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15.01-25 ふたり11

「あ、あれ?おかしいわね……。町に辿り着かないよう、わざと街道を外れて移動していたのに……」


「あの町は……王都?!」


 森を抜けて丘を越えると、真っ直ぐ目の前に大きな町の姿が見えてくる。グランディエ曰く、2人が今いる国の中心らしい。


 そんな大都市と呼べる町の手前には、これまでワルツが見たことの無いようなたくさんの人々が陣を築いていた。しかも、ワルツたちが来る事を事前に察知していたのか、囲い込むような陣形だ。ワルツたちには、後退する以外に、相手の陣形を避ける術は無い。


 いや、正確に言えば、後ろからも人々が追いかけてきているので、全方位を囲まれていると言うべきか。魔物たちも後ろから付いてきているので、馬車の方向転換は不可能。カーブを描いて左右のどちらかに避けられれば良かったのだが、挟撃するためか人々の陣は左右が厚くなっており、それも不可能。進路の選択肢は、その場に停まるか、真っ直ぐ町に突っ込むかの2択しか無いと言えた。


 あるいは、転移魔法で逃げるという選択肢もあったが、それはワルツの頭の中で却下されている。ここまでの道程において、ワルツは先に、この国の人々から攻撃を受けたのである。相手が命を落とさないよう気配りをすることはあっても、逃げるという選択肢は、彼女に無かったのだ。


「ど、どうされます?」


 馬車の中から周囲を見渡したグランディエは、自分たちが手詰まり状態にある事と考えていたようだ。残る頼みの綱は、ワルツの転移魔法陣だけ……。それでも彼女が冷静でいられたのは、ワルツの力に信頼を寄せていたからか。


 その一方でワルツは、難しい顔をしながら、何かを考えているようだった。珍しく、すぐには回答しない。


「(突撃しても問題は無いと思うけれど……)」


 彼女には2つのプランがあって、そのどちらを選択するかで悩んでいたようだ。


 一つ目は突撃。挟撃の()()()()を突っ切って、人々や壁、町の中、城などを掻き分け(?)ながら、そのまま町を貫通するというプランだ。猪突猛進と言っても良いかも知れない。


 二つ目は、ワルツたち自身の力を使わないプラン。具体的には、空よりも遙か上にいる存在を利用するというものだ。こちらは目くらましの目的で使うつもりで、混乱中に人々の間を抜けるというものである。


 結果——、


「……どーせ、重力制御システムを使った時点で大体の位置は特定されているのだし、突っ切るのは同じなのだから、両方のプランを使うことにしようかしら」


「えっ?」


——といったように、両方のプランを採用することになった。ワルツらしい適当な選択だったと言えよう。


 グランディエが怪訝そうにワルツの顔を見つめていると、その当のワルツは、「はぁ」と深く溜息を吐いて、いったん目を閉じると、キッ、と目を見開く。その目は赤く光っていて、グランディエは思わず身震いする。ワルツの眼を見て、彼女が本気になったと察したらしい。


「——ストレンジアに強制介入」


 ワルツが呪文のような言葉を呟く。


「兵装選択。……んん?何これ?【女神の裁き】【女神の息吹】【女神の涙】……?デプレクサったら、まだ女神を気取っているの?まぁいいけれど……。これにしよ」


 ワルツは、衛星軌道上にいるエネルギア級三番艦、宇宙戦艦ストレンジアの制御権を奪取した。ストレンジアがいるのは、ちょうど、ワルツたちの直上。ストレンジアからすると、ワルツは重力制御システムを多用するために、惑星全土の重力分布を調べれば、彼女が大体どこにいるのか、すぐに分かるのである。ワルツは雲を使って隠れたつもりでいたようだが、実際にはバレバレなのだ。


 本来なら、ワルツの居場所が分かった時点で、コルテックス辺りが直接やってくるはずだった。ところがどういうわけか、ストレンジアを操艦しているデプレクサは、ワルツの居場所をコルテックスに報告していないらしい。デプレクサが従うのは、コルテックスではなく、ワルツだからか。


「……接続しても、何も言ってこないわね」


 通信を接続しているのだから、デプレクサから不平不満の一つや二つ——いや、百や千くらいは飛んできてもおかしくないはずだった。ところが、接続されていることが分かっているはずのデプレクサは、ワルツに対して何も言おうとしなかった。まるで、自由に兵装を使えば良い、と言っているかのようだ。


「じゃぁ、遠慮無く」


「あの、ワルツ様?」


 ブツブツと独り言を呟くワルツに対し、グランディエが心配そうに問いかける。単純にワルツのことを心配したらしい。具体的にワルツのどの辺を心配したのかは不明だが。


 対するワルツは、グランディエに対して、こう言った。


「いい?グランディエ。今から起こる現象は、天罰でもなんでもなくて、ただの攻撃よ?頑張れば人にも真似が出来るから安心して?」


「えっ?天罰?安心?」


「ようするに、取り乱さないでね?ってこと」


 そして——ワルツは唱えた。


「【女神の涙(ヴィーナスドロップ)】照射」


 その直後だ。


   ズドォォォォン!!


 空から柱のようなものが降ってくる。遠くから見ると、光の奔流のようだが、近くで見るとそうではなく……。巨大な水の柱だった。


 しかも、宇宙空間から一瞬で届くほどの速度だ。静止衛星軌道は36000km上空なので、その距離をほぼ一瞬で移動するほどの水の圧力となると、超音速どころの速さではない。秒速36000kmなど大気圏中ではありえないので、恐らくは距離を短縮するために、転移魔法に近い技術が使われているのだろう。


 それでも、水柱の速度は音速を超えていたので——、


   ズドドドドド!!


——何の抵抗もなく、地中を穿っていく。ウォータージェットカッターの巨大版のようなものだ。町に落ちれば大惨事だが、幸い、町には落ちなかった。もちろん、人の頭の上でもない。


 ではどこに落ちたのかというと、町の外縁部から3kmほど離れた場所だ。落ちた水の柱は、そのまま町の周りをグルリと一周して、ワルツたち一行と、前方にいる人々との間に、幅50mほどの大穴を掘った。一見すれば、お堀のように見えるかも知れない。まぁ、底は見えないが。


 そして、水柱が町を一周した後、水柱はスゥッと消え去るのだが……。その代わりに、今度は——、


   ドゴォォォォッ!!


——地中から高温の水蒸気とマグマが噴き出してくる。どうやら、巨大なウォータージェットカッターもとい【女神の涙】は、惑星のマントルまで届いていたらしい。


???「やはりワルツ様だったのですね。コルテックスに報告した方が良いのでしょうけれど……セバス?」


???「ハッ!」


???「コルテックスとの通信は?」


???「いまだ確立出来ておりません。ミッドエデン王都の方で、何かトラブルがあったものと推測されます」


???「……そう。私たちは継続して、ワルツ様のことを見まもr……監視する事にしましょう」


???「ルシア様とテレサ様はいかがいたしますか?」


???「あの二人は放っておいても問題は無いでしょう。ルシアちゃん一人だけの家出なら、惑星崩壊の危機ですけれど、テレサ様が一緒に付いているのなら問題は無いはずです」

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