6後-05 再出発3
拙い・・・ねむ・・・zzz
修正zzzできな・・・zzz
次の日の早朝。
大工房にあるシラヌイの部屋の中で・・・。
「さぁ、今日も1日頑張りましょう!」
顔を洗った部屋の主は、まるで気合を入れるかのように、両の手を合わせた。
そんな時、机の上に朝食が置いてあることに、ふと気づく。
「・・・狩人さん、いつ寝てるんでしょうか・・・」
いくら早起きしても、狩人が朝食を配膳している姿を見たことがないシラヌイ。
朝、彼女が起きると、時間に関係なく、いつも温かい朝食が用意されているのである。
どうすれば彼女の起床に合わせて、食事を用意することが出来るのか・・・。
「不思議な人ですね・・・」
この際、夜更かしをして、狩人を待ってみたらどうなるか、と思わなくもないシラヌイ。
まさに、サンタクロースを待つ子供と同じで発想であると言えるだろう。
ともあれ、答えの分からない問を考え続けていても食事が冷えてしまうだけなので、シラヌイは食事が温かい内に手を付けることにした。
モキュモキュモキュ・・・
ゴクン
「いつも通り美味しいですね」
一人だけの食事だが、満足気な表情を浮かべるシラヌイ。
「・・・だいぶ出来てきましたね」
彼女は、美味しそうに食事を摂りながら、部屋の中にあった折り紙の山に目を向けた。
「紙で構造材を作るというのは中々に手間が掛かりましたが、どうにか目処が付いて良かったです」
「そう・・・。で、どんな工夫をしたわけ?」
「そうですね・・・。紙を等間隔で貼り付けて、一箇所に掛かった力を分散させるような構造にすると、崩れにくくなるんですよ」
「あー、トラス構造ね。紙ではないけど、高層ビルやタワーとか建築物に良くも使われてるわね」
「そうなんですか・・・・・・えっ?」
ガタン!
「わ、ワルツさん?!」
ようやくワルツが現れたことに気付いたのか、シラヌイは突然立ち上がって赤面した。
(・・・流石は高位のボッチね。私が来ても独り言を止めないとか、朝食を一人で摂っても寂しくないとか・・・)
ワルツはノックをして部屋の中へと入ってきたのだが、シラヌイは気づかなかったようだ。
「おはよう?シラヌイ」
「おはようございます!あの、すみません。着替えも化粧もしていないのに・・・」
ワルツに会うためになぜ化粧が必要なのかは不明だが、彼女はバタバタと洗面台に向かって走って行くと・・・
「・・・・・・また、口裂け女になる気?」
・・・何故か頬の辺りから紅をひこうとした。
「え?」
「・・・もしかして、シラヌイの故郷では、みんな唇よりも大きめに口紅を引いてるわけ?」
「いえ。そんなことはないですけど・・・」
そう言いながらも、何処かプルプルと緊張した手つきで、紅をひこうとするシラヌイ。
手先の細かい作業は得意なのだが・・・もしかすると、自分のことになると途端に不器用になるタイプなのかもしれない。
あるいは・・・
「・・・実は、眼が悪かったりする?」
という可能性も否定出来ないだろうか。
するとシラヌイは、
「えっと・・・右目が少し・・・。見えないわけではないんですけど、暗いものを見るのが苦手なんですよ・・・。左目を使えば手元を見ることは出来るんですが、鏡に写った自分の姿を見る時とかは少し大変ですね・・・」
と言って肯定してから、右眼にゴミが入ったといった様子で、眼をパチパチとさせた。
「でも・・・どうして、目が悪いって分かったんですか?」
「だって、鍛冶屋の職業病じゃない・・・」
「え・・・」
「おじいちゃんと一緒に住んでいたんだったっけ?多分、彼も、(片目だけが見えない)隻眼に近い状態だったんじゃない?」
「えっと・・・はい。そうでした」
「鍛冶屋って、片眼だけで刀身の様子を見続けるじゃない?何を見てるのかは分からないけど、ずっと同じ方の眼で赤熱する金属を見続けてたら、そりゃ悪くもなるわよ」
「そういうものですか・・・」
どうやら、シラヌイにとっては初耳の事だったらしい。
「ところで、どうしたんですか?こんな朝早くから・・・」
気を取り直して、どうにかキレイに唇に紅を乗せようとしながら、問いかけるシラヌイ。
「ちょっと話でもしようとか思って来たんだけど、一緒に朝食なんてどうかしら?・・・あ、身支度とか要らないからね?」
ワルツはそう言いながら、カーゴコンテナの中から朝食の乗ったトレイを取り出した。
するとシラヌイは、そんなワルツの言動が理解できなかったためか、しばらく固まった後で、急に慌てた表情を見せる。
「えぇ?!は、はい!よろしくお願いします!で、でも、せめて着替えを・・・」
そう言ってから、彼女は、着ていたパジャマを脱ごうとした。
・・・だが、その手は、途中で止まってしまう。
