6後-11 情報収集2
職員たちから無理やり情報を聞き出して、全員にプレッシャーを与えて気絶させてから、(ミッドエデン風)王城のエントランスホールの床に一直線に寝かせた後。
「私、思うんだけど、お姉ちゃんってやっぱり、魔王さまっぽいよね?」
第5王城を一瞬で潰した挙句、容赦なく職員たちを全員気絶させたワルツに対して、そんなことを口にするルシア。
「あら、魔神よりも格が下がったのね?んー、日頃の行いがようやく報われてきたかしら・・・」
「う・・・うん・・・(そういう意味じゃないんだけど・・・)」
そんなやり取りをしながら、ワルツたちは、ユキたちが待っているだろう玉座の間へと再び足を運んでいた。
ところで。
ルシアの他には、カタリナ、ユリア、シルビアの仲間たち全員がいたが・・・、どういうわけか、ユリアとシルビアは、カタリナの後ろでシュンとした様子で俯きながらトボトボと歩いていた。
一体何故なのか。
・・・まぁ、わざわざ説明するほどのことでもないのだが、どっちが良いだの悪いだのと、ワルツに接する上でのルール(?)の順守を懸けた宗教戦争が勃発して、2人が言い争っていたところを、カタリナに大目玉を食らった、というわけである。
どうやら権力上、カタリナは相当な地位にいるらしい。
・・・その怪しげな宗教にカタリナは含まれていないはずだが・・・いやむしろ、元の職業と、ワルツと出会ってからの時間を考えるなら、実は神官クラスなのかもしれない・・・。
まぁ、それはさておき。
ワルツとルシアが取り留めの無い会話をしながら歩いていると、すぐにユキたちの待つ玉座の間へと辿り着いてしまった。
なので、ワルツは、前回と同様にマイクロノック(?)をしてから、扉を開く。
すると、どういうわけか、こちらも前回同様・・・
ドゴォォォォン!!
と、ワルツたちのことを、爆風と爆音が襲ったのである。
「・・・やっぱり、ノックをするから爆発するのかしら・・・」
と、爆風を重力制御で往なしながら、そんな言葉を口にするワルツ。
「お姉ちゃん・・・?ノックしてなかったよね?」
「いやいや、してたわよ?こんな感じで」
カスカスカス・・・
手の甲で扉を撫でるようにして叩く(?)ワルツに、ジト目を向けるルシア他3名。
「・・・はい。今度から、ちゃんと叩くようにします」
無言の圧力に負けたワルツは、仕方なく、普通に扉を叩くことにしたのだった。
コンコンコン・・・
「いや、今、叩いても仕方ないと思いますよ・・・」
すかさずワルツにツッコむカタリナ。
「じゃぁ、やっぱり、何もやらずに入っていけばよかった?」
「・・・もう既に扉は開いてますし、今回に限ってはそれでもよろしいのではないでしょうか」
「・・・それもそうね」
・・・と、玉座の間の扉を半開きにしたまま、たっぷり1分程話し合ってから、ワルツたちは中に入ることにしたのである。
・・・なお、それにはちゃんとした理由があった。
何故なら・・・
「・・・で、姉妹喧嘩は終わったかしら?」
爆風が飛んできた時点で分かっていたことだが、中で戦闘が行われていたのである。
それも、ユキA vs ユキB-Fの、一見すると集団リンチとも言える一方的な戦闘が・・・。
・・・なお、最後に立っていたのは、
「あ、ワルツ様。もうお帰りになったのですか?」
無傷のユキAだった・・・。
「貴女ダメよ?子ども相手に手を上げたりなんかしたら・・・」
と言いながらチラッ、チラッとカタリナの様子を伺うワルツ。
案の定、彼女は眉間にシワを寄せていたので、まもなくお叱りがあるのではないだろうか・・・。
「いえ、手を上げたことはございません。飛んでくる魔法を全て回避していたらこんな有様になってしまいまして・・・一体、何と釈明したら良いのでしょうか・・・」
「まぁ、最後の方は見てたけどね?・・・とりあえず、身体の方は順調なようで良かったわ」
「はい。おかげさまで。ヌル姉様方の魔法が止まって見えたくらいです」
(いや・・・思考の高速化とかはしてないんだけど・・・)
どうやらユキAが元来から持っていた戦闘のセンスと、ワルツ達の改造によって得た新しい身体のポテンシャルが、うまい具合にマッチして、飛躍的に戦闘能力が上がったらしい。
そんなやり取りをしていると、再び傷だらけになったユキFが、今度は反対側の腕をだらーんとしながら、起き上がってきた。
「す、素晴らしいでちゅ・・・。しゃ、流石、ワルツ様とビクセ・・・カタリナ様のお作りになったお身体・・・。手も足も出ましぇん・・・」
そんなユキFの言葉に、ついにカタリナが動いた。
「・・・お姉さん?そしてそこに寝そべっている妹さんたち?ついでにシリウス様。そこにお直り下さい」
ニコッ・・・
と笑みを浮かべながら、瓦礫の転がっていない開けた場所を指さすカタリナ。
