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14.21-25 色々な力25

 地下空間について、マグネアへの説明を一通り終えてから。ワルツは、転移魔法陣を使って、マグネアを学院へと戻した。その際、彼女は、マグネアから、夕食の誘いを受けるが、人見知りの激しいワルツがその誘いを受ける事はなく……。彼女はそそくさと自宅へと戻る。


「ゴーレムか……」


 自身の工房に戻ったワルツは、小さな丸椅子に腰を下ろし、その上にポツンと座って、溜息を吐く。何やら考え事を始めたらしい。


 マグネアにとって、仮初めの命を吹き込まれたゴーレムは、特別な存在だというのは明らか。彼女がゴーレムに向ける視線を見れば、誰にでも分かるほど、マグネアは悲しげな視線をゴーレムへと向けていた。もしかすると、彼女も、娘のミネルバのように、誰か大切な人物を失い、ゴーレムの技術を使って蘇らせようとしたのかもしれない。


 一方で、身体の隅々まで無機物で出来たワルツにとっても、人造ゴーレムという存在は、特別な意味を持っていた。この世界の定義に照らし合わせれば、彼女もまた"ゴーレム"と言えなくないからだ。


 とはいえ、彼女の場合、マグネアのように悲しみの色を纏っていたわけではない。


「機動装甲の設計に応用できないかしら……」


 死霊術を魔法陣で再現し、機動装甲の改良に活用出来ないかと考えていたのである。稼働するための機構を持たない人造ゴーレムという存在は、ワルツを悩ませるほどに魅力的な技術だったのだ。


「どのくらいの出力があるのかは分からないけれど、アクチュエータの小型化やEMP対策とかに使えそうなのよね……」


 ワルツはかつて纏っていた機動装甲を、魔王アルタイルとの戦闘中に失っている。自分の半身とも呼べる機動装甲を失った彼女にとっては大きな痛手だ。しかも、彼女の機動装甲は、アルタイルと共に異相空間に閉じ込めた状態であり、最悪、乗っ取られる可能性を否定できなかった。


 ルシア並みかそれ以上に魔法を使いこなせるアルタイルと、オーバーテクノロジーの結晶とも言える機動装甲が組み合わさって、ワルツたちに襲い掛かってきたとき、撃退する術はあるのか……。ワルツの頭の中では、途方もない力を持った化け物との戦闘が繰り広げられていたようである。


 そんな考えもあり、ワルツは、次回作成する新型機動装甲について、人造ゴーレムの技術の他、最低でも魔法を使えることを目標としていた。機動装甲を纏っているかも知れないアルタイルと面と向かって戦うには、科学技術で作り出した機動装甲だけでは不十分。自身も魔法を使いこなせなければ不利だと考えていだのだ。


 今、ワルツの手元にあるカードは2種類の魔法陣。転移魔法と、未だ試してはいないがスクロールに書かれているのを見かけた火魔法である。そこに死霊術を加えれば3種類。


「ほんと、どんだけ出力が出せるのか、よね……」


 もしかすると、大幅な性能改善に繋げられるかも知れない、とワルツは思うものの、それは未だ絵に描いた餅だった。


 人造ゴーレムが出せる最大大出力——より正確には、体積当たりの最大出力が、科学の力で作り出したモーターなどよりも大きいか、それとも小さいかが分からないからだ。ゴーレムの出力が小さすぎれば、わざわざ採用しても意味はなく、ただ重くなるだけ。もちろん、冷却や整備性など総合的に考えれば、また別の見方を出来るのかも知れないが。


 そして魔法についても、課題は残っていた。ワルツ自身は魔力を生成出来ないため、魔法陣を起動するためには、現状、外部から魔力を供給しなければならない点だ。ルシア製のアーティファクトを使えば、ある程度は解決出来るものの、無尽蔵というわけではなく、アルタイルとの戦闘を考えれば、心許なかった。


「何をするにしても、とにかく、試してみるしか無いわよね。火魔法や転移魔法については魔法陣でどうにかなるとして……死霊術って、どうやって再現するのかしら?」


 少なくともマグネアは、魔法陣など使わずに、単に魔法だけで死霊術を行使していた。もしもマグネアが魔法陣を使ってゴーレムを操っていたなら、ワルツは即座に、魔法陣を記録していたに違いない。


「マグネアに聞いたら、教えてくれるかしら?もしもダメだったら……死霊術の魔法陣を見つける?それか、私が魔法を使えるようになって、死霊術を覚えるか。私のような機械でも魔法が使えるようになる魔法陣とかありそうなのよね……。ゴーレムが魔法を使えるのだとすれば、理論上は私も魔法が使えるはずだし……」


 ワルツがブツブツとつぶやきながら、魔法の理論を構築しつつ、回転する椅子の上で、グルグルと回っていると——、


   バタバタバタバタ……ドンッ!


「ワルツ様!ユリア、ただいま戻りました!」ビシッ


——ハイスピアに化けて教師の仕事を続けていたユリアが、自宅に戻ってくる。


 しかし、ワルツは考え事をしていたためか、その眼にユリアの姿は映っていない。完全に自分の世界に入り込んでいる様子だ。


「あの……ワルツ様?」


 グルグル回るワルツの前で、身振り手振りでアピールするユリア。そんな彼女に向かって、ようやくワルツは返答した。……いや、問いかけた。


「ねぇ、ユリア?この世界に、死霊術の魔法陣があるかどうか知らない?それか、ゴーレムに魔法を使わせる方法か」


 椅子の上で回り続けていたワルツから飛んできた突拍子もない問いかけに、ユリアが戸惑いを隠せなかったのは仕方のない事か。


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