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6後-13 情報収集4

ドスッ・・・


自分の背中に何かがぶつかった。

そんな妙な感覚と共に、ワルツは最近、コルテックスから言われたり、ユリアに対して言ったりした言葉を思い出す。

一体彼女は、何を言われて、何を言ったのか。


『いつか背中から刺される』


(まさか、その日に刺されるとはね・・・)


そう。

ユキFから逃げるようにして部屋から出たところで、ホログラムの身体を表示した途端、何か鋭利なもので刺されたのである。


「・・・あんたなんかに、先輩は渡さないんだから」


耳元から聞こえてくる犯人(リサ)の声・・・。

タイミングからすると、彼女は玉座の間からワルツが出てくるところを待ち構えていたようだ。


ワルツは、以前、半天使化したベルツ婦人(狩人の母)に爆発する剣で体内から吹き飛ばされたことを思い出すと、ホログラムで出来た身体の内部構造を変化させて、最悪爆破されてもホログラムシステムの耐久度が50%を下回らないように対策を講じた。

それから、リサにどう対処していいものか、思考を高速化させて考え始める。


・・・それから0.01秒後。


「面倒くさっ!」


「?!」


・・・ワルツは思考を停止した。


「痛いふりをするか、魔神ぽい振る舞いをするかで悩んだけど、イブの事を早く探しに行きたいし、こんな所で無駄に時間を浪費するっていうのも考えものよね・・・」


「・・・っ!」


一切痛みを感じた様子を見せることなく淡々と話すワルツに、強襲の失敗を感じ取ったリサは、一旦距離を取ろうとする。

・・・が、


「な、なんで?!」


ワルツを貫く短剣が抜けず、その上、剣を握った手も離れなかった。

更に、である。


「あ、ごめん。ちょっと失礼」


「・・・んあ?!」


ありえない角度で首を回し、これまたありえない角度で関節を曲げたワルツに顎を掴まれ、無理矢理に口を開かされてしまうリサ。

雰囲気としては、ワルツの背中に短剣が刺さっていたはずなのに、気づくと胸に刺さっていた・・・そんな様子である。


そしてワルツは、彼女の奥歯に仕込んであった自決用の毒物を綺麗に取り除くと、彼女の()()()を開放して、再びリサに()()()()()()


「・・・?!な、なにすr・・・?!」


連続して2回、驚いた表情を見せるリサ。

一つは、ワルツのそんなありえない動きに。

そしてもう一つは、舌の先端で、ワルツが触れた奥歯を探った際、埋め込まれているはずのものが無くなっていることに気付いたためだ。


「やっぱりボレアスの諜報部隊って、みんな奥歯に毒物を仕込んでるのね」


そう言いながら、いつの間にか元に戻ったワルツは、指先で毒物の入ったカプセルを(もてあそ)んだ後、


フワッ・・・


っと、質量-エネルギー変換を行って消し飛ばしてしまう。


「・・・ま、魔神・・・くっ!」


(ん?この雰囲気は・・・あの名言が聞ける!?)


