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15.02-31 魔神31

 ワルツとの同行について、拒否権がない事を察したハイスピアは、早々に反論することを諦めた。彼女としては、"元の鞘"に収まることに否やは無く、ワルツがその気なら、共に旅をしても良いと考えていたのだ。


 それはアステリアも同じだった。それゆえか、この時の彼女は、もしもハイスピアがワルツの申し出を断るようなことがあったなら、どうしようかとハラハラしていたようである。毛に覆われたその顔では、顔色を伺うことは出来ないが、明らかに挙動不審な様子で、心配そうにハイスピアを見つめていたようだ。それも、ハイスピアが、即折れるまでの話だったようだが。


 というわけで。


「ところで、ここはどこで、ワルツ先生方は何をされているのですか?」


 強制的に行動を共にすることになったハイスピアが、ひとまず現状を把握しようと問いかけた。


 対するワルツは、眉間に皺を寄せて考え込む。現状をどう説明すれば上手く伝わるのか、彼女にはすぐに思い付かなかったのだ。


 そのせいで、ワルツよりも先に、ルシアが説明を始まる。


「今、私対は、ラルバ王国っていう名前の国の王都に来てます。この"お城"があるすぐ隣に、ラルバ王国のお城があるんです」


 そんなルシアの言葉に説明不足を感じたのか、テレサが継ぎ足した。


「この"城"は、ワルツが魔法陣を使って建てたものなのじゃ。なにやら、王様に文句があって、カチコミに来たらしいのじゃ?わざわざ王城の隣に"城"を建てるとか、ワルツらしいのじゃ」


 イブもまた、テレサの言葉に足り無さを感じたらしい。彼女も説明を追加する。


「でも、もう、ぜんぶ終わっていて、この国はさっき、ワルツ様が掌握したかもだし」


 そんな3人の説明に堪らずワルツが反論する。


「いや、カチコミとか、殴り込みとか、そんなこと考えていないからね?ちょっと、文句を言いたかっただけだし、それに、掌握なんてしていないから。ちょっと城の関係者を、全員気絶させただけだし」


「……私たち、何か間違えたこと言ったかなぁ?」

「いや、大体合っておるのではなかろうか?」

「かもだね」


「合ってないし……。言い方一つで全然意味が違うし……」


 ワルツは憤慨するが、どうやら誰も耳を貸してくれないらしい。


 話を聞いていたハイスピアの表情にも疑問の色は無い。ただ、ユラユラと左右に揺れていたようだ。まぁ、彼女の場合は、既に話を聞いていない状態にある、と言うべきかもしれないが。


 そんな中、ここまで黙って話を聞いていたグランディエが問いかける。


「あの……ワルツ様?このお二人は……」


「ええと、こっちのユラユラ揺れている人が、私の先生のハイスピア先生」


「ワルツ様の……先生?!」がくぜん


「そして、こっちの娘が、私の……なんだろ?同居人?教え子?まぁ、いっか。とにかく、教え子のアステリアよ?」


「よろしくおねがいしm——」


「ワルツ様の……教え子?!」あぜん


「え、えぇ……」


 目を真ん丸にして驚いている見知らぬ女性——もといグランディエを前に、アステリアは戸惑いが隠せない様子だった。なぜグランディエが驚いているのか、その理由が分からなかったからだ。そもそもこの女性は、いったい何者なのか……。


「あの……あなたは……?」


 アステリアはグランディエに誰何した。そんなアステリアは、グランディエの目が赤く輝いている様子を見て、彼女がただ者ではない事に気付いていたようである。


 眼が光る種族など聞いたことがない……。アステリアは内心で覚悟を決めつつ、グランディエからの返答を待った。その直前、アステリアがハイスピアの方をチラリと見たのは、自身が驚いた結果、ハイスピアのような現実逃避をする事にならないか、と心配したためか。


 そんなアステリアの願いが叶ったかどうかは不明だが、いずれにしても、彼女は驚くことになる。


「私はただの薬屋さんです」


「だ、だたの薬屋……?」


 アステリアがオウム返しのように聞き返すと、ワルツが呆れた様子で口を挟む。


「嘘言っちゃダメよ?グランディエ。彼女は確かに薬屋だけれど、ただの薬屋ではないわよね?話によると彼女、魔王らしいわよ?」


「魔王ですか…………えっ?魔王?」


 アステリアは驚いた。この瞬間だけは、間違いなく驚いていたと言えた。


 ただ、彼女はワルツの顔を見つめている内に、なぜかストンと落ち着きを取り戻したようである。


「そうなんですね……。魔王様でしたか」


「……ねぇ、アステリア。今、私の顔を見て、何か思わなかった?」


「……いえ、気のせいです」


「今、なんか、妙な間があったような気がしたのだけれど……」


 ワルツとしては納得がいかない様子だったが、アステリアが普段通りの落ち着いた様子で否定するので、それ以上、追求は出来ず……。ワルツは、まるで魚の骨が喉に引っ掛かったような悶々とした思いに苛まれたようだった。


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