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14.20-48 損失48

 医務室の床に穴を開けたミレニアが、我に返ったときには、既にポテンティアの分体の気配は無くなっていた。ミレニアの魔法によって蒸発してしまったのか、それとも、上手く逃げる事が出来たのか……。結末は不明だが、いずれにしてもポテンティアは、しばらくミレニアには接触しないつもりでいるらしい。ミレニアが、医務室内にいるはずのポテンティアに呼びかけても、彼から返答は戻ってこなかったのだ。


 ポテンティアとしては、好意を向けられたこと自体は満更でもなかったようだが、依然として殺意を向けられていることについては、また納得できなかったようである。いきなり襲い掛かってくる人物に好意を抱けというのは、酷な話である。


「(ポテンティアの言っていたことが、よく分かったわ……)」


 医務室のミレニアと別れた後、ワルツは特別教室へと戻っていた。階段を登りながら、彼女は、ポテンティアと、ミレニアを操るミネルバの会話内容を思い出していたようだ。即ち——本物のミレニアなら、黒光りする昆虫を見た瞬間、魔法を使って駆除してくる、と。


「(彼女の何がそうさせるのかしら?)」


 親の仇を見つけたがごとく、ミレニアはポテンティアに向かって躊躇すること無く魔法を放っていた。その反応は、最早、異常ともいえる速度であり、人の反応速度を超えていると言えた。脊椎反射と言っても過言ではないほどの速度だ。


 それほどまで、ミレニアが強い殺意を抱く事情は何なのか……。ワルツは不思議で仕方なかったようである。


 そんな考え事をしながら、階段や廊下を歩いていると、ワルツはいつの間にか、特別教室の近くまで歩いてきていた。教室まではあと数メートル。ワルツは教室の扉の方に意識を向けながら、考える。


「(そういえば、ユリア……ユリア先生は、ちゃんと私の代わりに授業をしてくれていたのかしら?今まであまり意識してこなかったけれど、この大陸の人たちって、魔族や獣人に対してネガティブな感情を抱いているから、ちょっと心配だったのよね。もしかすると……学級崩壊を起こしていたりして?)」


 もしもそんな状況に陥っていたなら、どう対応すべきか……。ワルツは少し悩みながら、特別教室の扉を開けた。


 ただし、そっと、だ。誰にも分からないように、こっそりと扉を開け、そして教室の中へと身を滑り込ませる。そして彼女は、気配を消したまま、適当な席に陣取って、特別教室で行われていた授業に紛れ込んだ。背の低い彼女の姿は、上手い具合に机の影に隠れており、誰にも見られること無かったようだ。


 特別教室の中では、タイミングが良いと言うべきか、悪いと言うべきか、ちょうど授業が終わりを迎えたところだった。その終わり方から推測するに、どうやらユリアの授業は、ワルツの想像とは大きく異なる内容だったようである。


「すごいです!ユリア先生!」

「とっても分かりやすかったです!」

「ユリア先生のファンクラブを作らないと……!」


「(は?)」


 教室内の女子たちが、やたらと黄色い声を上げて喜んでいたのだ。


 喜んでいたのは女子たちだけではない。


「すげぇ、勉強になったな」

「……あぁ。そうだな。世辞抜きですごいと思った」

「なんだか、世界が違って見えるぜ……」


 男子たちもまた、ユリアの授業に感動したような雰囲気を漂わせており、皆、満足したような発言をしていた。朝の授業の際は、ユリアが授業を行う事に対して反抗的な態度を見せていたラリーも、例外では無い。


 その一方、ルシアとテレサの2人は、どういうわけかジト目をユリアへと向けていた。何か気に入らないことがあったらしい。


「(どんな授業をしたのよ……。ルシアたちの様子を見る限り、碌でもない授業だったように見えるのだけれど……)」


 ワルツから見ると、皆の熱狂ぶりは異常に見えた。何か特別なことでもしたのではないか……。それほどまでに、ルシアたちと他のクラスメイトたちとの間には、大きな温度差があったのだ。


「(授業が終わる前に、どんな授業をしていたのかを聞くべき?んー……でも、ちょうどお昼ご飯時だし、今聞いたら、授業時間が長引いちゃうわよね……。みんなが食事に出かけた後で、ユリアからどんな授業をしたのか、簡単に聞いてみようかしら?)」


 普段は空気を読まないワルツが、無駄に空気を読んでいると、まるで彼女の疑問を代弁するかのような発言が、生徒たちの中に生じる。


 しかもその質問が飛んだのは、ワルツがまだよく覚えてないクラスメイトたちから、ではない。彼女もよく知っている人物。ルシアの口から放たれたものだった。

 


も、もう、睡魔の限界なのじゃ……。

執筆する時間を明らかに間違えてしまったのじゃ……。

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