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14.21-20 色々な力20

 ワルツは、自分の工房について、マグネアに対して、一通り説明を行った。もちろん分かりやすくだ。天井や壁などが光っている理由や、その場にあった機械がどんな者を作れるのか……。一つ一つ、掻い摘まんで説明を行った。


 その際、マグネアの表情は何とも複雑で……。興味があって目がキラキラと輝いていたり、逆に死んだ魚のような目になっていたりと、大忙し(?)だったようである。一応、彼女は、ワルツの説明を理解していたようだが、その反面、何かショックのようなものも受けていたらしい。


 マグネアが何にショックを受けているのか理解出来なかったワルツは、このままマグネアのことを工房に置いておくと、躁鬱状態にでもなるのではないかと考え、場所を移すことにしたようだ。ただし、リビングではない。その先だ。なにしろ、ワルツたちが暮らしている地下空間で、マグネアに説明した範囲は、まだ一部。半分の面積にも満たないのだから。


 結果、ワルツたちは、工房を上がると、家の中にあった長い廊下を歩いていた。外から見れば、地下空間の壁へと向かって、真っ直ぐに続いている廊下だ。ちなみに、獣人たちからは、家を建てる際に、設計を間違えてしまい、家の一部が壁に埋まってしまったのではないか、などと噂されていたりする。


 ハイスピアと会話をした際、ワルツたちの家を外から眺めていたマグネアも、ワルツたちの家の廊下が壁面に埋まっていることを、疑問に思っていたようだ。


「外から見た廊下は、壁の中に繋がっているように見えたのですが……何があるのです?」


「……逆に聞くけど、何があると思う?」


 ワルツの質問に深い意味は無い。話の展開如何によっては、マグネアの精神が再び不安定になるかも知れないなど、微塵も考えていなかった。……そう、ワルツにとっては、他愛ない会話。少し先の未来まで、予想して話をしていなかったのである。


 もしも予想を大きく外したとき、マグネアが受けるショックも大きくなる……。その可能性を、ワルツは完全に失念していた。


 対するマグネアも、ワルツの工房以上に驚くような事は、もう無い、と考えていたらしい。それゆえか、彼女の返答はとても平凡なもの(?)だった。


「そうですね……。これだけの深い地下ですから、温泉でも湧いているのでは?ですから、お風呂がある、とか?」


「温泉ねぇ……。まぁ、もっと別の場所を掘れば出てくるかも知れないけれど、この辺りには無いわね」


「え゛っ……お風呂……じゃない?」


 では、一体何があるのか……。マグネアの眉間に皺が寄る。彼女には、風呂以外に、わざわざ紹介されるような施設があるようには思えなかったのだ。


 あと、想像が付くとすれば——、


「では……倉庫?」


——ただの倉庫くらいだった。壁の中にある施設なのだ。氷室のように一定の温度を保てる倉庫があっても不思議ではなかった。とはいえ、氷室など、珍しいものではないので、わざわざワルツが紹介するほどのものではない、ともマグネアは考えていたようだが。


 対するワルツは、マグネアの返答に、「むっ」と反応する。


「そうねぇ……確かに倉庫と言えば、倉庫かも知れないわね」


「ワルツさんにわざわざ紹介される倉庫……ですか。なんだか、段々と怖くなってきました。ワルツさんの工房ですら、驚くような場所だったのですから……」


「あ、うん……(これ、紹介するのはやめておいた方が良いかな?)」


 ワルツは一瞬、考え込んだ。今になって、ようやく、マグネアを驚かせすぎるというリスクに気付いたらしい。


 しかし、廊下の出口は、もうすぐ目の前。廊下の先はとても眩しく、まるで外のように明るかった。


「あれは……出口?」


 そう言って、マグネアは歩く速度を速めた。こうなってしまっては、ワルツにマグネアのことを止める事は出来ない。


「(……何も起こりませんように!)」


 ワルツは心の中で祈った。なお、機械である彼女が何に対して祈ったのかは不明である。


 そして、一気に視界が開けた。


 廊下の先にあったのは、巨大な空間。ワルツたちの自宅がある地下空間よりも何倍も大きな巨大空間がそこに広がっていた。空中戦艦ポテンティアの格納庫だ。


 そして、その空間には、余計なものもあった。


「……なんでわざわざ戦艦の姿になっているのよ……ポテンティア!」


 格納庫の中には、普段、戦艦の姿になどほとんどならないはずのポテンティアが、わざわざ分体たちを集めて、空中戦艦を形作っていたのだ。


 その黒い巨体と、遙か彼方にある高い天井、そしてその天井で無数に輝く眩い光源の姿を見たマグネアは——、


「   」ガクッ


——驚きの余り、遂に立っていることすら出来なくなったのか、その場でへたり込んでしまう。それも口を、これ以上無いほどに、ポカーンと開けながら。

今日は書き始めるのが少し遅かったのじゃ……。

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