ゴゴゴゴゴ・・・
『あぁあああぁ・・・・・・?!』
・・・そして、元僧侶による魔王たちの説教が始まったのである・・・。
「・・・で、私たちが第五王城で得た情報はこんな感じね」
カタリナの説教から開放された後、彼女の超回復魔法を受けたはずなのに骸骨のように痩せこけた表情で正座を続けているユキたちに、ワルツは第5王城で得た情報に関する説明を始めた。
「面倒くさい説明を省いて端的に言うと・・・貴女達のところ部下、軒並み籠絡されてるわよ?」
『・・・え?』
ワルツの言葉が理解できない様子のユキたち。
そんな彼女たちに、ワルツは追加の説明を行う。
「言霊魔法って知ってる?」
「はい、もちろん知っています。使う者が限られる非常に稀有な魔法ですが、言葉通りに人や魔物を操ることのできる魔法ですね」
と、首を縦に振るユキA。
「まぁ、長い時を生きてる魔王だし、知ってて当然よね・・・。で、その言霊魔法で、職員たちがみんな洗脳されてるみたいなのよ」
『?!』
そんなワルツの言葉に、今度こそユキたちは驚愕した。
・・・但し、洗脳されていたことに対してではなく、違う方向に。
「いえ、皆が洗脳されるというのは、本来ありえないことです。言霊魔法は、普通の氷魔法などと違って、そう簡単には連用出来ませんし、準備にも時間がかかりますから」
その言葉に、ん?、と一瞬疑問を浮かべるワルツ。
確か、知り合いに、ポンポンと言霊魔法を連発してはすぐに気絶する者がいたような・・・そんなことを思い出したのだ。
ただ、今回に限っては、関係ないことなので、すぐに考えることをやめたのだが。
・・・そう、それ以外に心当たりがあったのである。
「時間をかけて一人ずつ誘拐していったとして、一体どれほどの時間がかかるのか・・・」
そう言いながら頭を抱えるユキAを始めとしたユキたち全員に向かって、ワルツは言った。
「・・・魔王アルタイル」
その言葉に反応したのは・・・
「!」
「?」
ユキFと、事前にアルタイルについての説明を受けていたユキAだけだった。
「そういえば貴女、アルタイルの名前を呟いていたわよね・・・」
アルタイルの名前を口にしてから6秒後に杭が飛んでこないことを確認したワルツは、ユキFに問いかけた。
するとユキFは、驚愕した表情のまま、ワルツに逆に問いかける。
「どうして・・・その名前を知っているのでちゅか・・・」
「んー、話せば長くなる・・・っていうか、ユキA!そっちの説明してないの?!」
「あの・・・はい、すみません・・・。説明しようとしたら、襲われたので・・・」
「・・・はぁ・・・」
・・・こうしてワルツは、自ら全ての説明をユキたちにすることになったのである・・・。
そして、ミッドエデンでの一件や、迷宮内でユキAが見聞きしたこと、そしてユキAの身体のことについて説明し終わってから。
床にメリ込まんばかりに頭を擦り付けて土下座をしているユキたちを前に、ワルツは話を元に戻した。
「・・・で、そういうわけだから、アルタイルとは浅からぬ関係があるのよ・・・まぁ、一方的な関係だけど・・・」
「しょうでしたか・・・。本当に申し訳ごじゃいません・・・」
どうやら、ユキAはユリアに聞かされたミッドエデンの一件を、他の姉妹に伝えていなかったようである。
タイミング的に、伝える暇が無かったのだろう。
「いや、それについてはもうユキAから謝ってもらったし、もう終わったことだから良いんだけど・・・問題はまだ終わってないアルタイル・・・それに、拐われたイブのことよね・・・。ホント、この件にどう関係してくるのか分かんないけどさ・・・」
そう言いながら、魔王アルタイルの事を考えて眼を細めるワルツ。
すると、ユキFは頭を上げて、背筋を正すと説明を始めた。
「魔王アルタイル・・・結界の外で彼の者の名を口にした者には死が与えられる・・・。しょれについてはご存知でしゅね?」
「えぇ。私が知ってる限りではまだ一人しか死んでないけど」
と、ユリアの元上司のサキュバスのことを思い出すワルツ。
「問題はアルタイルが何者でどこに住んでて、何を画策しているか・・・なのよねー。なんか、ホムンクルスを集めてるみたいだし・・・」
ミッドエデンの王城から消えたという少年の姿のホムンクルス。
そして、メルクリオの城から消えた勇者似のホムンクルス(?)と胎児(?)。
彼らとアルタイルには浅からぬ関係があることは、前後の出来事から明白なことだった。
「・・・」
ワルツのホムンクルス発言に眉を顰めるユキF。
それから彼女は、申し訳無さそうに口を開いた。
「私も、魔王アルタイルについて詳しく知っているわけではありません。彼の者は・・・言わば、伝説上の人物のようなものなのでしゅ」
「伝説ね・・・」
「はい。あるいは概念と言ってもいいかも知れませんね・・・。『死神』の・・・」