・・・女剣士には程遠いリサの容姿ではあったが、ワルツは次に飛んで来るだろう言葉を期待して待ち構えた。

そんな時、


ガチャ・・・


「あ、お姉ちゃn・・・」

「こんな所にいたんですか、ワルツs・・・」

「ヌル姉様から逃げるなんて、流石でs・・・」

「ワルツ様。逃げるなら逃げるって言っt・・・」

「いやー、私にもついに後輩・・・が?!」


このタイミングで、仲間たちが扉を開けてやってきてしまう。


「せ、先輩・・・!」


ワルツを刺したままの体勢で、やってきたユリアに向かって振り返るリサ。


そんな彼女に、ワルツは人知れず落胆した。

残念ながら、『くっころ』は聞けなさそうである。


「・・・新人ちゃん、何やってるの?」


先ほどとは違って、地の言葉を出しながら話すユリア。

冷静を装っている(?)が、動揺までは隠せないらしい。


そんな彼女の言葉に・・・


「・・・こ、これは・・・」


それ以外に何も言えなかったのか、リサはそのまま黙り込むと、下唇を噛みしめて俯いた。

そんな彼女に対して、ユリアは激怒した様子で口を開く。


「・・・どうして・・・どうしてそんなにワルツ様に接近しているのよ!」


「そっち?」


ユリアからは、リサの持っていた短剣が見えなかったのか・・・あるいは、ワルツに短剣が刺さっていても大した問題では無い、と考えているのか・・・。


「・・・魔神を・・・魔神を殺そうとしていたんです!」


リサはついに自分の犯行を告白すると、大粒の涙を零しはじめた。


「大好きな・・・先輩を・・・・・・魔神なんかに・・・取られたくなかったんです・・・ぐすっ・・・」


「いや、そんなつもり、全く無いんだけど・・・」


すると、今度はユリアが口を開く。


「・・・前から言ってるでしょ?サキュバス同士・・・同性同士の恋愛は歪なことだって・・・」


「・・・ねぇ、ユリア?殴っていい?グーで」


・・・どうやらユリアは、ワルツを同性だと思っていないようである・・・。




・・・それから1分後。


「全く・・・。新人ちゃんは、そんなちゃちい武器(神殺しの剣)でワルツ様をどうにか出来ると思ってたの?」


頭に作った()()()()を愛おしそうに撫でながら、ユリアはそう口にした。


「・・・はい・・・」


未だにワルツに剣を突き立てたまま、しょんぼりとした様子で答えるリサ。


「いいこと?ワルツ様には、魔法や呪いの類は全く効かないのよ?やるなら、ルシアちゃんクラスの魔()に頼んで、完全に吹き飛ばすくらいじゃないと。もしかしたら、それでも無理かもしれないけど」


「・・・」


そんなユリアの言葉に、リサはルシアの方を振り向いた。

事前に調査していたためか、誰がルシアなのかは分かっていたらしい。


そんな彼女の視線の先では、


ニコォォォォォ・・・


っと(まと)わり付くような笑みを浮かべるルシアの姿が・・・。


「む、無理です!」


「そう、無理よ。無理なの!だから、あなたは諦めなきゃならないのよ!」


「それも無理です!」


ユリアの言葉に即答するリサ。

先輩と同じく、諦めが悪い性分のようだ。


「・・・ま、どうでもいいんだけどさ。さっさと行かない?このままここにいると、魔王(ユキF)に追いつかれそうだし・・・」


生体反応センサーに付けていたユキFのマーカーが、真っ直ぐに扉の方へと近づいてくる様子を確認しながら、そう口にするワルツ。

そんな彼女に、ユキは問いかけた。


「あの・・・よろしいのですか?治療しなくても・・・」


「え?あぁ、良いのよ。ケガをしたわけじゃないし、治療しても意味ないから」


「はあ・・・」


明らかに背中に国宝級の刃が刺さっているというのに、ケガをしていない(壊れていない)と言い張るワルツに、どういう表情を向けて良いのか分からない様子のユキ。


・・・ともあれ。

このままここにいると10mほどの距離に近づいてきていたユキFに捕まってしまうので、ワルツ達は移動することにした。

・・・ただし、背中の剣をそのままにして、それを手にした状態のリサを連れたままで・・・。




「・・・」


・・・リサは、まるで咎人(とがにん)のように、消沈した様子で歩いていた。

ヤってしまったことを後悔していたのである。


「新人ちゃん・・・ワルツ様に喧嘩を売るとこうなるから注意してね・・・」


流石に()(たま)れなくなったのか、当初は『当然』と思っていたシルビアも、思わずそんな声を掛けた。


一体、どんなことになっていたのか。


「で、次の交差点を右?」


「いえ、左です」


・・・要するに、街の中を、ワルツを刺したままの状態で歩かされていたのである。

新種の市中引き回しの刑らしい。


「もうしませんから許して下さい・・・」


心の奥底から、後悔の念に苛まれている様子で赦しを請うリサ。

そんな彼女を・・・


「まだダメよ?」


ワルツはまだ赦していなかった。


「・・・もう少し、人の多い所を通って行けないの?」


「あの・・・はい・・・。一応これでも、できるだけ人の多いところを歩いて居るつもりなのですが・・・」


「そう・・・」


ユキの言葉に、残念そうな表情を見せるワルツ。


ちなみに、何故ワルツが残念そうな表情を見せていたのかというと、


(何でみんな、私たちが通ろうとすると、視線を合わせてくれないのかしら・・・。偶然・・・?)


