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14.21-21 色々な力21

「マグネア殿……。顎関節症にならなければ良いのじゃが……」


「うん?がくかんせつしょう?」


「驚いて口を開けすぎた結果、顎を痛めぬか心配なのじゃ」


「あー、そういうことね。テレサちゃんとかもなるの?」


「そりゃ、顎を開けすぎたり、硬いものを食べれば、なるときはなるのじゃ」


「驚いても、顎を痛めたりはしないんだ?」


「そりゃ、ア嬢と一緒にいれば、そう滅多なことで、驚くことは無いのう……」


 ワルツとマグネアのやり取りを後ろから眺めつつ、ルシアとテレサは、マグネアの身を案じていた。かつて自分たちの自宅やポテンティアの格納庫を見たことのある知人たちは、大抵が驚いて、腰を抜かすか、ポカーンと口を開けていたのである。例えば、ミレニアやジャックなどがその一例だ。2人とも、今のマグネアのように開いた口が塞がらず、軽く顎を痛めたのだとか。


 噂を聞く限り、マグネアは、その見た目とは裏腹に、高齢という話。そんなマグネアのことを、驚かせたらどうなるのか……。ワルツだけでなく、テレサも心配していたようだ。


 ルシアもまた、テレサに言われて、気付いたらしい。ただ、彼女はマグネアよりも、別の人物たちのことを気に掛けていたようだが。


「そういえば、昨日、新しく教室入ってきた人たちって、今日は見なかったね?」


「新入生の者たちか?ワルツ曰く、幻影魔法を使った高齢者たちだと言っておったが……確かに、今日は見なかったのう?」


「お月様の景色にびっくりして、腰を抜かしちゃったのかなぁ?昨日は、授業の途中から、急にいなくなってたよね」


「ワルツなら詳しく知っておるかも知れぬが……もしかすると、ア嬢の言うとおり、腰を抜かして、登校できなくなってしまったのかも知れぬのう」


 ルシアたちは、昨日、特別教室に転入してきた5人の学生たちの素性をよく知らなかった。彼らの正体は、マグネアの知り合いの有識者たちらしいのだが、ルシアたちがそのことを教えて貰ったのは、ワルツ経由。当然、彼らがどうなったのかは分からず……。ぎっくり腰を発症して、学院に来られなくなったのではないか、などと考えたようだ。


 実際、その予想は半分正解で……。5人とも、ぎっくり腰を発症していた。とはいえ、それは昨日の夜までの話。今日の時点では、すっかりと治っていたりする。


 では、なぜ彼らが学院に来なかったのか。月で行う各種実験の準備をするためだ。


 彼らは、月に行けるかも知れないとマグネアから打診された際、彼女のことを信じられなかった。ゆえに、彼らは、学生として特別教室に紛れ込み、本当に月に行けるのかどうかを確かめに来たのである。それが昨日の時点の話。今頃、彼らは、腰に残る鈍い痛みと闘いながら、本格的な研究を行うための準備を進めているに違いない。


 まぁ、それはさておき……。


 地下空間に研究室を持っていたのは、ワルツだけではなかった。ポテンティアの格納庫内に、マリアンヌも研究室を構えていたのだ。


 彼女は、臭気と魔法を組み合わせて、人を惑わす魔女。ゆえに、彼女が取り扱う薬品には、劇薬と呼べるものがあり、ワルツたちの自宅内では気軽に実験が出来なかったのだ。


 ゆえに、彼女の研究室は、ポテンティアの格納庫内に作られていた。そこであれば、多少、毒ガス(?)が発生したとしても、被害を出す可能性は低いからだ。最悪、ポテンティアが鼻を押さえるくらいのものだろう。まぁ、彼に臭いが分かるのかどうかは不明だが。


 格納庫に着いたマリアンヌは、簡単な別れの挨拶を交わした後、皆と別れて、自分の研究室へと歩いて行く。作って間もない研究室だ。壁に真四角な穴を開けるようにして作られた彼女の研究室は、未だ真新しく、壁にも床にもシミの一つも無いキレイな状態だった。


 しかし、そこに並べられていた機材は、出来たばかりの実験室とは思えないほど洗練されたものが多く、レストフェン大公国では作る事が難しいフラスコやガラス管、魔導バーナー、そして薬品の数々などが、ずらりと並んでいた。ポテンティアなど協力してもらい、作成したのだ。薬草などの材料については、鼻の良いアステリアに協力して貰ったらしい。


 そんな研究室に戻ってきたマリアンヌは、まるでそこが自室であるかのように、鞄を放り投げると、椅子にドサッと腰を下ろした。


「はぁ……。はしたない、って分かっていますけれど、この部屋が一番、落ち着きますわ……」


 ここは彼女だけの部屋。壁の向こう側には、ワルツたちがいるものの、彼女たちがマリアンヌの研究室に近付いてくることはない。危険な場所である事を知っているからだ。そう、わざわざ危険な香りがする部屋に近付いてくる者などいないのだから。


「やはり、足が張りますわね……。王宮では、ずっと歩いていなかったせいか、最近、急に歩くようになってから、足がパンパンですわ」


 と、誰に向けるでもなく、独り言を口にするマリアンヌ。しかし、その言葉に返答が返ってくる。


『それはお疲れ様です』


 ポテンティアの声だ。ここは彼の格納庫の中。どこにポテンティアが現れてもおかしな事ではなかった。


 ゆえに、マリアンヌも驚かない。むしろ、ポテンティアがいることを分かっていて、彼女は独り言(?)を口にしていたらしい。


「ポテ様?ひとつお願いがあるのですけれど……」


『はい?なんでしょう?』


「足を揉んではいただけないかしら?」


 そう言って、椅子から立ち上がり、仮眠用のベッドへとダイブするマリアンヌ。スカートの中が丸見えだが、気にしている様子はない。むしろ、その白い足を見せつけるかのようだ。


 その様子を見たポテンティアは、『いやはや……』などと言いながら、苦笑していたようだ。なぜ、マリアンヌは自分に対してこうも不用心なのか……。もしや、自分が男子に見えないのか、と自分の身体の"デザイン"について、心配になっていたようだ。


三連休になると、サボり癖が出てしまって、ダメなのじゃ……。

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