表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3336/3387

15.02-01 魔神1

 食事に毒を盛った者や、それを利用してワルツたちを害そうとする者たちに対し、グレンはワルツたちを国家クラスの来賓として扱うことで、牽制しようとした。国家クラスの来賓として扱うということは、つまりグレンのお墨付きということ。彼女たちを来賓ではないと否定すれば、それは国王の決定を否定したことと同義となるので、極刑は免れなくなるのである。彼なりにワルツたちを守ろうとした結果だったと言えるだろう。


 対するワルツは、それ自体に忌避感があったわけではないが、その場での返答をせず、回答を先延ばしにする。色々なことが先延ばしになっているが、今日はルシアたちが訪ねてきたのだ。むしろ合流したと言うべきか。ワルツとしては、そんな彼女たちに対し、事情を説明する時間が欲しかったのだ。


 というわけで——、


「ここが新しい"王都"かもなんだね……」


——ラルバ王国の王都が一望できる場所に一行はやってきた。王城を含めて町のどこよりも高い場所にあるワルツ城(?)最上階。そこにある展望室である。


 イブは、眼下に広がる町を見下ろしながら、どこか遠い視線を見せていた。彼女は、日々、変わっていくミッドエデンの王都の姿を見ていた事もあり、ラルバ国の王都も変わっていくのだろうと考えていたらしい。


「ちょっと、イブ?何か勘違いしてない?」


 イブの発言に何か含みがあるような気がしたワルツが問いかける。


「気のせいかもだし」すぅっ


「いや、絶対気のせいじゃないでしょ」


 自分から視線を逸らしたイブを見たワルツは確信した。イブもまた、国王グレンのように、何か大きな勘違いをしている、と。


 そこにルシアが燃料ならぬ爆弾を投下する。


「じゃぁ、とりあえず、城壁の外側に、もっと大きな城壁を作れば良いかなぁ?」


「いや、私たちは手を加えないわよ?」


 ルシアの魔力を使えば、町一つ丸ごと作り上げることすら可能である。ただし、国王や国民たちの同意も得ずに町を作れば、混乱するのは必至だろう。そう言った強引なまかり通るのは、ミッドエデン国内くらいのものだ。


 ルシアの発言に問題を感じていたのは、テレサも同じだったらしい。


「ふむ。いきなり魔法で町を作り替えては、国民から反発を食らうのじゃ。ここは、町全体の人々を洗脳……説得してからにすべきではなかろうか?」


「だから、ここは私たちの町じゃなくて、単なる経由地だって」


 反発を食らうのであれば、力で黙らせれば良い……。テレサの発言には、そんな副音声が含まれていた。実際、テレサとルシアがいれば可能なのだから、ワルツとしては呆れるほか無かったようだ。


「2人とも、ワルツ様たちは人のいない場所を目指しているかもだし」

「……!そっか!人がいない場所を作れば良いんだね?」

「いやいや、ア嬢?ここを更地にしてはダメなのじゃ?ここは穏便に、皆に立ち退きを勧めるべきなのじゃ。……魔法での?」


「一応言っておくけれど、この場所に未練とか何も無いからね?」


 皆、分かっているのだろうか……。ワルツは内心、不安になる。ただ、その表情には薄らと笑みが浮かんでいて、皆との会話を楽しんでいるようだった。


 そんなワルツの表情を見ていたグランディエは、どこか寂しそうな表情を見せながら、ポツリと呟く。


「……これが、魔神様のお仲間なのですね……」


「あっ、お姉ちゃん、ここでも魔神様って呼ばれてるんだ……」

「そりゃ、そうなのじゃ。実際、魔神じゃからのう。濁点は多いが……」

「こんなお城を建ててたら、魔神って呼ばれても仕方ないかも?ニクとかの魔物も飼ってるかもだし……」


「……なんか、私が悪い気がしてきた……」


 ワルツはようやく、自分がなぜ"魔神"と呼ばれるのか、その理由に気付き始めたようである。まぁ、それも一瞬のことで、次の瞬間には忘れてしまったようだが。


 それには理由がある。


「ねぇ、お姉ちゃん」


「うん?」


「どうしてミッドエデンから距離を取ろうとしたの?」


 ルシアが、あまり突いて欲しくない核心を突いてきたからだ。


……今日からまた文量が減るかも知れぬのじゃ。新生活が始まるゆえ、時間配分が読めぬのじゃ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