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15.01-42 ふたり28

 毒物——強力な睡眠薬の混入により、昼食会は中止になってしまった。


 グレンの面子は丸つぶれだ。元々は、ワルツとグランディエへの謝罪が目的の顔合わせだったはず。それが、毒物の混入により、すべてが台無しなってしまったからだ。いまさら謝罪したところで、後の祭りである。


 グレンは直ちに、犯人の追及を始めるよう指示を出した。それも、ワルツたちの目の前でだ。


 その後で、グレンは再び頭を下げる。1回目の謝罪の時と同じように、腰を直角に曲げての謝罪だ。


「……申し訳ない」


 彼の真摯な態度に、グランディエは許してあげようと考える。今回も彼女は、特に害されたわけではないのだ。強いて言えば、美味しそうな食事を食べられなかったことが心残りだったが、そのことを恨むほど彼女の心は狭くない。


 その一方で、ワルツは少し違う考えを持っていたようである。許す、許さないの話ではない。


「当然の話なのだけれど、こう事件って、誰が得して、誰が得しないか……結局、それしか無いと思うのよね」


「「?」」


「例えば、この事件が起こった事で、誰が得するのかしら?(まぁ、本当の目的は、私たちの殺害だったのだろうけれど……)」


「それは……」


 グレンは率直に考えるが、誰か得をするような者は思い付かない。ワルツたちを怒らせたところで、ラルバ王国にはデメリットしかないからだ。


 では、少し捻ってはどうか。直接、メリットを享受するのではなく、間接的か、条件付きか、あるいはこれから先の未来でメリットを受ける者がいないか……。グレンは頭を捻った。その結果——、


「……いや」


——彼は何かを思い付いたようだが、すぐに否定する。


 そんな彼に対し、ワルツがニヤリとしながら、こんなことを口にした。


「今……私たちの顔を思い浮かべなかった?」


 メリットを受ける者たち。それは、ワルツたち本人なのではないか……。


 ワルツが副音声でそう口すると、図星だったのか、グレンは慌てた様子で言い訳を口にする。


「そ、それはないと考えておる。其方らなら、わざわざ我らを貶めずとも、実力でこの国を好きなように出来るはずだ。毒を盛ってまで、我らを貶める理由が無い」


 グレンのその言葉を聞いて、ワルツは安心する。今回の件もそうだが、ワルツたちがラルバ王国国内で何か対人関係のトラブルに巻き込まれたとき、グレン——ラルバ国王は味方に付いてくれると言ってくれているようなものだからだ。ワルツは対人の争い事が大の苦手なのだから、グレンの発言はありがたいものだった。


「じゃぁ、今回の件で、私たちを貶めようとするような人たちが出てきても、対応を頼むわね?」


「うむ。しかし、そうなると……」


「ん?」


「結局、犯人は誰なのだ……」


 メリットを受ける者として、一番に浮かんできた人物はワルツたちである。しかし、それはないとなると、やはり考えられるのは、ワルツたちを貶めようとする者たち、となるのだが、それが誰なのか、グレンには見当が付けられないらしい。


「思い付かないの?」


「いや、逆だ。多すぎて分からぬ……。貴族たちが犯人である可能性も考えられるし、使用人や外部の人間たちが犯人である可能性も否定できぬ……。皆、其方らを怖れておるゆえな……」


「うわぁ……」

「っていうか、原因それじゃない?四面楚歌っていうか……。みんなが結託してる可能性もあるわね……」


 もう、さっさと、この国を脱出してしまおうか……。ワルツがそんな事を考えたその瞬間の事だ。


   チュドォォォォン!!


 美しかった庭園が、ダイナマイトで爆破したかのように吹き飛び、土煙の中に消える。いや、土煙ではない。土砂煙と言うべきか。


 その光景を目にした()()全員が驚き、逃げ惑う。グレンやグランディエも驚いて、思わず東屋の影に隠れたほどだ。


 しかし……。ワルツだけは、険しい表情を見せていた。


「……見つかったわね」


 ポツリと呟いた彼女の視線は、薄れ行く土砂煙の中へと向けられていた。


 そして次の瞬間、金色に輝く何かが土煙の中から飛び出し——、


   ボフッ!


——とワルツの腹部にメリ込んだ。


「ぶほぁっ?!」


 その金色の何かは、両手を伸ばすと、ワルツの腰にその腕を回して、ガッチリと彼女を捕まえた。


 そして、言った。


「お゛ね゛え゛ち゛ゃ゛ん゛!!よ゛う゛や゛く゛み゛つ゛け゛た゛!!」ぶわっ


 飛び込んできたのはルシアだった。どうやら、ワルツの気配(?)を探って、惑星の裏側から飛んできたらしい。


※この物語には、"複数の主人公"がおるのじゃ。それゆえ、ア嬢が出てこなくなる……などということはありえぬのじゃ。

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