最後の部分をまるで呟くように小さく口にするユキF。
それから彼女は、自身が知っているアルタイルの情報について話し始めた。
曰く、世界に永遠の闇を齎す者。
曰く、魔神に限りなく近い者。
曰く、死者の魂を新しき世界へ導く者。
曰く・・・
「世界を超える者・・・ね・・・」
「はい。どれも、古い伝承だけに残るお伽話のようなものなので、不確かなものでしゅが・・・」
「・・・面倒ね・・・。特に世界を超えられると・・・」
「・・・え?」
「いえ、なんでもないわ。独り言よ」
そう言いながら、ワルツは頭を抱えるのだった・・・。
それから、アルタイルに関する情報だけを記憶領域に仕舞い込んで、余計な思考を停止したワルツは、改めて、第5王城の職員たちのことについて話し始める。
「それで、職員たちのことなんだけど、子どもが牢から逃げ出さないように見張るようにって、インプリンティングいたわよ?それもユキの命令で、ってことで。恐らくこれに、アルタイルの言霊魔法が関与してると思うのよね・・・。彼女、配下の者全てに言霊魔法を使ってるみたいだし・・・」
と、水竜の事を思い出しながら口にするワルツ。
「魔王アルタイルとこんな形で関係を持ちゅことになるなんて・・・・・・。他には何かありましたか?」
「ユキに対する忠誠はそのままって感じだったわね。誰か特定の者の名前が出てくるも無かったわ。だから、ユキAの言ってたカペラとか言う男についても、何も得られた情報は無かったわね」
「そう・・・でしゅか・・・」
そう言いながら、眼を細めるユキF。
ユキAも残念そうに眼を瞑った。
そんな彼女たちに、ワルツは難しい表情を浮かべながら言葉を続ける。
「ただ、言葉だけの刷り込みとは限らないから注意した方がいいわよ?ユキAが言ってたように、カペラやロリコンたちが我が物顔で城の中をうろつき回っていたとするなら、もしかすると、言葉には出来ない眼や耳からの情報対しても刷り込みが行われてる可能性も否定出来ないしね。・・・っていうか、多分、間違いないでしょうね・・・」
例えば、ユキたちの代わりに、カペラの姿を皇帝だと思わせる。
その場合、いくら言葉だけの質問をしても、言霊魔法による刷り込みの内容を聞き出すことは出来ないのだ。
「・・・分かりました。第5王城の人々に対しては、一度、徹底して言霊魔法に関しゅる調査をしようと思いましゅ」
こうして、玄関ホールに一直線に寝かされている職員たちは、そのままユキ達の配下による尋問を受けることになったのである・・・。
話が長くなので、一旦ここで区切るのじゃ。
さぁ、今日こそはちゃんとしたあとがきを書くのj
ブゥン・・・
というわけで、お風呂が沸いていたので、ここからはルシアがお送りします。
突然ですが、今日は、テレサちゃんの一日について紹介しようと思います。
まずは朝からです。
髪の長いテレサちゃんは、朝起きると、髪の毛のお化けみたいな姿で布団から起き上がります。
たまに尻尾に髪の毛が絡んで大変なことになってるので、私が手伝って解かなくてはならないことがあります。
それからテレサちゃんは、主さんがレンジでチンしたタオルを髪に載せたまま二度寝を始めます。
大抵の場合、ここで主さんが仕事に出掛けてしまう、っていう感じです。
その後で、徐ろに起き上がったテレサちゃんは、冷蔵庫の中を漁って、朝食の作り始めます。
出来合いのものじゃなくて、ちゃんと作るというところは流石ですよね。
私も手伝うっていつも言ってるんですが、『お主が作った食事を食べると、3度寝して気づくと次の日になっておる・・・』って言って作らせてくれないんです。
なんか、酷いですよね。
それで、朝食を食べた後で執筆活動が始まります。
大抵の場合、30分もしないでやめちゃうんですけど。
それから、テレビを見て、ニュースサイトを見て回って、SSまとめサイトを見た頃にお昼がやってきます。
昼食は、朝食の余りか、簡単なシリアルを食べて終わりって感じです。
私としては、稲荷寿司を作って欲しいんですけど、「作って」って言う度に『体重』という言霊魔法を使われるので、いつも諦めてしまうんです・・・。
何なんでしょうね・・・体重って・・・。
それから夕方までは執筆活動だったり、掃除だったり、夕食の準備だったり、クッキーを作ったりと、なんか主婦みたいなことをやって時間を潰します。
日が落ちるまで、外に出かけることは無いですね・・・。
そして、主さんが返ってきて、夕食を食べて・・・・・・そして、12時まで、執筆のラストスパートを掛けて、書き終わったらお風呂に入って寝る。
そんな一日を過ごしています。
え?なんで日が落ちるまで外に出ないか?
それについては・・・今度、お話しようと思います。
それでは今日はこの辺で・・・。




