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15.02-10 魔神10

 というわけで。


   ブゥン……


「あら、会議中だった?グレン。ちょっと話があるのだけれど」


 ワルツは生体反応センサーでマーキングをしていたグレンの目の前に転移した。この時、グレンは、会議に参加していて、数十名からなる貴族たちと共に、ワルツたちへの対策を話し合っていたようだ。


 ゆえに、その場は、単にワルツとグランディエの転移に驚く者たちだけでなく、2人に敵意を向ける者たちも少なくなった。


「どこから入った?!狼藉者どもが!」

「貴様らが魔王か!」

「小賢しいバケモノどもめ!」

「ふん!高貴な人間のルールをしらん、獣同然の者たちなのだろう」


 などなど……。会議自体が紛糾していたり、停滞状態にあったためか、元々、ワルツたちに対してネガティブな感情を持っていた者たちから、文句が上がる。


 と、そんな時。急に会議の場が静かになった。人々は未だ声を上げている状態だというのに、彼らの発する音だけが聞こえなくなったのだ。


 聞こえるのは、ワルツたちの言葉と、グレンの言葉だけ。魔法も使わずに謎の現象を引き起こしたワルツたちを前に、魔法に詳しい一部の貴族たちは、目を丸くして驚いていた。彼らの目に、ワルツたちの事がどう映ったのかは分からない。より一層、得体の知れないもののように見えたのか、それとも彼女たちが使う技術に興味を持ったのか……。一部の貴族たちの目には、恐怖以外の色が浮かんでいたようだ。


 グレンもまた、恐怖していない人物の一人だ。


「……急に音が消えたな」


「空気を遮断して、音を消したからね。あぁ、魔法じゃないわよ?科学……貴方たちが錬金術と呼んでいるもののが進化した技術、って言えば良いかしら?」


「錬金術の進化……」


「まぁ、そんなことはどうでも良いのだけれど、今回、こうしてきた理由を話しておくわね?」


「ふむ?」


「私は、グランディエがこの国に住んでいても、迫害されたり、後ろ指を指されたり、毒殺されたりしないようにしたいのよ」


 ワルツがそう口にすると、グランディエが目を丸くする。ラルバ王国を改造するという謎の発言は聞いていたものの、ラルバ王国内に、自分の居場所を作るというのは、初耳だったからだ。


 そんな彼女が、会話に口を挟む前に、ワルツが続きを話す。


「そんなわけでここまで来たのだけれど、ここにいるのは国を動かしている貴族よね?さっき、私たちに暴言を吐いていた人たちって、私の計画に邪魔だから、今、この場で消しても良い?」


 ワルツは、シレッと、貴族たちの殺害を仄めかした。その瞬間、騒いでいた貴族たちが一斉に黙って、顔を青ざめさせる。


 それから彼らは、騒ぎを聞きつけた騎士や兵士たちが、部屋の外から助けに来ないかと、部屋の入り口の方へと視線を向けた。しかし、誰も来ない。それは異常な事だった。今は音が遮断されているとは言え、その直前まで、貴族たちは、ワルツたちの登場により、大声を上げていたのだから、扉の外に控えている騎士たちが、異常を察して、様子を見に来るはずだったのだ。


 貴族たちが何かに縋るような目を扉に向けている様子に気付いたワルツが、やれやれと言わんばかりに、こう口にする。


「あぁ、騎士たちは誰も来ないわよ?全員捕縛して、一箇所に集めているから。あと、天井裏とか、床下とか、柱の中のスペースとかに隠れている怪しい人たちも、集めておいたわ?まぁ、彼らの所属が何なのか良く分からなかったから、みんな揃って牢屋に入って貰っているけれど」


 ワルツの言葉を聞いて、貴族たちは驚いた。会議に呼ばれていない者たちが、会議室の中にいることを知らなかったらしい。


 それはグレンも同じだった。


「何なのだ?その、間者のような者たちは?」


「あれ?グレンも知らないの?じゃぁ、本当に間者なのかもね。まぁ、全員、身ぐるみを剥いで、牢屋の中に転移させておいたから、あとで煮るなり焼くなり、好きにすると良いわ?」


 そしてワルツは再び貴族たちの方を向く。


「国としてあまりに未熟で、外からの攻撃にも脆弱。魔王が来ても対処できず、ただされるがまま。そんな国のままで良いと思っているの?グレン」


「…………」


 自分よりも幼く見える少女から向けられた言葉に、グレンは即答できなかった。良いわけがないのは確か。しかし、ワルツが言わんとしていることを、彼は薄々察していたので、簡単には頷けなかったのだ。


 ワルツが言わんとしていること。それは即ち——いまある国の構造を一旦壊して、作り替える、と言っているようなものなのだから。


じ、時間が無いのじゃ……。

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