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14.21-15 色々な力15

「……お願いします。私の身体がどうなったのか、教えて……下さい」


「……なら、最初にいっておくわね?」


 ワルツは説明に入る前に、そんな前置きを口にした。いきなり本題に入るには、重すぎる内容だと考えたのか、あるいは何か他に別の理由があったのか……。いずれにしても、前置き無しに本題に入るのは、躊躇われる事だったらしい。


 対するハイスピアは、すぐに本題に入ろうとしないワルツの対応を見て、身構えた。きっと、トンデモないことを言われるに違いない……。ハイスピアは確信した。


 ところが、ワルツから飛んできた言葉は、ハイスピアの想像とは少しばかり方向性が異なるものだったようだ。


「今の貴女の身体は、貴女が思っているよりも便利だし、頑丈だし、それに使い勝手も良いと思うわよ?」


「……えっ?」


「そうねぇ……。口で言っても分かりにくいと思うから……ポテンティア?」


『お呼びでしょうか?』


 ワルツがポテンティアの名前を呼ぶと、彼は普通に家の扉を開けて、外へと出てくる。もちろん、人の姿だ。彼なりに、ハイスピアに対して気を遣っているらしく、いつものGスタイルではない。


「ハイスピア先生にとって、貴方は先輩、ってことで良いわよね?変形的な意味で」


 ワルツのその意味不明とも言える問いかけに——、


『まぁ、そうですね。使いこなせるかどうかは、現段階では分かりませんが、頑張れば僕と同じ事が出来るようになるかも知れません』


——と、ワルツの言葉の意味を理解していたらしく、ポテンティアはコクリと首肯する。


「じゃぁ、一例を見せてあげて?戦艦形態は無理だろうから、今のハイスピア先生に出来そうな範囲で」


『分かりました』


 ポテンティアが恭しく頭を下げた瞬間、彼の手が変形する。彼の腕から先が黒い刃になったのだ。


 その様子には、ハイスピアだけでなく、ミネルバも驚いていたようである。彼女もポテンティアの身体については、よく知らされておらず、変形するとは思っていなかったらしい。


『この形態は、食べ物を斬るときに重宝します』


 ポテンティアがそう言って、ブンッ、と腕を振ると、彼の腕はいつの間にか元通りになる。その様子を見ていたマグネアは、「変身魔法?一部だけ?」などと口にしていたようだが、もちろん、変身魔法ではない。


 そんなマグネアの呟きに、ポテンティアは目を細めて微笑むと、今度は大きく身体の形を変えた。具体的には胴が長くなり、足を増やしたのだ。例えるなら、ケンタウルスのような姿だ。下半身が馬のようで、上半身だけ人の形をしているという形態である。


『この姿なら、悪路も楽々走破できます』


 そしてポテンティアは、更に変身しようとする。何やら身体全体の色を変えていく。


 しかし、その直前、ワルツがストップを掛ける。


「はい、そこまで!」


 次の変身で、ポテンティアはカオスな変身をする……。ワルツにはそんな確信があったらしい。例えるなら、黒光りする何かのような……。そんな名状しがたい姿に変わるような気がしたようだ。


 それからワルツは、話を戻した。


「っていう感じで、ハイスピア先生も意識すれば、身体の黒い部分を変形させられるはずよ?」


「はあ……」


 ハイスピアは分かっているのかいないのか、黒い自分の左手に目を落としながら、ジッと手のひらを見つめた。自分の意思で形状を変えられたことがないので、実感が湧いていないらしい。


 そんなハイスピアの姿を見たワルツは、ここにきてようやく本題に触れる事にしたようだ。メリットは話したのだ。今度は、ハイスピアの身体がどうなっているのか、説明する番だった。


「……左腕肘から先を欠損。これは分かるわね?」


「……えっ?」


「両足共に大腿から先を欠損」


「何を言って……」


「貴女の今の状況。小腸、大腸共に3割ほど欠損。左腎臓に左肺、心臓を欠損。左半身のダメージが大きかったようね」


「それは……生きていると言えるのですか?」


「だから、生きているのかどうか、私たちもよく分かっていないのよ。あと、脊椎の骨折や延髄の損傷、左眼球破裂、脳挫傷や大脳ヘルニアとか……まぁ、常識的に考えれば、死んでいるとしか思えない状態だったけれど、一応、今は、損傷した組織をナノマシン……小さな機械の集合体で置き換えているから、仮初めだけど心臓は動いていて、血も通っているわ?」


「は、はあ……」


「……なるほど」


 困惑するハイスピアとは対照的に、マグネアは納得げだった、


「私をここに呼んだのは、彼女の状態を私に()()()ためですね?死霊術士として、どう見えるのか」


「そうそう。ハイスピア先生って、医学の定義的には、一応、死んでいることになるのよ。心臓が止まっている……っていうか、存在しないし、脳の機能も大部分がナノマシンによって模倣されているだけだし……。だから、私たちとしては、延命処置を施したとしても、彼女は死ぬか、まったくの別人になるか、ただ生きているだけの植物人間になるか……そのどれかだと思っていたのよ。だけど……」


 そしてワルツはハイスピアを見る。


「どう見ても、彼女、生前のハイスピア先生そのものなのよね……。だから、たまにユラユラと揺れてニコニコしている彼女の様子を見ると、いつものハイスピア先生だ、って安心する反面、怖くて仕方がなくなるのよ。奇跡的にハイスピア先生のままでいられた彼女が、ちょっとした拍子に壊れちゃったんじゃないか、って心配になって……」


「私……いつ壊れるかも分からないくらい、不安定なのですか?」


「さっきから言っている通り、全然分からないわ?」


「えっ……」


「もう、科学では説明できないから、魔法的な観点——死霊術士の観点から、現状のハイスピア先生の様子を見て欲しかった、ってわけ。魂がどうなっているのか、とか」


「なるほど。そういうことでしたら、任せて下さい」


 マグネアはそう口にすると、ハイスピアの前に立った。そして彼女の頭に手を置いて、詠唱を始めた。死霊術の中に、今のハイスピアの状態を確認できる、ちょうど良い魔法があったらしい。


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