

イブ「※眼は車のヘッドライトみたいに、かなり明るく光るかもだし?」

ワルツ「ただのバケモノね……」


テレサ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!キツネェェェェ!!」

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