・・・まるで、ワルツたちを避けるかのようにして、市民たちの誰もが視線を合わせてこなかったのである。

たまに視線が飛んできても、そこには誰も居ないかのように、そのまま逸らしていく。

どうやら、市民たちは、ワルツたちと関りたくないようだ・・・。


(これじゃぁ、リサを引き回す意味が無いじゃない・・・)


と、真後ろで俯きながら追従してくるリサに、機動装甲から視線を向けるワルツ。

尤も、リサは、城を出てからずっと俯いたままなので、そのことに気づいていない可能性も否定はできないが・・・。


そんなどうでもいいことを考えていると、


「ここです」


ワルツの隣を歩いていたユキが、徐ろに、1軒の書店の前で立ち止まった。


「・・・魔道書店?」


「はい。生活に役立つ初歩的な魔法から、大陸を破壊する程の大規模な魔法まで、ありとあらゆる種類の魔法の指南書を取り揃えている、ボレアス(いち)の魔道書店です」


「大陸を破壊するって・・・そんなとんでもない魔法が書いた本を売っても言いわけ?」


「えぇ、問題はありません。ボレアス国民を全員集めたとしても、行使出来ないほどの大規模な魔法なので、まず使用することは不可能な魔法ですから。言ってしまえば、そういう理論がある、という説明をしている本ですね」


「そういうこと・・・。理論書・・・あるいはペーパー(論文)みたいなものね」


「はい?」


「ううん。なんでもないわ。じゃぁ、早速行きましょうか」


そう言ってから、書店の扉に手をかけるワルツ。


(・・・私も、随分この世界に慣れてしまったものね・・・)


この世界に来た当初は買い物一つすることすら儘ならなかったというのに、今では臆すること無く扉に手をかけている自分に気付いて、ワルツは内心で苦笑を浮かべた。


それからワルツは、一旦、手を止めてから心を引き締めると、書店の扉を一気に開け放ったのである・・・。

なお、今でも、一人では買い物ができない模様・・・と主殿が書けと煩いのじゃ!

そんなわけなかろう!

・・・たぶん。


というわけでじゃ。

今日は諸事情により、閑話となったのじゃ。

明日は・・・いや、なんでもないのじゃ。

変なことを書くと、ネタバレになるからのう。


0時まで残り30分・・・。

何を書こうかのう・・・。

そうじゃ。

この前、ルシア嬢が妾の一日を暴露しおったから、ルシア嬢の一日についても暴露しようかのう?


こんな感じじゃ。


日が出る前に起きると、そのまま布団を被ったままで、朝まで固まるのじゃ。

本人は、寝ておらぬと言い張っておるが、この前、話しかけたら、返事が戻ってこんかったから、アレは間違いなく寝ておるのじゃ。


その後、妾が朝食を作るまで、テレビでNH○教育を眺めて、食事が終わったら、自分の部屋に引き籠もって何かをし始めるのじゃ。

何かを作っておるようじゃが・・・詳しいことは分からぬのじゃ。

この前は『せいぶつへいき(クッキー)』を作っておったが、別に食べ物(?)だけを作っておるわけではないようじゃぞ?

主殿の工具を使って、何かを組み立てている様子を見たのじゃ。


その後の昼時の行動には、2パターンあるかのう・・・。

1つは、一緒に昼食を取る。

もう1つは、近くのスーパーに稲荷寿司を買いに行く。

この2パターンじゃ。


その後は、2時くらいまでリビングのソファーで仮眠をとった後、部屋に再び引きこもってしまうのう。

それから、主殿が帰ってくるまでの間、作業を続ける・・・そんな感じじゃ。


その後については、特に説明は必要ないじゃろ?

執筆活動をしておる妾を妨害して、風呂に転移させたり、裏山に転移させたり、夜食の稲荷寿司を作ったり・・・。


そして、大抵の場合は、妾よりも先に寝てしまうのじゃ。

元に今も・・・・・・?!じ、時間が?!


というわけで、あとがきはここまでなのじゃ!

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