「う・・・うぅ・・・」
・・・そしてどういうわけか、今にも泣き出しそうな瞳をワルツの方へと向けた。
「いや、別に、食事を摂るだけなんだから無理に着替えなくてもいいわよ?」
自分の方を見ながら赤面してプルプルと震え始めたシラヌイに、頭を抱えるワルツ。
どうやら、シラヌイは、ワルツに着替えを見られることが恥ずかしかったようである・・・。
結局彼女は、化粧も着替えもせずに元いた席に着くと、机の上の整理を始め、ワルツの分の食事スペースを作り上げる。
そして、ワルツが、自分の朝食のトレーを、シラヌイの朝食に対して向かい合わせに並べると、2人だけのささやかな朝食会が始まった。
「で、何を作ってたの?」
部屋の中央で、まるで山のように重なった万羽鶴に眼を向けながら、スープを口に流し込むワルツ。
「ワルツ様に依頼された折り鶴の整理の一環で、折り鶴を纏めていました」
サラダを口に運びながら、シラヌイは自信ありげに笑みを浮かべて返答した。
「大分、進んだみたいね。」
「はい。ただ、残念なことに、以前ワルツ様から頂いた糸は全部使い切ってしまったので、全部を纏めることは出来ませんでした・・・」
そんなシラヌイの言葉通り、彼女の部屋の窓際(?)には、余ったものと思わしき折り鶴が、ダンボールのような箱につめ込まれていた。
それだけで、5000羽は入っていそうである。
「そう・・・。まぁ、全部いっぺんにまとめなくても、今のままでも十分だと思うけど・・・」
するとシラヌイは、そんなワルツの言葉に対して首を振る。
「いいえ。せっかく作ったのに余らせておくのは勿体無い、って思ったんですよ」
「いい心がけね。なんだったら、糸を追加であげるわよ?」
「いえ、大丈夫です。すでに活用法は見つけたので。ただ、そのためには、もう少しの折り鶴と時間が必要ですけど・・・。でも、それももうすぐ終わりそうです」
アトラスがシラヌイに頼まれて用意していた折り紙は、どうやら追加の折り鶴を作るためのものだったらしい。
そのことを思い出してからワルツは問いかけた。
「ところで貴女、腱鞘炎・・・って言っても分からないわよね。腕とか指は痛くならないの?」
ホムンクルスである上、勇者の細胞を使って作られているはずのアトラスが、手を壊すまで、腕の腱を酷使し続けたのである。
手先が器用な鍛冶屋の孫とは言え、普通の少女であるシラヌイだけが無事というのは、少々考え難かった。
彼女の前科(?)を考えるなら、痛みを我慢して手を酷使し続けていてもおかしくないのだが・・・
「大丈夫ですよ?以前のキズはカタリナさんのお薬ですっかり良くなりましたし、たまに手が荒れてもこのお薬を付けておけば、その日の内に治りますから」
「あぁ・・・そういうことね」
要するに、以前カタリナに処方された万能薬(?)が、シラヌイの作業を支え続けていた、ということなのだろう。
「でも、薬には有効期限があるから、何度も使い回ししてると、いつか危険なことになるかもしれないわよ?」
「はい、分かっています。それは、カタリナさんにも言われましたから。でも、期限が切れる前に使い切りそうなので問題無いと思います。それに、もしも切れてしまっても、カタリナさんが新しい物を用意してくれるらしいので、その時は素直に貰いに行こうと思っていますよ?」
「そう。わかってるなら問題無いわね」
どうやら、薬を持っていないアトラスの苦悩の日々は、もう暫く続きそうである・・・。
「で、話は飛んじゃったんだけど、余った折り鶴を何に使うつもりだったの?なんか、トラス構造が云々って言ってたような気がするんだけど・・・」
「えっと・・・・・・完成してから話すのでは・・・ダメですか?」
ワルツの言葉に、上目遣いをしながら問いかけるシラヌイ。
ワルツ曰く高位のボッチらしいが、女子力も低くくはないらしい。
「・・・なんか、サプライズだったりする?」
「そうですね。近いかもしれません・・・」
と言うシラヌイの頬からは、嬉しそうな笑みが溢れていた。
やはり、何らかのサプライズを考えているのだろう。
「・・・まぁ良いわよ?見た感じ、真面目に頑張ってるみたいだし」
「ありがとうございます。多分、ワルツさん方がボレアスから戻ってきた頃にはできていると思うので、楽しみにしていて下さい」
こうしてシラヌイの折り紙作りは後半戦を迎えることになったのである。
・・・この折り鶴が、この先、カオスの根源へと変化していくとも知らずに・・・。
本当は、カタリナの話を書くところまで行きたかったのじゃが、明日主殿の家に戻る故、その準備であまり筆(?)が進まなかったのじゃ。
・・・zzz
はっ?!いつの間にか眠っておったか・・・zzz




